この妖怪の血を引く者に祝福を!   作:ゆっくり妹紅

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1ヶ月も待たせるなんて…大変申し訳ありません。
今回の話は正直、難産でした。


内容は、ちょっと薄いですが暇つぶしになったら幸いです。


第17話

早朝、新しく住むことになった屋敷の敷地内で僕とカズマは木剣を持って向かい合っていた。

「ええい!」

 

カズマが声を上げながら木剣を僕に向かって振り下ろすが、それを体を軽く逸らして避ける。

 

「カズマ、また腕力で振るってるよ。武器の重さを利用して振るうっていうこともう忘れた?」

 

「忘れてねえけど、すぐに出来るか!」

 

僕の指摘にカズマは反論しつつも木剣で、攻撃を仕掛ける。

今度のは、意識してやったのだろうか先程より体が力んでいる様子は見られない。

 

それから暫くカズマの攻撃を右足が動かないように体を逸らして避けたり、木剣でいなしながら様子を見て、ダメなところがあれば指摘していった。

 

 

****

 

「はぁ…はぁ……疲れた……」

 

「お疲れ様、はい水」

 

「さ、さんきゅー……」

 

荒い息を吐きながら地面に座り込むカズマに、クリエイトウォーターで水を入れたコップを渡す。

 

僕は屋敷をもってから、早朝だけカズマに稽古をつけていた。理由としては、カズマの戦闘スタイルが関係している。

 

カズマの戦闘スタイルは真っ向勝負ではなく、搦手を使うというものだ。この戦闘スタイルは場合によっては格上相手でも倒すことは出来るため、頭の回転が早いカズマと相性がいい戦法だ。

 

だが、これだけで全ての相手を倒せるかと言われるとそれはハッキリNOと言える。そもそも、搦手を使う隙や考える隙がなかった場合はこの戦法は使えない。咄嗟に思いつく可能性もあるけれど、それが起こることは滅多にない。

 

それではどうするかと言うと、ある程度の実力も備えればいいという話だ。ある程度の実力もあれば時間も稼げたり、相手が警戒して攻めてこない時間を作れば考える時間ばできるし、あとから救援がくるっていう状況でも時間を稼げる手段が増える。それに、あってダメなものでもないからね。

 

こういう説明を、少しカズマの心に刺さるようにしたら、カズマは泣きそうな顔をしながらも渋々稽古を受けることを了承してくれた。そこまで、酷いこと言ったつもりないんだけどなぁ…

 

そして、朝の実践の稽古とは別にカズマにやって貰っているものはもう1つある。

それは…

 

「休憩終わり。次は魔力操作の時間だよ」

 

「…なんか、休憩時間が日に日に少なくなっていると思うのは気のせいか?」

 

「気のせい気のせい(スルー)ほら、早くやるよー」

 

これに関しても、理由はあるが端的に言ってしまえば手札を増やすためだ。

 

前にも言ったように、カズマの戦闘スタイルは搦手を使ったものだ。その中に、僕が使う波断撃が使えるようになったら色々とレパートリーが増えるのではないかと思ったからだ。

そしてこのような事を言ったのは、意外にもカズマだった。多分、本音はこういう剣から衝撃波を出すっていうのに憧れてるからかもしれないけど。

 

さて、この魔力操作の稽古ではやってることは単純で体の中に流れる霊力か魔力を感知すること。

 

これだけだと、どこが稽古なのか分からないけど、綿密な霊力又は魔力操作には霊力や魔力そのものの流れを感じ取らないと話にならない。

 

僕も最初はこの稽古からやったのだが、これが中々難しい。霊力や魔力は基本的に見えないため、想像してやろうとしても上手くイメージが固まらないし、人によってはそれで余計に焦ってしまいさらに感じ取ることが出来なくなるという悪循環に陥ってしまう。

 

結局、早く習得するには落ち着いて少しずつやっていくほかないということ。カズマに手っ取り早く習得する方法がないか聞かれた時に、ないって即答したら、やっぱ辞めようかなって言ってたけど。

 

****

 

「……ホムラってさ、天然ドSというかスパルタというか、お前もキャラ濃いんだな」

 

「その評価はあんまりだと思うから、抗議していい?」

 

「ダメです」(即答)

 

「…即答されるほど酷いのか…ん?あの二人は……」

 

僕がギルドに行く傍ら、気分転換ということでカズマと外を出歩きながら喋っていると、見覚えのある2人が道の往来でコソコソしながら、路地裏に佇む一軒の店の様子を伺っていた。

 

余りにも不審なので、僕らはその2人に声をかけた

 

「キース、ダスト。お前らこんな所で何やってんだ?」

 

「こんな所でコソコソしてたら不審な人だと思われて警察とかに声掛けられちゃうよ?」

 

「「うおっ!?」」

 

背後から声をかけたせいか、2人は驚きのあまり飛び跳ねた。今の2人は、いつもの装備とは違ってラフな格好をしている。

 

「な、なんだよカズマとホムラかよ…驚かすなよな…」

 

「よう。今日はあの3人は一緒じゃないのか?」

 

「うん、そうだけど…」

 

ダストは僕の返事を聞くと安心したように息をついた。うん、まあ散々な目にあったから警戒するのは当たり前だよね。

 

「話戻すけどさ、お前らこんな所で何してんの?」

 

「いや、まあ…あれだ。日頃綺麗どころに囲まれてる2人には縁のない事だよ。俺ら2人で寂しく…」

 

「キース、待て」

 

カズマの質問に答えかけたキースさんをダストが遮った。そして、僕とカズマに同情の視線を向けながら。

 

「こいつらはそんなんじゃない…一見、ハーレムに見えるがそんな甘いものじゃないんだ。こいつらは、俺たちの仲間なんだよ…」

 

としみじみと言った。

 

それを聞いてカズマは「ああ…」と納得したような声を出し、僕は色んな意味で耐えきれなくなってそっと目を逸らした。

 

「んんっ!まあ、お前らなら口外しないと信じてるから教えてやるよ」

 

ダストはそこで一旦言葉を切ると僕らにしか聞こえない小声で。

 

「サキュバスがいい夢を見させてくれる店に興味はあるか?」

 

 

「「その話詳しく」」

 

僕らはすぐに返事した。

 

 

****

 

 

ギルドの隅っこにて、僕とカズマはダスト達からその店の話を詳しく聞いた。

 

曰く、この街にはサキュバスが住んでおり彼女らは男性冒険者の性欲を解消する代わりに、クエストなどに影響がない程度に精気を摂るとのこと。

 

なるほど、男性冒険者としては性欲を解消できるしサキュバスは生きるための精気を貰える、互いにとって利益のある話だ。

 

そういえば、この街で性関係の事件が起きたという話は全く聞かない。どこの村でもそういった事件は嫌でも聞くのだが、サキュバスのサービスが事件発生の抑制にもなっていると考えれば、納得出来る。

 

そんな風に僕が考えているとカズマ達が意外そうな目で声をかけた。

 

「けど、ホムラがそういった話に興味があるなんてな…同じパーティとしてそれなりに過ごしてきたけど意外だ」

 

「ああ、それは俺も思ってたけどさ…やっぱりお前も男なんだってわかって安心したぜ!」

 

「いくら何でも、失礼だと思うんだけど?」

 

僕だって立派な男だ。性欲だってあるしそういうのに興味がない訳では無い。

 

「でもさ、全くそんな素振りとかしてないからさ。不能なんじゃないかと…」

 

「いくらカズマでも怒るよ?」

 

僕はため息を吐きながらも説明することにした。

 

「自分で、性欲とかを抑えたり無くせる霊j…じゃなくて魔法を開発したんだよ。僕の家族で男は僕しかいなかったから、そういうことをやれる環境じゃなかったからね」

 

今思えば、そういう質問を藍様達にしなくて良かったと心底思う。

…まあ、色んな人に不能疑惑かけられたことあったのも事実だけど。

 

 

「…苦労してたんだな、お前」

 

「…そう言ってくれたのは君たちが初めてだよ……」

 

色々と雰囲気が悲しくなってきたので、僕はこのあとの予定を思い返すことにした。

 

とりあえず、このあとカズマ達とその件のお店に行って…あれ?そういえば今日の夕食を作る担当って僕だったな…

これは、サボる訳にはいかないので今回はサキュバスのサービスは諦めよう。

 

「あー、ごめん。この後、僕用事あるから3人で行ってきて」

 

「ん?そうか…まあ、用事あるならしゃーねぇな」

 

「ごめんね、それじゃあね」

 

僕は自分の分の飲食代をテーブルに置いて、そそくさと商店街へと向かった。

 

*****

 

「カズマ、お帰りなさい!喜びなさいな、今日の晩御飯は凄いわよ!カニよ!さっきダクネスの実家の人から、これからそちらでダクネスがお世話になるのならって、引越し祝いに、超上物の霜降り赤ガニが送られてきたのよ!しかも、すんごい高級酒までついて!」

 

サキュバスのお店から屋敷に帰ると、アクアが満面の笑みで出迎えてくれた。

どうやら、この世界でもカニはどうやら高級品らしい。あれ?そしたら…

 

「ホムラは今日の晩御飯作ってねえってことか?」

 

「いえ、カニの調理はホムラがやってくれましたから作ってないことにはならないと思います」

 

俺とめぐみんがそんなことを話している間に、ダクネスが広間の食卓のテーブルに調理済みのカニを並べていく。

そこで、アクアがまだホムラが来てないことに気がついた。

 

「あら?ホムラは?」

 

「ああ、ホムラならシメ?というのを作るための下準備をしてたな。でも、もうすぐ来るだろうから座って待ってよう」

 

数分後、ホムラが戻ってきた所で俺らは夕飯を食べ始めた。

 

 

****

 

「…飲みすぎたかな……」

 

最後の〆であるカニ卵雑炊を食べ終わったあと、僕は自分に宛てがわれた部屋に戻っていたけど、普段は食べれないカニというのとアクアさんの【美味しい酒の飲み方】が余りにも良かったのでセーブしきれなかった。

 

そういえば…カズマは全然お酒を飲まず、カニ卵雑炊を一足先に食べたあとすぐ寝ちゃったけど、どうしたんだろう?

 

…ま、いいか。それより、着替えて寝なく…

 

「あ…お風呂入ってこないと……」

 

僕はお風呂に入ってなかったことを思い出し、ノロノロと洗面用具と洗面用具を準備してお風呂場へと向かった。

 

***

 

夜中、ダクネスはランプを片手にランタンの灯りが消えた脱衣場に入った。

目的はもちろん、お風呂に入るためだ。

そして、衣類を置くカゴの近くに寄ろうとした瞬間、もっていたランプの灯りが消えた。

 

「わあっ!?な、何だ一体、どうして灯りが…」

 

ダクネスは突然の事態に驚くも、幸い今夜は月が出ていてランプがなくても十分明るい。

 

「ん…今夜は本当に月が…」

 

「スー……スー……」

 

明るいなと、服を脱ぎタオルを片手に持ったダクネスはそう言い終える前に固まった。

何故なら、湯船の縁に腕を置いて湯船に浸かって寝ているホムラが居たからだ。

 

「!!?!?!!?」

 

ダクネスは悲鳴を上げそうになるも、口を片手で抑え込んで何とか声が出ないようにする。なお、もう片方の手はタオルで胸などが見えないように押さえている。

 

(な、なんでホムラが!?それに、入浴中の札もかけてなければランタンの灯りも付けてないとはどういうことだ!?)

 

ダクネスは内心パニックになりがらも、反射的に浴場から出ようとしたがここでふと我に返る。

 

──ここで私がホムラを放置してしまったら彼はどうなる?

 

もしかしたら、目が覚めた瞬間にのぼせて湯船から出れない可能性もあれば、のぼせてるせいで転んだりする可能性もある。ただ、1番ある可能性は風邪をひくことだ。湯船に浸かっているとはいえ、体の一部はそうではない。

 

そのため、仲間想いなダクネスは羞恥心抑え、ホムラに近づいて起こそうとして、彼の寝顔が視界に入った。

 

「スー…スー…」

 

(普段はしっかりしているし、戦闘も頼りがちだからつい忘れてしまうが、この寝顔を見ると年相応だな。それに、意外と寝顔は可愛らし…)

 

ダクネスはそこまで考えて頭をブンブンと振るう。

 

(しっかりしろ!私はエリス教徒のクルセイダーだ!断じて、普段とは違う一面のホムラに見とれていた訳では無い!!)

 

自分を律し、恐る恐るホムラに声をかける。

 

「ほ、ホムラ…起きてくれ…」

 

「スー……」

 

「…全然覚める気配がないな。ううっ、しょうがない、少し揺らしてみるか…ホムラ、起きてくれ…」

 

「ん…うん?…あれ…」

 

「起きたか…湯船で寝ないで、早く上がって布団に…」

 

肩を少し揺らすと、目が覚めたホムラが声を出す。それに安堵したダクネスは、ホムラに湯船から上がるように言おうとした瞬間…

 

「ら、んねえさ、ま?」

 

「え?」

 

「すみません…せなか、いまながしま、す…」

 

ホムラは寝ぼけ眼でそう言うと、近くに置いていた自分のタオルを腰に巻いてフラフラと湯船から出ると、石鹸を手に取ろうとした所で

 

「ホ、ホムラ!いいからあがるぞ!」

 

我帰ったダクネスが引き止め、ホムラの手を掴むとそのまま強引に脱衣所まで連れていく。

 

「着替えたら、早く自分の部屋に戻って寝るんだぞ?いいな!?」

 

「はぁい…おやすみな、さい…ねえさま…」

 

ダクネスが強い口調だったのもあってか、ホムラはやけにあっさりと言うことを聞き自分の服を入れたカゴを漁り始めた。

ダクネスはそれを見届けるとホムラが本格的に着替え始める前に、風呂場に戻り戸を閉めた。

 

 

*****

 

「おはよう…って、あれカズマどうしたの?」

 

「色々あったんだよ、色々」

 

ホムラは翌朝、何故か目が死んでいるカズマを見かけ尋ねるも軽くいなされてしまった。それを不思議がりながらも日課である墓の手入れをしていると、今度はダクネスがホムラに顔を少し赤くして話しかけた。

 

「な、なあホムラ。昨日、お風呂で何かあったか覚えているか?」

 

「………いや、それがよく覚えてないんだよね。気がついたらベッドの上だったわけだし…何か、まずいことしちゃった?」

 

「い、いや覚えてないならいいんだ」

 

ダクネスはそう言うと、腕を組んでホムラから視線を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

だから、気づけなかったのだろう。ホムラの耳が赤いことに。

 




解説コーナー

原作との違い:本来であれば、お風呂のイベントはカズマだったのだが…この展開が意味することは察しがいい人なら分かるかも?

キース:ダストのパーティメンバーの一人。職業はアーチャー。
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