艦これの世界で名探偵と英雄王に挟まれながら、艦娘っぽい娘達と頑張ってます。『完結』 作:サルスベリ
知らないことを知らないまま放っておくと痛い目を見るらしい。
まだあったことはないし、知らないままって社会人にとって致命的。
学生時代は忙しいとか思っていたけど、社会人になってもっと勉強することになるなんて思わなかった。
生きることって毎日が勉強、でもそんなの関係ないって顔して学ぶことをしなかったのがこの作品の主人公。
怖い目にあったかな、的な話です。
艦娘っていろんな艦種があるんだぜ。駆逐艦、巡洋艦、戦艦、空母、潜水艦等など。
うわぁ~~たくさんいるなぁ、と。
あれ、でもうちの艦娘って分類できたっけ?
どうも田中・一郎でございます。
実はね、困っていてね。え? 資材の残量? 違う違う、そんなのはね、『ほぼ恒久的に困っている』から今更だぜ。
ううう、泣きたくなってきた。
でね、困ったことって言うのはね。
「はぁ? 戦艦も艦載機を扱えるって? おまえさ、学校で何を習ったんだよ」
絶賛、修一に怒られています。困ったな、なんでこんなに呆れた顔で言われているんだろ。普通のことじゃないか、空母だって主砲を振り回すことはあるし、戦艦だって艦載機くらい使うじゃないの。
「馬鹿とは思っていたけど、こんなに馬鹿だとはな。いいか、戦艦は主砲を詰めるけど、空母は積めないんだよ。反対に空母は艦載機を搭載できるけど、戦艦はできない。だから、艦隊編成で悩むんだろ?」
「え? 艦隊編成って悩むの?」
「悩むだろ?」
修一が当たり前だって言うんだけど、俺は悩んだことはない。駆逐艦とか空母とか潜水艦とか、そんな艦種があるのは知っているけど、艦隊の編成で相手がどうでるとか戦術がどうとか考えて組んだことはない。
あ、そっか。
「ごめん、修一」
「解ればいいんだよ。おまえだって提督なんだから」
「俺、やったことないや。全部コナンがやってるから」
「・・・・・・」
「それにうちのエンタープライズが主砲をよく使うから、俺が間違えて覚えてたんだって思ったんだけど。違うの?」
あれ、修一が真っ白に燃え尽きたようにイスに座っているんだけど。
「は、はははは、おまえんところはそうだった。何を忘れてたんだろ」
「いやいきなり何の話? ところで修一さ」
まあいいや、本題に入ろう。
「なんだ? 今度はなんだ? イオナの艦種に疑問か? それとも大和が何か特殊装備でも持ち出したか?」
「いやそっちじゃなくてさ。吹雪の艤装について高野さんが、疑問を言っていたんだけど」
「吹雪? いや、俺はそっちの吹雪については知らないが、艤装がどうしたんだ?」
あれ、そうかな? 確かに修一の口から吹雪の名が出たことはない、かな。大和たちのことは言ってくるけど、吹雪はないかな。
「駆逐艦って魚雷はあるよね?」
「そりゃ駆逐艦だからな」
「主砲も持っている感じ?」
「軍艦だからな。空母以外なら主砲くらいあるだろ?」
「拳の一撃で港を砕くよね」
「はぁ?」
「剣を片手に敵艦隊を細切れにしたりとかできるよね?」
「待て、おまえは何の話をしているんだ?」
なにって駆逐艦吹雪の話だよ。どうしたのさ、修一?
「・・・・・・戦闘データ、映像であるだろ?」
「俺は見たことないけど、コナンが持っているんじゃないかな?」
「そうか。はぁ、大和だけだと思っていた過去の俺を、今すぐに殴りたい気分だぜ」
自虐趣味があったなんて、知らなかったよ。修一、自分を殴るってマゾに目覚めたの?
「いいから持ってこい」
通信でコナンを呼び出して。で、修一に映像データを見てもらった後、彼は出会ってから初めてってくらいに落ち込んでいた。
「そりゃ、資材くらい吹き飛ぶよな」
「解ってくれてありがとう。で、どうして修一は今日ここに来たのさ?」
「高野総長が倒れたから、変わりに監査結果を持って来たんだよ」
へぇ~~高野さんが倒れたのか。どうしたんだろう、何があったのかな?
「原因が一番、解らないって顔してんだからな」
なんでそこで俺を見るのさ。
いきなりだが、皆さんは土佐と信濃についての知識はあるだろうか。
土佐って加賀型戦艦の二番艦の? いやそれは違う。
信濃って、大和型戦艦三番艦で装甲空母の? 残念、俺が知っている艦娘じゃないな、それも。
俺が言っている土佐と信濃って、うちの鎮守府にいる艦娘の二人だよ。
うん、装甲された飛行甲板二つに、五十二センチ砲三連装主砲が十四基、対空火器多数、速射砲多数、対潜魚雷まで装備しているすっごい船。
土佐型超超超弩級『戦艦空母』一番艦の土佐と、二番艦の信濃のことだよ。
帰り際、修一が『装甲空母のだよな』って信濃のことを言って来たから、『え、戦艦空母じゃないの』って返したら、吹雪の時と同じように映像を見て、叫んで帰って行った。
なんだよ、そりゃ戦艦空母なんてどっちつかずな艤装なんだろうけど、二人は俺にとっては癒しなんだぞ。資材は見た目相応、予想外に大量に使うことはなく静かに穏やかに歩く姿なんて、もうヤマトナデシコみたいじゃないか。
素晴らしい、何より資材がぶっ飛んだように使うことなく、一万以下に抑え込めるのが、とても素晴らしい。
二人が出撃していったら、一万ほど用意すればそれ以上にならないから、お腹が痛くなることはない。
とても素晴らしい二人なんだぞ。
「どうもです!」
元気一杯の土佐は、茶髪を揺らして片手を真っ直ぐに上げてくる。
「ありがとうございます」
妹の信濃も同じ茶髪をポニーテールにして、穏やかに一礼してくる。
うん、素晴らしい姉妹だ。
でも修一、二人の名前を間違えていたな。なんだよ、『けいおん』って。平沢なんて名前じゃないぞ、きちんと呼んでやれよ。
「というわけで! ちょっと遊びに行ってました!」
「お姉ちゃんがすみません」
「いいっていいって。二人がたまに我儘いうくらい、何とかするから」
「さすが提督です!」
うん、土佐は元気一杯だな。作戦中とか静かなくらいで、同じ人物に見えない時があるからな。
元気が有り余っている様子に、たまには出撃させてあげないと可哀そうかな。
「は、はははは、バーロ」
「なんだよ、コナン、どうしたんだ?」
なんだろ? 何時も二人が出た時は、『まあ、仕方ないか』って言ってくれるのに、今日は燃え尽きたような顔しているな。
「おまえら手加減してたのか?」
手加減、え、なに、どういうこと? まさか?!
素早くコナンの手元の紙を引っ手繰って、読み上げた俺は視界が揺れたような気がした。
「う、嘘だ。二人だけだったんだ。二人だけだったんだぞ!」
「現実を受け止めろ、マスター! こいつらの通常装備での資材消費量がこれだったんだよ!」
「そんなことない! 前のときだって二人の資材消費量はもっと少なかったはずだ! 五千も行かなかったんだぞ! しかも二人で!」
必死に否定したくて首を振る俺の前で、コナンは小さくため息をついて指をさしていった。
「犯人は・・・・」
「ああ」
「貴方だ。英雄王」
なんだと!? 振り返った俺に、ギルはとても清々しい笑顔で口を開く。
「ようやくだ。長かったぞ、マスター。この日が来るのをずっと待っていた」
「ぎ、ギル? 嘘だよな、おまえがそんな長い間、こんなに時間をかけてそんなことを仕掛けるなんてこと、しないよな?」
違う、間違っている。世界はこんなはずじゃない、こんなことがあっていいはずがない。あのギルが、暗躍やこっそりを嫌うギルが、こんなチマチマした悪戯を行うなんて。
「フ、マスター。予想と違う顔だ、しかしいいぞ。実にイイ!」
「おまえ、まさか本当に?」
「ああ、そうだ。この日のために、土佐と信濃の資材量、我が出撃の度に水増ししていた」
にやりと笑うギルに、俺はがっくりと膝をついた。
「フハハハハハハハハ! 堪えた必死に隠し通した。我の愉悦はここまで進化したのだ! さあ、マスター! 存分に足掻くがいい!」
「ぎ、ギルガメッシュぅ」
「いいぞ、実にいいぞ! そうだ、マスター」
高笑いが何処までも続く中、俺はゆっくりと立ち上がり、捨てかけた報告書に目を通す。
土佐と信濃の戦闘によって消費した資材量、二万。しかも、片方だけでこの数字だ。二人を合わせた数字を見て、俺はゆっくりと腹を抑えた。
「コナン、正直の答えてくれ。俺の鎮守府でまともな艦娘って何人だ?」
確かめよう。今は最悪の気分だ、もう立っていられないくらいに、体調が落ち込んでいる。しかしだ、ここで確かめなかったら、俺は間違いなく後悔する。
今まで勉強なんて嫌いだからと顔を背けていたツケが、ここになって俺の首を絞めることになった。なら、取り戻すために勉学に励むことにしよう。そうだ、今までの自分を脱却するために、今まで以上に普通の生活を手に入れるために、ここから変わってやる。
だからまずは、自分の鎮守府の艦娘達のことを知ろう。
「コナン!」
答えはない、どうしたと振り返った先にいた彼の顔を、俺は死ぬまで忘れなかった。
時に顔は口ほどに物を言う。コナンの顔を見た俺は悟った。
俺の鎮守府まともな艦娘はいない。
そうだったのかぁ。
意識を取り戻した時、執務室から見える太陽は、すでに夕日となって水平線に隠れようとしていた。
「ほらよ、これが艦娘のデータだ」
コナンが持ってきてくれたのは、海軍が提督に配布しているという、艦娘のデータだ。建造に使った資材が、どれくらいならばこの子が建造できる。確率的に百はないらしいが、十パーセント前後で狙った艦娘が建造できるなら、どうしても欲しいと考える提督ならばやるだろう。
俺はやったことはないが。
「・・・・そうか」
なるほどな。これは予想外だった。
「って冷静になれるか!? なんだよ吹雪のこの艤装は?! 吹雪自身しかないのかよ!?」
「そうだよ! 今までなんで気づかないんだよ、この馬鹿マスター!」
「自律兵器どこいった?! 修一が『ファンネルかファミリアか』なんて言っていたモータボートみたいな自立型は何処に分類されている?!」
「ないんだよ! ないの!」
嘘だ、信じられるか。吹雪は完全装備だと、あれを八つも従えて海域に入っていくじゃないか。資材量だって滅茶苦茶、使うんだぞ。吹雪が完全装備で言ったら、覚悟を決めないといけないくらいに使うんだぞ。
あれがないってどうしてだよ?!
「じゃ、じゃあイオナって潜水艦なのか? 戦艦じゃないのか?!」
「そう言うことだろ」
「信濃が大和型ってなんだよ? 土佐が未完成ってなんだよ?」
あり得ない。普通、軍艦として建造完了してない船は、艦娘として建造できないんじゃなかったのか。
「電ってプラズマ兵装を使わないのか?!」
「みてぇだな」
「ジャベリンって『グングニール』や『ブリュナーク』を使わないのか?!」
「乗ってないから、使わないんだろ。そもそも艦娘の『種族』が違うみてぇだな」
「ユニコーンって航空機しか艦載機ないのか?」
「そうらしいな」
「エンタープライズって艦載機しかないのか、主砲とか爆雷とか魚雷とかビーム兵器とか使わないのか?」
「ああ」
し、信じられない。じゃあ、なんであいつらは使っているんだ。時々、『試し打ちだ』って空間を歪ませて帰ってくるのに。
どうして、なんで、普通の艦娘じゃないってどういうことなんだ。
まさか、敵側とか。いいや、あんなに素直で優しい子たちが、敵の深海棲艦側だなんて、そんなことはない。
なら、どういうことだ。
「う~~~~」
考えろ、考えるんだ、田中・一郎。彼女達はどんな存在で、どのような武装を使うのか、見極めるんだ。
俺は改めて全員にデータの目を通し、過去の戦闘データを閲覧しながら、必死に頭を動かして。
そして、ついに、熱を出して寝込んだのでした。
「予想通りだな、ホント」
「うるせぇ、コナン」
呆れた顔の彼に見送られ、妖精たちに『わー』って担ぎあげられて、俺は執務室に向かったのでした。
すっきり体の疲れがとれました。いや~~一日しか入院してなかったのに、体調は万全ですよ。
「よかったな、マスター。じゃ昨日の続きをやるか?」
「昨日? 何してたっけ?」
あれ、コナンが唖然として固まった。どうしたんだよ、おまえそんなに意外そうな顔して止まるなよ。
「覚えてないのかよ?!」
「何が? さあって今日も執務しますか」
よっし頑張ろう。
「は、はははは、勘弁してくれ」
どうしたんだ、コナン?
主人公、ようやく自分の艦娘が普通じゃないと気づく。で、色々と考えて知恵熱出して倒れる。
振り出しに戻るって話でした。
知らないから知らないままではなく、知ろうと頑張って倒れて振り出しに戻るってあるよね。
的な話です。