艦これの世界で名探偵と英雄王に挟まれながら、艦娘っぽい娘達と頑張ってます。『完結』 作:サルスベリ
色々とあった鎮守府ですが、そろそろゴールが見えてきたかな。
徐々にむしばまれる主人公の胃。精神的防壁のために記憶を失うまでした彼のストレスの果てはいかに。
昇進って、実はストレスの塊だって知っていましたか。
的な話です。
こんにちは、あるいはこんばんは?
田中・一郎でございます。季節は巡るのが速いものですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
暑かったり寒かったりしますが、元気ですか?
私はいたって元気です。
「おい、マスター」
最近は職務にも慣れてきたおかげか、こうして暇な時間が増えているので、のんびりと縁側に座ってお茶でも飲みたいなぁ等と。
「だからマスター」
「なんだよ、コナン? 俺は今、平凡な鎮守府の提督として執務をだな」
「いや、軍令部から呼び出しが来てるんだよ」
「はぁ?」
なんだろ、最近は大人しくしているから呼び出される理由なんてないはずなんだけどな。
あ、あったわ。俺、最近、高野総長を撃沈していた。まずいな、それで呼び出しか、俺一人でいいのか。
「よっし、とりあえずだ。大和に完全装備してついて来てもらおう」
「何をしようとしてんだよ、お前?」
どうしたんだ、コナン。当たり前じゃないか、きっとこれは軍令部から『てめぇ、俺達の親分になにしてくれてんだ、顔出せや』に決まっている。
「何考えているか解るけど、突っ込まないからな」
「ええ~~コナンのケチ」
「ケチでいいからとっとと行け」
ちぇ、最近のコナンは冷たいな。まあいいか。
ということで軍令部やってきました、田中・一郎です。
「おまえ、今後は軍令部直轄な」
「え?」
来て早々に高野総長からありがたい辞令をいただきまして候。
「あ、コナン、うちの鎮守府が軍令部直轄になったよ」
「へ?」
お、珍しい、コナンが間抜けな顔している。これ写真にとってキンジに売りつけたら、いくらくらいになるだろうな。
「だから」
「いやなにを言ったか解るから大丈夫だ。直轄? どうしてそうなったんだ?」
「さあ?」
詳しい話を俺が聞いているわけないじゃないか。まったくコナンは抜けているなぁ。
「おまえ、本気でいつかどうにかなるからな」
「はッはッは、褒めるなよ」
「褒めてねぇよ。いいから詳しい話を聞いてこい」
まったくコナンは短気になって本当にもう。いいじゃん、直轄になったならなったで。俺達は何処にいても、俺達らしい生活を送ればいいだけだし。
できれば平凡に過ごしたい。最近、隣に誰か寝ていると殺気を感じるから、もっと平和的な生活を。
具体的にはなんか身の危険を感じる時があるんですけど、何でだろうね。もう寝ているのに気が休まらないって、命の危機じゃないかな。
「安心しろ、マスター。そうなると思って手をうっておいた」
「さすが名探偵。それで?」
「ああ、『淑女同盟』だ」
ふむふむなるほど。それはいいアイディアだ。
「手を出すなら全員一度にと決めてある」
「ん?」
あれぇ~おかしいな、なんだかそれだと俺が追い込まれませんかね? まさか、そんなバカな話はないよね。まさかまさかですよね、名探偵。あのコナンが穴を残して話を終わらせるなんてこと。
俺はそこで見てしまった、コナンがニヤリと笑ったのを。
貴様?!
「俺、最近さ、愉悦部に入ったんだ」
「のぉぉぉぉぉ!!!」
「ふふふふふ、苦しいか、辛いか、マスター」
そんなバカな?! まさかの最終防壁が寝返り、どうしてそんなことになった。どういうことだ。
「クククク、いい顔をするではないか、マスターよ」
「出たなギルガメッシュ!」
何処だって、何でそんなところから。本棚が動いて開いた場所に、黄金のイスに座ったギルガメッシュが、ワイングラス片手に笑っていた。
「なんでそんなところに隠し部屋が?」
「フ、マスターの道化っぷりを見るために、この鎮守府には四十八の隠し部屋と隠し通路がある」
「何時の間に?!」
クッソ、本当に油断も隙もないな、この馬鹿王。昔の鋭利な刃物みたいなギルも厄介だけど、最近の『笑いのためなら全力疾走』ってギルも厄介だ。
どうにかして昔に戻し・・・・たら俺は殺されるな、うん。折角の信頼関係を壊してまで、俺の命を危険にさらすことはない。そうだ、今のままがいい。今のまま。愉悦のためにストレスを抱える今のほうがいいのだろう。
俺は思わず血の涙を流したのでした。
「ふはははははは! コナン、見たか? 道化が泣いて喜んでいるぞ」
「ああ! なんだか解った気がするぜ、ギル!」
「そうであろうそうであろう! これこそが愉悦! 他人の不幸は蜜の味!」
「生かさず殺さず楽しむって言うんだな?!」
「無論よ!」
なんか二人が高笑いしているけど、俺はもう崩れ落ちそうだよ。なんかもうゴールしてもいいかなって気がしてきた。
「ああ、オケアヌスが俺を呼んでいる」
俺、あそこについたら海辺で釣りして暮すんだ。
「ナチュラル・ハイって怖いな」
「うん、御帰りコナン」
「ただいま、マスター。で、軍令部の話ってなんだよ?」
「あ、うん、電報が入ってたから読むよ」
えっと、とりあえず、正気に戻ったコナンに読んであげようとして、最初の一文から俺は思わず電報を握り締めてしまった。
「おい、マスター。何が書いてあったんだ?」
「正しい所属艦娘を教えろってさ」
「正しいって。そうか、そうだよな」
ああ、ついにこの日が来たか。グッバイ、俺の平凡な生活。もう元には戻れないあの日々が、やけに懐かしい。
大和から聞いた沖田艦長が地球に戻ってきた時も、こんな気持ちだったのだろうか。
「謝れ、お前今すぐに沖田艦長に謝れ」
「ごめんなさい」
「よっし、じゃ所属艦娘の一覧表は俺のほうで軍令部に送っておくからな」
「頼むよ、コナン。俺じゃ解らないし」
「・・・・・・・いやその時点でおかしいって気づいてくれ。頼むから」
何でだよ。俺は全部を把握してないんだから、把握しているコナンがやればいいじゃないか。俺の仕事は書類にハンコかサインをすること。コナンは鎮守府の運営だろ?
「誰かー! 誰かこのアホに提督の仕事ってやつを教えてやって!」
「失礼な、これでも提督の学校を出てるんだぞ」
「なんでそれで今の自分を疑問に思わない!」
「はぁ?」
何言ってんだか、こいつは。
「提督! 僕はついに目覚めました!」
「いきなり入ってきて何を言っているのさ、エル? っていうか、なんでドレス姿?」
「世の中はまさに! 男の娘の時代です!」
「はい?」
いや待った、何でそうなる。どういった理屈でそこに辿り着いたのか、小一時間ほど問い詰めたい。こんこんと説教してやりたいけれど、今のエルと一対一なんて俺の何かが消えてしまう気がする。
サラサラの銀髪に、憂いを秘めたような青色の瞳。まさに美人、百人いれば百人が振り返るような子が、純白のドレスを着て目の前で踊っている。
「うわぁ~~さすが、元々が女に見てるだけはあるな」
「はい! 元気に元気よく女の子やってきました!」
呆れるコナンにも元気に女の子って返事するエル。どうした、本当に何があったのこの子。前は『僕は男です、女の子じゃありません』って言っていたのに。
「ついでに周りを散歩してきました」
ん? え、その格好で?
「ナンパもされてしまいまして。その時にですね」
あ、嫌な予感がしてきた。
「断る理由に提督の名前を言ってきました!」
「はぁ?! 何してんのおまえ!」
まさかのエルネスティが精神攻撃! 俺の胃にクリティカル・ダメージ! 待ってどうしてそんなことしたの?! ただでさえ近隣からは『怪しい鎮守府と提督』って言われているのに!
「大丈夫です、無理やりとは言っていません」
「いやそれの何処に安心する要素が?」
「身も心もささげた相手ですとは言ってきました」
「お前は今日は何があってどうした?!」
思わず叫んだ俺は悪くない。普段のエルだったら、こんなこと言うはずがないのに、どうしてそんなことをしてきたのか。
「・・・・・最近、資材をくれないので」
「は? いやだっておまえは勝手に持っていくだろ? なんで今更、俺に許可を求めたのさ?」
「資材倉庫が空ですから」
え? 待って、そんなことないはずだよな。だって、この間にジャベリン達がすっごい張り切って二十四時間がんばって、集めに集めてきてくれた資材が一万はあったはずだよな。
「な、なあ、コナン?」
「あ、ああ。本当になかったのか?」
「ありませんでした。だから僕もデスザウラーにバスター・ランチャーとベクターキャノンが搭載できずに、欲求不満なんです」
「おまえ何やろうとしてんだよ!?」
おお、コナン、すっごい突っ込みと怒鳴り声だな。え、そんなに不味いもんなの、それって。
「最大出力で空間が歪ませられます」
「・・・・・・・」
俺はもう、この子たちの世話が嫌になりましたよ、本当に。
まったく、あいつは。
「高野総長、送ってきましたか?」
「キンジか? 読むか?」
あの馬鹿の田中がやっと送ってきた所属艦娘一覧を、キンジへと手渡す。本当にあいつは、軍務をなんだと思っているのか。
「冗談でしょう、これ?」
「纏めたのはあのコナンだ。貴様は疑うのか?」
「いえ、疑いません」
ならばその通りなのだろう。
田中・一郎の鎮守府に所属している艦娘は、どれもが癖者ぞろいだった。本当に艦娘なのかと疑問を感じるくらいに、どいつもこいつも艦種を無視した装備をしている。
とりあえず、だ。一応の分類としては、万能戦艦『大和』、強襲空母のようなエンタープライズ、戦艦空母の土佐と信濃、蹂躙戦艦ともいえるイオナとコンゴウ、これが噂の第一艦隊。
その他に、駆逐艦の皮を被った全艦種の性能を持った吹雪。光学兵装だけを搭載した電、槍の概念をギュッとつめたようなジャベリン、極大艦載機能力の軽空母らしいユニコーン。高速航空巡洋艦のエターナルと、強襲揚陸空母のフロンティア、潜水戦艦だが外側がイムヤ、水中格闘潜水艦なのだが外側がゴーヤの潜水艦娘。
後はやたらと固い防御を持つ如月と、魚雷の種類と数が明らかにおかしい夕立。音速突破可能な天津風。死神のような鎌を扱い姿を消せる睦月。動く弾薬庫のように攻撃をばらまく愛宕。二十メートルを超える人型の艤装を扱う榛名。
「ちょ、総長、これって」
「こっちがそれを無理やり艦種に入れたものらしい」
田中・一郎鎮守府の所属艦娘。戦艦『大和、イオナ、コンゴウ、土佐、信濃、榛名』の計六隻。空母『エンタープライズ、ユニコーン、フロンティア』の計三隻。巡洋艦『エターナル、愛宕』の計二隻。駆逐艦『吹雪、電、ジャベリン、如月、夕立、天津風、睦月』の計七隻。潜水艦『イムヤ、ゴーヤ』の系二隻。
合計二十隻とのことだが、これをそのまま見るのは危険すぎるな。
「資材の量が半端じゃないのが解りましたよ」
「これだけの艤装を扱えば、あの量の資材が一気になくなるのも頷ける。まったく、田中は何処まで隠し通すつもりだったんだろうな」
頭が痛くなる。もっと早くに打ち明けてくれれば、対処も容易かっただろうに。
「あいつは平凡な生活が送りたい一心だったんでしょうね」
「そこだ。本当にあいつは平凡な生活がしたかったのか?」
俺はおおいに疑問だ。こんだけのことをやらかして、平凡などと言っているのはおかしいだろうが。
「そこがあいつのへんてこなところなんですよ。これでもまだあいつは平凡な人生を送れるって考えているんですから」
「まったく、何処までもアホだな」
「本当ですよ」
これは、本当に頭が痛くなってきたぞ。これだけの戦力を動かせれば、深海棲艦など蹂躙出来る。実際に北方は即陥落させてきた。
「軍令部直轄にしておいて、良かったと安堵するべきか。早計だったと嘆くべきか」
「まあ、あいつは『ラッキー』程度にしか考えてませんからね」
それはそれで問題だろうが。
田中・一郎です、このたび、軍令部直轄になったのです。栄転です、昇進です、階級が上がったのです。
でも、資材の消費まで上がらなくてもいいじゃないか。
「あ、ごめんなさい、提督」
「あ、うん、そうだね、榛名。何してんの?」
「はい!! 見てください! もっと大きくなりました!」
嬉しそうに見下ろしてくる彼女は、巨大な人型の艤装を纏っています。とても大きい赤い機体です。
うん、だからね、榛名を迂闊に出せないんだよ、君は解っているのかな?
「あれって本来なら百メートルあるらしいぜ」
「へぇ~~そうなんだ」
イデオンって名前らしいけど、そんなの俺は知りたくなかったよ。
「資材が飛んだな」
「え? 榛名は一万しか使ってませんよ?」
「それで全部だよ」
「倉庫の半分しか使ってませんよ」
あれ、一万しかなかったんじゃなかったの、え、コナン?
「・・・・あれれ~~おかしいなぁ」
「おい、てめぇ、何したよ? 正直に話せば許してやる」
「うっせぇな。別にしておいたんだよ。非常用で少しずつ溜めていただけだよ」
「さすがコナン。で、その非常用は?」
「ああ、あっちで」
コナンが指さす先に目を向けると、すっごい嬉しそうな顔した夕立と、六角形の防壁を展開している如月がいて、さらに天津風が飛びまわっていた。
「あいつらが改になるための資材で消えた」
「え? 俺、承認してない」
「俺もしてない。あいつらが勝手にやったの」
「・・・・・・ごめんコナン、俺は何も言えない」
元々、彼女たちが頑張って集めた資材だからなぁ。
「今回ばかりは、俺も言えないな」
フッと笑うコナンの背中に、何か悲しものを見た気がした。
気の迷いだったのかもなぁ。
というわけで昇進しました。海軍のトップの直轄、まさにエリート中のエリート。彼の鎮守府が昇進したため、周りは妬みを目線を向けてきて、倍率ドンで胃へのダメージ増大。
ついでに、彼の鎮守府の内情を知っている人が増えて、その人達の胃にもクリティカル・ダメージが毎回ドン。
さあ、生贄が揃ってきましたよ。
的な話でした。