『生き残った少年』『英雄』と呼ばれた、一見何の変哲もない少年、ハリーポッター。
彼の周りには様々な不思議な事が起こった。
動物園の蛇の声が聞こえた。
猛獣を閉じ込めていた強化硝子が消失した。
切った髪が一晩で元通りの長さまで戻った。
それらは彼が魔法使いの才能があったが為に起こったことだと言える。
無意識であるにも関わらず、自らの願いを叶える為に使用された魔法。
しかし、それらは必ずしも望んだ通りの結果を生むとは限らなかった。
猛獣の逃げた園内はパニックに陥いった。
蛇と会話していたハリーを目撃した彼の従兄はハリーを異常と罵り遠ざけた。
一晩で髪が伸びた時の親族の反応は、正に悪魔の所行。
無意識で施行された魔法、ソレを使う度に彼の立場を悪化させていった。
『魔法を使えると言うことは、必ずしも幸せに直結するとは限らない。』
まだ幼いハリーがソレを理解するのは、まだ先の話。
……彼の周りにはトラブルがつきまとう。
魔法学校に入学し、自らの力を自覚した後も変わらずソレは続いた。
去年は闇の勢力から賢者の石を守るため、教師陣が施した防御措置を掻い潜る大冒険を行った。
…それこそ、命の危険の伴うようなものを。
そして今現在、列車に乗り遅れ、空飛ぶ車で魔法学校に駆けつけ、校庭の暴れ柳に墜落し、『怒れるハードパンチャー』と化した柳の魔の手から命辛々逃げ延びたのも、彼の宿命だったと言えよう。……ここまでくれば、呪われていると言っても過言ではない。
彼の災難は続く。
何故かハリーに隠すことなく敵意をぶつけてくるスリザリン寮監、スネイプ教授に『無免許運転』で『違法改造された空飛ぶ車』を乗り回し、『マグルに目撃され新聞に記載される程のパニックを起こした』事を咎められ『学校が所有する木に深刻な傷を負わせた』として連行され薄暗い部屋に拘束された。
ハリーの寮であるグリフィンドールの寮監、マクゴナガルに正論で、本来取るべきであった対処をみっちり咎められた。
(ハリーの機転で、自身の寮でも必要ならば遠慮なく減点を行う寮監から減点を免れたのは不幸中の幸いだった。)
そして、生徒達には滅多に見せない落胆した表情の校長、アルバス・ダンブルドアに事の顛末を説明する際には生きた心地がしなかった。
実際、隣に座るロンは圧力に負けて自ら「荷物を纏めます」と言い出す程のプレッシャー。
…罰則はあるものの、退校処分にならなかったのは奇跡と言える。
「今日は散々な一日だったよ・・・。」
2人が事情秤取が終わり、解放されたのは真夜中。
広間での歓迎会はとっくの昔にお開きとなり今頃、談話室でふかふかのソファーに座り、久方ぶりの学友と団欒している頃合いだろう。
その中に2人の姿が無いのは、単に自身の行いの性だと言えばそれまでなのだが・・・。
「今年はジニーの組み分けなのに見逃しちゃったよ」
一生に一度の晴れ舞台。一番見届けてほしいであろう人物を危険なドライブに誘った挙句、式に間に合わなかったのだ。
ああ見えて、結構煩いんだよ・・・君の前ではまるで借りて来た猫の様な感じだけどさ。っとロンがぼやく。
「そういえば・・・今年の合言葉。知ってるわけないよな・・・。」
ハリーがロンに聞こうとするが、今まで一緒に行動していた彼が知る訳もないな、と思いとどまった。
各寮には合言葉があり、合言葉の変更は寮の掲示板に張り出される。
では新学期、寮に入る前にどうやって寮に入ったのだろう?と去年の事を思い出そうと頭をひねるハリー。
「去年は確か、歓迎会の後監督生に連れられて一緒に寮まで行ったっけな。合言葉もその時だ!」
「なら、話は早い!パーシーから聞き出せばいいんだ!」
ハリーの言葉に顔を輝かせるロン。だが、それは一瞬の事、すぐに表情が曇る。
「いや、パーシーは面倒くさい。そもそも、寮の中に居る連中は皆、合言葉を知っているんだ。わざわざ奴に顔を出す必要はないな。」
「でもどうやって寮の中の連中を外から呼び出す?」
「普通に叫べば気づいてくれるんじゃないか?」
「去年のネビルを忘れたか?」
初めての飛行訓練で大けが。医務室から解放されたのは良いがそのタイミングで合言葉が変更され締め出されていた。
外で呼んでも誰にも気づいてもらえず、隠し通路の入り口である『太った貴婦人』の絵画の前で寮生が通りかかるのを野宿覚悟で待ちぼうけしていた姿が2人の頭の中をよぎった。
今回は自身がその状況・・・とても笑えない。
「・・・・君の梟で中の奴に知らせる?」
「梟小屋に辿り着く前にフィルチ&ミセス・ノリスに捕捉されるだろうな。」
ホグワーツの管理人(雑用)、生徒達が不幸な目に合う姿を愛し、規律違反をした者を猟犬の如く追い回し、教師に突き出し減点させる(ロン曰く)卑しい年老いたハイエナだ。
深夜徘徊を目撃した暁には事情を知り、酌量の余地があると判断するマクゴナガルよりも
「いっそマクゴナガルに聞きに行く?」
「却下。理由は同上。」
歩きながら案を出すロン。それを却下していくハリー。
「フレット&ジョージが寮の前で待っててくれたらな」
「あの2人なら寧ろ、寮の目の前で入れずに待ちぼうけしている僕たちを見て笑うよ。」
「ハーマイオニー?」
「彼女なら助けてくれるかもな、説教付きだけど。」
ウゲーと顔を歪ませるロン。かというハリーにもお節介な友人が鬼の様な顔で煩く喚く姿が目に浮かんでいる。
「いっそパーシーでもハーマイオニーでもいいよ!寮の目の前で凍死するなんて間抜けな死に方だけはごめんだ!」
階段を登り、グリフィンドールの寮がある塔に足を踏み入れる。
「ああ~よりにもよって・・・」
太った貴婦人の横でハリー達を待っている少女の姿を見たロンが立ち止まった。
銀髪の2つおさげの少女が、肖像画の横の壁に背中を預け、背表紙に豪華な金色の文字で書かれた本・・・『泣き妖怪、バンシーとのナウな休日』から顔を上げてハリー達を視線の先に捉えたところだった。
「待ってたのが私で悪かったわね・・・」
まるで興味ないかのように、再び本に視線を戻す少女。
ハリーは知っている。
ハーマイオニーやパーシーの様にガミガミとお説教をする人物ではないという事を。
少し厭きれた表情で3人の冒険談に耳を傾ける程度。ならば、何故ロンがジェーンを苦手としているのか?
その理由は去年のハロウィンの際に彼女を怒らせた時のことが尾を引いているのだろう。
危機感の低いロンにとって、彼女はいつ怒ってるのか怒ってないのか分からない人物。
故に、自身が疚しい事をしてしまった際には、彼女との態度が余所余所しくなる。
彼女に関してもロンとの距離感を測りかねて遠巻きに観察してる様にも感じる事がある。
こういう感情を読み取るのは、従弟や10年間共にした叔父、叔母の悪意に晒され続けたハリーの悲しい生存本能といえる。
「貴方達、もっとマトモな登校をする事が出来なかったの?」
ふーっとため息を吐きながらジェーンが問う。
(そんなこと言われても・・・)
「そんなこと言われても、なんだ?言ってみろ。」
隣のロンが目を見開き、信じられない物を見るかのように口をパクパクしている。
「何がまずい、言ってみろ。」
「ッ!?・・・・・」
沈黙。
顔の真っ赤にしたロン。これはまずいとハリーがロンを庇うように前に進み出て2人との視線を物理的に遮った。
丁度いいタイミングでハリー達の背後からパタパタと足音が聞こえて振り返ると、息を切らしたハーマイオニーが此方に向かって駆けよってくる姿が目に入った。
「気持ちは分かるけど、僕たち疲れてるんだ。時間も遅いし廊下で雑談はしたくないな。」
ハリーは責める人物が2人に増える前に早く切り上げようと合言葉を問う。勿論、ジェーンがすんなり教えるはずがないとも感じていた。
『ミミダレミツスイ』
2人の予想は裏切られ『太った貴婦人』肖像画は開かれた。
ロンが弾かれたように談話室に駆けこむ。
「おい!なんで俺達を呼び戻してくれなかったんだよ!」
「感動的だったぜ!なんてご登場だ!」
拍手、声援が談話室から今だ廊下で対峙しているハリーの元まで漏れてくる。
「君、心の声が聞こえるの?」
「開心術の事を言っているのなら答えはNOよ。」
開心術。文字通り相手の心をのぞき込む術。
対処を知らなければどんなに正論やアリバイを見繕っても、心の声を隠すことは出来ない。
「そんな上等な術ではないですよ。彼の考えてそうな事を言ってみただけ。彼は見事に墓穴を掘ったってわけ。」
「・・・そう、なんだ」
とてもそれだけとは思えないが、これ以上聞き出すことも出来ないだろうと早々に諦めた。
談話室へと足を向け、ジェーンの横を通り抜けるハリー。
「命を掛ける必要の無い場面で危険を犯す、彼らは勇敢だと褒め称えるけども結果が違っていれば・・・」
もし、ハリー達がホグワーツに辿り付けずに墜落。死亡していたなら?
「彼らは無謀だ、愚かな行為だ。と手の平を返すでしょうね?」
自分の命ではないですからね、っとジェーンは続ける。
「勇敢と聡明は一致するとは限らない。結果次第でどちらとも捉えられる世の中。そのことを心に留めておいて。」
ーーーーーー
「あの2人は言いたいことがあったのに!何でとどめておいてくれなかったの?」
追いついたハーマイオニー。目の前で談話室の中に消えた2人の姿を口惜しそうに眺めていた。
中からは大声援、拍手喝采。2人を囲むように人だかりが出来ている事だろう。
「ねぇ、ハーマイオニー?私は入る寮を間違えたみたいね?」
「ジェーン・・・・?」
パチンッ!と本を閉じる少女。表情はいつも通り。
ただ、少女の纏う空気に違和感を感じた。
「私、彼等とは距離を置こうと思うわ。もう、闘争も!冒険も!それを囃し立てる外野も!心底うんんざりなの!」
「2人には私も思う所が無い訳でもないけど・・・一旦冷静になりましょう?」
「彼らにとって、彼らを心配して探し回った人達は気に留める必要が無いって事なのでしょう?彼に費やす時間、労力、想い。場合によっては命さえも!彼らにとっては『勝手に君らがやった事』って言うのでしょう?」
「そんな事には「本当に否定できる?」」
去年、一歩間違えれば死んでいたかもしれないのに?
三頭犬、悪魔の罠、空飛ぶ鍵、巨大チェス、トロール、毒薬のロシアンルーレット。
「ハーマイオニー。貴方が居なければ間違いなく死者が出ていたわ。そして、みんなの前で称えられる・・・」
彼は危険を承知で自らの意思で巨大な悪と懸命に戦い、勇敢に散ったと。
そして綺麗に纏められ、いずれ皆の記憶からも忘れ去られる。
「でも、それは当事者が勝手にやった事。全ては自己責任。外野が逃げられない状況に追い込みリスクを背負わせる。それなのに損失が出れば切り捨てる。それが!この寮のやってる事よ!」
散々煽てていたクセに、減点があれば手の平を返した去年の出来事、私は『はい、そうですか。一件落着ですね』と納得したわけではない。出来るわけがない。
それは積もり積もって不信感へと変わる。
本当に…この寮……延いては人間という生き物に反吐が出る。
「この寮は・・・・そういった愚か者の集う寮に見えて仕方ないのですよ!」
「そんなことは「私は、もう付き合いきれない!」」
廊下の先、闇の中へと消える少女の姿。
その日を境にグリフィンドール寮から彼女の姿が消えた。
去年の出来事を振り返りつつの秘密の部屋
周囲に流されるロン、囃し立てる外野の寮生にイライラ
原作の様に去年の事は水に流して~って切り替えは無しです!
カルマだよ!己の行動を精算していけw
秘密の部屋が書き終わったらホグワーツ戦争までオリジナルに絡めるネタがないのです!
断片的にオリジナルストーリーをかましつつ、決戦、終結に持っていこうかなと思います!