この妖怪の血を引く者に祝福を!   作:ゆっくり妹紅

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大変お待たせしましたァ!
すみません、自分の怠惰が招いたものです…大変申し訳ございません。

それでは、本編どうぞ


厨二病だって魔女がしたい!
第13話


 

「流石に寒いなあ…」

 

どんな子でも寝静まる丑三つ時の中、いつもの格好にマフラーをつけた状態で僕はそう呟いた。

 

今の季節は冬。ベルディアを討伐してからそれなりに月日はたったが僕達のパーティーは未だに借金を返済しきれていない。

冬の間は報酬が高い依頼が多くなるが、それと同時に高難易度の依頼しか出てこなくなる。そのため、駆け出しの冒険者が多いアクセルでは殆どの人達が宿の部屋を借りて過ごしている。

 

一方で、僕らは借金してるためそんなお金が無いせいで馬小屋生活を強いられているのだが…寒すぎて普通の人間では凍死する可能性があるほど馬小屋は寒い。僕は、妖怪の混血、自前の尻尾と霊術で何とかできてるからその可能性はほぼないけどね。

 

とにかく、お金が必要ということで僕は単独で高難易度の依頼をこなすことになった。これはカズマからの提案で、自分たちが居ては僕の足でまといになるからということでこうなった。

そんなことないって色々と食い下がってみたけど、カズマの「馬小屋で凍死とかそんな死に方は嫌だ!」っていう悲痛な叫びに負けてしまい、了承した。

 

一応、カズマ達でもこなせそうな依頼(それでも高難易度に部類しているが)はやらず、その上で僕が単独でも出来そうなものを選んでやっている。

 

今回の依頼は牧場を襲う白狼の群れ討伐。数は事前調査の段階では20匹位とのこと。これならこなせそうだと思い、受けたんだけど…

 

「明らかにそれ以上いるよねぇ…」

 

偵察として出した式神から入る情報ではそれ以上はいて、尚且つ4~5匹ずつ固まって別々に動いている団体が結構ある。

万が一のことを考えて牧場を囲むように結界を張っておいて正解だったようだ。

 

「さて、少しずつ回って倒していきますか」

 

式神から位置を教えて貰いつつ、まずは近場のとこから片付けるために足を動かした。

 

 

****

 

「ふぅ……ある程度は片付けられたかな」

 

時間はかかってしまったものの、最初に確認できた群れは何とか倒し終えた。

けど、疑問もあった。それは先程まで倒していった、殆どの白狼達に言えるのだが連携がかなり上手かったことだ。幻想郷の妖怪でもあれくらいまで連携が取れるようになるには、最低でも中級クラスで尚且つ知能が発達しているものに限る。たまたま今回の白狼の群れが異常なだけだったのだろうか?いや、もしかしたら──

 

「っ!」

 

そう考えていた時、殺気を感じてその場から飛び退く。その直後、先程までいた場所に火球が炸裂し、雪を溶かして茶色く凹んだ地面を出したところから、それなりの威力であることが伺える。

 

「なるほど…これは納得出来るね」

 

火球が飛んできた方向を見ると、先程の疑問が解消された。何故なら、杖を持ち2足歩行をしている白狼がいたからだ。

前に、アクセルの街の図書館で『狼系統の魔物の中にはウェアウルフに突然変異する個体がいる。その個体がいる群れはまるで、軍隊のような動きをするため、目撃した場合は戦ったりなどせずに、すぐにギルドや騎士団に連絡すること』という内容がある本に書かれていた。

先程、考慮に入れていた可能性のひとつであり、いちばん厄介なケースでもあった。そして、さらに最悪なこと氷で作られた槍兵タイプのゴーレムが2体いるというおまけ付き。

 

「これは、ちょっときついかもね…」

 

ミニ八卦銃をしまい、長剣を右手で、短剣を左手でもって、左半身を前に出すように構えた。

 

*****

最初に動いたのはゴーレム達だった。ゴーレム達は手に持っている氷でできた槍をホムラに向かって投げつけた。ホムラはいきなり武器を手放すような行為に驚くも、それを躱しその隙をついて接近する。

 

それに対し、ゴーレムのうち一体がホムラに向かって駆け出し、手に冷気を集めると今度は氷でできた棍棒を作り出し、もう片方はその場で先程投げたのと同じような氷でできた槍を生成した。

 

(なるほど、普通に考えればこれぐらい出来なきゃあんな大胆なこと出来ないよね)

 

ホムラはそう思いつつも、接近したゴーレムが棍棒を振り下ろす前に長剣を左から右へ振り抜いて、棍棒を持っていた腕を斬り飛ばし、無防備になった胴体に短剣を叩き込もうとして──後ろにいたゴーレムが槍を投げたのを視界に入れた瞬間、短剣による攻撃を中断して後方へ飛んで避けた先に、ウェアウルフがファイアーボールを放ったのを確認し、今の体制では避けるのはリスクが高いとホムラは判断すると、短剣を上に投げ左手にミニ八卦銃を出すとファイアーボールに霊力弾を撃ち込み相殺した。

 

(ゴーレムの動き自体は単調だったけど、パワーとスピードはそれなりにあるし、術者と思われるあのウェアウルフが普通に攻撃してきたのを見ると、自律思考型のゴーレムで連携を取れる程度の思考能力はあるわけか)

 

ホムラはミニ八卦銃を霊力を使い腰に付け、上に投げた短剣をキャッチしながらもそう分析し、飛んできた氷の槍を避けると、ゴーレム達へ駆け出し、接近戦を仕掛けようとする。

 

無論、ウェアウルフ達も何もせず黙って見てるということはなく、ウェアウルフは詠唱を始め、ゴーレム達は一方は棍棒と盾、もう一方は槍を生成して、槍を持ってるゴーレムを先頭にホムラへ駆け出した。

ホムラは短剣を鞘にしまうと上へ跳躍し長剣をもっている右手を、そして狙いを後ろの盾を持ったアイスゴーレムに定めると、足から霊力を噴射させ、突撃した。

このやり方は技名こそ言っていないが、彼が故郷にて空を自由に飛べないがために作り出した、空中歩法【飛燕脚】である。

そして、その【飛燕脚】を利用した急降下の勢いをそのまま斬撃として叩き込む剣技。

 

「旋墜斬!」

 

放たれた空中からの斬撃は、ホムラの攻撃を防ごうと構えられた氷の盾を砕くだけに留まらず、そのままアイスゴーレムの胴体を真っ二つにした。

ホムラはそのまま着地すると、すぐにミニ八卦銃を構え、先程から溜めていたチャージショットを放ちアイスゴーレムの頭を消し飛ばした。

もう一体のアイスゴーレムはホムラに槍を突き出すも、ホムラはそれを体を横にずらして避けると、アイスゴーレムの懐に潜り込んで龍炎刃を繰り出し、そのままアイスゴーレムの縦に真っ二つに斬り抜いた。

「っ!」

 

着地したホムラは、反射的に転がるようにその場を離れた。その直後、ホムラがいた所に先が尖った巨大な氷塊が落ちた。

(あんなのまともに食らえば、僕程度の防御力じゃどんなに軽くても大怪我は避けられない程の威力っぽいな…けど、あれ程の氷塊は短時間では作れないはずだ)

 

そう冷静に分析したと同時に、ふと上を見て先程の考えを捨て、ウェアウルフの実力を見誤ったことを認めた。

 

なぜなら、ホムラの上には既に多くの氷塊があったからだ。

ホムラがアイスゴーレムと戦っている間に作り出していたのだろう。それも、ホムラに気取られないようにだ。

ホムラの危機察知能力は天才には及ばずとも、天才の1歩手前レベルほどある。それは彼の師を始めに多くの人が認めている。

そんなホムラの危機察知能力を掻い潜って、この多くの氷塊を作ったのだから、あのウェアウルフの魔法の腕はかなりのものだ。

 

ホムラは実力を見誤ったこと自分に舌打ちしつつも、この状況の打開策をすぐに考える。

 

まず、範囲外まで撤退。成功すれば1番安全ではあるが、ウェアウルフを逃がす可能性が高く、逃がしたら後がキツくなるのは明白なので却下。

次は、龍炎刃で迎撃。これは、可能ではあるが、失敗した時のリスクが高いため却下。

なら、取れる策は────

 

ホムラがそこまで考えた時、氷塊が一斉に落ち始めた。

 

「流石にそんなに考えさせてくれないか!」

ホムラはそう悪態を吐きつつも、1番ベストな行動を取った。

 

***

 

殺った。

ウェアウルフは、落ちてきた氷塊の衝撃で積もっていた雪が吹き荒れる中、そう確信した。

これで、自分はまた上に上がるための力をあの方から授けられる。群れは壊滅に等しいがこれからあの方に仕える予定だったからちょうど良かったのかもしれない。

 

ウェアウルフはそんなことを考えながら、背を向けてあるこうとした瞬間

 

 

「人符「現世斬・双刃」」

 

そんな声が耳に届いたと同時に、ウェアウルフの意識は暗転した。

 

***

 

「ふぅ……」

 

僕は息を吐きつつ、剣に付いた血を払って鞘にしまった。

 

氷塊が落ちてきた時、僕は【滅閃光】という技を繰り出して自分に影響を及ぼす氷塊のみを破壊し、ウェアウルフが油断したのを上空に放った使い魔で見てその油断をついて倒した。

 

上手くいったから良かったけど、壊せなかったら今頃僕はペシャンコになっていたと思うと、いい気はしない。もう少し、鍛錬の時間を増やすべきだろう。そうすれば、ここまで苦戦することもなかったはずだったわけだしね。

 

その後、僕は牧場の主であり依頼主である人に、少し休んでいってくださいと言われ、そのご厚意を有難く頂戴し、朝と昼の境目あたりでその牧場を出た。

 

これが、後にあんなことになるなんて僕は全く思いもしなかったが、過去は変えられない。

 

 

 

そう…

 

「カズ………ま……?」

 

 

 

仲間が殺されたことも

 

 

 

 

 




次回、K氏をリアルゆっくり饅頭にしたあいつ戦

解説コーナー

・飛燕脚:初出はロックマンX4。ゼロのラーニング技で、内容はエアダッシュ。当小説では、足から霊力を射出させてる事で移動を可能としている。ゼロも足からなんか出てるからね!なお、ゲームとは違い、何度でも飛燕脚は使えるのだが、動きが直線的になってしまうのと、消費霊力の関係で連続で使うことはない。

・旋墜斬:初出はロックマンX6。ゼロのラーニング技で、内容としては急降下斬撃。当小説では、飛燕脚で急降下部分を再現している。余談ながら、ホムラは完全に習得するまで地面に頭から何度も突っ込んでおり、その度に引っこ抜かれるということがあった。

・滅閃光:初出はロックマンX5。ゼロのラーニング技で内容としては、周囲に光弾を射出というもの。なお、真・滅閃光という技もある。個人的にはこっちが好き。

・人符「現世斬・双刃」:オリジナル技。元ネタは東方Projectの魂魄妖夢のスペルカード。元の現世斬は東方萃夢想などの格闘ゲームverを参考にしており、内容としては突進斬り。なお、ホムラは居合斬りとしては現世斬、抜刀してる状態では疾風牙と分けている。現世斬・双刃は二刀流で繰り出すこと以外は現世斬と同じ。

最近、アークナイツにハマりました。こっちがつまった時は短編で書く可能性が少なからずあるかも?いや、そんなことしてる暇あったらはよ完結させろって話なんですが

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