僕のお父さんは円卓最強の騎士   作:歪みクリ殴りセイバー

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というわけで二章はこれで終わりです
次回から三章ですが、多分遅くなります。理由? 特異点Fとかもう読んだのだいぶ前でうろ覚えなのと、ネタ切れなんじゃあ。感想からアイデアを得ることも多いので、お気に入り登録や評価はしなくてもいいので感想だけください(必死)。この作品書いてて一番楽しいのが感想読むことなので

前回のあとがきの答え
マシュ・キリエライトとギャラハッドから一文字ずつ取っていた。でした!

前回の感想の感想
一応フォウ君メインの話だったのに、殆ど所長とぺぺさんの話で草生えました。やっぱみんなもあそこで愉悦されたんやなって。おのれラスプーチン! 実装はまだか!?

アンケート結果
33-4でグダ子になりました! 皆様のご協力に感謝!


マシュ・キリエライト観測定期報告書(筆記者.ロマニ・アーキマン)

 本日より、デミ・サーヴァント実験を成功させた唯一例のマシュ・キリエライト(以下マシュと記す)の主治医を担当。

 始めに彼女とコミュニケーションを取った。

 話を聞いていた限りマシュは誰かと親しく会話をしたり、表情を変えることがあまりないと聞いていたのでコミュニケーションは難航すると思っていたのだが、その予想は良い意味で裏切られることになった。こちらが話しかけると笑顔で応答し、逆にこちらに質問することもある。同年代の一般的な子供と比べれば物静かな方であるが、境遇を考えれば充分すぎるほど明るい。

 彼女の性格が以前の報告と実物に食い違いが生じている。これについて一応一つ推察があるため記しておく。以前の報告書にも書かれていたが、マシュは主に一人の時に、よく『ギャラハッドさん』という、恐らく人名を笑顔とともによく口にする。そのギャラハッドさんとまるで一緒に遊んでいるかのようにボードゲームをしていたこともあるそうだ。私が調べてみたところ、ギャラハッドという名前、もしくはアダ名や略称となり得る名前をした人物はこのカルデアにはいなかった。

 そこで、私はまずギャラハッドさんという人物が何者かというのがマシュとコミュニケーションをする上で重要になると思い、調査をしようと考えた。

 ギャラハッドと聞いて、私たちが真っ先に思い浮かぶのは恐らくアーサー王に仕えた忠臣である円卓の騎士達……そのうちの一人になるギャラハッドだろう。当然英雄の中の英雄であり、聖杯と昇天したことで有名な騎士だ。高潔な騎士とも呼ばれ、幼いマシュを放って置けないと思い憑依したとしたならば頷ける。

 ということは、マシュに憑依した英霊は円卓の騎士ギャラハッドになる……のだが、観測されるデータからはマシュの中にいる英霊は未だ昏睡状態のバイタルを示している。モチロン正確な真名もわからない。

 もう一つ。これは以前からマシュを観測している職員からの情報だが、彼女がギャラハッドさんと呟き始めたのは十歳の頃。つまりは英霊憑依を経てからだという。少なくともその実験が契機となりマシュが変わったのは間違いないと思われる。

 確証はないが、私は彼女が自らに憑依した英霊と会話していると思っている。とはいえ、これは一医師、一人間として報告しておくことにするが、マシュが覚醒していない、または憑依した英霊に全く関係ないかもしれないギャラハッドという偶像を作り出して会話をしてもおかしくないくらい劣悪な扱いを受けている、という点は充分に留意してもらいたい。マシュが精神的苦痛に耐えかね、本で知ったギャラハッドという英雄に救いを求めて救世主として空想した可能性もないわけではない。人道的観点からも医療的観点からも、私はマシュ・キリエライトの待遇改善を要求する。

 何にせよ、今彼女の命があるのはその英霊のおかげだという事実に変わりはない。時々その英霊の魔力によって体調を崩すこともあるが、元々人の身には過ぎた力なのだから致し方ない部分はある。本来三十年の寿命も英霊憑依という無茶をした結果、十八年まで縮んだ。それでも予想していたより遥かに軽い症状なのを見るに、マシュと彼女に宿る英霊はかなり親和性が高いのだろう。私もマシュの主治医として、しっかりケアをしてあげたいと思う。せめて彼女が少しでも人生を楽しめるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がマシュ・キリエライトの主治医となって三年近くが経とうとしているが、未だにギャラハッドが何者か確証を得ることができない。

 マシュ本人に聞いてみたところ、彼女はギャラハッドについて何も答えることはなかった。彼女の中の英霊に口止めされているにしては一人の時に頻繁に名前を出しすぎであるが、そうでないなら特に秘匿する理由もない。

 一番最悪な想定としてマシュが魔術で操られている可能性も考慮したが、精神、体内の魔力の流れ、魔術の痕跡など不審な点は見当たらなく、マシュ本人がギャラハッドについて語るのを自分の意思で拒んでいるというのが妥当な考えだ。理由は不明である。これからのコンタクトで何かわかればいいのだが。

 年々身体も成長し、英霊がいるのにもだいぶ馴染んだのか体調を崩すことはなくなったどころかマスター候補として他の魔術師と卓を並べるほどだ。高いマスター適性を持ち、Aチームになってから僅か半年で首席になるほどの才能である反面戦闘技術は拙く、いつも居残りをしているそうである。

 やはり本人が好きなことややりたいことをしているからか、元々正常値を保っていた精神バイタルは更に安定し、様々な経験と刺激を経て感情がゆり動き、本人の成長にも繋がっている。

 同じAチームのオフェリア・ファムルソローネや芥ヒナコなどと談笑するところを多くの職員達が目撃している。お世辞にもありきたりな境遇に生まれたとは言えないマシュがまるで普通の少女のように同年代の人と話しているのは大きな精神的進歩だろう。

 大きな問題は特に見当たらないが、気になる点もある。

 先日のことだ。その日、オルガマリー・アニムスフィア所長の精神状態はあまり優れているとは言えない時があった。当然、医者の立場からその日は休息をとるように意見したのだが、彼女は頑なに休むことをしなかった。医療スタッフを側に控えさせることを条件に了承したのだが、そんな時に彼女はマシュとすれ違ったらしい。

 詳細は省くが、とある理由からアニムスフィア所長はマシュに苦手意識、より詳しく記すなら恐怖心を抱いていた。つまり出くわすと彼女に多大なストレスを与える。その日は精神衛生が優れないこともあいまって、半狂乱に陥ってしまったようだ。

 宥めや声掛けでどうにかできる段階ではなく、鎮静剤が必要な危険な状態だったとレフ教授から聞いた。だが、そんなオルガマリー所長を青い光が包むと所長は途端に落ち着きを取り戻したというのだ。

 レフ教授も、その場にいた医療スタッフもその段階にアニムスフィア所長に何らかの処置を施した覚えはないそうだ。となると残された候補はその場にいたもう一人、マシュ・キリエライトしかいない。

 私はその場にいなかったので三人からの聞きづてになるが、その魔術からは『神秘』を感じたらしい。神秘の時代はとうに終わり、今は人間の時代だ。そんな魔術を操ることが出来るとすれば、やはり英霊しかいないと私は思う。

 マシュの魔術の師であるレフ・ライノール教授曰く、「あんな魔術をマシュに教えた覚えはないどころか自分も使えない」と言い、マシュ本人でさえ「あんな魔術は初めて見ました」と言っている。

 マシュの中にいる英霊が無意識にアニムスフィア所長を救ったのか、それとも意識が覚醒していることを僕達の技術では知ることが出来ないだけなのかはわからない。この三年間マシュと彼女に眠る英霊について観測して来たが、予想は立てられるし推測もできるが、断定しきるに足る材料が見当たらない。

 可能性としてはどれもありうる。例えば、マシュに眠る英霊が私たちに存在を断定させぬよう暗躍している可能性。英霊は覚醒しているが私たちの技術で観測出来ないだけの可能性。そもそもまだ意識はなく、マシュの空想の産物である可能性。そのどれもを肯定する判断材料があり、然れど断定する材料が足りないというのが偽らざる事実だ。

 私見としては、マシュに宿る英霊が私たち……ひいてはカルデアに害をなす可能性は限りなく低いと考えている。そもそも召喚されたことが気に食わぬなら、五年前の憑依実験でマシュの身体を顧みずに暴走し続けることだって出来たのだ。少なくとも、今に至るまで彼女を依代にする意味はないだろう。以前の報告書にも書いたが、マシュが今生きているのはその英霊のおかげだ。今更私たちに敵対することもないだろう。

 しかし、その英霊にも謎が多いのも事実。同じくカルデアに召喚されたレオナルド・ダ・ヴィンチにも意見を仰いでみたが、彼女の意見も私とそう変わることはなかった。ただ、「英霊とはまた別の存在である可能性もある」との見解があったため、一応記載しておく。

 とりあえずマシュの様子は心身ともにおかしいところはなく、仮に英霊が目覚めていたとしても友好な関係を築いていることは私の五年間の報告書を見てもらえれば伝わると思っている。現状、個人的には取り立てて対処せねばならない事態ではないと考えているが、デミ・サーヴァントには不明な点も多い。

 この変わりない状況に変化を与えられるとするならば、やはり何か真新しい情報か別の視点からの考察が必要になる。いずれにせよ、私はこれからもデミ・サーヴァントであり、Aチームのマスター候補であり、一人の人間であるマシュ・キリエライトの主治医を務め、見守っていく所存である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

「お疲れ」

 

 ロマニが報告書を書き終え一息吐いていると、机の上に静かにカップが置かれる。自室なのに声がすることに驚くことがなくなるくらいいつものことであった。

 

「ありがとう、レオナルド」

 

「何の仕事をしていたんだい?」

 

「報告書だよ。ほら、キミと同じように召喚された英霊を体に憑依させている……」

 

「ああ、確かマシュだったっけ?」

 

「そうだよ」と短く答えてからコーヒーを煽る。あまり苦いのは好みではなかったが、疲れ切った頭と身体は苦いコーヒーで覚醒していく。欲を言えば甘いものも食べたかったが、厚意を無下にするようなことは言わないでおいた。

 

「……どう思う? マシュに憑依している英霊について」

 

「ロマニ、天才で万能な私にもわからないことはあるんだぜ? ……まぁ、情報がなさすぎてなんとも言えないが、この英霊が敵対することはない、っていうのは君に同意するよ」

 

 報告書には嘘偽ざる本音を書いてはいたが、やはり誰かの……それも同じ英霊で天才のお墨付きを貰えると安心感が違った。

 

「まさか天才のキミが根拠もなくそんなことを言わないだろう?」

 

「勿論だとも。これを見てみたまえ」

 

「これは……っ!?」

 

 渡された一枚のA4用紙の内容に、ロマニは驚愕で目を見開いた。対するダヴィンチはその顔を見れて満足そうにしている。

 

「君は医師だから当然なんだけど、マシュの精神バイタルや体調に注視して来た。マシュが体調を崩したのも、単純に魔力過多によるキャパシティオーバーだと見抜いたが故に重視しなかった。他の人もね。だから私はそこに目を向けてみた」

 

 そう、ロマニが渡されたのはマシュの体内の魔力の質や量、魔術回路などが記された資料だった。

 

「私はてっきり、憑依というからにはマシュ自身がサーヴァント並みの力を手に入れると思っていたんだけど……結果はそれの通りさ」

 

 マシュの魔力の流れを見ると、何処かと繋がっている経路(パス)から魔力を注ぎ込まれ、それによって生命活動を維持している。ロマニは似たようなことに見覚えがあった。そう、これはまるで……

 

「—————まるで、マスターとサーヴァントの関係の様じゃないかい?」

 

 そう。聖杯戦争などで召喚されるサーヴァントはマスターと魔力経路が繋がれ、そこから魔力を注がれることで現界している。その仕組みに、よく似ていた。

 

「まぁマシュは生身の人間だから食事などによってエネルギーを補給することは多少できるから一概に全部同じとは言えないけど、マシュは君の報告書のように、ギャラハッド君が憑依したおかげで今生きているんじゃない。彼が今もマシュに憑依しているおかげで彼女は今もなお生き続けられているんだ」

 

「でも、それがなんで敵対しないという判断材料になるんだい?」

 

「得がないからさ。よく考えてみたまえ? 通常の聖杯戦争において、サーヴァントの利とは基本的には聖杯を手に入れ、願いを叶えることだ。それにはマスターの存在が必要だから協力する。加えて令呪という強力な命令行使権もあるから、迂闊なことは出来ない。

 対して彼はどうだい? マシュに従えば願いが叶うのか? 或いはマシュが令呪並みに強力な何かで言うことを聞かせているのかい? どちらもあり得ない。なら、今この状況はギャラハッド君が自分の意思でやっているのさ。何故かカルデアからの魔力バックアップを受けない彼は時間が経つにつれて弱くなっていく。敵対するならとっくにしているってワケさ」

 

「なるほど……」

 

 確かに謎は多いし、目的もわからない。だけど悪い人物ではない。それが確信できるだけでもロマニには充分だった。嫌なことといえば、今のダヴィンチの話を聞いてしまったばかりに、書き終わったはずの報告書に更に書き加えることができてしまったことだろう。

 ロマニ・アーキマンの眠気はそろそろ限界だった。

 その翌日にロマニは机でまるで白い灰になったように燃え尽きていたそうな。




今日からの復刻イベント、頑張りましょう!

幕間でやるなら?

  • 円卓の騎士時代の話
  • 特異点の話
  • カルデア(事件前)の話
  • それ以外に出てくるキャラとの絡み

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