艦これの世界で名探偵と英雄王に挟まれながら、艦娘っぽい娘達と頑張ってます。『完結』 作:サルスベリ
これをやろう、あれを見たいとか色々と考えて行って、かなり楽しめませんか。
で、行った気になって計画を止めることってありませんか。
そんなやろうかで止まってしまう鎮守府の話です。
的な。
君たちは江戸川・コナンを知っているだろうか。
どうも、田中・一郎です。
俺は転生者じゃないから、他の世界のアニメとか漫画って詳しくは知らないけど、遠山・キンジって軍令部所属の知り合いから耳にタコができるくらい、延々と語られたことがあります。
彼曰く、見た目は子供、頭脳は大人。
彼曰く、迷宮なしの名探偵。
彼曰く、真実に常に辿り着く行動派。
などなど賛美歌のように語るのですが、聞いている俺としては思うことは一つだけ。
いや、なにその被害総額。一つの事件で何億、使っているの。え、映画のたびに街一つとかテーマパーク一つ壊してない?
いやいや、デパートだけで済んだねって、おかしいって思うのは俺だけ。なに国家の危機に子供が介入してるのさ、秘密道具の活躍回数がおかしいって気づいてお願い。
いや待った、その秘密道具を作る博士って何者。ぜひ、鎮守府に呼んで開発を。いやいや待った、気の迷いだな、うちにはすでに変態改造馬鹿がいるから。
「お呼びとあらば!」
「即参上!!」
「なんで人の心の中を読めるのさ二人とも?!」
いきなり目の前でポーズとか決めるソープとエルに対して、怒鳴った俺は悪くない。
話が逸れたので戻して、と。そんな滅茶苦茶、優秀な名探偵が俺の傍にいてフォローしてくれる。
「これが申請書類だろ。戦果報告に資材消費の報告と」
うん、フォローしてくれている。
「遠征許可申請書と、来月分の活動予定表に」
フォロー、フォローって。
「で、軍令部からの任務に対しての不参加申請草案と、相手からの質問一覧に回答一覧と」
ふぉ、ふぉろー。
「来月の総会に対しての全体の意見と、細かい出席者の意見と、俺たちに鎮守府に対しての攻撃のおおよその予想がこっちで」
「ふむ、いつ見ても見事だ、コナン。おまえは『我と同じ目』を持っているのかと疑ってしまう」
「バーロ。こんなの周りの情報を集めりゃ、簡単に解る程度だろうが。探偵ならすぐに集められる程度で、本当に深い部分じゃおまえに勝てるわけないだろうが」
「本当にそうか?」
目の前でニヤリと笑うギルに対して、コナンはフッとニヒルに笑っていた。
うん、フォローってなんだろう。
最近、俺は執務をしているような、してないような気がしてきた。書類って俺のサインが必要なんだけどなぁ。
「おら、手を動かせよ、マスター。次の束にサインしろ」
「ラジャー」
「・・・・時々、我のマスターが不憫に思えるのだが。我も随分と年をとったものだ」
なんだろう、ギルがとても慈愛に満ちた瞳を俺に向けてくるんだけど、あんなに優しい英雄王って初めてかも。
あ、提督になってから三日後にあんな顔していたな。そっか、そっか、初めてじゃないか。
「失礼します! コナンさん、海域の調査に行きますから予想ください」
元気だなぁ、ジャベリン。さっき遠征から戻ってきたばっかりなのに。
「あそこの海域は北部の鎮守府が三か所、その補佐に六か所の鎮守府が入っているから、ルートはこれだな。万が一の遭遇戦には、遠征って顔して通り過ぎておけばいい。もし戦闘参加を頼まれたら、後ろから狙ってくれ」
「解りました。調査項目は何処ですか?」
「こっちに一覧があるから、上から順にやってくれ。三番目と六番目は念のためだから無理すんなよ」
「解りました。ではコナンさん、ギルさん、提督、行ってきます!」
おー元気に行ったな、ジャベリン。駆逐艦は元気で大変によろしい。
「おら、さっさと手を動かせ」
「解った」
よっし、しっかりと提督業をやりましょうか。
は! 今の俺、普通に仕事している。やっぱり普通が一番だよな。
「なあ、コナンよ。我の思い違いであってほしいのだが」
「なんだよ、ギル。今、海域制覇のための資材の調整と、艦隊の編成で忙しいんだよ」
「マスターが提督で、コナンが補佐ではなかったか?」
「・・・・・・聞くな、頼むから」
すっげぇ苦い顔で言うコナンがいて、すっごい優しい顔したギルが肩を叩いているんだけど、何があったのかな?
「あいつに任せていたら、三日で鎮守府が機能停止するんだよ」
「ふ、さすがの我でもその愉悦では笑えんな」
とても失礼なことを言われている気がするんだけど、気のせいかな。
突然だが、提督って鎮守府のトップだと皆は知っているだろうか。トップって実は仕事をしなくてもいい場合があるって、皆さんはご存じだろうか。
会社を思い出してほしい。社長が現場に来て働くかな? 働かないだろう。社長って会社の運営方針を決めるけど、社長だけで決めることはない。その下の専務とか部長とか常務って人たちが考えた意見を、会議とかで社長に聞かせて運営方針を決めていないかな?
世の中にはワンマン社長って人たちもいるし、そういった人は会社を引っ張っていることもある。
しかし、全部が全部じゃないのが世の中ってもの。だからこそ、俺の鎮守府は俺がすべて決めているわけじゃない。
「サイン、サイン、判子、判子、捺印、捺印」
日々、書類に提督が確認して許可しましたって証拠を刻んでいくのが、俺の業務のすべてだ。
すべて、だ? いや、待った。なんかおかしくないか。提督って俺なのに、こう出来上がった書類にサインしていくだけって。
「コナンさん! やっぱり大和こそ今回の作戦には必要です!」
「今回は私に譲るべきだ。エンタープライズの実力、お見せしよう」
「二人とも留守番、私こそ必要」
うちの三枚看板がコナンに詰め寄っているんだけど、あれってひょっとして俺のところにくるのが本来の姿なのかな。
「マスター、手が止まってんぞ」
うわ、こっちも見ずに言ってくるよ。なんで毎回毎回、俺のことの行動を正確に読めるかな。
あ、名探偵だからか。行動心理学の本を前に読んでいたの見たな、ちょっと怖くなったよ。
「あのなぁ。おまえら三人を投入したら、資源が消えるの、なくなるの。前の事件で少しは懲りたんじゃないのかよ?」
「全然」
三人、即答しちゃったよ。あれって、絶対にコナンが怒るパターンじゃないか。あ、コナン、笑顔のまま固まっている。
「・・・・・・今回は空母を使うから黙って休んでろ、バーロ」
復活しました、我らが名探偵。よしよし、精神耐性が上がってきたね。
「マスター、追加していいか?」
「申し訳ありません」
めっちゃいい笑顔してんじゃないよ、コナン様。八当たりに俺を選ぶなんて、そんな冷たい子に育てた覚えないぞ。
あ、半眼で睨まれた。
「とにかく、今回の主役はユニコーンだ。あいつの練度を上げていく」
「な?!」
瞬間、執務室にいた全員が驚愕の声を上げた。
「なんて酷いことを!」
大和、顔を背けて唇をかみしめる。
「そんなバカな!」
エンタープライズ、驚いた顔のまま固まる。
「理不尽」
イオナ、珍しく表情が動いている。
「・・・・・・コナン、我を編成に入れろ」
「おい、英雄王」
で、我らの英雄王が完全装備で立ち上がる、と。
なんだろう、初めて会った時から何故かユニコーンにだけは、異常に過保護になるんだよな。
「我の第六感が叫んでいる。幼子を護れ、少女を護衛せよと」
「何があったのさ、ギル? 過去に何かあったとか?」
「解らんが、そう告げている」
決意を浮かべる英雄王に慢心は見られず。あれってかなり本気の本気なんだけど、最初の一撃に『エア』使っちゃうくらいに本気っぽいな。
「あのな、英雄王が出ることはないんだよ。今回はユニコーンを旗艦にして、土佐と信濃を投入しての航空兵力の強化だからな」
「ならばいい」
あっさりと引き下がるなよ、ギル。そこは強気に押してコナンを困らせろよ。
「へぇ~~~マスターはそこまで苦行がお望みってわけだな?」
「ほう、楽しませてくれるということか、マスター?」
「ごめんなさい、これ以上は俺が死にます」
物理的にね!
「そういえば、だな。我が仕入れた情報によれば」
「ちょっと待てギル! あれは止めておけって言ったよな?!」
コナンが珍しく慌ててるけど、何があったかな? いや、何もないさ。俺はやましいことは何もない。コンゴウの添い寝も、その後の土佐の添い寝も、大和が裸で来た時だって耐えたんだ!
「バーロ、おまえが耐えたって意味ないんだよ」
「へ?」
「フフフフ、これを見るがいい!」
とてつもなく凶悪な笑顔でギルと、その手に持った写真。
え? えええええええ?! まさかの伏兵?! だって電は隣に寝ていただけじゃないの?!
朝に起きた時に妙に顔が赤かってけど、恥ずかしかっただけって!
そっち! そっちの意味?!
「提督」
ポンっと肩に手が置かれた。混乱している俺は、ハッと振り返って彼女達を見てしまった。
冷たい笑顔を浮かべたエンタープライズと、艤装を纏って黒い笑顔を浮かべている大和と、侵食魚雷を浮かべているイオナの三人を。
「ファーストキスの味はいかがだったかな?」
「・・・・・・・記憶にございません」
「何処の政治家だぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
そしてその日、鎮守府の建物が半壊することになった、とだけ伝えておこう。
「バーロ、これで計画がパーだ」
後日、コナンが結構な紙束をシュレッダーにかけていて、その隣で俺は反省文と始末書を書かされていた、と。
鎮守府が半壊したので、資材をくださいって軍令部に電報を送りました。
『は? 何してんの、お前』と軍令部の知り合いが激怒の電報を送り返してきました。
『本当に何してんだよ、お前』
「ごめん」
『馬鹿なの? 死ぬの? むしろ死んじゃうの? 死ね』
見事な活用法だ。これでも普段は温和で優しくて、親しみがある人らしいんだけど、どうにもなぁ。
俺にだけ冷たくない?
『てめぇ、今年に入って何度目だか数えたか? 本当に反省しているか?』
「してます。だから資材、回して」
『主計科に頼めよ。鎮守府への資材配分は主計科の領分だろうが』
「あ、うん、そうだけどさ」
時々、主計科を通さずに軍令部からの命令で資材を回せるって聞いたんだけど、あれってデマだったのかな?
『念のために言っておくとな、大規模作戦とか敵中枢の侵攻戦とか、『戦略上致し方ない場合は軍令部からの命令で資材を回せる』。けどな、鎮守府を自爆しましたなんて、回せると思うか?』
「そこを何とか」
『だからダメだって』
く、相手は硬い。ならば最終手段だ。
「頼むよ、キンジ」
『・・・・・・コナンのためなら全力でお任せを!』
フ、落ちたな。
「マスター、いつか刺されないか?」
「え? だってコナンは俺の憧れだって言うからさ、本人の声を聞かせてやっただけだよ?」
「うわぁ~~~俺が探偵やってた頃だったら、間違いなく犯人として捕まえているだろうな」
「そんなぁ、褒めるなよ」
「褒めてない!」
なんでだろう、見事に資材を確保したのに、怒られたよ。
「提督!! キスをしてって言えばキスしてくれるって本当ですか?!」
「はい?! なにそのデマ?! 吹雪、落ち着いて!」
「落ち着けません!」
誰だそんなこと言ったのは?!
は?! あっちで何故かソープとエルがニヤニヤしている! 元凶はあいつらか、いや違う!
こんなことをするのは、こんな他人の不幸を眺めて喜ぶのは一人だけだ。
「ギルガメッシュぅぅぅぅ?!」
「フハハハハハハ! いいぞ、いいぞマスター! 今日は楽しみがなかったからな、存分に踊ってもらうぞマスター! いや道化よ!!」
あいつ、あんなところに金ピカの船を浮かべてやがる。
「コナン、俺はあいつを捕まえに・・・・・」
「今回は俺はあいつ側だ」
え、まさかの裏切り!?
はっと振り返った先、彼は何処か悲しそうに笑っていた。
「探偵ってのは、何時も事件の後に気づくものさ」
「嘘つけ!」
「じゃ本音で言ってやるよ! マスターがぶち壊したんだぞ! 俺の二十四時間の成果!」
あ、それは申し訳ない。
なんかマジで叫んでいるコナンに頭を下げようとして、視界の隅に見えてしまった。
ニヤリと笑っている彼の顔を。
「おまえまでギルに染まってんじゃねぇ!」
「はっはっは! 踊ってくれよ、マスター。この理不尽に潰された計画と、苦労に苦労を重ねた舞台の残骸の上で!」
おまえどこの喜劇役者だ!
その後、俺は鎮守府中の艦娘に追いかけられた。人から見たら美女たちにキスを迫られるってご褒美かもしれないけど、実際にやられるとすっごい怖いものだって知った。
計画は、未定であり決定ではない。的な。
計画を建てても実行しなければ、それは無意味なんですよ。
そんなお話。