長編にしては短いような気もするでしょうが、どうかご覧下さい。
感想、評価をよろしくお願いします。
「ちょっと!こんな時間までどこにいってたの!?」
「うぅ・・・ごめんって」
夜遅くに家に帰ってきたせいで、母さんに怒られた。今日は金曜日だからゲーセンで時間潰してたら、いつの間にか短い針が9時の方向に向いていた。
ちなみにゲーセンに寄っていた理由は、学校で先生に怒られたからだ。だから憂さ晴らしにやっていたのだが・・・
「まったく、この前のテストよくなかったのにずっと遊んでばっかで・・・いい加減にしなさいよ!」
「わかってるよ・・・」
「わかってるなら勉強しなさい!」
とまぁ、今日1日怒られっぱなしだった。
だからむしゃくしゃしてご飯も食べずに風呂だけ済まして、すぐに部屋に閉じ籠った。
「くそ・・・なんでこんな目に合うんだ・・・」
ベットに寝転び、スマホを開く。
またモヤモヤを落とすためにゲームをやろうと思ってなにやろうかな、とアプリを探していると・・・。
「・・・あっ、アズールレーン?」
懐かしいアプリがあった。このゲームは第二次世界大戦で活躍した様々な軍艦が、美少女化して弾幕を撃ちまくるシューティングRPGだ。サービス開始当時からやっていたのだが、1年前に熱が冷めて他のことをやっていたら、ずっと放置してしまっていた。
「・・・せっかくだからやろうかな・・・。あっ、まてよ」
別のアプリのゲームのことを思いだし、そっちを起動する。アズールレーンにもあったが、ゲームには特別なイベント期間があり、その間だけ特別なプレゼントがもらえるのだ。
だから急いでそのゲームを終わらせようとした。
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数時間後。
やっと終わった。これでアズールレーンを起動できる。他のことをやっていたら思いの外集中しすぎていた。
・・・理由は他にもあった。それはゲームの世界に入れたらなぁ、って思ったことだ。
ゲームの世界はきっと楽しいことだらけだと思うし、もしゲームのデータと同じ境遇だったらどれだけ楽に生活できるか。
そんな非現実的なことをよく考えていた。なんせうるさい親や教師に叱られずに済むし、毎日が自分の思い通りになる。どれだけ素晴らしいことか。
・・・まぁそんなことは、永遠に起きないだろうからとても悲しいが・・・。
とにかく行けるものなら、絶対にいきたいなぁ。そう思いながらアズールレーンのアプリを開く。
だが不幸にも今の自分は寝た状態、ましてや暗い部屋のベットの上でそんなことをしていたら、睡魔が気がつかないうちに襲ってきていた。
だから一度でもまばたきをしてしまったら・・・
「・・・グゥ・・・」
寝てしまってしまった。いわゆる寝落ち、だ。こうなったらスマホは電源つきっぱなしで、ただ充電を消費してしまうだけになってしまった。
・・・そしてその後に、スマホの画面が不自然なほど強く光っていたことにも、気がつかなかったのだった。
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「ぅん・・・・・」
ゆっくりとまぶたを開く。目線はボヤけており普段見慣れている自分の部屋さえ、よく見えない。
目をかいてピントを調整して、周りを見渡せるようにする。が・・・
「・・・あれ?」
天井がいつもの白色じゃなく、代わりに木製のものだ。おかしいと思いながら起き上がると、そこはどう見ても普段勉強するための机やゲームをするためのテレビがある自分の部屋ではなかったのだ。
具体的に違うところは、執務するにはちょうどいい本棚のない机、壁も木製と白い壁がしっかりと分けられており、普段踏んでるカーペットもなく、木製の床のみ。また、高級そうなクローゼットやカーテンもあったが、広さ自体は自分の部屋よりも少し広い程度だった。
まぁ一言でまとめれば、シンプルかつ品質のいい部屋だったのだが壁にかかってある上着が気になった。その上着の名は・・・
「・・・これって・・・軍服?」
そう、海軍が着そうな白い軍服だ。それがこの部屋にあると、まるでここは軍人が泊まるための部屋だと連想する。・・・とにかく、今の時点で言えることは・・・
「・・・ここ、まさか・・・!?」
自分は、自分の家ではなく、別の、しかも軍事施設にいる。という考えにたどりついてしまったのだった。
なぜ自分がこんな部屋に?ドッキリ?なんのために?そもそも本当にドッキリなのか?色々と考えたいがまったく思い付かない。一体・・・なんでこんな目に・・・?
ガチャ
「!」
ドアから誰かが入ってきた。ゆっくりと開けてきたその人物は、
セーラー服にしては露出が少し強く、膝よりずっと上まで長い白い靴下。ベージュ色のポニーテールをしており、キレイな深い橙色の瞳を持った少女が現れた。
「・・・っ!」
「・・・ぇ?」
その少女はアズールレーンと呼ばれる作品に登場する、プレイを初めてする際もらえる三人のうちの一人。
《綾波》だった。
・・・まさかこんな部屋に入れられたあげく、コスプレした少女が・・・しかもその衣装は、というか顔までが完璧に作られている。もはや本物ではないのか?と言えるほどだ。
驚かすための企画にしては行きすぎているような・・・そう考えていたら。
「・・・指揮官!」
「・・・はっ!?」
その声はかつてプレイしている際に、秘書艦にしていたとき、出撃にして戦っていたとき、
そして、《ケッコン》という儀式を行ったとき、
よく聞いた声が、その少女から聞こえた。
「・・・」
その少女はこちらに近づいてくる。その目は切実に、しかし希望に溢れたその赤い宝石は、こちらにしっかりと向けられている。そして話し合うのに丁度いいくらいの距離になったそのとき。
彼女は自分の手を両手で握ってきた。
「・・・指揮官、ようやく・・・ようやく会えた・・・です・・・!」
「・・・!?」
ドキッ、と強く心臓が動く。泣かせたわけではないのに、涙目になって喜んだ美少女をこんな間近でみることなんてあり得るだろうか。
いや、それよりも・・・
「・・・えっと・・・どう言うこと・・・?」
「え・・・?」
「・・・ちょっとね?・・・その・・・どう言うことか・・・よく分からない・・・って言えばいいのかな・・・?」
混乱しているこちらに、キョトンとしている少女。が察したのか、立ったあと、壁にかかっている軍服を指差した。
「・・・まずは軍服に着替えてください。そのあとあるところに案内するので、そこで説明するです。綾波は廊下で待ってるです」
そう言ったら彼女はドアの方に行き、そして「では」と言ったら出ていった。
この今の状態に、彼はただ呆然とするしかなかった。
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着替えを終えた。サイズは自身の体にピッタリと会っている。正直今の状況にいまだに追い付いていないが、とにかく出てみることにする。
ガチャ
「・・・指揮官、お待ちしてました、です。とっても似合ってるです」
「あ、ありがとう」
笑顔で誉めてくれる彼女にまた緊張してしまう。そして彼女はまたこちらの手をとってきた。
「では行くです。皆が・・・指揮官を待ってるです」
「えっ?待ってるって?」
そう聞くが、答えずに少女はこちらの手を引っ張って行った。小さい手が直に握られる。暖かい感触でこちらの体温までが上がってきてるようだ。
そしてある両開きの扉まで連れてこられる。その前に立たされると、少女は自分がたっている斜め後ろの位置でこう言った。
「さぁ・・・開けてみてください。皆がお出迎えしてくれている、です」
皆が・・・まさか・・・?
現実ならあり得ないことを考えながら、ドアノブを握ろうとする。ここは一体?彼女は誰だ?この扉の向こうに誰が待っている?
いろいろな考えが出てくるなか、ドアノブを握る。
緊張が溢れるなか、つい開けるのをためらってしまうが。
「大丈夫です。皆・・・いつまでも待ってくれるです」
そう優しく少女は言ってくれた。それを聞いたら決意できた。
そして、自分はその扉を開けた━━━━━━━
『『『お帰りなさい!!指揮官!!!』』』
食道が少女たちのセリフで響き渡った。
「・・・っ??!」
圧倒された、としか言いようができない。唖然としていたとき、たくさんの少女たちが、
なんとこちらに近づいてきた。
「しきかーん!!どこに行ってたんだよ!!!心配したんだぞー!!」
「良かった・・・あなたの顔を、見れることができた・・・!」
「指揮官・・・!またこのように会えて、光栄です・・・!」
「信じてました・・・指揮官様とまた出会えることを・・・!」
「この大バカ指揮官!!!いつまで私たちを待たせてんのよ!!!」
「ほんと、久しぶりね指揮官。いつぶりかしら」
「指揮官さま~~~!!!ようやく、ようやく会えて、赤城光栄ですわ~~~!!!」
「はしゃぎすぎだぞ姉様、まっ無理もないか・・・こんなに待たされたなぁ」
・・・どれもゲームのなかでは見覚えのあるキャラばかりだ。そんなキャラたちが自分を指揮官といい、感激の顔を向けてくれていた。
「みんな・・・指揮官を待っていたのです。綾波も・・・みんなもう来ないかと思いました」
そう言ってくれる綾波(?)、けどこちらは全く理解が追い付かないでいた。
「ちょ、ちょっと待って待って!!どう言うこと!?理解が全然追い付かない!!!」
そう叫んだら皆、驚いて引いてしまった。たしかにそんな反応をしてしまうものだろうが、一番驚いているのはこっちだ。
「・・・まぁ、無理もないわ。いきなりここに連れてこられて、驚くに決まってる。こんな大勢の人数で迫られたら、なおさらね」
そうなだめるように言ったのは、黒い軍服に防止をした長い金髪の女性、
あの、《ビスマルク》・・・のコスプレした人・・・?だった。
だがその彼女も、声はゲームと全く、いや、そのものの声をしている。というか他の人たちもそうだ。
歓迎してくれた人たちの声は、ゲームで聞いたのと全く同じように聞こえた。
「皆、席につきましょう。じゃないと話が進まないわよ」
そうビスマルク?に言われたら、皆自分の席に座ろうと戻っていく。が・・・
「・・あっ待って!」
自分はそう止めてしまった。そのため皆が揃って泊まると同時にまたこちらを振り向く。こっちも驚くが、あることを聞いてみた。
「え・・・えっと・・・俺さ・・・その、みんなこと・・・一応知ってるけどさ・・・いつ会ったか・・・覚えてる・・・?」
そう聞いた。皆は少し困惑したが、ある女性がこう答えた。
「・・・私と指揮官様と出会えた日、それは○年前の○月○○日ですわ」
そう答えたのは赤城・・・のコスプレ?をした女性だ。たしか自分がアズールレーンをプレイしていて赤城を手にいれたのはそのくらいだった気がする。しかし知っている人物は、自分しか知らないはず。なぜ知っている?
「・・・私と出会ったのはたしか○年前のクリスマスの日だったな?」
別の女性がそう言った。彼女はエンタープライズ・・・の格好をしている。けど間違いはなかった。たしかにあのときはエンタープライズがあたって大喜びをしていた。
他の子達も次々と自分と出会った日を教えてくれた。
その答えは・・・ほとんど自分の記憶と一致していた。誰もが自分しかプレイしていないのに、自分しか知らないはずなのにみんな当てている。ということは・・・!
「指揮官・・・ここは、指揮官が言うところの・・・
ゲームの世界、なのです」
そう答えてくれた綾波の言葉を、自分はただ信じるしかなかったのだった。
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指揮官が戻ってきた、という事で食堂では復帰式が行われた。たくさんの料理が机に並べられており、どれだけ手が込んでいるかがわかる。そして様々な少女たち、改めてKAN-SENたちが自分を囲んだ。
自分のとなりにいる子や真後ろの子は、こちらの腕をしっかりと掴んだりとくっついてくる。お陰でいろいろなところが当たったりいい匂いのせいで、とても顔が熱くなった。
向かいにいる子も自分と話したいのか、乗り出すように話しかけてくる。
なかにはいきなり酒を飲ましてくるような子もいたが、常識人組に止められた。
ほかにもあったが、とにかく一つづつ解消していった。
とても楽しかった。家のことなど忘れてすっかりと彼女たちの会話をずっと楽しんでいた。
・・・さて、話は急に跳ぶが、すっかりと昼になってしまった。ここからはかく陣営の寮にお邪魔をして、そこの子と話し合うという企画だった。
ケッコン艦の綾波の案内のもと、まず最初にお邪魔したのは、《ユニオン》陣営の寮だ。内装は黒い木製の床に水色の壁、家具はなかなか派手でアメリカをイメージしたものだった。
始めにサンディエゴとダウンズが飛び付いてきて押し倒されたが、ヨークタウンとカッシンが注意したり、ホーネットの格好を見たらから、かわれたりした。また、ユニオンの四騎士とも出会ったが、モントリピアにまずはキレられた。どうやらクリーブランドもまたずっと自分が来なかったせいで落ち込んでいた時期が良くあったようだ。
とにかくほかにも色々と文句を言われたりしたが、とにかく落ち着かせた。
それにしてもサウスダコタとミネアポリスの服装が原作よりも露出度が低い。話によればなんと、自分がスマホでプレイしてた際、「寒そうだから布地増やせし」って言ったら本当に増やしただと・・・。なんとこっちの声がそのときから聞こえてたらしい。まさかの事実に自分は舌を巻いてしまった。
次に《ロイヤル》の寮に向かった。内装についてだが・・・まさにイギリスの超豪華なイメージだった。
いや・・・本当にロイヤルすぎて・・・真っ白すぎて自分みたいな野郎がいたらいけないような気がしたから出ようとした。歓迎の仕方もロイヤルだったから場違いすぎて・・・まぁそのあとにエリザベスやネルソンに怒られたが。
それと驚いたことにウォースパイトがスカートを履いているし、ロドニーやネルソンの布地も増えてる。これもまた現実世界と通じている影響なのだろうか・・・
しかしベルファストやシリアス、ケントなどメイド隊はそのままだった。彼女たちの格好は自分好みだと言うのも通じてる。それにしても・・・やっぱりきわどいなぁ・・・って見てたらまたエリザベスに怒られた。
ロイヤルの後は《鉄血》陣営に入った。赤色や黒の家具がバランスよく配置されており、これまた高級感に溢れている。
出迎えてくれたのはオイゲンとヒッパーだった。オイゲンはスカートとを履いている、これまた通じてたんだろうな・・・そう思ったら腕を掴んできた。・・・一言で述べればムニュってなった。もちろんヒッパーはキレたのだが・・・。
Z姉妹とも出会ったり、ドイチュラントやシュペー、そしてツェッペリンとも出会った。そして一番印象的だったのは・・・
ビスマルクとティルピッツの会話だった。
「指揮官、あなたのお陰で妹と会えたわ。この感謝の気持ち・・・どう伝えればいいのかしら」
うん、尊かった。このような再開はアズールレーンならではだろう。それも自分がきちんとプレイしてたからでもあるが。そしてもうひとつ印象的だったのがティルピッツの行動だ。
彼女は手袋を脱ぎ、こちらの手を握ってきた。
「・・・あぁ、なんて暖かいの・・・あなたは言ってくれた・・・このように手を繋いで見たいって・・・。
私もあなたと繋がってみたかった。だって・・・私は、ずっとあなたを待っていたから・・・」
そう言って、彼女は涙目になりながらも笑顔を作ってくれた。
そして《重桜》の寮・・・そこは予想はしていたが、高品質な和室だった。
そこで待ってくれてたのが、重桜のみんなはもちろん、あの長門や三笠、天城までもが出迎えてくれた。
そして赤城や大鳳、愛宕や準鷹は必死になって抱きつこうと来たのだ。その際は加賀たちが急いで止めに来たりと騒がしかったが、別に自分はよかったんだけどなぁ・・・
ん?なぜって?赤城のモフモフ尻尾に抱きつきたかったからだ!ちなみに落ち着いた後実際抱きついたら、もうモフモフすぎて昇天しそうになった。あれはもう人をダメにする尻尾だなぁ。
また話は飛んで夕方。夕食の前に鎮守府内を探索することになった。明石と不知火の購買部に工房室、開発艦を作るための研究室に、寮舎、オフニャハウスと回った。しかしそこだけではない、外に出て庭の隅々も回ってみたのだった。
「おー、外もいいもんだな!」
「だろ!あっここは訓練にも使われる運動場だぞ」
細かいところも調べてみると、花などが手入れされているかがわかる。さすがは鎮守府だなぁ・・・
しばらく探索していると、鎮守府の裏側についたようだ。ここも開けているものの、今まで見てきたなかでは、ちょっと地味だった。
「ここは・・・裏側かな?」
「はい、ここには私たちもあまり来ることはありません」
「へぇ、意外・・・ん?」
そこに気になったところがあった。それは・・・
扉の閉まった大きな門だ。正門の方は開いていたがこっちは閉ざされている。それに壁も大きいから少し不気味に思ってしまった。だからこれについて聞いてみた。
「綾波、ここはどうしてしまってるんだ?」
「・・・それは・・・」
「あっ、指揮官。あそこの門は壊れてるんだ。だから閉めっぱなしなんだ」
「そうだったのか」
と納得した感じで言ってみる。しかし実際は彼女たちの反応に違和感を感じた。なんというか・・・あの門のことを聞いたら一瞬空気がピリッてなった。まるで聞いてはいけないことを聞いたような気配が。
「・・・さぁ戻りましょう、指揮官様。もう夕食の時間ですから」
赤城はそう優しく言ってくれたが、なんだかここから早く離れたいような感じがする。他の子の様子もそう見えた。
・・・これは、自分の見間違いなんだろうか・・・
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夕食を終えて風呂の時間となった。男性用と女性用と別れていたが、赤城たちは女性用で一緒に入ろうって言ってきたのだ。さすがにこっちも色々とアウトになりそうなので男性用で済まそうとした。
とは言うものの、男性用もそれなりの広さがあった。一人だけ入るにはちょっと・・・とも思ったがすぐに上がりたいし、とにかくまずは体を洗うことにしようと・・・
ガラッ
「えっ」
ドアが開く音がした。だからすぐに振り向いたら、
なんとタオル一枚だけ巻いた綾波の姿が。
「・・・えぇ」
「お背中洗いにきた、です、」
「・・・いいのか、男性用に入って」
「はい、綾波はケッコン艦と言うことで」
「それでいいのか・・・」
「はい。それに・・・
綾波も、夫婦っぽいことをしたかったのです」
そうにこやかに綾波は言ってくれた。
ゴシゴシと背中をブラシで吹いてくれる音が響く。まさか異性にこうしてくれるなんて、小さいときに母親がしてくれて以来だ。
こんな体験をできるなんて、自分はとてつもなく幸せものだ。
「気持ちいいですか?」
「うん、気持ちいいよ」
「よかったです」
そんな会話が出た。今日は本当に楽しかったなぁ、皆と出会い、そして鎮守府を探索して、こんな生活がずーっと続けばいいなぁ。
・・・なんてこと考えてたら。
ダキッ
「えっ」
綾波が後ろから抱きついてきた。
「・・・本当は寂しかったんです。指揮官がずーっと来なかった日々は・・・辛かったんです」
「・・・そうだったのか・・・」
「・・・はい、正直にいって、《ここが機能しているくらい不思議》なほど・・・」
「不思議、だと・・・?」
自分が来なくなった間は色々と混乱が起こっていたようだった。ユニオン・ロイヤル陣営は強く落ち込んでコンディションががた落ち、エンタープライズやクリーブランド、ベルファストなどの気の強い子達がなんとか踏ん張っていたが、彼女たちも気力の限界だったらしい。
鉄血・重桜陣営はより酷かったらしい。オイゲンや伊勢、日向までもがやけ酒をし、天城の体も悪くなる一方。ティルピッツやドイチュラントは引きこもり、赤城に関しては何もない空間に自分を模して会話していたとか・・・。
「・・・つまり、俺がここを長い間ほっといたせい、なのか・・・!?」
綾波の返事が帰ってこないが、少なくとも間違いではないだろう。まさかここまでひどかったとは・・・!
「・・・だけど」
綾波がそう言う。
「指揮官は・・・戻ってきてくれた。綾波は信じてたです。絶対に戻ってきてくれるって」
「綾波・・・!そっか・・・けど結局、俺が悪いからな、あとでみんなに謝らなきゃな」
そう下をうつむきながら、自分は綾波に聞こえるように呟くのだった。
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真夜中、自分と綾波は指揮官室で同じベッドで寝ていた。これも綾波の意思でこうなったのだが、いかんせん落ち着かない。そのせいで真夜中の一時頃に起きてしまった。
また寝付こうとするものの、どうしても眠れない。それに起きたからか尿意を感じてきた。
(トイレ行こう)
そう思ってベッドから出ると。
グイッ
綾波がいつの間にか起きて、裾を掴んできた。
「・・・どこにいく、ですか・・・?」
その瞳は寂しそうだった。トイレに行くって言ったが彼女も来ようとしてきた。さすがに女性を連れてトイレに行くのは気が引けるのでなんとか説得してやっと行けたのだった。
トイレに行き、用をたせた自分は手を洗う。そのあとに鏡を見つめていた。
「・・・今更思い付いたけど・・・俺、どうやってここにきたんだ・・・?」
ただでさえゲームの世界に入ると言うあり得ない事態。やっと本当に冷静になって考えてみる。一体、誰がこの世界に・・・というか。
・・・自分がこの世界に来たことにより、逆に混乱が増すのではないのか・・・?
あの復帰会もまるで、あらかじめ用意していたようなものだったし・・・
・・・いつから自分がこの世界にやって来ることをわかってたんだ・・・?彼女たちは・・・。
色々と考えた、だが結論が出なかった。ただ疑問しか出なかったのだった・・・
「・・・指揮官さん!」
「ん?」
出入り口から聞いたことのない声が聞こえた。かなりトーンの高いその声の主は・・・
「・・・オフニャ!?」
そう、レア度の高い、人の形をしたオフニャ四人だ。なぜここに・・・?それに全員なにか焦っているような感じだ。
「どうしたんだ?こんな時間俺の元に来て」
そう聞いたら、うち陰陽師のような格好の、
ビシャマルが━━━━
「はやく逃げるのじゃ!そうでないと、指揮官さんはここに閉じ込められてしまうのじゃ!!」
「・・・!?どういうこと?」
「指揮官、実はこれはカンセンたちの仕業なんだよ・・・!」
黒い軍服のスティイルがそう言う。そのつぎに紺のドレスをきたライムがこう答えた。
「指揮官さんがずっと来なかった間、ここの技術力を結成させて生み出され《時空転送装置》のせいなのですわ!
指揮官さんがそちらで言う、ログインをした際にやっとつながる時空を装置で開いて、あなたはこちらに連れてこられたのです!」
「はぁ!?そんなバカな!?」
ついそのような声が出た。けど赤い軍服のジャスティスが、真剣な顔でこう言った。
「本当なんです!!その転送装置は、できただけでも奇跡と言える代物なんですけど、もうその機械が保てなくなってるです!だから早く出ないと閉じ込められるんです!」
「・・・いや、急にそんなこと言われても」
「お願いです!信じてください!!」
指揮官指揮官、と必死に呼び掛けてくるオフニャたち。けど自分はどうしても信じられなかった。なぜ閉じ込めようとするのか、それが本当なのか。
だが予測はできた。それは自分が長期に渡ってここを放置してしまったからだ。だからカンセンたちは自分をここに閉じ込め、二度と自分をここから出さないようにする、と言うことだろうか・・・
とにかくそうなのかと、聞いてみると案の定だった。けどそれでも信じれない。
「早く来て下さい!手遅れになる前に!!」
考えているうちに、ジャスティスがこちらの手を引っ張って来た。小さいからだで引っ張られたため、自分も腰を低くして連れ出されてしまい、よろけそうになる。
そしてトイレから出た直後━━━━━━━━━
「どこ行くのです?」
「「「「ッ!!!」」」」
少し離れたところに綾波がいた。それほど時間はたっていないはずなのに、しびれを切らして出てきたのか。
・・・いや、様子が変だ。綾波の瞳をよく見ると、生気が見られない。それにさっきの声も異様に低かった。
「・・・なんでオフニャが、こんなところにいるんですか?」
「ヒッ・・・!」
四人が綾波に怯えている。なぜだ?
「っ!!」
そう考えていたら四人とも急に逃げ出した。綾波の雰囲気はたしかにおかしかったが、なぜ逃げなきゃならないのか・・・。
「・・・指揮官、あのオフニャたちになにかされたんですか?」
「えっ・・・」
「答えてください・・・」
おそらくさっきの会話については話してはいけないだろう。ごまかすことにする。
「・・・見せたいものがあるっていわれて」
「なにを見せたかったのですか?」
「さぁ・・・連れていかれなかったから、わからなかったけど」
「そうですか・・・」
と、納得したのか彼女が近づいてきた。・・・そのとき綾波の眼を合わせていたが、なぜが恐怖心が沸いた。まるで底に吸い込まれそうな、光がなく深いその瞳に。
自分の横につきながら腕を掴んでくる綾波。その力は強く、絶対に離れないように体をつけてくる。そして今度は彼女に連れていかれた。
「・・・指揮官」
また低い声を出した。その声に初めてあったときとは違う緊張が走る。
「・・・もう、絶対にどこにもいかないでください。絶対に・・・じゃないと・・・綾波は・・・綾波ではなくなってしまいます。
だから・・・
一人に、しないで━━━━━」
そんな1人の少女の、今にも泣きそうな声が自分にひどく響いて聞こえた。
━━━━━━━━━━━━
『わー!ここが新しい家!?』
『といっても、リフォームしただけどね。けど中はすっごく変わってるよ』
『ホントに?・・・わぁホントだぁ!ボクここに一生住みたい!!』
『ふふ、けど結婚して子供を産んだら、こんどは自分で家を買わなきゃいけないよ』
『ううん、ボク結婚しない』
『あら、どうして?』
『だってお母さんとずぅっと一緒にいるもん!!』
『まぁ!お母さん嬉しい!』
『ずっとこの家で暮らそうね!お母さん!』
『・・・えぇ、ならずっと元気に育っていってね
○○━━━━━━━━』
━━━━━━━━━━━━━
「・・・」
食堂で今日見た夢を思い出した。小さいとき家をリフォームして母さんと約束した夢だ。
「・・・」
「・・・指揮官、どうしたんですか?ボーっとされているようですが?」
「・・・えっ、あっなんもないよ」
Z23ことニーミにそう言った。周りを不振に思われないよう何もなかったかのように、味噌汁を飲む。
暖かい汁が体の体温をほどよく上げてくれる。とても美味しい。何回でも飲めそうだ。
・・・だけどこれじゃない、って思ってしまった。自分が知っている味噌汁はもっと、安心できるような・・・素朴だけどそれがよくて、豆腐かワカメかしか入っていなかったけど、それが美味しくて、お椀がご飯用だったときがあったけど、それはそれで楽しくて。
ここにはない親しみが、あそこにはたくさんあった。
その後平然としたフリで朝食を食べたが、何人かには不振に見られたような気がする。けど今はどうやってここから出ないといけないのかを考えなきゃいけなかった。
━━━━━━━━━━━━
綾波を説得してオフニャハウスに訪れる。幸いにもオフニャ以外はおらず、落ち着いて会話ができる。
「ジャスティス、この世界から出るにはどうすればいいんだ?」
「時空転送装置を使えば元に戻れるはずです。場所もわかりやすいところにあります」
「どこにだ?」
「裏の大きくて堅牢な門を知ってるかい?その門が転送装置そのものなんだ。実はこの鎮守府ができたときからあったんだけど、元々は全然開かなかった。けど指揮官が来なくなったときに、その門が鍵になるのではないかと思われて明石たちが調べたんだ。そしたら、鏡面海域と似た反応があって・・・」
「それで繋ぐことができた・・・と言うわけか。恐ろしいな、この世界の技術力・・・」
ホントに関心ができてしまう。嬉しくも思うけど、恐ろしくもあった。そうえばその装置は期限がどうとか言ってた気が・・・
「・・・それについてなのだが、はっきり言って今日限りなのじゃ。本日の24時・・・つまり、日が変わると同時に、あの門は完全に閉まり、もう出れなくなるのじゃ」
「なるほどね・・・たしかに短いな。だがどうやって出れば・・・」
「みんなが寝静まったときがいいですわ。だから23時半ごろに・・・」
「OK。オフニャたちはどうする?」
「私たちはあらかじめルートを確保すると同時に、見張っておきます。まずはあのときのトイレに来て下さい。そこの窓から出ましょう」
「わかった。念のために聞くが、もしバレたら・・・?」
「急いで門に向かってください。もちろん捕まったら・・・」
「ゲームオーバー・・・か」
赤城や大鳳あたりが危ないだろうか・・・いや、綾波もきっと黙ってはくれないだろう。今夜もまた添い寝をしてくると思う。だからまた説得しないとな・・・
「指揮官さん、チャンスは一度っきりだよ。だから絶対に失敗しないでね」
「ああ、俺にも帰る場所がある・・・だから綾波たちには悪いけど・・・」
「・・・うん、拙者たちも辛い・・・でも仕方のないことなのじゃ」
可愛らしい部屋に相応しくない、重い空気がハウスを覆った。なんせこっちから一方的に出ていこうとするのだからな・・・
━━━━━━━━━━━━━
昼、夕方をなんとか過ごして、再び夜が訪れた。そして作戦決行の時間、自分は動き出した。
一緒に寝ている綾波から離れ、ベッドから降りる。
・・・もしかしたらもう二度と会えない・・・せっかく会えたと言うのに・・・。正直にいって申し訳無い気持ちで一杯だった。だけどもう止まれない、帰る家に行かなければならないのだから・・・
自分は綾波の頭を撫でて、ごめんな、と言って廊下に出たのだった。
━━━━━━━━━━━
ジャスティスたちの案内のもと、裏側にたどり着いた。門の近くにスティイル以外、人は誰一人もいない。
「・・・見張りもいません。一気に駆け抜けましょう!」
そうして四人は全力で走った。なんとか脱出することができる。そう思いながら道中の真ん中を差し掛かったそのとき━━━━━
「どこに行かれるのです?指揮官さま?」
「「「ッ!!!」」」
いつの間にかもう片方の裏側に来るためのところから、赤城が現れた。
いやほかにもいる、加賀もいるし、愛宕や大鳳、準鷹に鈴谷、山城に扶桑、ツェッペリン、ティルピッツ、クイーンエリザベス、ウォースパイト、シリアス、デュークオブヨークにホーネット、ハムマンまでも、とにかく沢山のカンセンがいつの間にか集結していた。
「そんな・・・いつの間に・・・!?」
「・・・まさか、まさかとは思っていたが・・・オフニャたちの陰謀だったとはな・・・あらかじめ装置の期限日に隠しカメラを張っていた甲斐があった」
「あっはは・・・まぁ軍事施設にカメラ設置するのは当然だよなぁ」
「この庶民・・・!せっかく再開できたと言うのに・・・あの感動を踏みにじるつもりなの!!」
「・・・これほどこの世全てよりも、卿を憎んだことはないぞ。指揮官」
「・・・もう呆れがすぎて、笑ってしまうぞ・・・超大バカ指揮官・・・!」
不味いなぁ、門までの距離はこっちが近いけど、あっちは艤装を持っている。実弾はさすがにしてないだろうけど、どっちにしろ危ない・・・
これは詰みか・・・
そう諦めかけたそのとき、
「そんなことして指揮官が喜ぶと思っているのか!」
後ろからたくましい声が、その正体は。
「エンタープライズ!!それにクリーブランドやベルファスト、にジャベリンまで・・・!」
こちらも艤装を着けた沢山のカンセンたちがいた。しかし赤城たちとは違い、物騒な雰囲気はなく別の意味で真剣な顔をしていた。
「・・・エンタープライズ、本当にこれでいいと思ってるのかしら?この門を通せば・・・指揮官様と本当に二度と会えないのよ・・・?」
「確かに悲しいさ、けど一番悲しんでるのは指揮官、そしてその指揮官の家族なんだ!」
「みんな知ってるんだろ!指揮官にも家族が、帰るべき場所があるって!どうしてそれがわからないんだ!!」
「わからないわけないよ!けど・・・もう嫌なの・・・見捨てられるのは・・・もう離ればなれは山城は耐えられない!!」
「私は・・・指揮官がいなくなってしまったら、北の大地よりも凍てつく日々をすごさなければならない。そんなのとがあったら、もう私は自我を保てなくなる。だからなんとしてでも、ここに・・・!」
「下僕の癖に私たちを一度捨てたのが悪いのよ!!だからもうここに閉じ込めてでも絶対に止めてやる・・・!二度と消えないように!」
「それが反ってご主人様の首を閉めることを、なぜわからないのです!ご主人様だって、こんなことは望んではいません!」
「メイド長・・・それは絶対に後悔します。ご家族には大変申し訳無いと思いますが・・・誇らしきご主人様の居場所は、ここが一番いいのです!」
言い争いでヒートアップしてしまうカンセンたち、そしてその最終的な答えは、自分に向けられた。
「指揮官様、あなたは・・・どうしますか」
全員がこちらを凝視した。・・・ここまで賛否両論になると考えたくなってしまう。けどもう時間がない、だから自分は、
赤城たちを見ながら、エンタープライズたちに背を向けながら、後ろ歩きをし、こう言った。
「・・・赤城、みんなの気持ちは本当に言ってとっても嬉しい。ずっとここにいたいっても思ったことがあるくらい。だけど・・・
俺は、帰らなきゃいけないんだ・・・!」
オフニャとともにエンタープライズとクリーブランド、ベルファストの近くに来る。わざわざ引いたのは、万が一弾が当たらないためだ。
「オフニャたち、ここまでありがとう。ここはもう危険だからもう離れて」
「はい、指揮官さん、どうか御武運を!」
四人のオフニャが消えていった。それを見届けたあと、自分は赤城たちを見ながらエンタープライズに問いかける。
「・・・ごめんな、エンタープライズたち。また、しかも永遠に辛い思いをこれからさせようとしてしまって・・・」
「気にしないでくれ・・・しょうがないさ、あなたにだって家族がいるんだろ。私も画面越しにだが、指揮官の親を見たことがある」
「そっか・・・それで、どう突破させてくれるんだ?」
「ご主人様は真後ろにいるジャベリン、ラフィー、ニーミのそばに付いていてください。私たちが先陣を切ります」
「わかった、合図はどうする?」
「勝手に始まる知れないけど、指揮官のタイミングで始めてくれ。私たちが守ってやるから・・・!」
「OK・・・!」
クリーブランドの意見を最後に、静寂が訪れる。水滴が落ちる音すらを許さない、途方もない緊張感が、辺りを覆う。ある者はすぐに発射できるよう構えたり、ある者は仁王立ちをしていたり、あるものは、持っている剣を構えたり。
・・・こんな緊張感はもう感じたくない。ただでさえ身内同士がこれから争うのだから。
だからもう一思いに暴れさせてやるとしよう。もう制限時間はなくなる、ほんの少しの時間なのだから━━━━
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少年はバックステップすると同時に号令を出した。前衛は一気に接近し脱出組は主の壁になり、奪還組は第一陣として突っ込んだ。
そして鼓膜がすぐに破けそうな爆音が、辺りを響かせた。弾丸が、戦闘機が行き来し、混乱があっという間に出来上がる。
ジャベリンは少年を手を引き、ラフィーとニーミと共に門へ走った。
道中さまざまな妨害等があったものの、それらを必死に掻い潜った。
そして門の目と鼻の先に着きそうなとき、強制的に足を止められた。
理由はいつの間にかできた門番ができてしまったせいだ。そしてその門番は・・・。
「絶対に・・・絶対にいかせない、です・・・!」
少年のケッコン艦、綾波だった。
「・・・やっぱりかぁ」
「綾波ちゃん!どいて!じゃないと指揮官が・・・!」
「嫌です!綾波は・・・綾波こそが、指揮官の家族です!!」
「だめ・・・これ以上困らせるなら、撃つ」
「ならこちらも!」
「綾波・・・まさかこんな形で、やりあわなきゃなきゃならないんだなんて・・・!」
「・・・まって」
少年が止めに入る。ジャベリンたちにそう言ったあと、綾波に向かってなにも持たず、完全に丸腰でそのまま近づいていった。
「指揮官危ない!」
「大丈夫だって、俺に任せて」
なんの確信があって彼女に近づくのか、少年は緊張しながらもしっかりと近づく。
綾波はそれを待ってくれていた。お陰で話し合うために十分な距離を詰めれる。
「・・・綾波、そこ通っちゃだめ?」
「ダメです」
「あっちには俺の家族がいんるだ」
「それでも・・・」
「じゃあどうやって通してくれる?」
「どんなことがあっても、通しません」
「そっかぁ・・・」
あのときと同じ、瞳に光がない。こうなってしまったのは間違いなく自分のせいだ。もう彼女にはどんな言葉を投げ掛けても届かないだろう。だから自分は言葉ではなく、行動で突破を切り開こうとした。
まず綾波に更に近づく。その距離は体が触れあう直前ほどに。
綾波はまだ止まってくれている。指揮官の逃げるという行動以外を彼女はずっと待ち構える。
少年は目を瞑り深呼吸をする。ある行動をするためには、十分な心の準備が必要だった。
・・・・・
目を開く。準備は整った。
少年は綾波の顔を、
両手で優しく掴む。
そして━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━唇同士をつけた。
「・・・・・???」
彼女は時が止まったかのように、周りの音が聞こえなくなり、少年意外が見えなくなった。
顔の一部が急激に熱くなる。それ以外はまるで機能を停止してしまったかのように、持っていた剣を落としてしまう。
なにをされたのかは全くわからなかった。それは脳が急にたったひとつながらも、莫大な情報に襲われたため処理が追い付かなかった。
唇同士がやっと離れたあとも、処理が終わらなかった。
だが現実の時間の流れでは3秒たったときには、目の前に愛すべき人がいなくなったのに気付き、急いで守るべき門の方に振り向く。
そしてそのときには、すでに開かれてしまった。
彼女は手を伸ばす。だが正気に戻るのが遅すぎた。
彼女は止めようと叫んだ。だが少年は━━━━━━━
「じゃあな」
そう一言述べて、後戻りのできない奥に走っていった。
そして強い光が放たれた。
その場にいた全員が光に襲われ、目を腕で塞ぐ。
その光は10秒も続かなかった。だがその光が消えてしまったときには━━━━
門は始めにあったときのように、強く閉ざされてしまっていたのだった。
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(・・・あれ、俺なにやってたっけ・・・)
(たしか・・・家に帰って・・・ゲームやって・・・)
(そしたら綾波たちにあって・・・それから・・・)
「・・・━━!━━━!!」
(誰かが俺を呼び掛けている。誰だろう━━━━━)
「━━━━━起きなさい・・・!ねぇ起きなさいよぉ・・・!お願いだから起きて・・・!!」
「━━━━━━母さん?」
「!!!」
母が驚いた顔をしてこっちを見る。その顔は涙でグチャグチャになっていた。
「・・・・・!?」
「・・・・・母さん?」
しばらく目を合わせていたが、無意識に周りを向いてしまう。屋根はいつも自分の部屋で見る白い天井、勉強をするための机に、テレビゲームが見えた。
「・・・・・」
「・・・・・」
再び母と目を合わせる。しばらく沈黙が続いたが、母が先に口を開いた。
「・・・今までどこに行ってたの?」
「・・・・・えっと」
「部屋にもしかしたらいつの間にって思ってたけど、やっぱりいなくって・・・かと思っていたら・・・スマホがいきなり光だして・・・!」
「・・・えっ?」
「その光が消えたら・・・いつの間にかあなたがベッドで寝ていて・・・!」
「・・・・・」
「・・・・・なんなの・・・そんなに・・・そんなに困らせたいの・・・!?もう・・・すっごく・・・すっごく心配したんだから・・・!!」
また母は泣き出した。それと同時に抱きついてきた。そのときに感じだ温もりは、親からしか感じることができない、確かな安心感が、こちらの体を通じてきた。
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あれから暫くの時間がたった。アズールレーンのアプリは残ってはいるものの触れてはおらず、またずっと放置をしてしまっている。
しかしあのアプリを使ってしまったら、また連れ去られてしまうかもしれない。だから目立たないところにアプリをおいて誤作動しないようにしている。
今でも鮮明に覚えている・・・彼女たちの存在を。最近アズールレーンのアニメが放送されているが、正直にいってインパクトに欠けた。やっぱり本物のなかの本物は違った。といってもそのアニメも面白いのだが。
彼女たちは今頃なにをやっているのだろうか・・・なんとか元気にやっているだろうか・・・そんなことを考えることが、自分の日課になっていた。
・・・さて、今は学校に登校して自分の教室に向かった。入ったあとは自分の机について鞄から小説を取り出すと、机の横に鞄をかけた。
その本をいざ読もうとすると、後ろから声をかけられた。
「なぁ・・・ちょっといいか?」
「ん?どうした」
相手は幼馴染みだった。学校ではよく話し合っているが、なにやら困った顔になっている。どうしたのだろう。
「お前さ・・・スマホを一度変えたよな」
「ああ、前に壊れて、別のを買い換えたけど?」
「そんときによ・・・スマホのゲームデータってさ・・・その、アプリを開いてログイン画面が出るじゃん。そのときにさ・・・
《引継》ってアイコンあるだろ?一部だけど」
「あぁ、あるな」
アズールレーンにもそれがあった。しかしそれがなんだろう、正しいワードを入力しても、データを引き継げなかったのだろうか。
「それでさ・・・引き継ぎ番号、お前入れたことがあるか?」
「あるよ。それで前のスマホからデータを引き継いだけど」
「そうか、でさ!!ここからが重要だけどさ!!・・・そのときに・・・
『画面が強く光らなかった』か??」
「・・・は?」
「・・・実はよ、俺さ、適当に番号を入れたらよ・・・光ったんだよ・・・画面が」
強く光った・・・!?たしかあのとき、アズールレーンの世界から戻ったとき、母さんが自分のスマホが強く光ったって言ってたけど・・・
「画面が光ることって・・・あるか?」
「・・・いや、そんなことなかったけど・・・そのときに入れた番号覚えてる?」
「あー、テキトーだったから覚えてないけど・・・」
「で、そのあとは・・・!?」
「・・・そのあとは・・・その・・・」
幼馴染みが顔をそらす。とても言いにくい内容のだろうか・・・けど自分はどうしても気になったので追究しようとする。が、
「みなさーん、席についてくださーい」
教師が現れて周りの人たちは、自分の席にもどる。幼馴染みもそれに便乗して戻っていった。せっかく聞こうとしたのに。
教師が教卓につく。その顔はなんというか、何かに期待しているような顔だ。
「えー、皆さんにすごいお知らせがあります。なんとこのクラスに・・・
転校生がやって来ました!!」
その発言により、クラスメイトは騒然した。誰が来たんだろう、どんな人が、男か、女かで皆騒いでいる。・・・しかし、幼馴染みだけは顔が察したような、すでに知っているような顔をしていた。そしてなぜかこちらと目を合わす。その目はなぜか悲しみの同情的なものだった。
「皆さん静かに!!今から紹介をしますので落ち着いてください」
教師の一言で落ち着く皆。そして教師は、扉の方向を向いてこう言った。
「それでは、お入りください」
ガラッ
扉が開いた。そして転校生らしき人物が入ってきた。幼馴染みを除く周りの皆は目を丸くした。それはとても綺麗な、どことなく変わったような女性が入ってきたことでの驚きだろう。
・・・だが自分は別の意味で、絶対にありえないような、あのとき《あの皆》にあったときのような驚愕な顔になった。
彼女はベージュ色の髪をしていた。
そしてその髪は、ポニーテールの形をしていた。
さらに彼女には深い橙色の瞳をしていた。
・・・なぜ、なぜ彼女が・・・ここに・・・!!?
そして思い出した、幼馴染みとの会話を。まさか・・・そんな偶然が━━━━━━!!!
━━━━━━━━━━━━━━「綾波、っていいます。よろしくです。そして・・・」
彼女は皆の前に立ち、自分の名前を言った。そしてこちらに顔を合わせて、笑顔でこう言った━━━━━━
「もう、絶対に逃がしません━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━指揮官」
また、光のない瞳と目を合わすことがあるだなんて、
一体、誰が予想できただろうか。
だがこれだけは言える。
それは、自分は再び彼女との、
《綾波》との再開を果たし、
そしてこれからは、
絶対に彼女から離れられない日々を、すごさなければならないことを、
自分はそう確信をせざるを得えないのだった━━━━━━━━━━
━━━Fin━━━