艦これの世界で名探偵と英雄王に挟まれながら、艦娘っぽい娘達と頑張ってます。『完結』 作:サルスベリ
さてさて、最後の防壁(コナン)がアウトしました。
もう主人公を護ってくれる防壁はありません。
さあ、下り坂ではなく穴が空いたように落下してくれるかな。
それとも持ち直すかな。
的な話です。
今日も何処かで悲鳴が上がる。
「・・・・おい」
きっと誰かが悲しんでいるのだろうが、今の俺には力がない。
「なるほど、そうなったか」
力がないけど、出来ることはある。しっかりと書類を作成し提出し、戦術を考えて指揮する。
「怖いなぁ」
今日の遠征書類はこれでよし、次は戦闘か。いや待った、確か他の鎮守府からの応援要請があったはずだから。
「こ、怖いですね」
あったあった、これか。敵の予想戦力はこっちにあるから、向けるとしたら大和にイオナだな。エンタープライズは念のためにつけよう。
「決まったぞ! 『提督の逆上! 我が世の果ては来たれり!』だ!!」
土佐と信濃は南方の調査に向けよう。深海棲艦の様子が怪しい、念のためにイムヤとゴーヤは海中からの調査を。コンゴウは鎮守府に残して、念のための予備戦力だ。
「・・・・・お、俺は間違っていたのか?」
「コナン、おまえはよくやった。よくやったが、やりすぎたようだ。見るがいい、あのマスターの顔を」
「うんうん、提督って顔しているね」
「そうですね、凄いです」
「素晴らしいぞ!」
なんだかうるさいな、どうしたんだよ、お前ら?
コナン、ギル、ソープ、エル、アインズ、そんなところで首を並べているなら仕事しろよ。
「マスターに言われた。マスターに言われた」
「コナン、落ち着くがいい。それ以上は止めておけ、我の愉悦センサーが盛大に動いてしまう。おまえを標的にはしたくない。今は、な」
どうしたんだよ、なんでギルはそんな慈愛と笑みを含めたような顔して、何かを我慢しているんだよ。
「いいから仕事しろよ、おまえら。ただ飯ぐらいはいらないぞ」
まったく。
「おまえが言うな!!」
え、なんで俺が怒鳴られるの。俺、普通のことを言っているだけだよね。
「だからな、なんでおまえはたった一週間でそんなになってんだよ? なんで普通に仕事してんだよ、何があったんだよ? 俺達が遠征に行っている間に何があったんだよ?」
「コナン、そんなにいきなり色々と聞かれても困るから、ちょっと待て。ジャベリン、遠征なんだけど、艦隊を二つに分ける。ジャベリンと吹雪を旗艦にして、二編成だ」
「解りました」
よっし、これで艦隊二つ分の資材が確保できるな。編成はどうするか、駆逐艦だけでもいいが、念のために空母も入れないと。
ジャベリンの方に電を入れて、後は如月と夕立。吹雪の方は天津風に睦月で組ませた方がいいな。艤装の能力値から考えても、吹雪のほうが速度を上げていくからな。
「よっし、いいぞ、コナン。で? なんだよ?」
「いや、いい。なんでもない」
簡単に引き下がるなよ、気になるじゃないか。何か質問したいなら、俺がきちんと聞いてやるから。
「この状態のマスターが続けば、きっといいんだろうけど、なんだか何か大切なものを失ってしまったような」
「お~いコナン、いきなり考え事して何があったんだよ?」
「いや俺の気の所為だ。そうだ、今のままが一番なんだからな。よっし、じゃあマスター書類は終わってるんだよな?」
「ああ、終わっているぞ」
見るかとコナンに差し出すと、彼はすっごい勢いで読みだした。うわぁ、あれくらいの速度で読める能力が俺にあればな、もっと効率的かつスピーディーに事務仕事ができるのに。
そうなれば、他に出来ることが増えるのになぁ。
「すげぇ、完璧だ。あれだけできなかった書類が、こんなに完璧に終わっている。本当に何があったんだよ? 俺たちがいない間に何があった?!」
「何がって・・・・・ただ七草さんと高野総長が来て、俺に教えてくれただけだけど?」
うん、いい思い出だな。
もう震えが来るほど、色々と教えられた。二度と味わいたくないほどに、体の底から徹底的に叩きこまれた。
資材管理から艦隊運用、近隣への対応から書類の作成・管理まで。色々あったなぁ。
「マスター、どうしたんだ?」
「ふ、ふふふ、コナン、俺はもう二度と前には戻らない。ビバ普通だ!」
「お、おう。本当に何をどう教え込んだんだよ、高野総長。あのマスターがこんなに立派になって」
「ふふふふふふふ、俺はもう二度と書類を投げ出したりしない。あの地獄をもう一度なんて絶対に嫌だ。毎日毎日、一時間睡眠とかあり得ない。人間は七時間の睡眠が普通なんだぞ、それを居眠りしたら撲殺されかけるって」
「ギル、よせ」
「コナン、王の決定である。さがれ」
「ダメだ、ギルガメッシュ。今は駄目だ」
「下がれ、我の中の愉悦が叫んでいる。今のマスターに何かしたら、もっと面白い何かが来る、と」
「いやそれ元に戻るだけだろうが!」
「どけ! 名探偵! 王の前を塞ぐとは何事か?!」
「俺が絶対に阻止してやる! もう二度とあんなことは嫌なんだ!」
「よかろう、ここで決着をつけてやろう。来るがいい、名探偵よ」
「その傲慢さを打ち砕いてやるよ、英雄王」
あれ、なんだろう、何か震えている間にうちのサーヴァントが凄い気配で睨み合っている。
あれぇ~?
なんで二人とも宝具を抜いているのかな、どうしてそこまで殺気だって笑顔になっているのかな。
「いや、ちょっと待て、二人とも。ここ鎮守府、ここでやったら資材が」
「行くぞ『エア』よ! おまえに相応しい舞台が整った!」
「来いよ! 俺の全部をかけておまえを砕いてやる!」
「だからちょっと待てって!」
なんかヒートアップしてるんですけど?!
だれかいないか、誰かこの二人を止められる奴は。どうにかして止めないとせっかくの資材が。
「そうだ! 妖精さん!」
『呼ばれました』
『飛び出しました』
『何か御用ですか?』
「あの二人を止めろ!」
もうなりふり構っていられない! どうなってもいいから資材だけ護れたら! 護れたら!
『ではこのカードです』
「・・・・・え?」
『タイムベント(仮)』
『時は巻き戻りますです』
はい?
『そして、時は動きだす』
あれ? 何この妙な恰好の妖精は?
妖精様って呼ばないといけないのかな、どうしてそんな変な恰好しているのかな。
「マスター、何したんだよ?!」
「この我を出し抜くだとぉ?!」
「え、いや何したって?」
何が何やら。えっと、この妖精、背中に『でぃお』って書いてあるけど、何ものなんだろう、初めて見たけど。
「今、時間を操作したの誰?! すっごい三次元が不安定になったんだけど?!」
「え、ソープ、何がなんだって? 時間って操作できるの?」
うわぁ、何それ。時間操作ってどんなチートなのさ。
「時間操作とは高等技術を使うものだな。フフ、このアインズ・ウール・ゴウン、久しぶりに全力で戦えそうだ」
「いや待った。なんで昔の『魔王』スタイルに戻っているわけ?」
「違うのか? ならばこのニュースタイルだ!」
おう、なんだか一瞬でアインズが豪華絢爛な極悪魔王から、カウボーイスタイルの若大将になったんだけど。
「フ、やはり私はこういったスタイルがもっともしっくりくるな。どれ、この格好のまま街角で流しの歌手でもしてみようか」
いや止めて、なんで嬉しそうに歩きだしているのさ。待って待って、本当に待って、せっかく街の人たちが『あ、ようやく普通の鎮守府になった』って喜んでいたのに。
せっかく、普通の鎮守府になれたのに。
ビバ普通だったのに。
あれ? あああ!
「そっか! 俺は普通の生活をしたいだけで、普通の鎮守府生活がしたいわけじゃないんだ!」
「今そこかよ!?」
「遅い! 遅すぎるぞ道化!!」
やっと思い出した。俺は普通の生活を送りたかった、それだけなのに。
「マスター、落ち着け」
「コナン、俺は何をしていたんだろう、提督なんて俺には無理だ」
「いいか、よく聞けよマスター。今のまま深海棲艦がいたままの世界で、『普通の生活』が送れると思うのか?」
「は?!」
な、なんてことだ。俺は何を思い違いをしていたのか。そうだよ、そうだったんだ。このまま深海棲艦がいたら、普通なんてできるわけがない。戦争をしなければいけない、物資が集められない。
ク、そんな簡単なことに気づかないなんて。修一に笑われてしまうじゃないか、キンジに呆れられる。
「そうだ。俺は平和な世界を、穏やかな海を取り戻す。そして普通の生活を送る」
「ああ、そうだ。マスター、そこがスタートラインだ」
「ありあとう、コナン、俺はようやく目的が定まった。よっし、これからも頑張っていこう、ついてきてくれるか、名探偵?」
「バーロ、おまえがついてくるんだよ」
俺とコナンはがっしりと手を握り合った。
「よかろう、我も乗ってやろう」
「僕もいいかな?」
「僕もやりますよ」
「私も参加させてもらおう」
ありがとう、ギル、ソープ、エル、アインズ。皆がいてくれるなら、俺は何処でも戦えそうだ。
「皆がいてくれて、本当に助かる。まずは深海棲艦を残らず駆逐して、平穏を取り戻す」
俺の決意に誰も笑うことなく頷いてくれた。よかった、俺はいい仲間に巡り合えた。提督なんてものになって、不幸だなって思ったこともあったけど、こうしていい仲間に巡り合えたなら、こんな生活も悪くないな。
「では皆、暁の水平線に勝利を刻みに行こう」
ここからが始まりだ、本当の俺のスタートラインだ。
俺は決意を新たにして、提督として頑張っていこうと決めた。
「で? どうしたって?」
「うん、修一、俺はね、頑張ろうと思ったんだよ」
「へぇ~~~」
「がんばって、頑張ってさ」
「そっか、そっか」
優しく俺の肩を叩く修一に、俺は顔を上げて涙を振り払おうとした。でも無理だった。
「一か月で何とかなるか」
キンジ、それで何とかなるなら、どうにかしてくれ。
「ほっっっとうに、田中君は面白いことしてくれるわね」
すみません、七草さん。俺はやるつもりなんてなかったんです。
「田中、おまえにいい医者を紹介してやろう」
高野総長、俺もう痛くて痛くて胃薬じゃダメなんです。
「マスター、俺の苦労が解ってくれたんだよな?」
コナン、すまん、俺は過去に戻れたら真っ先に俺を殴ってやるから。
「ふあはははははははは・・・と笑い話で終われんな、流石に」
ギル、今回は笑ってくれ。もう盛大に笑い飛ばしてくれ。
「ごめん、僕も今度のことは悪いと思っているよ」
てめぇソープ、悪いって思っているならやるなよ。
「凄いです! かっこいいです! 最強です!」
エルぅぅぅぅ! 元凶がはしゃいでんじゃないよ!
「まさに魔王か。私が直々に認めてやろう」
アインズ、それは嬉しくない、そんなことされても嬉しくない。
『まさに神!』
『まさに魔神!』
『まさに破壊神!』
『最高傑作の誕生です!』
妖精さん達が憎らしい、本当に憎らしい。
あの鎮守府を更地にしたデスザウラーを作ったエルもそうだけど、それに加担にした妖精さん達が本当に憎らしい。
うう、集めに集めた資材が、あんな翼と大砲を生やした恐竜に消えるなんて、そんなことあっていいはずがないのに。
「司令官、あれはどうしたらいいですか?」
「吹雪、どうしたらいいかって。そうだなぁ、近隣に被害が出る前に破壊したいかな?」
破壊できるのかな? なんか、第一艦隊の艤装データ使ったとか、他の艦娘の艤装データとか使っているって言うけど。
強固で不可視な防壁を展開できる上に、装甲も厚いから一撃で倒せないって妖精さん達が行っているけど。
「解りました」
「え?」
俺の目の前で、デスザウラーが崩れ落ちていく。もう粉々になって砕け散ったというか、爆発していく前に分割されたような。
「終わりましたよ、提督」
「あ、はい。ありがとう、吹雪」
とても綺麗な笑顔の彼女は、何時の間にか持っていたナイフを逆手に持っていた。
え? まさか、ナイフ一本で解体したの?
さて、普通の提督になった主人公ですが、そのために今まで抑えつけられていたストレスが、胃を直撃していきます。
コナンを通していたからこそのストレス軽減もなくなり、直撃です。
さあ、次第に苦しむことなった主人公は、どうなりますでしょうか。
的な話となっています。