鏡の中のアリス   作:ブルーな雛菊

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原作とは別と思っていただけると丁度良いですが
原作読まないと『説明をはしょってる』所がありますので……あしからず(´・ω・`)


塗り立ての黄金林檎

「何で……何故貴方がここにいる!?」

 

炎を抜けた先、中央に鏡が置いてあるだけの何もないホールの様な広い広場でハリーを待ち構えていたのはスネイプでも『例のあの人』でもなかった。

 

「答えて下さい!クィレル先生!」

 

ゆっくりと振り返りハリーへと顔を向けるクィレル教授。

 

 

「わ、私は…スネイプ教授にお、脅されて秘密をは、話してしまった………とでも言うと思ったかね?」

 

いつもの挙動不審、痙攣した顔、自信のない雰囲気から一変。

堂々した態度にかわり威圧感まで感じる。

これが本当にクィレルなのか?

僕を殺そうとしたのはスネイプの筈…何故クィレルが?

 

「でも、スネイプは僕を殺そうとした!」

 

「それは私だよ、ポッター君。クディッチの時にスネイプが反対呪文を唱えなければ君をもっと早く叩き落とせた。」

 

「貴方が……」

 

「左様、『好奇心は猫を殺す』という言葉をご存知かね?君はあちこちに首を突っ込みたがる……私はね、とても君が目障りでしょうがないのだよ…」

 

スネイプが僕を助けようとしていた?

 

 

「おやおや、信じられないって顔をしているぞポッター君。では、教えて差し上げよう。グリンゴッツ銀行から石を奪おうとしたのは?『私だ』ハロウィンの日にトロールを校内に引き込んだのは?それも『私だ』スネイプと共にいると『イビられている可哀想なクィレル』と周りが勘違いしてくれるから非常に助かったよ。」

 

「無駄話は終わりだ、ポッター…こっちに来て石を探すのを手伝ってもらおうか?」

 

クィレルがパチンと指を鳴らすと何処から現れたのか、縄が出現してハリーを縛り上げた。

 

「私には石を手に入れてご主人様に献上している姿しか見えなくてね。さぁポッター、鏡に何が見える?」

 

 

鏡の前につき出すクィレル。

『みぞの鏡』鏡の前に立つものの望みを写す鏡

 

(クィレルよりも先に石を見つけないと……)

 

『石を使う』事ではなく『石を探し出す』事を望むハリーに、鏡の中に写るハリーは微笑み石を自身のポケットの中へ入れた。

 

「良くやった!小僧、石を渡してもらおうか?」

 

クィレルのターバンの中からゾッとするような声が聞こえる。

ターバンをほどき、後ろを向くと後頭部にはもう一つの顔が其所にあった。

 

「嫌だ!」

 

「無駄な抵抗はよせ。お前も両親の様に不様な最後を遂げたくはないだろう?」

 

「だが、断る!」

 

逃げるハリーの手をクィレルが掴んだ。

突如悲鳴を上げるクィレル、ハリーを掴んだ手はまるで火傷したかのように爛れていた。ハリーにも頭が割れる様な頭痛が襲う。

 

「殺せ!」

 

クィレルの後頭部から冷酷な言葉が発せられる。

 

(死んでたまるか!)

クィレルの顔を鷲掴みするが振りほどかれ蹴飛ばされる。

ポケットに入れていた石が転がり落ちる

 

「目が!目がーーー!!」

「もうよい、愚か者!我輩が直々に相手をしてやろう」

 

近付くクィレルの足音

その音とは別にもう一つ

 

『ゴツッ』『ゴツッ』と

 

ハリーは薄れ行く意識の中で聞き覚えのある重い足音を聞いた。

 

~~~

炎の中に取り残された私

万が一ということは無いだろうが、ここまで来て結果を待ちぼうけするつもりはない。

 

瓶を開けてナイフの先端を薬につける。

 

「これも毒薬、こちらも……無色無臭、だけどこれも毒薬」

 

ドン!と机にナイフ突き刺す

 

ハーマイオーニーの推理は間違っていないようだ。残る瓶の中身は全部毒薬。ルールに従うなら私はこれ以上先へと進めない。

 

「ルールに従うならだけどね」

 

その証拠に、この先に居る石を求める犯人は薬の入った瓶に手を付けていない。炎を無効化する魔法があるのだろう。

 

「私は知らないけどね」

 

この一年、攻撃と防御を重点的に魔法を探していた弊害か。

その一点だけが突出していて他の基本的な雑学が同じ水準まで追い付いていない。

 

ならば違うアプローチをするだけだ

 

燃焼する物質の消化方法は主に3つ

可燃物を取り除く 除去消化

酸素の供給を断つ 窒息消化

可燃物の温度を引火点以下まで冷却する 冷却消化だ

 

目の前に広がる炎は魔法か物質の燃焼かは分からないが魔法薬学のスネイプ教授ということで薬品が燃焼しているということに仮定する。

とれる消化方法は数種類あるが簡単なもので対処しようと思う

 

『全て吹き飛ばしてしまえばいい』

酸素も……燃焼する薬品も……奥に見える次の部屋への扉も…

 

杖を一振り

「あぁ………骨に染み渡る良い音だ……」

 

業火を消し飛ばし、扉を消し飛ばし、室内を破壊しながら轟音と心地よい突風が部屋をかけぬけた。

 

 

部屋の残骸を越えて最後の部屋へ

『ゴツッゴツッ』と重い足音を響かせて歩く。

 

ホグワーツでは靴に指定はされていない

拘りのない大半の生徒はスニーカーを履くし、スリザリンなどの由緒正しい者は革靴を好む。

 

だが、その者の足音は革靴に近いが重さが違った。

踏み抜き防止用に靴底と爪先に金属プレートで補強されたブーツの音。

 

『バキッ』

 

「あら?ごめんなさい。大事な石ころ踏んじゃった☆」

 

「貴様!!!」

 

こうして侵入してきた少女と教授との戦闘は始まった。

 

~~~

 

目を潰され、利き手は負傷。後頭部の顔で此方を睨みズッシリと構える教授とは対称的に『タンッタンッタンッ』と軽やかなステップを踏む少女。

 

挨拶など交わす事なく呪文は放たれる。

 

 

(いつも通りの間合いで、いつも通りに魔法を放つ)

 

教授の最初の呪文を回避する。

産まれながらの『妖怪糞AIM』の呪いのせいで接近しないと何も始まらない。右へ左へフェイントを混ぜながら接近する。

 

(盾の呪文を私はまだ使えない)

「エクスパルソ(爆破せよ)」

 

牽制で放った呪文は両者の間の床を吹き飛ばした

 

「sit!」

 

当たる事は最初から期待していないが、それは相手も同様の様だ。

防御する気配さえみせていない。

 

 

教授の杖が空気を裂く、呪文が詠唱されて此方へ狙いを付けられる。

 

(回避は無理そうね)

 

盾の呪文が使えないならば『何かを盾にする』までだ

 

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)」

 

破壊された床材の破片を浮遊させて盾にする。

クィレルの呪文が床材を吹き飛ばす。

ジェーンは砂埃の舞い散る中、前進してクィレルへ肉薄した。

 

「フリペンド(撃て)」

「プロテゴ(護れ)」

 

至近距離で放たれた魔法の銃弾は盾の呪文で弾かれる。

お返しとばかりに教授から爆破魔法を放たれるが、ジェーンはその腕を蹴り上げて軌道を無理やりかえた。

 

「ディフィンド(裂けよ)」

「プロテゴ(護れ)」

 

強固な盾の呪文を貫く事は出来ない

ならば揺さぶるだけだ

 

先程爆破された天井から残骸が降りそそぐ、その破片に変身魔法をかけて刃物へ変化させた。

 

教授の盾が前方から上へ……その瞬間

 

「ディフィンド(裂けよ)」

 

スレ違い様に魔法を放ち離脱する。

 

 

 

 

「お見事!なかなか見所のある生徒ではないか」

 

振り返ると片腕が切り落とされた教授が立っている

 

 

「全く……分が悪い。目を潰され、利き手を負傷してやっとイーブンですか」

 

「いやいや、俺様を前にして良くやってる方だぞ?小娘。だが遊びはここまでだ!死ぬがよい!」

 

「……貴方がね」

 

無言で発動した呼び寄せ魔法

発動目標は前の部屋に残したナイフ

 

凄まじい速度で飛来したソレは、ジェーンの前に立ち塞がるクィレルの胸元に深々と刺さった。

 

「ホグワーツ1の魔法薬教授の毒薬よ。効果はお墨付き……」

 

毒の効果はすぐに訪れた

血を吐きながらのたうち回るクィレル

 

「貴方が本当に願いを叶えたかったのなら『ここに』来てはいなかった……」

 

静かになった広間

少女の呟きは良く響いた。

 

 

~~~

 

駆け寄る足音がきこえる

顔を上げると広間の入口にダンブルドアが立っているのが見える。

 

「全て終わりましたよ」

 

「そのようじゃな…儂としたことが出遅れてしまった様だ。」

 

「………」

 

ハリーの無事を確認するダンブルドア。

そしてクィレル……後頭部の顔は既に無くなっていた。

 

「ハリーは?」

 

「無事じゃよ、気を失っているようじゃ」

 

「……そう、少しお時間良いでしょうか」

 

ハリーを抱き上げて引き返そうとするダンブルドアに声をかけた

 

「構わんよ。ただし、あまり時間は取れないがね。ハリーを医務室まで運ばなきゃならぬ」

 

 

「………まずは、賢者の石を破壊してしまい申し訳ありません」

 

「その事なら仕方な「ですが別に問題ありませんよね?元々破壊するつもりだったのでしょう?」」

 

老人の穏やかな表情が一瞬固まった。

 

「何故そう思うのかね?」

 

「まず、警備がザル過ぎます。賢い一年生ならクリアできる程度の難易度の試練。相手はここよりもさらに厳重なグリンゴッツ銀行を攻略したことは貴方もご存知だった筈です。実際、クィレルが時間をかけたのは三頭犬とその鏡だけでした。そして、三頭犬が優秀でも飼い主が無能ならば意味がない。言いたいこと…貴方なら分かりますよね?マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い…アルバス・ダンブルドア」

 

情報漏洩を防ぐ為の方法は知っていた筈……

『優しい』と『甘い』では意味が違う。

甘い人間なら騎士団を率いる事も戦争で生き残る事も出来はしない。

ハグリッドを殺す……

ダンブルドア……貴方は本気で石を守ろうというのなら、それくらいは平然とやってのける……ねぇ、そうでしょ?

 

「そうじゃな、儂も他の先生方も襲撃者を過小評価していたのは認めざる負えないのう。そして勘違いしてるようだが今は戦時中ではない。その様な措置をとる必要はないと判断しただけじゃ」

 

 

建前はそう答えるでしょうね、でも本音は違う筈。

 

入学当初の挨拶で一年間は4階の廊下に立ち入り禁止と言ったのは何故?

 

賢者の石を餌に誘きだしたのは理解できる。そのわりに警備がザルだったのは?恐らく犯人が持ち出す事が出来ないように石自体に自壊するように細工をしていたのだろう。故にここまでたどり着き、石を手に入れようが問題はなかった。最初の試練を越えた時点で教師たちが犯人確保の為に動き出さなかったのも頷ける。

 

 

では…難易度の見会わないこの試練は一体誰に向けてのものだったのでしょうか?

 

 

「そうですか……」

必要以上は話すつもりはないと言うことなのだろう。

 

「ではもう一つ。クィレルがハリーに触れなかったのは何故ですか?」

 

 

「それは愛じゃよ。ハリーの母君がハリーを護るために自らの命を犠牲に古の魔法をかけたのじゃ」

 

「そうですか。『愛』ですか……それはいい。とても良い。」

 

一年間のうちに世界中で何万人もの人が死亡している

ハリーと同じような状況の人も少なからず存在する。

ならば、助からなかった人はきっと……

 

 

 

 

 

……………『愛』が足りなかったのでしょうね?

 

 

 

 

 

 

 

クスクスと笑うジェーン

 

「儂からもお主に質問じゃ、其所の鏡で何がみえた?」

 

「さぁ、鏡ですから自身の姿じゃないのですか?そろそろ医務室にハリーを運ばないと可哀想ですよ?」

 

「……確かにその通りじゃな。」

 

ハリーを抱えて立ち去るダンブルドアの姿を見届ける

 

「腐った真実の上を見映えの良い英雄談でコーティングした世界。私から貴方に伝える事など何もないわ」

 

炎に囲まれたあの部屋でハリーを追うように揺らめいた炎……

例え透明になっても存在と自身の質量までは消すことは出来ない。

この場所で最初から見ていたのならば……私が駆けつけずにハリーが死んだ場合も貴方の計画の内だったのでしょうか?

 

「なんて可哀想なハリー……

何も知らず箱庭で踊るハリー(アリス)

 

 

 

 

 




少々無理矢理感はありますね(*‘ω‘ *)


曲の影響を受けているため歌詞を使っている所が多々あります。
『廃墟の国のアリス』良いですよね~
追記:サブタイトルに歌詞を使いたいが為に楽曲コード入れる羽目になりましたw
入れ忘れがないか探さないとw

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