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では、本編どうぞ
「はぁ…幸運の低さがここで影響するなんて…」
あのクエスト失敗から数日後、キャベツ回収クエストの報酬の支払いが行われた。
それで僕も貰ったのだが…まあ、予想していなかったケースに見舞われてしまい、ちょっと落ち込んでいる。
「どうしたホムラ?なんか落ち込んでいるようだが…」
「ダクネスさん…ちょっと色々あったというか…あ、鎧の修理終わったんですね」
「ああ、それでキャベツの報酬を使って少し強化してみたんだが…どう思う?」
こういう時は確か褒めないといけないって藍様に教わったな…この人の場合、褒めなくても悦びそうな気がしなくもないけど。
「クルセイダーのダクネスさんなら鎧の強化はいい判断かと。それに、ダクネスさんの雰囲気にあったデザインだと思いますよ」
こんな感じかな?それにしても、ダクネスさんの鎧のデザインってなんか豪華というか…
「ホムラはカズマと違って褒めてくれるんだな…ところでそろそろ敬語なしでいいんではないか?」
「え…でも」
「最初にお前が入るのを拒んだ私が言うのもおかしいと思うが、同じパーティなのだからな」
正論だ…てか、この人あの欲望に忠実なダクネスさんなんだよね?なんかギャップあるんだけど。
「あー…そしたら敬語はやめるよ。僕もこっちの方が話しやすいし」
「ああ、ありがとうな。では改めてよろしく頼む、ホムラ」
「うん、こちらこそよろしくね、ダクネス」
差し出された手を握り握手する。
なんか、嬉しいけど、恥ずかしいというかなんというか…
「お前ら、何やってんだ?そんなことしてる暇あったらあそこの変態をどうにかしてくれ…」
カズマにそう言われ、指を指された方向に目を向けると…
「ハア…ハア…。た、たまらないです!魔力溢れるマナタイト製のこの杖の色艶…。ハア…ハア…ッ!」
杖に頬ずりしているめぐみんがいた。確かにあれはどっからどう見てもやばい人にしか見えない。
話によると、純度の高いマナタイト製の杖を使うと爆裂魔法の威力が上がるらしいのだが…話だけで聞いた限り、現時点でオーバーキルの威力らしいのにこれ以上上げてどうするのだろうか?
「なんですってえええええ!?ちょっとあんたどういう事よっ!」
そんな中、突如ギルドに響き渡ったのはアクアさんの声。ギルトの受付のお姉さんの胸ぐらを掴み、いちゃもんをつけている。とても女神様とは思えないなぁ…
「なんで5万ぽっちなのよ!どれだけキャベツ捕まえたと思ってんの!?10や20じゃないはずよ!」
「そそ、それが、申し上げにくいのですが……アクアさんの捕まえてきたのは、殆どレタスで……」
ああ、そういうことか……アクアさんがなんでレタスがー!的なことを言っているが、そういうものだと割り切った方が早いだろう。こういうのは考えるだけ無駄なパターンだ。
やがて、これ以上言っても無駄だと思ったのか、アクアさんはにこやかな顔でカズマの方にやってきた。
「カーズマさん!今回のクエストの報酬はおいくら万円?」
「100万ちょい」
「「「「ひゃっ!?」」」」
僕らのパーティのリーダーが急に小金持ちになりました。
そして、それを聞いたアクアさんは驚愕の表情からまたにこやかな顔を浮かべた。
「カズマ様ー!前から思ってたんだけれど、あなたってその、そこはかとなく良い感じよね!」
「特に褒めるところが思い浮かばないなら無理すんな。言っとくが、この金はもう使い道決めてるからな、分けんぞ」
その一言にアクアさんはピシリと固まり、僕の方に助けを求めるように目を向けてきた。
「すみません。僕は20万ぐらいしか貰えなかったのと、このお金で防具とか生活費を考えると貸すのは……」
僕の発言にみんな驚いているが本当なのだ。僕だってこんな少ないとは思わなかった。
「カズマさああああん!私、クエスト報酬が相当なものになるって踏んで、この数日で、持ってたお金、全部使っちゃったんですけど!ていうか、大金入ってくるって見込んで、ここの酒場に10万近いツケまであるんですけど!!今回の報酬じゃ、足りないんですけど!」
僕から借りるのは流石にダメだと思ったのか、アクアさんは矛先をカズマに変えた。
てか、アクアさんは後先考えないというか、欲望に忠実というか…子供っぽいな…
あ、カズマが半泣きですがりついてるアクアさん引き剥がした。
「知るか、そもそも今回の報酬は『それぞれが手に入れた報酬をそのままに』って言い出したのはお前だろ。というか、いい加減拠点を手に入れたいんだよ。いつまでも馬小屋暮らしじゃ落ち着かないだろ?」
カズマが言っているとおり、普通の冒険者は家を持たない。
理由の1つとして、冒険者は安定を求めず、あちこちを飛びまわることが多いのが挙げられる。
まあ、1番大きな理由は、ほとんどの冒険者がその日暮らしが多くて金がないというものだろうけど。
「そんなああああ!カズマ、お願いよ、お金貸して!ツケ払う分だけでいいからぁ!そりゃあカズマも男の子だし、馬小屋でたまに夜中ゴソゴソしてるの知ってるから早くプライベートな空間が欲しいのは分かるけど!5万!5万でいいの!お願いよおおおお!」
「よしわかった、5万でも10万でもやすいもんだ!分かったから黙ろうか!!」
アクアさんの無自覚(と思われる)なトンデモ発言にカズマが屈した。
ここで、ふと気になったのかダクネスが僕に質問してきた。
「なあ、ホムラ。あのクエストではお前も結構取っていたと思うんだが…」
「アクアさんと同じで8割ぐらいレタスだったんだ…」
「……そうか」
ダクネスとそれを聞いていためぐみんからの優しい視線に晒されながらも、幸運は大事なんだな、と心底思った。
*****
「カズマ、早速討伐に行きましょう!それも、沢山の雑魚モンスターがいるやつです!新調した杖の威力を試すのです!」
突然、めぐみんがこんなことを言い出した。
それを聞いて、みんなもそれぞれの意見を言い出した。
「まあ俺もゾンビメーカー討伐じゃ、結局覚えたてのスキルを試す暇もなかったしな。安全で無難なクエストでもこなしに行くか」
「いいえ、お金になるクエストをやりましょう!ツケを払ったから今日のご飯代もないの!」
「いや、ここは強敵を狙うべきだ!一撃が重くて気持ちいい、すごく強いモンスターを…!」
まとまりが無さすぎるのではないだろうか?
「とりあえず、掲示板の依頼を見てから決めま……あれ?依頼がほとんど無い…?」
普段、所狭しと大量にはられている依頼の紙が今はほんの数枚しかない。
しかも、どれもこの街では高難易度に部類されるものばかりだ。
「カズマ!この一撃クマのクエストを…」
「そんな名前からして強そうなやつ受けられるか!」
そんな騒いでいる僕達の元にギルドの職員がやってきて申し訳なさそうに説明した。
曰く、最近魔王の幹部らしき者が街の近くの小城に住み着いたせいで、近辺の弱いモンスターが隠れて仕事が激減してるとのこと。
さらに、クエストは国の首都からの討伐隊がくる来月までは高難易度のやつしかないとのこと。
そういや、カズマがほかの冒険者からそんな話を聞いたって前に言ってたな…
「な、なんでよぉぉぉぉぉ!?」
1文無しとなってしまったアクアさんの悲痛な叫びがギルドに響いた…こればっかりは流石に同情したくなる…
****
「ダクネス、このコートはどうかな?」
「ふむ…これだけだと少し心許ないからこの肩当ても買った方がいいのではないか?」
結局、クエストがないため暫くは自由行動となった。今日はアクアさんは生活費を稼ぐためにバイト探し、めぐみんはカズマを連れて爆裂魔法を撃ちに、そして僕はダクネスにお願いして防具を見繕ってもらっている。
戦闘スタイルは違えど、同じ前衛職であるダクネスの意見はとても助かっている。普段からこんな感じだと、非の打ち所がないいい人なんだけどなぁ…
「ん…『エロい体をしやがって、この雌豚が!!』って思ったか?」
「思ってない」
「んん!即答…!」
本当にこういうのがなければなぁ……
ダクネスに見繕ってもらったものを試着室で着替えながらそう考えてしまう。
「ん…しかし、手持ちが余りないのに防具を買って大丈夫なのか?クエストも暫くないだろう?」
「あー…確かにそうなんだけどそろそろ冒険者らしい格好したいんだよね……それに、一応、暫く働ける場所の目星は着いてるから多分大丈夫…あ、着替え終わったから見てくれる?」
一応、色々と手は考えてあるから恐らく働かせてもらえる…はず。あれ、これって取らぬ狸の皮算用ってやつなのかな?
「そうか…お、中々似合っているじゃないか」
「そう?お世辞でもそう言って貰えると嬉しいよ」
僕はこの世界の服の上から青いコートに革製の肩当て、金属製の篭手に元の世界から履いている霊力で強化されたブーツという格好だ。
結局、予算的にはギリギリクリアしていたので僕はこれを購入したのだった。
*****
それから、一週間が経ったある日の朝。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、忠地武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』
街中に、キャベツクエスト以来の緊急アナウンスが流れた。
「今度はなんだろうね?」
「次はニンジンなんじゃねえか?」
なんてことをカズマと話しながらも準備を整えて正門に行く。
そこには、武装した多くの冒険者と少し離れた場所に首なしの騎士──デュラハンがいた。
纏う雰囲気から、デュラハンがかなりの強敵であることが嫌という程分かる。そして、それをほかの冒険者も感じ取っているのか、緊張した顔でデュラハンを見ている。
「俺はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが…」
そのデュラハンは腕に持っている頭から聞こえてくる声を震わせ…
「まままま、毎日毎日毎日毎日っ!俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでくる頭のおかしい大馬鹿は、誰だァァァァぁぁっ!」
怒りの言葉を叫んだ。
解説コーナー
・デュラハン:こいつに関してはまた今度という形で。なお、魔王軍幹部の中では個人的に好きなキャラでもあったり。
・ホムラの装備:個人的なイメージですが、魔法戦士って軽装なイメージがあるのであんな感じに。コートの色が青なのはロックマンXの主人公のエックスを意識した感じです。他にも、意識してるところはありますが、それは主人公解説の話の際に…てかそろそろそっちも作らないと(白目)