リアルの方がレポートやらゼミの面接やらで忙しくて執筆の時間取れなかったのと、戦闘シーンが難しくてこんなに時間がかかってしまいました…
大変申し訳ございませんでした。
とりあえず、本編の方どうぞ。
ベルディアがダクネスに繰り出した剣戟はすぐに2桁を超えた。これは、身の丈ほどある大剣を軽々しく扱うベルディアの実力の高さを改めて表していると言ってもいいだろう。しかも、その一撃はいくら駆け出しの街の冒険者と言えど、鎧を身につけた戦士達をその鎧ごと斬り捨てるほど凄まじい。
一方で、そんな攻撃を受け続けて尚、膝を地に付けず立ち続けるダクネスの防御力も凄まじいの一言に限る。無論、鎧の性能もあるだろうがこの世界では、装備している武器や防具にもスキルの効果が反映される。つまり、ダクネスがどれほど防御関連に特化しているのかがよく分かるのだ。
「なぜ倒れん…!貴様、どういうスキルの割り振りをしているのだ…!」
ベルディアはそう愚痴りながらも剣を振るう。それを受けたダクネスが少し後ずさる。
「くっ…」
「ダクネス!大丈夫なのか!?」
「何のこれしき…!それよりもカズマ!このベルディアとやらなかなかやり手だぞ!私を一気に全裸に剥くのではなく、少しずつ衣服を剥ぎ取り全裸よりも扇情的な姿にし、男どもの視線を…!」
「……はっ?」
心配するカズマに帰ってきたのは、ダクネスの性癖全開の言葉。これには、流石のベルディアも動揺し、カズマはシリアスをシリアルに変える仲間の聖騎士に呆れてしまった。
その間にも、ベルディアはすぐに気を取り直して再び剣を構える。
「あっ!魔法使いのみなさーん!」
カズマが後衛の魔法使い達に合図を出す。その合図でベルディアに向けて一斉に魔法を放とうした瞬間。
「貴様ら、全員一週間後に死ねい!」
ベルディアは魔法使い達に向かって死の宣告を放った。それに動揺し、詠唱を中断してしまう魔法使い達。ベルディアは、それを確認するとダクネスに向き直った。
「さて、次は本気でいかせてもらおうか!」
ベルディアはそう言い、頭を上へ放り投げて大剣を両手で持った。
ダクネスはそれを見ると、自信が持つ大剣を盾にするように腹の部分を正面に向けて構える。
「ほう!潔し!これならばどうだ!?」
ベルディアは大剣でカバーしきれていない部分を斬りつけていく。無論、ダクネスの鎧もベルディアの攻撃を受けてどんどん削られていく。
そして、何度目かの攻撃でカズマの頬に生暖かい物がかかった。
「おいダクネス!手傷を負わされてるのか!もういい!下がるんだ!」
頬にかかったものが血だと分かったカズマが下がるようにダクネスに言うが、ダクネスは首を横に振る。
「クルセイダーは、誰かを背に庇っている状況では下がれない!こればっかりは絶対に!私の趣味とかは関係なく!」
「お前…!」
「そ、それにだ!さっきも言ったとおりこのデュラハンはやり手だぞ!鎧を剥ぐだけならまだしも、一撃で決めようとはしてこない!ジワジワとなぶっているぞ!ああ!デュラハンに嬲られる女性聖騎士とか、絶好のシチュエーションだ!!」
「えっ!?」
ダクネスの言葉に一瞬手を止め、軽く引くベルディアにカズマは思わずツッコミを入れた。
「時と場合くらい考えろ!この筋金入りのドMクルセイダーが!それと敵とはいえあんまり人を困らすんじゃねぇ!」
「それには僕も同感だよ」
突如、カズマの後ろから2つの光弾と1つの光刃がベルディアに向けて放たれた。
「む!?」
ベルディアは一発目の光弾を躱し、その方向に飛んできていた2発目の光弾と光刃を剣で防ぎつつも、それに続く形で接近してきていた何者かに剣を振り下ろす。その人物はそれを翡翠色に輝く剣で受け流すと、その勢いを利用して体を横にずらし、ベルディアと距離を取ってダクネスの前に立った。
翡翠色に輝く剣に先程の光弾を放てる人物はこの街には一人しかいない。
カズマはその人物に向けて言葉を放った。
「ホムラ、お前おせぇんだよ!何やってたんだよ!」
「遅くなったのは本当にごめん。わけはこいつ片付けてから話すよ。ダクネスは一旦下がってて」
その人物──ホムラは謝罪をしつつもダクネスに下がるように言う。
「む、だがな…」
「正直言って、あいつを倒すには結構な大技を使わないダメそうでさ。それを放つためにもダクネスに時間稼いで欲しいんだけど、念の為傷を癒してからの方が気が楽だから頼むよ」
「むう…そう言うなら一旦下がるが…」
「ん、来て欲しい時は頼むからよろしくね」
ダクネスはホムラの言い分に不満ながらも一旦下がる。
ダクネスが下がったのを確認したホムラは素直に待っていたベルディアに向き直り話しかける。
「待ってくれるなんて思ったより律儀だね」
「なに、貴様程の手練を不意打ちなんぞで終わらせるのは勿体ないと思ったまでよ」
「魔王軍の幹部の方にそう言って貰えるのは光栄だけど、過大評価じゃないかな?」
ホムラはベルディアの評価に対して肩を竦めながら軽く否定する。
「はっ、魔力を剣に纏わせながら俺の攻撃を捌くということをする奴に対しては妥当な評価だと思うが?」
ベルディアは魔法はあまり得意ではないがそれに関する知識はある。そのため、武器に魔力──ホムラは魔力ではなく霊力だが──を纏わせるというのはかなり緻密な魔力操作と集中力が必要であるというの知っている。そして、それが実戦向きでは無い事も。
そもそも近接戦闘というのは、かなりの集中力を必要とする。それは相手の少しの動きでも見逃せば死に直結するからだ。事実、ベルディア自身もそのせいで死にかけたことがあるからこそそれをよく理解している。そのため、魔力操作に集中なんぞしていれば隙だらけな上にすぐに討たれるのはどんなアホでも分かる事だ。
だが、ホムラは魔力を纏わせながらも自身の攻撃を捌いただけではなく、あの時反撃しようとしていたのだ。これは、ホムラが幼年よりかなりの修練を積んだことを証明しており、ベルディアがホムラを高く評価した理由でもある。
「まあ、せっかく待ってやったんだ。楽しませてくれよ?」
「やれやれ…僕は暇つぶし相手じゃないんだけどなぁ…」
ホムラはそう愚痴りながらも、腰に提げているショートソードを左手で抜いて前に、右手の剣を後ろにした構えをとってベルディアに対して意識を集中させる。
「では、いくぞ!」
ベルディアは頭を上に放り投げると、ホムラに斬りかかった。
****
一撃でも貰ったら死ぬな。
ホムラはベルディアの剣戟を捌きながらそう思った。ホムラの装備はルーンナイトということと彼の戦闘スタイルも相まって前衛職の割には軽装だ。その上、いくら妖怪の血が混じっているとはいえ、生命力は平均以上だが、かなり高いという訳でもない。そのため、一撃でも貰えばホムラの負けは避けられない未来なのは必然だ。
対して、ベルディアは身を鎧で覆われてる上、魔王軍の幹部なだけあってタフであることは容易に想像つく。
現に、ホムラは何度か小さい隙をついて斬り付けているが、ダメージが入っているように見えない。ベルディアもそれを承知で少しの隙程度なら見せても構わないと判断して攻撃をしてくる。
つまり、ホムラはベルディアの猛攻を一発も貰わない上で相手の鎧を貫くほどの攻撃をしなければならないという、前提から不利な戦闘を行なっている。
だが、自分にとって不利な戦いというのはホムラにとって当たり前なのこと。寧ろ、自分が有利な戦いなんて早々ない。それに、有利だから勝てる、不利だから負けるっていうほど簡単ではないのが戦いなのだ。
もし、そうであったならホムラはとっくの昔に死んでいる。
それに、今回のホムラにとって不利な状況というのは、あくまで彼が1人だけで戦う場合の話。この戦いは他の者が参加するなら少しは好転する。
「クリエイトウォーター!」
「ぬ!?」
隙を見つけてカズマが剣を交えているホムラとベルディアの頭上から大量の水をぶちまける。
ホムラはこれを後ろに跳んで避け、ベルディアが慌てて下がったのを確認すると剣に冷気を纏わせた。
「氷龍昇!」
ホムラは地を蹴ってベルディアに接近すると、冷気を纏わせた剣で回転斬りしながら上へ跳んだ。
「そんな攻撃当たらんわ!」
ベルディアはそれを体後ろに逸らして躱し、無防備なホムラに剣を振り下ろそうとして気がついた、自分の足が凍っていることに。
「これは…」
そこでベルディアは自分はまんまと嵌められたと悟った。
早い話、カズマとホムラは連携を取れるようするために前々から使える技の公開と連携技の打ち合わせなどをしていた。
今回のこれも、彼らが考えた連携の1つである。
「足止めとはな!いい考えだがこの程度、すぐに…」
「一瞬だけで十分だ!スティール!」
カズマは魔力をいつもより多く込めたスティールをベルディアに向けて放った。
狙いはベルディアの剣。カズマの高い幸運値なら盗れる可能性は十分あり、成功すれば戦闘がかなり有利な展開になると踏み、採った作戦は──
「ほう…発想はいい。相当自信があったのだろうが、レベル差というやつだ。もう少し、貴様のレベルが高かったら危うかったかもしれんがな」
失敗に終わってしまった。ホムラとカズマは知らなかったがレベル差があってはこのようにスティールは失敗してしまうことがある。
カズマが呆けている間にも、ベルディアは氷を壊し──
「恋符「マスタースパーク」!」
ている最中に、ホムラがミニ八卦銃から放った翡翠色の霊力砲に呑まれた。
*****
「ふう…」
カズマのスティールが効かなかった場合に備えてマスタースパークを放てる準備をしておいて正解だった。ベルディアは僕が放ったマスタースパークで土煙が発生したせいでどうなったかはまだ分からない。
これで少なくともダメージは入っていると思いたいけど…
「今のは結構効いたぞ…」
「嘘だろ…」
煙がはれ、現れたのは鎧が所々焦げ付いたり欠けたりしているものの五体満足(頭はないけど)のベルディアがいた。
カズマはあれを耐えたデュラハンに対して信じられない目線しか向けられなかった。
「あれ、僕が持ってる技の中でも結構威力ある技なんだけど…ちょっと自信なくなるよ」
「いや、魔王様の加護を受けた鎧でなければ危うくかっただろうな…それ程さっきの攻撃はよかった」
「ますますその鎧チートじみてるよね…」
僕はため息を吐きながらもいよいよどうするか考える。マスタースパークの威力は僕が持ってる技の中でも上位に入る部類だ。これより上となると、あることにはあるが放つのに時間がかかる上、周りにも被害が及ぶ可能性もあるため易々と使えない。それに、ベルディアがそんな時間くれるとは思えない。
そうなると、リスクはあるしまだ未完成だけど【あれ】を使わなければ倒せないだろう。
…腹を括るしかない。
僕は覚悟を決めると目を閉じ意識を集中させた。
****
目を閉じたホムラにベルディアはすぐに動き出した。
何をするかは分からないが、中断させるべきだと己の勘が告げている。
「私の仲間には手を出させない!」
そこへ、回復を終えたダクネスがベルディアに向かって体当たりをした。
いきなり横から体当たりされたベルディアそれを喰らいバランスを崩す。
「くっ、この…っ!?」
ベルディアはダクネスを斬ろうとした瞬間、悪寒が背中を走り飛び退こうとして…
「ぬおっ!?」
腹に強烈な衝撃が走り、後ろに吹き飛んだ。
何が起こったのか、目の前に顔を向けるとそこには───
目の色が紅くなり、髪の毛や尻尾の毛の色が黒く変色したホムラが立っていた。
目に見える変化はそれだけだが、彼が纏う雰囲気は普段の柔和な物とは別物で攻撃的で刺々しいものとなっている。
「さて、ベルディア。楽しい
ホムラは口角を上げそう言うとベルディアに斬りかかった。
氷龍昇:初出はロックマンX8。この技は氷属性の回転アッパー斬り。イメージ出来ない人は、某大乱闘ゲームの緑の勇者の上昇する回転斬りに氷属性が付いたと思ってくれればいいかと。
恋符「マスタースパーク」:東方Projectに出てくるキャラクターの霧雨魔理沙のスペルカード。霧雨魔理沙のスペルカードと言ったら?と聞かれたらこれが真っ先に浮かぶくらい彼女の中では代表的なスペルカード。簡単に言うとミニ八卦炉からビームを出す。
ホムラが扱うマスタースパークは練度や霊力量の関係で魔理沙程の火力は出ない。
【あれ】:これに関しては次回ネタバラシ。けど、察しがいい人は元ネタなんなのか気がつくかも…
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