僕のお父さんは円卓最強の騎士   作:歪みクリ殴りセイバー

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戦闘描写って難しいと思う今日この頃

そういえばクソエタ作品の拙作を更新すると未だに見てくれる人がいるんだって感動してます。私が見た時には日刊ランキング13位に入っていてギャラハッドの席と同じだったから運命感じました。ありがとうございます


誤算

 すごい……。

 

 一人の英雄を確かに顕現させた少女は胸中で呟く。ロマンとダヴィンチの推測に乗っかり、やぶれかぶれな令呪の行使は吉と出た。上手くいった安心感からか、足からは力が抜けてしまい地面に座り込む。それと同時に二人から受けた説明を思い出していた。

 

 ──────────────────────────────────────

 

『英霊ギャラハッドがフルで力を振るうにはマシュの力がついていかない。だが、彼と同格……それこそ円卓の騎士と戦うこともあるだろう。だから、もしもの時のために一応この推測を伝えておくよ』

 

『あの……マシュは?』

 

 ギャラハッドさんに関することならば当然マシュがいた方がいい。そう思っての発言だったのだが、Dr.ロマンは首を横に振った。

 

『あえて詳しくは言わないけど、マシュには伝えない。これは代理所長としての判断でもあり……彼女の担当医としての判断でもある』

 

 当時は何のことだかわからなかったが今ならわかる。あの光を返さない眼……深淵を見つめているかのようなアレには背筋が粟立った。自分が思っている以上にマシュは彼に妄執している。

 

『本題に戻るけど、結論から言ってしまえば英霊ギャラハッドの戦闘時における完全召喚ができるんじゃないかって話だね』

 

『完全召喚?』

 

『ああ。理由は不明だが、今のギャラハッドは通常のサーヴァントとは違って霊体がない。じゃあ、なぜ現世に留まっていられるのだろうか……』

 

 そんなことを言われても、専門家どころか最近魔術の存在を知ったばかりの自分がわかるはずもない。そのことは向こうもわかっているのか、こちらの答えを待たずに予想を述べた。

 

『ギャラハッドは問題なく力を行使している。ならば、魂と呼ぶべき力の源は他のサーヴァントと同じように現世に来ているんだ……霊体無しにね。じゃあ、霊体の代わりとなっているものの可能性として一番高いのは?』

 

『マシュ……?』

 

『うん。ボクとレオナルドもそこに行き着いた。そして、それが弱点でもある』

 

 弱点と言われて考えてはみるが、それらしいものは思いつかない。強いて言えばギャラハッド本人が言っていた攻撃力の乏しさがそれにあたるのだろうか? 

 

『ギャラハッド最大の弱点……それは出力だ。いや、正確にはマシュの弱点と言った方が正しいかもしれないね。わかりやすく例えてみようか』

 

 ロマンの後をついて行き、何やらバケツに水を溜めていく様子を眺める。

 

『水が魔力と思ってくれ。で、これが本来の出力』

 

 せっかく溜めた水をそのまま流していく。水道代がもったいないなと的外れなことを考えているうちにロマンはもう一度水を溜め、今度は小さな穴が空いたベニヤ板の蓋をかぶせてからひっくり返した。当然、水はチョロチョロとしか流れない。

 

『これがマシュが流せる魔力量。無理にいっぱいの魔力を流そうとすると……』

 

 いつの間に握っていたのか、ハンマーでベニヤ板を叩いた。破損した箇所からは水が流れ、勢いが遥かに増していく。

 

『──こんな風に体が壊れてしまう。だから莫大な魔力を保有していてもギャラハッドが一度に使えるのはマシュの魔力許容量まで。マシュもこれ以上ないくらいの速さで成長してるけど……やっぱり手札は多い方がいいだろう?』

 

 確かにこれからどんな敵が来るかはわからない。できるだけのことをして損はしないことには全面的に同意である。

 

『さて、この話がギャラハッドの完全顕現にどう繋がるかってことだけど……器の問題で本気を出せないなら莫大な魔力を用いて作り出せばいいんじゃないかってなってね。つまり、令呪だ。それを三画使えば短時間だけどギャラハッドが本気を出せる……かもしれない』

 

『ここまで言って最後は曖昧なんですね……』

 

『まぁ、所詮は机上の空論ってやつだからね。やってみなきゃわからないってのはある種ロマンを感じないかい? ……ああ、マシュには内緒だよ。彼女に言ったら自分が未熟だからって自責するかもしれないからね』

 

 そう言って苦笑いするドクターは、医者というより妹を心配する兄みたいだなんて思った。

 

 ──────────────────────────────────────

 

 半分賭けだったが、確かに机上の空論は成った。すぐに戦いの火蓋は切って落とされるのかと思ったが、ギャラハッドはまず武装を解除され私服となったマシュが戦いに巻き込まれぬよう、抱き抱えて立香のところまで運んで行く。しかし運んだ後も離れないマシュを見て苦笑いをし、微かに手元が光ると彼女の力が抜けていく。魔術か何かで眠らせたのだろうか。

 

「マシュ?」

 

「大丈夫、眠らせただけだよ。マシュをよろしくね、立香ちゃん(マスター)

 

 そう言い残し、振り向いて背中を見せる。それだけで言い表せない安心感が立香の体内を巡った。これがギャラハッド本来の姿なのだろうか。

 いつかのように隣に並び立つ。前とは違うのは、モードレッドが猪の如き勢いで敵に突っ込んで行っていないところだろうか。

 

「……意外だ。モードレッドが先におっ始めないなんて」

 

「バーカ。お前とアーサー王と戦う……これ以上面白いことがあるか?」

 

 クラスとしては間違いなくセイバーではあるものの、その内に宿る怨嗟の炎はアヴェンジャーにも勝る。そんな中、誰よりも憎んだ相手が誰よりも信じた者と戦うなんて最高の意趣返しにも程がある。

 

「おい、腕は鈍ってねぇよな? 俺の足引っ張ったらお前ごとぶった斬るからな」

 

「勘弁してくれ……」

 

 復讐者と守護者。邪剣と聖盾。

 何もかもが正反対の騎士達は示し合わせたと思う程同時に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──なんだ、これは。

 

 並び立つ二人を見た瞬間、黒き王に激しい頭痛が走る。相手の誰かしらが掛けた魔術かと疑うがそんな気配はない。対魔力を持つ自分に通じるほどの術ならば、いかに自分がランサーとはいえそれほどの魔力を感じられないはずもない。

 

 ……ならば、脳裏を過ぎるこの光景はなんだ? 

 

 もう日は落ちようかとしている夕暮れに照らされ、無数の屍が大地を埋め尽くす。その映像の中心では、自分にそっくりな顔をした者が膝をつき、まさに敵の刃が首に届かんとしているところだった。

 しかし、その刃が振り下ろされる前に闖入者が現れた。間違いない、眼前にいる大盾を持った男……ギャラハッドだ。だが、自分にそんな経験はない。彼は円卓の騎士の一人であったものの、あの戦いにおいて関係したことはないと言ってもいいくらいだ。

 それに、モードレッドがギャラハッドに向けている感情にも違和感がある。彼らは特筆するほど関わりがあったわけではないはずだが、モードレッドが彼に向けるそれは自分に対するものに近い。

 

「なるほど。そういうことか」

 

 あれが全て事実だと仮定して言えることは、間違いなく自分の記憶では無いということ。それにしては似通う部分も多く、誰の記憶なのだろうと考えた時、一番納得できるのは別の自分のものだということ。

 確証はない。その推論を裏付ける材料もない。だが、彼女にとってはそれで十分だった。

 なぜなら──頭を悩ます情報が消えれば、戦いに集中できるのだから。

 

「──最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)

 

 嵐が唸りを上げ、意志を持った暴力は龍のように迫り来る。モードレッドが回避か相殺のいずれをしようとも、その隙を狩らんと二度目の嵐を溜め始める。

 

「──何?」

 

 だが、彼女が取った行動は突撃から指針を変えることなく、刹那のうちに黒く飲み込まれていく。復讐に眼と思考を曇らせようとも、騎士として培った戦闘の勘は健在のはずだと思っていたが事実は変わらない。

 かのモードレッド卿といえどもロンゴミニアドの一撃をまともに喰らっては戦闘続行は不可能だ。それはこの槍を喰らったことのある彼女が一番理解してるはず……いや、このモードレッドにその経験があるかはわからないが。

 いずれにせよ、ランサーの頭の中では警戒すべき対象からモードレッドが抜け落ちた。それは間違いなく、【隙】と呼べるものだ。

 

「ドォリャアアアァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!」

 

「──なっ!?」

 

 黒嵐から蒼い光が漏れ出たかと思えば、全てを塗りつぶす赫が迫り来る。避けることも叶わぬ必殺の瞬間に放たれたソレは仇敵を滅さんと全てを喰らいながら──直撃した。

 

「ガアァアアァァァァァァァァッ!?」

 

 鉄面皮の騎士王が痛みに耐えきれず咆哮し、制御を失った暴力(あらし)はロンドンの街並みをただの瓦礫に変えていく。肉体を焦がす鋭い痛みだけではこんなことは起きなかっただろう。しかし、彼女が喰らったのは対アーサー王の邪剣。モードレッドの怨讐が呪いに近しいものと化し、彼女を内側から食い尽くす。

 

 ……また、この感覚だ。

 

 苦しむアーサー王を見ているモードレッドの背筋にまた甘美な電流が駆け巡る。身体を掻きむしりたくなるほど甘美で、まるで自分の脳を蕩しているかのようなソレに身を委ねたくなってしまう。

 

「ハハハッ!」

 

 次に隙を晒したのはモードレッドであった。甘美な熱に浮かされ、二の太刀が大振りになる。些細な、しかしアーサー王から見れば大きな隙を逃すはずもなく、叛逆の騎士の心の臓を穿つ──はずだった。

 

「──引っかかったな、父上(アーサー王)

 

「なにっ!?」

 

 青白い光が聖槍の一撃を防ぐ。更に予想外だったのが聖槍と壁がぶつかった衝撃すらなく、油でも塗っていたかのように表面を滑っていったことだった。腕は伸び切り、体勢は最悪。一瞬にして逆転した形勢を見逃さず、王を断頭するギロチンは降ろされた。

 

 ──バカな、私の槍をギャラハッドが防ぐことを読んでわざと隙を晒しただと? そんな戦法……

 

 そこで、意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人が立てた作戦は、「ギャラハッドか守り、モードレッドが攻める」という非常にシンプルなものただ一つだけだった。お互いに円卓の騎士としては新参寄りで、共に戦った経験も少ない。おまけに仲も良くないと来たらコンビネーションなんて望めない……二人はおろか、アーサー王もそう考えて事実それは正しい。

 だが、アーサー王の誤算は二つあった。

 いかにギャラハッドといえども、ただの防御術式ではロンゴミニアドなんて最高クラスの宝具を受け止めることなんて不可能。だから受け流すことに注力をした。仮に受け流し切れずとも、致命傷にならない多少の傷ではモードレッドは止まらないと読んでいた。モードレッドもまたギャラハッドならば致命傷になり得る一撃は防ぐと読んで捨て身の猛攻に走った。

 決してコンビネーションなんてできないはずの二人が、歪ながらお互いを信頼していたなんてことを言っても誰も信じないだろう。だからこそ、アーサー王の誤算になり得た。

 二つ目は……

 

「……貴女は、僕が守るべき主(アルトリア様)ではなかったけれど、やはりアーサー王だったのですね」

 

 ……読んでいたのではない。それでもピンポイントに致命傷を避けるように防御できたのは考えていたからだ。……アーサー王なら、どこを狙うかと。

 果たして、僕の中のアーサー王と目の前のアーサー王の狙いは一致していた。それ故の結果(しょうり)

 目の前にいるのは、僕が知っている人ではない。だけど、彼女もアーサー王だった。

 

 その事実が、胸の中にいつまでもしこりのように残っていた。




読み直すのめんどくさいって方のための登場人物の現在

◇ギャラハッド(オリ主)
ギャラハッドとしての生を終えたはずが、何故かマシュの中にいる。人理焼却に立ち向かうカルデアに力を貸しているが、円卓時代の負債に牙を剥かれている。なお6章もあるからまだまだ負債は払いきれない。アルトリア(盾王)を上司として慕っているが、結局ブリテンを滅びの運命から救えなかった(救わなかった)ことに負い目を感じており、なんなら恨まれていてもおかしくないと考えている

◇マシュ
ギャラハッドを宿す少女。基本的に礼儀正しいがギャラハッドが絡むと精神的に危うい面が目立つように。

◇立香
一般人。しかし人理焼却に立ち向かうハメになり、それがプレッシャーに。今は人の力を借りてやり遂げるとある程度折り合いをつけた。

◇黒い騎士王(槍)
聖剣ではなく、聖槍を扱うルートのアーサー王。別人であって同一人物。記憶の混濁が起きたのは人理焼却によって召喚が不安定かつ同一人物による親和性から来た奇跡のようなもの

◇モードレッド
アーサー王とギャラハッドにクソデカ感情を持つめんどくさい子。向けているのが憎しみだけでない分まためんどくさい。別人のアーサー王(黒王)にアーサー王(盾王)への恨みをぶつけ、アーサー王(黒王)に対してアーサー王(盾王)の忠臣であるギャラハッドと共に戦うことでザマァみろと思っているめんどくさいヤツ。だけど自分の理想でもあったギャラハッドと一緒に戦えて喜んでいる面もありめんどくさい。でもやっぱり憎んでもいるめんどくさい騎士

◇アルトリア・ペンドラゴン(盾王)
この作品の第一章におけるアーサー王。本来のギャラハッドではないため、辿った軌跡は多少違えども結局は原典通りの結末を迎えた。アヴァロンに辿り着いた彼女が今どうしているのかを知るのは軽薄な夢魔だけである

幕間でやるなら?

  • 円卓の騎士時代の話
  • 特異点の話
  • カルデア(事件前)の話
  • それ以外に出てくるキャラとの絡み
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