僕のお父さんは円卓最強の騎士 作:歪みクリ殴りセイバー
アンケートは第三章FGO本編開始までやるんだけど、本編の形式をどうしようという悩みが……
あとFGO編はメインストーリーしか書きませぬ。イベントまで書くと収拾がつかなくなりそうなので
今回はお互いに勘違いしながらも何やかんや問題が解決する王道勘違い話
「ギャラハッドさん、ギャラハッドさん」
———————————————ん? 何だい?
あいも変わらずマシュの部屋である。
僕がマシュに憑依してからもう二年近く経つが、マシュの扱いもそこまで変わることなく、この部屋で会話するのが普通になっていた。というか僕の声ってマシュにしか聞こえないから、マシュがずっと独り言を喋ってるように見えるんだけど大丈夫なのだろうか?
「ギャラハッドさんから教えてもらった英語でお手紙書いてみたので、読んでもらえませんか?」
なんと可愛らしい頼みだろうか。快く了承し、読み進めていく。
書かれていたのは感謝の旨を伝えたり、自己紹介などの簡単な文だが、たった二年でそこそこ長い手紙を辞書を見ることもなく書けるようになるとは学習意欲が凄まじい。で、これは誰に向けた手紙だろうか?
——————————————うん、大体合ってるけど、ここスペルミスしてるよ。
「あっ、お恥ずかしいです……」
……これが、父性か……?
誰か僕の気持ちをわかってもらえないだろうか? 性的対象で見ているわけでは断じてないが、可愛い……いや、KAWAIIと思ってしまう気持ちを! 頭を撫でてあげたいけど、何となく触りづらいあの感じを! どちらにせよ触れないけど。で、これは誰に向けた手紙? (嫉妬)
「キチンと書けるようになったらギャラハッドさんにもお手紙書きますね」
……マシュウゥゥゥゥゥ! やだ何この子、男を垂らし込む才能に満ち満ちてやがる……! ……で、本当にその手紙は誰宛てなの?
——————————————楽しみにしてるよ。
「はいっ」
……原典とか関係なく昇天しそう。
どうやらまた新しい英霊を召喚することに成功したらしい。英霊の名前はレオナルド・ダ・ヴィンチ……という名の3Dモナリザである。おいおい、中身おっさんなのに女の体に憑依するとか恥ずかしくないのか? (ブーメラン)
まぁ、そのダヴィンチちゃん? さん? と関わることはマシュがない限りないのである。マシュを室内から出さないことにどんな意図があるかは知らないが、少なくとも最近はあまり体調がよろしくなかったので部屋から出ることはない。
……もしかして僕のせいだろうか? 一つの身体に二つの精神。それもギャラハッドという英雄を普通の女の子の身体である宿すことが負担にならない訳がないし……。あれ? もしかして僕って、マシュの負担……?
……………………。
最近ギャラハッドさんの様子がおかしいです。
英語を教えてくれている時も上の空で、何だかボーっとしていることが多い気がします。
「……ギャラハッドさん?」
またです。こちらが呼びかけているのに一切の反応を示しません。ギャラハッドさんは霊体を持たず、精神だけで存在しているので睡眠中とかは無いはずなのですが……。
「ギャラハッドさーん?」
——————————————……ごめんマシュ、呆けてた。何だい?
「いえ、特に用があるわけではないのですが……」
やはりどこか様子がおかしいとマシュは彼を訝しむ。自分が何かしてしまっただろうかとここ最近の行動を思い返すが、すぐに思い当たる原因はなかった。
こういう分からないことや悩んでいることはいつも彼に話して来たのだが、今回は彼に関することだ。当然、悩みを相談するような相手もいない。……ロマン? まだそこまで深い仲じゃないよ(天の声)
だからマシュが本の知識に頼るのも無理はないだろう。心理、コミュニケーション、果ては恋愛について書いた本にまで手を伸ばす。物資申請もなかなか遠慮がなくなって来たが、デミ・サーヴァントのサンプルとして長時間この部屋で管理されているにしては安い方だろう。
それらの本の一文に、マシュはこの状況と当て嵌まるモノを見た。
Q,最近、仲の良かった男子の様子がおかしいのですが、どういう理由なんでしょうか?
A,今から書くことに心当たりはありませんか? 最近、あなたが別の男性と話すようになった。または仲の良かった男子と話す機会が減ったなど。もし当て嵌まるのなら、その仲の良かった男子の様子がおかしいのは【嫉妬】によるものです。あなたが嫌われたわけではありません。むしろ逆、あなたが好きだから嫉妬するのです。
ギャラハッドは聞こえる声から考えたら男。それに加えて、確かに最近は体調が優れないので新しい主治医にロマニ・アーキマンという人物が就くことになり、話すことも多かった。成る程確かに条件は一致している。恨むべくは、その一文が書いてあったのが恋愛本であることと、十二歳のマシュに与えられたその本がチープなものであったことだろう。
……しかし、嫉妬ですか……。もしギャラハッドさんの様子がおかしい理由が本当にそうなら、解決策はなんなのでしょう?
そもそも周りと比べられるような環境にいないのだから当たり前だが、嫉妬なんてマシュはされたことがない。もっとも、本当にその本のケースならば嫉妬されるのは
嫉妬されているのに好かれているとはどういうことなのだろうか、普通は嫌うのではないかとマシュの頭脳は更に勘違いを突き進む。
更に次のページ。マシュの背筋に電撃疾る———!
『男の子は好きな子には意地悪しちゃうもの。好きなのにまるで嫌っているかのような態度を取ってしまうものなのです』
な、なるほど……!
……マシュ・キリエライトは知らない。この雑誌の全ての男の子という単語の頭に(小学生の)という枕詞がつくことを。いや、もしかしたら思春期までは気持ちに素直になれない人はいるかもしれない。だが、ニ度の人生を全うした精神を持つギャラハッドには全く当てはまらないのだ。
だがそんな事情など知る由もないマシュはこの本に解決策を求める。
「……でも、この状況を改善するにはどうしたらいいのでしょう……?」
そして更に次のページ。マシュに二度目の衝撃疾る————!
『解決法は一つ! その人のことを好きか嫌いか、ハッキリ伝えること!』
目から鱗であった。あれこれと手段を考えず、ストライクど真ん中の直球勝負でいいのだと。うじうじ悩むより行動しろ。マシュの性格とは真逆であったが、これに天啓を得たマシュは行動した。
翌日。いまだに様子がおかしいギャラハッドに、マシュはついにアクションを起こす。
「ギャラハッドさん」
今日もギャラハッドさんは何かを考えているようでしたが、今日の私は昨日までの私とは違うのです……!
——————————————……マシュ、どうしたの?
「私も、ギャラハッドさんのこと好きですよ?」
——————————————……はい?
戸惑うギャラハッド。だが前触れもなく『好き』だなんて気恥ずかしいことを言われても、普通は理解が追いつかない。勿論マシュの言う『好き』は恋愛感情によるものではなく、親愛だとか友愛だとかそういう種類に基づくものだということは理解しているが、それをわざわざ自分に伝えてくるまでに至るプロセスが全くわからなかった。
「? ですから、私もギャラハッドさんのことが好きですよ?」
だが純粋な十二歳、マシュ・キリエライトはギャラハッドのそんな内心を知るはずもなく、彼の疑問符が自分の気持ちが伝わっていないからだとミスリードし、更に追い打ちをかけて行く。
だがさすがに見た目は英雄、中身は大人のギャラハッドに二度も同じ手は通じない。初めてマシュがこんなにも直球で吐露した気持ちを、ゆっくりと噛み砕いていく。やはり好きと言われて嫌な気分になる人はいない。
—————————————……そっか。ありがとう、マシュ。
「はいっ!」
……もしかしたら、僕がマシュのことについて悩んでいたのを何となく察してたのかな。
なんだかんだで子供は感情に敏感と言われているからそうかもしれない。結局マシュの真意はギャラハッドには分からなかったが、彼にとってマシュが自分といることが嫌ではないと知れただけで十分だった。今まで悩んでいたのが馬鹿らしいくらいに心が晴れていく。
自分がマシュに与えてしまう苦痛があるならば、それ以上の苦しみから彼女を守ることで相殺しよう。経緯はどうあれ、自分はもう彼女と同じ体を共有しているのだから……。倫理観や道徳的な意味ではなく、自分の意思で彼は決意したのだった。
その年、マシュ・キリエライトは同人物の主治医ロマニ・アーキマンの強い嘆願を受け、正式にカルデアスタッフとなり……同年の暮れに、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長マリスビリー・アニムスフィアが亡くなっているのが発見された。
ギャラハッド?? 歳。自らの依代である少女、マシュ・キリエライトと絆を深める。
みんな、気づいたか? ギャラハッド視点でシリアスに悩んだの、これが初めてなんだぜ…? 把握漏れしてなければだけど
幕間でやるなら?
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円卓の騎士時代の話
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特異点の話
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カルデア(事件前)の話
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それ以外に出てくるキャラとの絡み