この妖怪の血を引く者に祝福を!   作:ゆっくり妹紅

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このファン配信に合わせて投稿しようと思ったら、間に合わず1日遅れ、しかも内容が薄っぺらいという実態…本当に申し訳ない…


※2/28 15:44に修正




第14話

牧場主さんに見送られ、アクセルの街への道を歩いていく。

これで、晴れだったら散歩としては結構良かったんだけも、今の空模様は曇り。気温も低いのもあって散歩には適していない。

 

「カズマたち、今は何やってるんだろうなぁ…」

 

ふと、呟いてしまった内容に苦笑する。

まだ、自分が故郷にいた時は一日の大半は単独行動が基本的だったため、一人でいる時間は長く慣れていた、はずだった。

 

けど、今はカズマ達と一緒に過ごすことが多く、1人だけの時間が逆に少なくなった。

だから、急に1人になると、寂しいと思ってしまうのは、甘えかもしれないけど仕方ないことなのかもしれない。

もしかしたら、これはカズマたちの存在が僕にとってはかなり大きいものになってるのもあるかもしれない。

みんながどう思ってるかは知らないけど、皆も僕と同じだったらいいなと、思ってる最中だった。

 

「っ!?」

 

急に寒気がした。

もちろん、寒くて寒気がした、というのではなく、何かしらの恐怖を感じるような寒気だった。と、同時に念の為に飛ばしていた使い魔の視界にあるものが映った。

 

それを見た瞬間、僕はその場所へ駆け出した。

 

急げ、急げ、急げ。また、間に合わなくなる。

 

そんな思いに急かされながらも足の回転率をさらに上げ、黒化を使用してさらにスピードをあげた。

 

まだか?まだ着かないのか…!

 

そう思いつつも、やっと使い魔越しで見た景色になり、視界を強化した時だった。

 

 

カズマの首が、刀を持った鎧武者に斬られたのを視認したのは。

 

 

「か……ずま……?」

 

雪で真っ白なはずの所を赤い血が染めていく。

 

──死なないで!頼むから、死なないでくれ!

 

僕の頭に、あの事が蘇る。

 

───ほ…む……、あ……た…

 

───喋らないでじっとしてて!絶対に、助けるから!

 

僕は、ぼくは、ボクは、

 

────き……み……が…………だっ……

 

ダイジナヒトヲ……

 

────え……ねえ、目を開けてよ…嘘だよね?僕を驚かしたいんだけだよね?

 

マモレナカッタ……

 

 

 

****

 

 

カズマの首を斬り落とした鎧武者型の精霊──冬将軍は自身に向けられる殺意を感じ、反射的に後ろに飛び下がった。次の瞬間

 

「ガァァァァァァ!」

 

叫び声と共に、何かが先程まで冬将軍が行った場所に剣を突き立てていた。

 

「「「ホムラ!?」」」

 

剣を突き立てた者が自分らのパーティの1人である、ホムラであり、しかも黒化を発動していることを視認したダクネスたちは驚きの声を上げる。

しかし、当のホムラはそれに反応することなく冬将軍に飛びかかる。

 

「な、何が起こってるの!?」

 

「わ、私にも分からん!そもそも、ホムラはどうしたのだ!?」

 

ホムラのいつもと違う様子にアクアとダクネスは困惑する中、ホムラと冬将軍の戦いが始まった。

 

 

 

***

 

「ゼェア!」

 

冬将軍はホムラの突進突きを体を横に逸らしてかわし、すれ違いざまに振るわれた短剣を刀で防ぐ。

ホムラはすぐに冬将軍に向き直り、長剣と短剣をタイミングを微妙にズラしながらも、袈裟斬り、横薙ぎ、斬り上げ、縦切り、とあらゆる角度から斬撃を出していく。

それに対し、冬将軍は下がりながらも防いでいく。

 

一見すると、冬将軍が防戦一方でホムラが押しているように見える戦いだが、実際はホムラが激しく攻勢に出て冬将軍に反撃の隙を与えないようにしているだけだ。

つまり、ホムラはカズマを守れなかった悲しみと自身の不甲斐なさからの怒りで我を失っているものの、本能的に理解しているのだ。──一瞬でも、反撃の隙を与えれば殺される──と。

 

 

「うああああっ!」

 

ホムラは、絶叫しながらも攻撃のスピードを上げていく。しかし、冬将軍はそれらを冷静捌いていき、そしてホムラの連撃の本の一瞬の隙に刀を振るった。

完全に、意識していなかったところからの攻撃にホムラは反射的に距離を取った。そう、攻撃の手を止めて距離を取ってしまった。

 

瞬間、根元から先がない剣を持ったホムラの右腕が宙を舞った。

 

「えっ?」

 

そう言葉が漏れたのは誰だったのか。ダクネスか、アクアか、めぐみんか。またはその3人だったのかは不明だが、少なくともホムラではなかった。何故か?それは

 

「グアアアアァァァァァァァオオアァァ!」

 

冬将軍の目で追うことすら出来なかった、斬撃によって斬られた右腕の断面を抑えながら、絶叫していたからだ。黒化のデメリットである、感覚の鋭敏化でホムラは現在、気絶することすら出来ないほどの激痛に襲われているため、この状態は理解出来る。

 

一方で、冬将軍は内心驚愕していた。先程放った一閃は、ホムラの胴体を縦に斬り裂くつもりで本気で放ったものなのだ。それを、ホムラは本能的に体をズラしながらも、避けきれないであろう右腕を守るために、長剣で防ぐとこまで反応したのだ。最も、いくら霊力で刀身をカバーしていたとはいえ、精霊でもトップクラスの存在の冬将軍の斬撃は防げなかった訳だが。

 

冬将軍はもう目の前の剣士は痛みでとても戦闘を続ける意思があるようには見えない、そう判断し刀を鞘にしまいこむと、その場を去ろうとした、その時だった。

 

「アアアアアアアアアアアアァァァァ!!」

 

「っ!?」

 

冬将軍は、反射的に刀を抜いて自身に接近してきた存在に刀を振るおうとした瞬間、風を感じ、その次には腕の感覚がないことに気がついた。

首を動かし、腕を見てそのわけに気がついた。そう、刀を抜こうとした右腕がないのだ。

 

「フーッ、フーッ」

 

そして、ある程度の確信を持って後ろを確認すれば、右腕を失ったホムラが口から痛みをこらえるように息を吐きながらも短剣をを構えていた。

そう、ホムラは冬将軍が去るのを察知すると体に走る耐え難い激痛を、こらえながらも疾風牙を繰り出し、冬将軍の右腕を斬り飛ばしたのだ。

 

冬将軍は腕を再生し、鞘に収まったままの刀を抜こうとして──やめた。

なぜなら、ホムラは立ったまま気絶しているからだ。

先程の荒い息は続いているものの、目は虚ろで、殺気も殺意もなければ戦意も全く感じない。

また奇襲されないように確実に息の根を止めるのも冬将軍は考えたが、それもやめた。

あの剣士が自分に斬りかかったのは、誤って殺してしまった少年の敵討ちだとすれば、おの少年の行動を先読みできなかった自分のせいだろう。…雪精を討伐したのは許せないが。

 

どっちにせよ、見逃すのが道理であるだろう。そして冬将軍は、少しだけ、本気を出させ最後まで膝をつかず、その上自分の腕を斬り飛ばしたホムラに、称賛と仲間を殺してしまった詫びも兼ねて、あるものをホムラが使えるほどの大きさに変えると、それをホムラの傍に放り投げて消え去った。

 

 

 

****

『な、なあ、八雲って好きな人いるのか?』

 

『………』

 

『…そ、その八雲って好きな人い『聞こえてるから2度も言わなくていいって』おい、聞こえてるなら無視をするな』

 

それは、見回りをしていた時にたまたまあった彼女と話していた時に聞かれたことだった。

 

『突然、どうしたの?そんなこと聞いて』

 

『そ、その気になってな。ほ、ほら、八雲は色んな人から慕われてるから、その中で気になる人とかいるのかって思ってな』

 

彼女は顔を赤く染めながらすごい早口で言う。いつもの彼女からは考えられない様子に、僕は思わず笑みが零れてしまった。

 

『お、おい!何も笑うことないだろう!?この、駄狐!おいなりお化け!ムッツリスケベ!お、おっぱい星人!』

 

『ちょ!?確かに笑ったことは悪いとは思うけど、ムッツリスケベと最後のは流石に返上させてもらうよ!?』

 

『うるさいうるさい!!この朴念仁!』

 

さっきまでの穏やかな雰囲気は閑散し、騒がしい雰囲気へと早変わりした。

────ホ……!

 

僕らはいつも、こうやって騒いだり、喧嘩したりしたけど。

 

────ホ……ラ…

 

最終的には、笑いあってまた今度と言って別れる。

 

────ホム……!

 

思えば、僕があることだけを除けば、自分の全てを見せれたのは彼女だけだった。ああ、そうだ。僕は、そんな彼女を……

 

 

────ホムラ!

 

*****

 

「ホムラ!!」

 

僕を見下ろすように、アクアさん、めぐみん、カズマの顔があった。

思考が上手く回らない中、頭の上に気配を感じて、そちらに視線を向けると、ダクネスが目を閉じながら僕の左手を両手で握って祈るように目を閉じていた。

 

「みんな…?」

 

「「「ホムラ!!」」」

 

僕が目を覚ましたのに気がつくと、アクアさんを除いた3人が僕に抱きつく。

何で、こうなっているのか分からず混乱してる中、気を失う前のことが急に脳裏に横切った。

 

「冬将軍なら、もうどこか行っちゃったから大丈夫よ。それと、斬られちゃった右腕もしっかり繋げてあげたから!」

 

アクアさんが胸を張りながら得意気にそう言う。しかし、僕はそれどころではなく、カズマを抱きしめる。

 

「ちょ!?ホ、ホムラ!?男同志でやめ…!」

 

「良かった……!カズマが生きてて…!良かった……!!」

 

腕に感じる、確かな感触。幻でもなく、実体の人間。アクアさんが、カズマを生き返らせてくれたのだろう。それでも、大事な仲間が生きていることに、僕は安心した。

 

「よく頑張ったな、ホムラ」

 

ダクネスがそう言いながら、僕の頭を撫でる。カズマの敵討ちすら出来ず、その上みんなに心配をかけたのだから、その言葉を受け取ることはしてはダメなのに、心に入ってくる。

 

「うぐっ……ひぐっ……」

 

耐えきれず、涙を流す。

みんなは、僕が落ち着くまでその場を動かずそばに居てくれた。

 

 

だから、今度こそ、大事な仲間を絶対に守ってみせる。

僕はそう決意した。

 

 

 

 




解説コーナー
冬将軍:めちゃくちゃ強い精霊。原作においても、カズマとめぐみんに「ベルディアより強い」、「爆裂魔法でも倒しきれない」と言われるほどつおい。だが、性格はかなり穏やかで自ら襲いかかることは早々ない。最も、雪精に危害を加えるものに関しては別問題。それでも、雪精を逃がし、武器を捨てて戦闘の意思がないことを示せば見逃してくれる辺りめちゃくちゃ寛大。なるほど、これが大和魂か(?)


ちょっとだけ、余談をば。
このファンのリアちゃんが好みどストライクでしたまる

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