~~~
ある日の3人
「ニコラス・フラメル……ニコラス・フラメル……何処かで聞いたことあるはずなのに……」
「こっちの本も駄目、ニコラスの二の字も出てこないよ」
「これも駄目だ…ニコラスは一体何者なんだよ!」
図書館、いつもの3人組は積み上げられた本の中、声の音量を下げて話し合っていた。
ハグリッドが漏らした情報…ニコラス・フラメルという人物の情報を探して図書館に入り浸っている状態だ
「もう一度ハグリッドに鎌をかけてみる?」
「いいえ、流石にあのハグリッドでも警戒している筈よ」
「ならどうするんだよ…ニコラスを探しだしている間に三頭犬が出し抜かれるかもしれないのに!」
「………いっそのことジェーンにニコラスのことを聞いてみるか?」
図書館の片隅で一人黙々と分厚い呪文集を読んでいる少女に目をむけた。
夕日が少女の銀色の髪を赤く染め上げている。
窓の外に見える赤い雪景色と相俟って何処か幻想的で人間味をおびていない。例えるなら一つの絵画、もしくは完成した高級人形。
「……いえ、止めておきましょう。これ以上彼女を巻き込まない方がいい」
頷きあう3人
彼女なら答を知っているという確信はあるのだが、ジェーンは黒幕であるスネイプに脅されているかも知れない。
ハリー達が嗅ぎ回っていることが露見するかもしれないし情報を聞き出す為にジェーンに酷い事をするかもしれない……と判断した。
「大丈夫!フラッフィーもダンブルドアも居るんだいくらスネイプでも迂闊に動けない筈だ」
クリスマス
大半の生徒は実家に帰省して家族と共にクリスマスを迎えている。
4人部屋なのだがハーマイオーニー、ラベンダー、パドマは帰省しているのでとても静か。2度寝しても誰も咎めない……幸せ
目が覚めるとベッドの横にプレゼントが置いてあった…
大半はクラスメイトの物だが面識のない上級生からの物も中にはある。
やっぱりあれか?トロール討伐やあのスネイプ教授に楯突いた事でガッツがあるとか思われてしまっているのだろうか?
トロールの件は完全に偶然なんだけどな…
などと思いながらプレゼントを開封
悪戯呪文集、基礎防衛学書……次の包みからは……また本だ
このプレゼントのチョイスは図書館に入り浸って居るからかな?
嬉しいのだが自身に変なあだ名が付いていないか心配だなぁ…
小さな薄い封筒の様な袋
「フレッドとジョージ……ロンのお兄さん達から?」
開けてみるとジッパーの中に乾燥した7つ葉が入っている。
一緒入っていた手紙には……
『メリークリスマス、ジェーン!
いつも弟が世話になっている様だな?良かったらこれでハッピーになってくれ!マグルの間で流行している幸運の葉っぱという話だ。ため息の多い君にはうってつけだと思うぜ?』
「………ありがとうフレッド&ジョージ」
>>ジェーンはジッパーを開けずにゴミ箱へとシュートした。
次の包みは小さな物だ
「これ…ハーマイオーニーからだ」
私が彼女に送った『サラサラストレート縮毛矯正剤』は気に入って貰えただろうか?と思いながら開封すると中から見覚えのある瓶が顔を出した。
『ふわふわ縮毛矯正剤』
ハーマイオーニーへのプレゼントを買った店で購入した物の横に陳列されて販売されてた薬だった。
「……………ハーさんや……私のは天然ではなくてヘアスタイルなのだよ……」
凄く複雑な心境だ
~~~
朝食後、妙にテンションの高いフレッドとジョージに連れられて雪合戦。
班分けはパーシー、ハリー、私vsロン、フレッド、ジョージ
(開始直後にパーシーは浮遊魔法をかけられた特大の雪玉を頭から落とされた上に集中砲火を受けて一瞬で雪ダルマにされていた)
最初こそは「キャキャキャ」「ウフフ」程度の微笑ましい雪玉の投げ合いだったのだが、ここは頭のネジの外れた輩が多数居るホグワーツ。その程度で終わる筈もなかった。
「嘘だろ!?壁を抜いたぞ!」
現役クディッチ選手であるフレッドとジョージ
迫り来る鉄球を棍棒で打ち返す程の腕力から繰り出される投球は最早凶器と言っても過言ではない。
盾がわりに作り出した雪の壁を軽々と貫通しハリーへと着弾した。
「誰か!衛生兵!」
尚も放たれる雪玉は壁をあっという間に蜂の巣にしていく
「降参よ!」
両手を上げて敗北をアピールするジェーン
「どうするよ、兄弟?」
「そうだなー俺達は紳士だ」
「そうだなー俺達は紳士だ」
「つまり………」
双子が互いに顔を見合せて口元を歪める…嫌な予感がする
「「男女平等」」
双子が予想通り投球フォームをとる
対するジェーンの行動は早かった
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)」
「アクシオ(来い)」
背後の作り置きしていた雪玉が一斉に宙を舞い、呼び寄せ魔法の影響を受けてジェーンめがけて凄まじい速度で飛来する。
本来であればジェーンが雪ダルマになる所なのだが今回はそうはならなかった。
ここで問題だ
Q:呼び寄せ呪文を途中で打ち切ったら移動中の物体はどの様な軌道を行うか?
答えは簡単だ
魔法により移動した物体だが、途中で誘導を打ち切られた時点で軌道は魔法的なものから物理法則へと変化する
A:慣性の法則に従い、空気抵抗で緩やかに減速しながら重力に引かれて放物線をえがく
雪玉がジェーンに殺到する瞬間に彼女はヒラリと回避した
ジェーンが居た地点を通過して勢いをそのままに、放物線を描きながら前方へ
雪玉は10m先のウィーズリー家を飲み込むどころか50m先の城壁まで届き次々と白い弾痕を刻む。
その日、雪合戦には身合わない……まるでキャニスター弾が着弾したような『ズダンッ』という効果音が響き渡り幕をおろした。
~~~
「……で雪合戦の時のあの魔法、一体どうやったんだい?あんな魔法僕、見たことないよ」
夕食後、談話室でロンがハリーとチェスをしながら私に問いかけた。余裕のロン、対するハリーは次の一手をどう攻めるか頭を悩ませている。
「魔法が発動する原理をある程度理解していれば応用がきくものよ」本から目を離すことなく答える
「「??」」
ハリー達は意味を理解していない様子
「魔法って同じ結果を残すものが複数あるの…例えば『ウィンガーディアム・レヴィオーサ』と『アセンディオ』どちらも浮遊術よ
他にも『エクスパルソ』『コンフリンゴ』は爆破魔法
魔法使い達は状況に応じて膨大な量の魔法の中から適切な魔法を選択して使用するのだけど同じ効果を残すのならわざわざ複数覚えて使い分ける必要はないのじゃないかってね」
「魔法は効果、対象物、範囲などは使用者の技術で補えるの。ベースとなる魔法を一つ覚えていてそれを応用させた方が効率がいいしとっさの時に間違わない……そう思わない?まぁ、ハーマイオーニーが聞いたら怒りそうだけど」
「授業じゃそんなこと聞いたこともないよ…」
「まぁね……自身が作った魔法が後世に受け継がれるのは名誉なこと
才ある魔法使い達はこぞって呪文を開発してオリジナルの魔法として残したがる…既に同じ様な物があったとしてもね。
そしてそれらをかき集めて溢れかえったのがのが今の現状
誰もその事に気付かない、触れようとしないの」
「へぇ~マーリンの髭!」
「………貴方達も呪文集を読んでいればわかるわ」
分厚い参考書を見せるジェーンにロンはウゲーとうめき声をあげる
「遠慮しておくよハーマイオーニー」
「……………」
本に目を戻すとディフィンドという魔法が目に入った
対象を引き裂く呪文……少しは使えるものだといいな
~~~
クリスマス、深夜
ハリーは手に入れた透明マントを頭から被り図書館を目指す
既に一般書はかなりの量に目を通しているがニコラスという人物に一向にヒットしない。ならば、一般書物ではないのではないかと……
ランプを持った手だけをマントの外に出して辺りを照らしながら暗い廊下を歩く
『ガタッ』
背後からした物音にハリーは息を飲む
(大丈夫!ランプをマントの中に隠せば周囲からは僕の姿は見えないはず!)
音のした方を注視するが人の気配はしない。
気のせいがと気を弛めた瞬間だった
「動くな!」
「!」
突然背後から声をかけられた。背中には硬い尖ったものの感触がある。
背中に杖を突きつけられてハリーは「ヒィッ」と口から情けない声が漏れてしまった
音をたてなければ誤魔化せたのだが致し方ない。
「吐け!」
(吐けって!?情報を吐けばいいのか?何の情報を?)
「言うんだ!」
(くそ!こうなれば自棄だ!)
「ス……スネイプ教授は女子児童を脅迫している変態だ……」
「女子児童?それは誰だ!」
杖で背中を押され回答を促された
「女子の名前はジェーン…銀髪でとても可愛らしい……」
「……………」
「……………」
クスクスと笑い声が聞こえハリーが振り返るとそこにはジェーンが腹を抱えて笑っているところだった。
「ふっw………フフフww私が脅迫されているなんて初耳だよ~」
「ジェーン!?さっきの声は男性だった筈……」
例えるなら30~40代くらいの渋い男性の声だった。
「『精力をもて余す』ふふふ…これくらい魔法を使わなくても出来るよ」
内容はさておき、確かに先程ハリーを尋問した声と同じだった。
「さてと…この方向なら図書館に行くのかな?それならご一緒してもいい?」
「う……うん……」
……彼女には驚かさせる事ばかりだ
~~~
クリスマス深夜
生徒寝室へ入り込んだダンブルドアは綺麗に包装された包みをそっと生徒の枕元に置いて寝顔を眺めていた。
その姿はまるで父親の生き写し。
今は瞼で閉ざされているがその目は母親の様な輝きを見せるであろう。
少年を見ていると今は亡きかつての教え子であり、友人の姿が目に浮かぶ様だった。
「おぬしはワシを恨んでいるじゃろうか?」
思い返せば後悔する事ばかり。
もし、あの時別の選択をしていれば…
もし、あの時これを借りていなければ…違った未来が訪れていただろうか…と
「儂を歳をとったものじゃ…」
まるで我が子を見つめるような優しい眼差しで老人は少年の寝顔を眺めていた