バーノンの秘密の部屋
「いらっしゃい。何もない家だが・・・・自由に腰掛けて寛いでてくれ。お茶を入れてくる。」
そう言い残し、家の主は退出した。
部屋に残された少女は、まじまじと辺りを見回す。
ハリー・ポッターの親友であるロン、その父親である魔法界でマグル好きと名高い『マグル贔屓』のウィーズリー氏がこの家の様子を目のあたりにしたら、きっとこれ以上にないくらい目を輝かせていたに違いない。
・・・・無理もない。ここは彼の憧れるマグルの家、そのものなのだから・・・。
使い込まれ少しくたびれたソファーに腰掛け、招かれた少女は家の主の帰りを待った。
「待たせたな。」
「この度はお招き頂きありがとうございます。担当させていただきますジェーン・ドゥと申します。」
差し出される茶を受け取りながら客人は答える。
低い背丈、張りのある肌、艶のある髪。そして、紡がれる
とても成人した女性とは思えない容姿の客人・・・しかし、家の主は何故か
「長い戦争がありました・・・・世間には露呈しない様な戦いが・・・貴方が軍を去り10年が経ちましたがお変わりはないでしょうか?」
「至って平凡で穏やかな生活が過ごせているよ。」
「夜、眠れない事は?」
「無い。」
「では、トラウマがフラッシュバックすることは?」
「それも大丈夫だ。平和な日常、戦場に居た頃の記憶が夢で出てくるわけでもない。そういう意味では
少女の様に見える容姿の女性はノートに筆を滑らせる。
辺りを見回し、一拍して核心を口にする。
「・・・・でも、何かが足りない。そういった喪失感はありませんか?」
男性の一人暮らしにしては家の部屋数は多い。
綺麗に片付けられた部屋の様子を主は見回しながらゆっくりと口を開いた。
「俺は軍に所属し・・・戦い続けていた。この家を買ったのも退役してから・・・そのはずだ。」
幾多の傷と共に大事に磨き上げられたテーブルを男は指でなぞる。
「ふと、目を閉じると
ーーー俺は結婚したことが無いのにーーー
「一人で街中を歩いていると、目に入ったホビーショップでこの玩具は
ーーー俺に家族は居ないはずなのにーーー
「妻と笑いあった思い出、息子を抱き上げた感触・・・・夢が覚めると同時に薄れていく。」
ーーー独り身の現実と、毎晩夢で見る家族と過ごす自分の姿・・・・どちらが真実なのか分からなくなってくるーーー
「あんたを呼ぶ前に何人かカウンセラーを呼んだ。皆が皆「戦争の後遺症だ」「お前は狂っている」と口を揃えたよ。なぁ、教えてくれよ。俺は狂っているのか?答えを聞かせてくれ。」
「貴方の置かれている状況を
「・・・・あんたも他の奴らと同じか。「もし・・・・もし、その状況を他者が意図的に作り上げているとしたら・・・貴方はどうします?」」
「世の中には知らない方が幸せだという時もある。それでも、貴方は知りたいですか?」
ーーー夢での出来事を信じるというのか?それが真実だというのか?ーーー
存在しないはずの家族の痕跡を辿る・・・
ただの笑い話、口にした自身でさえあり得ないと笑い飛ばせるような非現実的な与太話。だが、対面する少女の瞳には一切の疑いも迷いもなくその先に答えがあると確信している様な輝きがあった。
「では、取引をしましょう。」
男が頷くのを確認した少女は満面の笑みで話を切り出す。
ーーー御代は要らない。全てを思い出した上で貴方には協力して貰いたいことがある。ーーー
一見すると少女のそれは花が綻ぶような笑顔なのだが、男にはナイフを喉元に突きつけられている様な冷たい感覚がぬぐえなかった。
ーーーーー
ジェーンお久しぶり。休日は如何お過ごしでしょうか?
私は勿論、とても忙しくしております。
・・・とはいっても、手持ちの教科書では学べる範囲も限られるし、新しい本が欲しいと思ってる所なの。
(ダイアゴン横丁に気軽に行けるのならいいのだけどマグルの交通手段だと時間がかかるし中々赴けないの。魔法界の手段ならあっという間に行けると思うのだけど・・・)
9/1に新しい教科書のリストが配布されると思うからその後に時間が合えばロンドンで会いませんか?
それと・・・ハリーの件なんだけど。
ロンも私もハリーへ手紙を送ったけども返信が一向に来ないの・・・
ハリーの保護者さんって・・ほら・・・・魔法族を毛嫌いしてるってハリーが言ってたじゃない?
もし、何かの弾みでハリーが酷い目に合ってないか心配で・・・
ジェーンも何か分かりましたら教えてね。(ロンったら放っておいたら違法な事をしてでもハリーを救い出しそうな気がして仕方ないの)
貴女と会える日を楽しみにしています。
ハーマイオニー
「相変わらず苦労性よね…ハーさん・・・」
読み終えた手紙を畳みながらため息を漏らす。
「というか、私もマグル界育ちだから普通に電話掛けてきてくれたらいいのに・・・」
郵便やフクロウを飛ばすよりかよっぽどスマートで効率的だと思うのだけど、その手段を思いつかないハーさんを見る限り、何だかんだで魔法界育ちの魔法使いよりも
とはいえ、ハリーが音信不通なのは気がかりだ。
「私の方も出来る事をしてみようかしら・・」
ーーーーー
ハリーside
魔法を恐れるダーズリー一家。
魔法の力の威を借りて(例年より)平和な日常を過ごそうとしたハリーの計画は、7/31日・・・つまり、ハリーの誕生日に現れた『屋敷しもべ妖精』であるドビーの手によって儚く消え去った。
ハリーの保護者であるバーノン叔父さん。
その大事な取引先の商談の最中にドビーがパイ投げ夜露死苦と言わんばかりに、ペチュニア叔母さん特性の特大ケーキを浮遊術を使ってハリーに投げつけたのだ。
その結果、商談は破談。魔法省から『国際魔法戦士連盟機密保持法第13条』の違反(再度違反すれば退校処分)と警告の手紙をダーズリー一家に読まれるというおまけつき。
ハリーがむやみやたらに魔法を使用できないと分かるや否か、バーノンはハリーを部屋に監禁。少量の食事だけ与えられ、新学期にホグワーツに登校できるかも不透明。
「いや、絶対に登校させるなんてない。
覇気のない声で愚痴を溢すハリー。鉄格子の掛けられた窓、部屋の扉は厳重にロックされ、動物園の餌差し込み口のような隙間から僅かな食料が与えられる毎日。
既に希望なんてハリーにはなかった。
来客を告げるチャイム。
「こんな夜分に非常識だ!」と怒鳴りつける声。
慌ただしく響く足音にもハリーは興味を抱けず、ベットの上にうつ伏せのまま横たわっていた。
既に開かずの間と化した厳重に鍵の掛けられた扉が開かれるまでは・・・
ーーーーー
「いいですか?私が対応しますので貴方は一切話さないで下さい。いつも通り調書を書いている感じでお願いします。」
「しかし、それでは説得力が・・・」
「マグルにはマグルなりの守るべき法があります。今回はそれを利用させてもらうだけです。
家の玄関の前、打ち合わせの様に話し合う男女。
「ああ、わかった。しかし、なんでまた、こんなにも信用が私にはないのか・・・」
男の意見など聞く耳を持たないと言わんばかりに呼び鈴を鳴らす。
時刻は深夜1時を回ったところ。
その静寂を切り裂くような呼び鈴の音を、1回、2回、3回と女性は構わず繰り返す。
開かれる扉。
「こんな夜分に何事だ!!非常識だと思わないのか!」
顔を真っ赤にし、怒りを露わにしたバーノンは・・・
「今晩は。厚生労働省・児童家庭局総務課虐待防止対策室のウィルソンです。こちらは、補佐のMr.ウィーズリーです。この度は児童虐待が行われている可能性が高く、緊急性が高いと判断したため第9条、第9条の4。夜間執行制限の解除・立ち入り調査を行いたいと思います。」
スーツ姿の男女の姿を見て一気に顔色が青くなった。
「なな・・・なんのことかね?何を根拠に虐待などと・・・わ・・私の愛する
バーノンの会話を背後に控えていた男性・・ウィーズリー氏が一言一句間違わずに用紙に記入している様が目に入り無意識に顔を顰めてしまった。
(下手な事は口に出せない・・・)
「ダドリーや!愛する坊や~!起きて来るんだ!何やら
己の体をバリケードに免れざる客を自身の家の中に立ち入れまいとするバーノン。
「ペチュニア!い・ま・す・ぐ!ダドリーを連れてくるんだ!」
「呼び出し中で申し訳ないのですが。今回、我々がここに赴いたのはハリー・ポッターというお子さんの件です。」
「残念だが、その子は今、この家には居らん!親戚の家に預けて・・・あ~泊りに行ってるのでな!」
「・・・因みにどちらに?「あ~~マージだ!ここから離れているのでな!申し訳ないがすぐにはハリーに合わせることは出来ない!」」
顔を見合わせる来客の二人。
「これ以上踏み込むならプライバシーの侵害と不法侵入で警察を呼ぶぞ!悪いことは言わない!今日は帰ってくれ!」
「・・・・本来なら調査および状況把握のつもりで訪れたのですが・・我々としても警察を呼ぶことには同意させて貰います。勘違いしている様なので訂正させていただきます。これは法に乗っ取った調査です。」
警察を呼びたければ呼べよ。寧ろ公務執行妨害で私が呼ぶぞ?と言い放ち、ズイっとバーノンの巨体を押しのけ家宅に侵入する2人組。
「記録を」
「調査を開始。時刻は1:23分。確認をお願いします。」
「横暴だ!国家権力を善良な民間人に振りかざすのか!?非常識にも程がある!」
「・・・常識と、貴方達は決まって繰り返しますが、それは誰の決めた常識なのです?人が人として生きていく上で守らないといけないルールとして法律があるのです。法を侵す様な常識がある筈がないでしょう。」
非常識はお前だと吐き捨てる銀髪の女性。
一言も話さず記録をしている(頭の薄い)男性に目を向けると、これまでの温和な表情から徐々に険しくなっているのを見とれた。
「例えば虐めの末に銃を乱射した少年が居たとします。世間は少年を異常者と罵りますが、少年をそこまで追い詰めた周りの人間は何の罪もないのでしょうか?」
コツコツと2階への階段を登る
「この部屋は?」
「ここはただの物置だ!」
「物置に閂鍵が4つも?「勿論だ!溢れんばかりみっしりガラクタが入っているからな!」」
「では、この異臭は?」
「・・・・
「我々の見当違いなら責任は取りましょう。Mr.ウィーズリーお願いします。」
名を呼ばれた男は懐から棒状の
そして開け放たれた扉。
獣臭、目に入る鳥かごは清掃されていない為か異臭を放っていた。
「これは・・食事?」
部屋の中にはスープ椀が1つだけ。とても
「あいつはまともじゃない!世間の為に!よそ様に迷惑を掛けないようにこの家に閉じ込めていたのだ!ああ、それが虐待と呼ばれようともだ!「それで鉄格子を掛け閉じ込めたと・・貴方には黙秘権がある、不用意な発言は自身を不利にすることがある。」俺達は何もわ「聞こえなかった?『黙れ』と言ったんですよ。」」
「貴方の判断が正しいかはこちらで判断します。Mr、・・・・腕を下ろしなさい。」
月明りの中、男性の腕が自身に突きつけられているのを視界に捉え、腰を抜かす。
怒髪天。初対面の時に見せた人の良さそうの表情が今では鬼の様な怒りと憎悪に染まっていた。
「Mrウィーズリー、ハリーの様子を。」
「Mrバーノン。ハリーの身柄は当方の方で保護させていただきます。当人に状況を確認して必要ならば警察への連絡も考えなければなりません。」
ハリーを連れて退出するウィーズリー氏を尻目に女性は続ける。
「誠に残念ながら虐待防止の重要性などはこの国ではまだ浸透していません。厳重注意、その程度でしょう。ですが、これ以上、あの子に危害を加えるならば・・・」
ーーー
透き通った瞳で女性は告げる。
如何なる方法も辞さないと・・・
捕捉
ジェーン・ウィーズリー氏。ハリー宅を家庭訪問
↓
ハリー監禁の発覚は不味いので身代わりにダドリーを連れて来ようとするバーノン
↓
警察呼ぶぞ!「呼ぶなら呼べよ!寧ろ私達が呼ぶぞ!?」
↓
ハリー発見。ジェーン&ウィ-ズリー氏ぶち切れ
手段を問わない(主に魔法界が)
ジェーンは最終手段として、虐待をマスコミにリークさせて会社の株価を暴落させるって事も考えてたり・・・(;'∀')
取引先の代表が後ろ暗い人物だと分かったら多少変動はするよねw
視点の切り替わりが多いのと、誰の会話か分かりずらいってのはあるかも・・・
口調や話の流れで察してくださいませw