艦これの世界で名探偵と英雄王に挟まれながら、艦娘っぽい娘達と頑張ってます。『完結』 作:サルスベリ
というわけで、監査を受けることになりました。
鑑査じゃないですよ、美術品を鑑定するのではないので。
この鎮守府には奇跡的な美を体現する存在がいますが、監査のほうなので。
監禁して鎖につなぐ、で『監鎖』ってありかなと思いますか。
的な話になっていきます。
『監査』、法令または条例に従い、業務や資金が正しく運用されているかどうかを調べること。
要するに、『おい、てめぇ、きちんとやっているか? ああ? やってねぇなら首を出せや、コラ』ということ。
どうも、田中・一郎です。
鎮守府に真っ直ぐに戻って執務室に行って、最初に会ったコナンに『監査されることになった』って言ったら。
ばっさりと手に持っていた資料を落としたよ。
まさに、その時コナン公王は使者(俺ですね)の前で、杖(資料だけど)を落としたもうた、ですな。
「・・・・・何してんだよおまえはぁぁぁ!!」
「待った! ちょっと待った! サッカーボールは駄目! 宝具なんてくらったら俺が死ぬ!!」
「おまえは! おまえってやつはぁぁぁ!!」
うわ、マジだ。本気で靴のダイヤルに手をかけているコナンがいて、サッカーボールが足元に転がっている。
コナンの宝具、『
対象、俺。そんなバカな?!
「落ち着くんだ、コナン!」
「お! アインズ!」
珍しくガイコツの魔導士が襲来。あの最初に会った時に着ていたローブではなく、上半身はガイコツの姿の上にチョッキを纏って、その上に帽子をかぶっただけの軽装だけど、頼りになる時は頼りになる存在だ。
だけど、見た目『カウボーイ』に見えるんだよな。
「どけアインズ! そいつはな! そいつはなぁ!」
「おまえの怒りも悲しみも解る! だが、この提督が愚図で鈍間で馬鹿で単細胞の上に、世間知らずで常識さえなく、自尊心の欠片もないアホなのは知っているはずだ。死んでも治らないどころか、死んだら悪化するほどの単細胞なのは周知の事実。毎日毎日、判子とペンだけ持って仕事をしている気になっている人類史上最低の男であり、普通にこだわっているくせに普通じゃないことを平然とする呆れ果てたゴミクズだということは誰もが解っている」
あれ、何だろう。助けられたはずなのに、どうしてこう胸のあたりがズキズキと痛むのかな? アインズ、俺を助けてくれるんだよね。
後ギル、なんでおまえはさっきから笑い転げているのさ。
ソープとエル、そんな憐みの視線なんて必要ないから、どっか行ってろよ。
「燃えるゴミや資源ごみのほうが活用できるだけまだいいが、この不燃ごみで核廃棄物なみに厄介な馬鹿の始末など、銀河が終わろうともできないと錯覚するくらい、厄介の塊なのは誰もが理解している」
「いやさすがにそこまで言ってない」
あ、コナンが冷静になったみたいだ。良かった、良かった。あれ、なんだろう、さっきまで怒りの目線を向けてきたはずなのに、今は凄い暖かい目線を向けてくる。
あれ視界が歪むな、汗か。そうか、目から汗ってでるんだ。
「しかしだ! それでもこの鎮守府の提督であることに変わりはない!! 例えお飾り以下の置物未満の! 存在している価値があるかどうかで一晩は悩めるだろうクズであっても!」
「アインズ、待った。止めてやれ。そろそろやめてやれ、マスターが燃え尽きかけているから、止めてやれ」
「それでもだ! 提督なのだ! だからこそその怒りは!」
「いや背負ったギターを持って何するんだよ?」
「その怒りは私の歌で流してくれ! いやぜひにでも! 要するに俺の歌を聞くがいい!」
「いやおまえ、それがやりたいだけじゃないのか?」
「行くぞ! 『念仏ハイウェイロード! 即ちオーバーロードが念仏唱える!』だ!」
「突っ込み切れないから止めてくれ」
ふ、ふふふふ、俺ってそんなに色々と言われるくらい、ダメなんだ。
そっか、そっか。
「・・・・カオスだ。まさに愉悦!」
「ギルは平常運転だね、どうする、エル?」
「とりあえず、全員を正気に戻して監査対策しませんか?」
「君って全員が暴走すると、凄く冷静になるよね」
何か聞こえるけど、遠くて聞こえないや。ああ、あれこそがオケアヌスか。征服王の背中が見えた気がするよ、修一。
何があったんだろう、鎮守府に帰って来てからの記憶が飛んでいるんだけど、俺って何かしたかな?
「コナン、俺ってどうやって戻ってきた?」
「あ、ああ。そうだな。ハンマーかな?」
ハンマー? なんだそれ、どうしてハンマーで戻ってこれるのさ。あ、まさかギルの宝具か。何かの原点を使って、一瞬で帰還したってことか。
「後、エルは魔法が使えるんだよってところか」
「へぇ~~エルって技師だけじゃないんだ。凄いな」
う、なんだか頭痛が。これ以上、踏み込んだから不味いって第六感が言っている。
「よし、とりあえず監査対策な」
「とりあえずって、どうするんだよ? 報告書、だしてないだろうが」
「え?」
「え? じゃねぇよ、忘れたのか? 『大和型が特殊だったり、イオナが特殊過ぎるから、厄介事になるから濁そう』って言ったの、マスターだろうが」
あ、そっか。コナンに言われて思い出した。あの頃は、『普通の生活無理だ、でも普通の鎮守府生活なら何とかいける。じゃ隠そう』って短絡的に考えてやっちゃったんだよな。
そっか、そっかなるほど。あれ、ということは?
「俺達の鎮守府、戦艦二、空母一、駆逐艦六隻しかいないことになっているんだよ」
「あ~~~」
不味い、これは絶対に不味い。こんなこと本部の人に知られたら、間違いなく怒られる。
「いや懲戒免職とか」
「クビ? じゃいいや」
「犯罪者として投獄だと思うぞ」
「それは駄目だ。どうにかしないと」
考えろ、考えるんだ俺。こんな時こそ頭脳をフルに使って、何度も切り抜けてきたピンチを超えるように、知恵を絞り出すんだ。
「そう! コナンが!」
ざっと俺が指をさしてポーズを決めると、察していたようにコナンは深々と溜息をついた。
「監査が七草なら、話を合わせてもらえるんだよ。あいつは知っているからな」
「うんうん」
「けどな、残念ながら今回の監査は別人が来るんだよ」
「え? 主計科が来ないの?」
意外だな、てっきり資材の流れだから主計科の領分だと思っていたのに。まさか、公安とか憲兵が動いたとか、いやそれだったらもうすでに鎮守府に到着しているし、もっと厳しい言い方をされただろうから。
「海軍の上の方が来ることになったらしい」
「へぇ~~そうなんだ。わざわざ俺の鎮守府に海軍の上の人がね。それで、誰が来るの?」
海軍の上って確か大将、それとも中将か、まさか大佐ってことはないよね。監査をやるってことは、それなりの権限も持っている人じゃないと、その場その場で対応できなさそうだし。
「コナンのことだから調べたんじゃないの? 誰が来るのさ?」
「高野・五十六元帥だ」
「うわぁお」
まさかの海軍軍令部総長直々の監査。それだけ大事になっているのだろうか。でも高野さんだったら、やりようはあるからな。よし、ちょっとお茶請けといいところの緑茶を出しておこう。
「そういえば、電報を預かっていたな」
「ギルがぁ?」
思い出したように言っているけど、きっとタイミングを計っていたな。だって口元が歪んでいるし、愉悦の切欠になりそうな話だし。
「ああ、我が直々に預かっているぞ。マスター、これがそうだ」
「・・・・・終わった」
渡された紙には、『神はいない』と言われるような内容が書いてあった。
「どれどれ? げ」
コナン、どうしよう、俺達の旅は終わったのかもしれない。
「いやなに壮大な話に持っていこうとしてんだよ。けどな、これは」
電報にはしっかりと、『噂のおまえのところの第一艦隊を見せろ。隠し事はするなよ。楽しみにしている』と書いてある。
第一艦隊って、そんなこと言われても。俺達の鎮守府にいるのは滅茶苦茶な艦娘ばかりで第一艦隊なんてそんな。
栄光ある名前を背負える艦娘なんていないじゃん。
「マスター、それはあまりにも酷いんじゃないか?」
なんだよコナン、半眼になるなよ。
「フ、マスターは時々、自然と愉悦を放ってくるから油断ならん」
ギル、俺はおまえみたいに人の不幸を笑う趣味はないの。
「念仏は唱え終わったか?」
アインズ、不吉なことは止めて。
「あ・・・・遺言は残したの?」
ソープまで悪乗りしないの。
「はい! 部屋の隅でガタガタ震える準備はオッケーですか?」
無邪気な笑顔の時が一番怖いね、エルって。
「なるほど、どういうことかな?」
「そう、どういうこと?」
瞬間、俺の両肩を柔らかい手が掴んだ。
「え、えっと、そのね」
「私達は第一艦隊ではない、と? 面白い冗談だな、提督」
「これはじっくりと話し合うべき問題。私たちこそが、第一艦隊だと教え込む機会を貰う」
痛い、本当に痛い。俺の両肩が砕け散るから、力を緩めてくれ。ごめんなさいって土下座するから。
「
「
あの、それって何か違う意味がないですか?
そして俺は演習場にて星になったのでした。
三時間後の執務室。
「いいお茶を使っているな。誰の趣味だ?」
「それアインズが育てる茶葉です」
「なるほど。ガイコツなのに植物に通じているとは、おまえのところは実に愉快だな」
楽しそうにお茶を楽しむ高野さんと、ちょっと黒こげの俺が向かい合ってソファーに座っている。
元帥って言うと偉い人なんだけど、この人って好々爺みたいなところがあるから、そういった堅苦しいの嫌うんだよね。
ギャンブルが絡むと情け容赦ないほど鬼になるけど。
で、この人も転生者。しかも、三回目っていう希少な存在。
「お茶請けも中々に美味しい。これは?」
「あ、吹雪が作りました」
うん、なんでか吹雪ってそういった家事全般は完璧なんだよね。掃除とかもできるし、服飾もやれる。できないことのほうが少ないのが、うちの吹雪なんですよ。
本人、器用貧乏で強みがないっていうけど、全部が高いレベルでまとまっているから、条件さえそろうと大和、イオナ、エンタープライズに、コンゴウと土佐、信濃の六隻に単艦で勝てるんだよね。
「あの吹雪か。あれの艤装は元々がああなのか?」
「はい、建造した時からああでした」
嘘はついてない。後ろに控えているコナンも同意を示してくれるから、高野さんは唸りながらも納得してくれた。
吹雪の艤装って、そんなに特殊なのかな?
「まあ、いい。貴様のところの監査だが、来て早々に提督相手の演習を見られて良かった」
「演習が好きな艦娘ばかりなので」
「そうか、そうだな。正直な話、あれらが何者か俺も悩むところだ。艦娘と一口に言っていいのかも、悩んでいる」
え、そんなに違うのかな? 俺って他の鎮守府との演習ってみたことないし、修一のところとも演習しないから、他の艦娘の艤装ってあまり知らないんだよね。
学校で習った? 覚えてないって馬鹿だなぁ。
「確かにあれだけの武装ならば、資材が飛ぶのも頷ける。解った、主計科には俺から話してやろう」
「ありがとうございます」
よっし、やっぱり話せば解ってくれるじゃないか。監査なんて時間の無駄だって。
「しかしな、タダでとは言えん」
やっぱり話し合いで解り合えないんだ。クッソ、対話が肝心なんて修一の嘘つきめ。
「そこで、だ。北方の一件、貴様の鎮守府に任せる。資材はこちらで都合をつけてやるから、北方棲姫の撃破、必ず成し遂げろ」
「解りました」
俺が答える前にコナンが答えやがった。けど、コナンが決めたなら俺は文句ないからさ。責任は俺が取ればいいことだし。どうとればいいか解らないけど。
「よし、ならばとりかかれ。噂の『通りすがりの助っ人集団』の実力、存分に見させてもらうぞ」
「え? あの高野さん、それってなんですか?」
俺の質問に、相手は呆けた顔をした後に、信じられないって顔をしながらコナンに声をかけていた。
「こいつ知らんのか?」
「はい。こいつは知らないんです」
「自分のところの艦娘じゃないのか?」
「提督のところの艦娘ですが、出撃許可証を把握してないので」
「俺は何も聞かなかった」
「自分も何も言いませんでした」
うわ、息がぴったり。で、何の話なんだろう。
「これにて監査を終了する。普通、普通という貴様が一番、普通とはほど遠いな」
「え、俺くらいに普通で平凡な奴はいないでしょう?」
うん、これは自信を持って言えるから。
胸を張って語ると、高野さんはすっごい深いため息をついて帰って行った。
なんだったんだろう?
「灯台もと暗しって、別の意味のはずなんだけどな」
「なんだよ、コナン」
「べぇつに。さてと、やるぞ、マスター」
何をさと、顔を向けると、すっごいキラキラした笑顔のコナンがいて。
「久しぶりに資材を気にしない、全力出撃だ」
「あ、うん、そっか」
いやそれっていいのかな? うちの鎮守府の艦娘が総出撃したら、軍令部の備蓄が飛ぶんじゃ。
「いいっていって」
偉く上機嫌なコナンに連れられるように、俺は執務室を後にした。
鎮守府が揺れたのを、俺はよく覚えている。
「軍令部持ちだ。全員、気合を入れて完全装備で行くぞ」
返答はなかったけど、全員の目線がギラギラしていて少し怖い。
「提督、号令」
「あ、はい。じゃ、皆、ちょっと北方海域にお出かけしてきてね」
「了解しました!!」
うわぁ~~凄い声。本当にこれ大丈夫かな?
あ、そういえば、監査が終わったんだ。後は海域を攻めてくれれば、高野さんへの言い訳も立つか。
危なくなったら戻ってくるだろうし、引き際を間違える子はいないから、安心して執務室に。
「提督、蹂躙してきたぞ」
僅か一時間後、とても綺麗な笑顔のエンタープライズの報告に、俺は『え、何が』と返すしかなかった。
ついでに、軍令部にて軍医が走りまわって、誰かが胃潰瘍になったとかって話を聞いたけど、誰なんだろう?
基本的に提督視点のため、艦娘の日常的な姿は見えても、戦闘シーンは全カット。全カットで考えなくていい、素晴らしい。
監査はということで終わりました。全員で迎え撃ったのは何か、もちろん北方海域ですので。
監査に来た相手を出迎えていたら、いつの間にか全力出撃になって問題解決。
的な話でござそうろう。