鏡の中のアリス   作:ブルーな雛菊

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入学案内

プリベット通り四番地の住人、ダーズリー夫妻には大きな秘密があった。

 

「おかげさまで、私どもはどこから見てもマトモな人間です」

 

と……胸を張って断言するのが自慢である夫妻は[不思議]や[神秘]など非科学的な事が大嫌いな人種で、まさか自身が身をもって体験する等とは夢にも思わなかっただろう。

 

始まりは10年前。

自宅の玄関前でぐっすりと眠る幼子を保護した事から始まった。

書き残された手紙には自身達が赤ん坊の親戚にあたり、この子を保護する義務と必要性が簡潔に纏められていた。

 

……夜中に訪れ、赤ん坊を此方の同意無しに押し付けるなど非常識と憤慨すれども妻の説得に折れて結局引き取る事になってしまった…というのが事の顛末だ。

 

……問題はその子供の周辺では[不思議]な事が起こるということくらい、

 

 

「さぁ、起きて!早く!」

妻のペチュニアのヒステリックな声。

 

 

当主であるバーノン・ダーズリーは今となっては恒例となったやり取りを新聞を読みながら聞き流す。

 

階段下の物置の戸を叩く音がダイニングまで聞こえてくる。

 

いつも通りの日常、変わらない平和な毎日。

ただ、その日は一つだけいつもとは違う物があった。

 

来るはずのない居候への一通の手紙。

今時珍しい羊皮紙の封筒にエメラルド色のインクで宛先が書かれている。

 

内容は人を小馬鹿にした悪戯の様なもの

 

「魔法学校だと! 人を虚仮にしやがって!」

 

思わず口に出てしまった自身にバーノンは悪態をついた。

 

今時、魔法使いなんて存在しない。

第一に遥か昔に魔法使い等と呼ばれていた輩は結局の所、只の手品師か現代で言う科学者だという証拠が次々と上げられている。

 

こんな低レベルな悪戯に引っ掛かるのは…それこそ[変わり者の甥っ子]くらいなものだろう。

 

切手は貼っていなかった事から察するに、愛しい我が子の愉快な仲間達が悪戯半分でドッキリをあの[出来損ない]に仕掛けたってところだろうか。

 

「悪戯小僧達にはダドリーにお灸を据えて貰わなければな!」

 

微笑ましい悪戯に大人が介入するのは[マトモじゃない]。

子供のジャレ合いは子供同士で楽しむべきだ。

そうバーノンは結論し、微笑みながら封筒を破り捨てる。

 

魔法……仮にそんなものが存在するとしてもその者達からは10年前に我が家に赤子を押し付けてから一切音沙汰ない。

今更[マトモじゃない]狂人達に家の秩序を踏みにじられてなるものか

 

そう心の中に決心し、いつも通りの[当たり前の日常]が始まる。

……翌日、大量の[マトモじゃない]エメラルド色のインクの封筒が大量に届くまでの話なのだが…

 

~~

 

とある城のとある部屋へと向かう女性の姿が一つ。

 

ホグワーツ魔法学校 占い学 教授 シビル・トレローニー

 

ひょろりと痩せた体、折れそうな程細い首には何重にもビーズや鎖のネックレスをぶら下げた昆虫……と言った表現が一番しっくり来るだろう。

 

彼女の顔にサイズが合ってない大きな眼鏡は

廊下を照らす[消えることのない]魔法の松明の

炎の揺らめきが眼鏡に反射して、レンズで拡大された眼を心なしか更に強調しているように感じられる。

 

合言葉を口にし、ガーゴイル石像が通路を塞いでいた先の部屋の扉をノックし入室する。

 

「忙しい所にすまんの…シビルや…」

 

髪も長すぎる髭も真っ白で相当の年寄りと伺える人物…ホグワーツ魔法学校現校長、アルバス・ダンブルドアが労いの言葉をかける。

 

「いえいえ、校長先生。あたくしの『心眼』で今日お呼びがかかることはあらかじめ存じておりましたの…ですので「では、既に用件がお分かりなのでしたら取りかかられたら如何ですか?」

 

トレローニーの霧の彼方から聞こえるようなか細い声を、乱入者の『如何にも』厳格と伺える声が上書きをする。

 

「あら…マクゴナガル先生も要らしてましたの。」

 

「ええ、貴女の『心眼』で私もこの部屋に居ることをお分かりになられなかったのですか?」

 

副校長マクゴナガルはトレローニーの占いを信じていないのもあり、無意識のうちに口調が強くなっていた。

 

仕方ないことである。

新しく請け持ったクラスで『死の宣告』という予見を教え子にするのは毎年のこと、今まで当たった事など一度もない。

 

 

「ええ、ええ!私の心眼では確かにこの出来事を予言する事も可能です。ですがその様な些細な事まで予言をしていては、わたくしの心眼が曇ってしまいますの。それに…実際に校長先生のお言葉を貰わなければならない事もあるのですよ?」

 

 

(このペテン師は私の存在は占うに値しない些細な存在と言っているのですか?)

 

 

 

「その通りじゃよマクゴナガル先生。シビルが気を利かせて行動してくれる事は有難い事じゃが、ワシがちゃんとお願いした事実がないともしもの事があったとき責任を負うことになってしまう。」

 

 

「わかりました…」

 

尊敬する偉大なる上司が『この場は抑えろ』と言うのならばマクゴナガルは苦虫を噛み潰した顔で黙るしかない。

 

 

「さて、シビルは知っておると思うが改めてお願いするとしよう。

もうすぐ進学シーズンじゃ。毎年、マグル産まれの魔法使いの入学案内を教師が行っているのじゃが今年はシビルにも手伝ってもらいたいのだ……知っての通り、今年は他の先生方も忙しくて手が空いていなくての。」

 

「わかりました。確か予言ではご用件はこれだけでしたね(これ以上押し付けるなよ?タヌキ)?」

 

「そうじゃ、よろしく頼むのぅ。」

 

 

トレローニーが校長室を去り、扉の閉まる音が響く。

 

「………それと、マクゴナガル先生。例のあの子の案内はどうなっておる?」

 

「保護者からは依然として連絡はありませんね。おそらく此方を警戒しているのかと……」

 

マクゴナガルからため息が漏れる。

 

「何か不味いことを書いてはおらんかの?」

 

「いいえ、一般的な内容と如何に素晴らしい教師の元で指導を行っているかを書き綴った程度です!」

 

「……ちょっと見せて貰えんかの?」

 

「私に落ち度があるとでも?」

 

「いや…そなたに任せる……程ほどにの…」

 

「では」と校長室を後にするマクゴナガル。

 

「そちらが無視する気なら大量に送りつけましょう」とか「逃げるものなら毎日逃げた先に送り付けてやります」など、ブツブツ一人言が口から漏れている彼女の後ろ姿に労いの言葉をかけるダンブルドアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




トレローニー
大半がはったり
ただし長年なんちゃって予言者してるうちに多少は肝っ玉がすわった様だ

マクゴナガル
頑固 融通がきかない
ダンブルドア教の信者
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