艦これの世界で名探偵と英雄王に挟まれながら、艦娘っぽい娘達と頑張ってます。『完結』 作:サルスベリ
過剰摂取は健康を害するものである、しかし食べたいものは多いのが人間であるために、頑張って食べようとした。
そんな話。
世の中には転生というものがあるらしい。
一度は死んで、生き返る。輪廻転生の精神なのだろうか、とても素晴らしい考えかもしれないが、一度だけの人生だから精一杯に生きるって考え方もある。
どちらでもいいのかもしれない。
六歳の頃だった、友人の一人が『俺、転生者なんだ』とか言っていた。幼い頃の自分はそれに対して、よく解らないと返した。
転生者だから転生特典があるだの、この世界で色々やるだの言っていたが、その彼は今や提督の一人として頑張って深海棲艦と戦っているらしい。
深海棲艦、海の何処からか現れた未知の生物、的な何か。生物としているが、明かに機械的な武装を使っていることから、機械生物的な扱いをされているらしい。
詳しい話は学者や専門の研究者に任せるとして、今の御時世はそんな深海棲艦が海の支配しており、人類は陸地の奥に押し込まれてしまっている。
そんな状況を打破するために人類は艦娘達と共に頑張っている、っていうのが今の世界。
自分はそんな危ないことできないから、ひっそりとのんびりと生活できればいいなと考えていたんだが。
のんびり生活って、儚いものだなぁと考える昨今。何処でどう人生を間違えたのか思い返せば、最大の転換点は過去の一件。
幼馴染が、『俺の転生特典だ』とか言っていたものに、付き合った瞬間だろうか。
「ほう、雑種は中部海域を突破したそうだが」
ニヤリと笑っている目の前の男に、深々と溜息が出てくる。
金髪に赤色の瞳。近寄りがたい雰囲気を持った青年は、手に持った新聞を放り投げる。
「がんばってるな、修一。俺はのんびりやるさ」
「ふん、相変わらずだな」
つまらなさそうに、というのではなく何処か面白そうな顔で言ってくる彼は、昔は滅茶苦茶、怖くて恐ろしくて、話しかけたら殺されそうな雰囲気だったのに、十年も付き合うと慣れてくるのかな。
「どうした、マスター?」
「いや~~最初の頃はさ、話しかけると殺されそうだったのになって」
「そうか。十年も付き合ったからな。我も大人しくなったということか」
何処か遠い目をする彼に、ちょっと意外だなと思ってしまう。ひょっとして彼は転生者で、その姿と能力を持っただけなのでは、と。
いや、そんなことないか。どうも幼馴染を筆頭に、色々な転生者に会ったから疑い深くなってしまったのか。
「おめぇが大人しく、馬鹿言ってんなよ、英雄王」
子供の声で、それでも子供らしくない言葉を話す子供が、会話に割り込んできた。
「フ、世界広しといえど、我にそんな口をきくのはお前だけだぞ、名探偵」
「そうかよ」
眼鏡をかけた小学生、見た目は子供でも中身は別者。頼りになる共犯者、といったら怒られそうだ。
「のんびりと話をしている場合かよ?」
「そうだな。我もそろそろ動くべきだと思うが?」
英雄王と名探偵の二人に言われ、俺はゆっくりと立ち上がり、盛大に机に突っ伏した。
「俺は普通に生活がしたいだけなのに」
はぁ、もう何でかな。
柴田・修一。幼馴染の一人にして転生者、転生特典は『英霊召喚』。過去の英雄たちを召喚して使役するらしいものに、何故か俺も巻き込まれてこうなってしまった。
サーヴァントとか彼は言っていたな。で、彼は英霊を召喚して喜んでいたのに、自分が召喚した瞬間に大絶叫していた。
英雄王ギルガメッシュ。幾多の英雄の中でも、特級中の特級クラス。王の中の王にして傲慢。出会った当初は毎日が死ぬ思いをしていたが、今ではちょっと丸くなったらしい。
もう一人は、友人も首を傾げていた存在。彼は『江戸川・コナン』と名乗った。
で、二人を従えて、いや従えられて?
毎日毎日、事件と死ぬような思いと奇奇怪怪な出来事の日々を送って、どうにか生きてこれた十年間。もうすぐ高校生というところで、修一は提督の適性を見出されて提督へ。
俺はそんなの関係ないのでごく普通に高校生生活をしていたら、いきなり軍人が来て『提督になってくれ』と言われて提督の学校に入れられてしまった。
もういきなりだ。拒否したら、『日本に住めなくなる』的なことを言われて頷いた。
という建前。後ろで名探偵がニヤリと笑い、英雄王が凄味のある笑顔を浮かべていた、といわけじゃない。
怖かった、精神的に潰されるか、物理的に殺されるかの二択。対象が日本だったのは笑い話でしかない。
というわけで、提督になりました。
必死に頑張った学生生活。勉学で少しでも点が悪いと、名探偵がすっごいいい笑顔で迫ってくるから、本当に必死でした。
『なんで俺のマスターがこんなのできないんだよ』とか言われても、俺は平凡な人生を生きたいのであって、特別になりたくない。
名前も、田中・一郎だ。平凡こそ我が人生。
の、はずなんだけどなぁ。
名探偵コナンと英雄王ギルガメッシュの二人がいるのに、普通ってなんだろう。これだけでも普通から遠のくのに、さらに提督ってなるともう一般人じゃないだろうな。
「はぁ」
「いきなり溜息?」
「あ、うん、色々と自分の人生に迷ってね」
そう告げれば、彼女は小さく首をかしげた。
「フフフ、我が提督は多感な青年らしいな」
「多感なのかな?」
もう一人の女性は何か楽しいのか、とてもいい笑顔で笑っている。
艦娘、提督が指揮する深海棲艦への唯一の対抗策。人類の武器では深海棲艦の特殊な力場を破れないから、艦娘の力が必要だって言う話なのに。
この二人、本当に艦娘なのかな。
鎮守府の執務室で、ソファーに座っている二人を見つめ、艦娘だよなと自分に言い聞かせる。
修一が『アズレンとアルペジオって卑怯だぞおまえ!』とか言っていたけど、意味が解らないし説明してくれないから忘れよう。
「出撃か?」
嬉しそうだな、エンタープライズ。最近、出撃してないからなぁ。
「出撃なら準備万全」
イオナも嬉しそうだ。でも、修一、なんで白いドレスの最終決戦使用は卑怯なんて言ったんだろ?
「バーロ、出るだけの資材がないだろうが」
「うん、ないのか?」
コナン、そんなこと言わなくても。
エンタープライズ、なんでそこで疑問を浮かべるのさ。
「資材がない?」
イオナ、そんな可愛らしい仕草、何処で覚えた?
「・・・・・ならば我が出してやろう?」
「いや、いい。ギルに何かしてもらったら、あとが怖い」
「学んでいるな」
嬉しそうに笑うな、お前。愉悦のために何かするって知ってるんだぞ、おまえが今までにやらかしたこと、忘れてないからな。
「資材がなけりゃ艦隊を動かすことなんて無理だからな」
「しかし、先日に資材は確保したんじゃないのか?」
エンタープライズ、その疑問は正しい。正しいんだけど、あったって話になるんだよな。
「どんちゃん騒ぎで出撃していった娘がいてね」
「ああ、なるほど。行ったのか?!」
「行った」
「行ったの?」
「行っちゃったんだよ」
エンタープライズとイオナの二人が驚いた顔するなんて、珍しいものが見れたからいいかな。
一万の資材がすべて吹き飛んだことは、いいとしておこうかな。
大和って戦艦を皆さんは知っていますか。
日本帝国海軍最大の戦艦、その火力は第二次世界大戦では最大級。その後の戦艦を含めても火力も防御もケタ違い。
絶大な威力と防御力を持つ大和型戦艦なのですが、同時に資材の消費も絶大なものがあったりします。
さて、そんな大和型戦艦ですが、実は計画には『超大和型』って戦艦があったのを知っていますか。
五十二センチ砲搭載とか、六十一センチ搭載とか、色々と。
今の提督たちはまだ誰も持っていない大和型戦艦、そんなのを建造で当ててしまう提督って周囲から見たらどう見えるか。
答え、化け物。
彼女の名前は大和、大和型戦艦一番艦。ではなくて、大和型戦艦『集合体』の大和でした。
鎮守府の正面玄関のところ、涙を流しながら正坐している彼女は、とても頼りになるんだけどなぁ。
「完全装備で出撃していった馬鹿の顔はこれか」
「え、エンタープライズさん、どうしてここに?」
「どうしてだろうなぁ?」
とってもいい笑顔のエンタープライズには、怒りの炎が見えているんだけど、仕方ないよね。
向こうでジャベリンと電が落ち込んでいるから、仕方ないよね。
「おまえは何をしてどうしたら資材を一気に消費できるんだ?」
「そ、それは、その色々とあって、ですね」
「私でも一万は消費しない、何があったの?」
イオナも何時も通りに見えるけど、内心では激怒しているよね。
「そ、その」
「完全装備で砲弾がなくなるまで遊んできたんだよな」
ああ無情、コナンの言葉で気温が一気に低下しました。
「大和! おまえってやつは!!」
「馬鹿!!」
「ごめんなさい!」
世にも珍しい、大和型戦艦の土下座は、この鎮守府では名物ですので。
そんなこんなで、俺は提督として鎮守府を率いています。
提督の他に、名探偵が鎮守府の運営してくれて、英雄王が愉悦の代わりに予算をくれて、規格外な艦娘っぽい娘たちがいる鎮守府ですが。
それなりに楽しい毎日を送って。
「提督! 大和さんがまた出撃しました!」
「提督! エンタープライズさんが追撃しました! 全装備です!」
「提督! イオナさんが資材集めに出ていきました!」
「提督! 駆逐艦達が遊びに行きました!」
「提督!」
ああ、もうさ。楽しいって言っていいよね。平凡に生きたいって願ってもいいよね。
「バーロ」
「ぶはははははは!」
世の中は無情だな。
かわいい子や、かっこいい人達に囲まれるんだから、ストレスくらいはマックスでもいいよね、的な?