鏡の中のアリス   作:ブルーな雛菊

27 / 44
図書館

いつもの場所、いつもの席。何も変わらない日常。一つ違っていたすれば・・・

手に取った本の隙間から黒い背表紙のノートが滑り落ちたってことくらいだろう

これが何のノートか、誰の物なのか、中身は白紙の古びた新品の様なノートに目を落としながら私は首を傾げた

「間違って私物を図書館に返却しちゃったのかな?」

まぁ、そんな日もあるよねと・・・

「私の姿が見えますか?私の声は聞こえますか?」

中央には生徒達が本を広げ、学習するための長テーブルと長椅子。両端には高さ10メートルにも及ぶであろう本棚に、みっしりと詰め込められた分厚い本達。

入り口の横、図書館全体を見回せる位置にカウンター。そして格子で囲われた雰囲気の異なる一区画、禁書コーナー。

大聖堂と言っても遜色のない程の巨大な部屋の突当りには2階へと続く螺旋階段。

そして中央を吹き抜けにして両端に巨大な本棚が建ち並んでいる。

一言で言い表すなら圧巻。

腰まで届く艶のある黒髪の少女は丸テーブルの上に腰を下ろし、まるでどうでも良いかのように此方に向かって話しかけた。

これがマグルの経営する図書館であったのならば、本を劣化させる原因となる湿度と日光に気を使い何所か薄暗い雰囲気を感じてしまっていただろう。

だが、ここは魔法界。一冊一冊に丁寧に保護魔法が掛けられている。その背景があるからか2階には窓が数多く設置されており、外からの温かい日光が室内を照らしている。

かつて、この図書館を目にして感嘆の声を上げたものだ。

いや、本当に彼女にとっては周囲が彼女の存在に気付いていても、いなくてもどうでも良かったのかもしれない

そして、グリフィンドールの談話室を避けるようになった影響か図書館を訪れる機会が多くなったのも事実だ。

本のページをめくる音、声を潜めて議論し合う生徒達、ぽかぽかとした陽気、睡魔に敗れイビキをかく生徒を叩き起こし「ここは本を読み学習する場です!用が無いのならば、さあ!!行った行った!!」シッシと退出を促す本の番人 マダム・ピンス。

「せっかくですので少し物語を話しましょうか・・・」

その見慣れた景色を横目に2階へ、本棚の前に設置されたテーブルに本を置き()()()()席へと腰を落としたところで「ふーー」とため息交じりの声が漏れた。

「これは時間魔法を作り上げ、後に天才と称えられた魔法使いの物語です」

ホグワーツ図書館の掟。

食べ物の持ち込みは禁止。

居眠り、笑い声はもとより、ささやき声・・・つまり話す事自体が禁止されているのだ。

先程の議論してた生徒達?司書様に見つからなければつまり・・・何もなかったって事なのでしょう?

つまりつまり、図書館を利用する人達は短気、独裁的な司書様、マダム・ピンスに目を付けられないように日々、肩身の狭い思いをしているというわけ・・・。

斜陽の照らす古びた廃城跡、時計の針は6時を刺したまま。少女は真紅の瞳を薄らと開き言葉を紡ぐ。

まぁ、それだけならまだ()()()()。その程度ならば、ここまで()()()()事はなかった。

本を管理しているというのに、生徒達の本を探すのには非協力的、『本を大切にしない者』を攻撃するように自ら管理する本に呪いをかけている。

・・・・巨大な本棚だ、上段など大の大人でも届く高さではない。

一度、呼び寄せ呪文を使って本を取り出そうとした際に・・・ほら?呼び寄せ呪文って物が自分の手元に来る際に必要以上に勢いが乗るものでしょ?

マダム・ピンス特製の()()()()()()が発動し、本に襲われる→自衛の為に本を吹き飛ばす→マダム・ピンスが駆けつけるというトラウマ級のコンボを食らいそうになったことがあるのだ。

あと一瞬でも本の復元が遅かったらと思うと・・・・いや・・・本当に笑えない。

妻が居て、娘が居る。裕福とは言えないが彼は始めは何の変哲のない普通の青年だった。

そんなこんなでマダムはフィルチと大差ない程度には生徒達に嫌われている。

物語が狂ったのは彼の妻が流行り病に倒れ、この世を去った後。娘が妻と同じ病にかかっていると気づいた時だった。

本を広げ目を通す。

図書館に籠るのは嫌いではない。授業の課題はすぐに終わるし無駄な気配りで胃を痛める事もない。

魔法史の課題である『中世におけるヨーロッパ魔法使い会議』について1メートルの長さの作文を書き提出・・・流石に興味の無い教科の課題は筆が進まないが、もめ事に巻き込まれるよりはマシだよね。

貧しいながらも必死に働き、薬代を稼ぎ、娘の元に戻った。冷たくなった娘の横で彼の持つ薬はペテン師が作り上げた粗悪品だと知った

「ホグワーツの歴史は全部貸し出し中です!」

彼は激怒した、絶望した。だが、どんなに恨んでも娘は帰って来ない

遠くから聞こえるマダム・ピンス声。基本的に静かな図書館だからこそ少しの音でも大きく響いてしまう。

丁度、課題も終わったし。伸びをした後に今日の()()()()の御供になる本を探しに行こうと席を立つ。何せ魔法界の本が全部あるのではないか?と思えるほどの蔵書の数なのだ、卒業するまでに全部読み切れるのか?と問われれば即答で「いや、無理でしょ」って言葉が出てしまう自信がある。

故に作り上げたのだ、時間を巻き戻す魔法を。何年も何十年も研究に明け暮れ・・・

そして魔法を使い、かつての病に侵される前の妻子に対面し、抱きしめた。

時間と共に若返った自身の体、手には2人分のちゃんとした薬。今度こそ運命を変えてみせると・・・

ーーーーーーー

1周目と同じように妻が流行り病にかかり薬を使用した

ホグワーツに在籍するすべての生徒が使用する図書館に訪れる頻度が増えると新たな発見もあるものだ。

例えば、目の前でピョンピョンと飛び跳ねて、本棚の上段の本を取ろうと奮闘している下級生の姿とか・・・

一時期回復の兆しがあったが結局は同じ結果を辿った。残された娘も同様に・・

本人は必死なのだろうが微笑ましい・・・(まぁ、私も人の事は言えないけどな!チビッていうなし!)

飛び跳ねるのを辞めた後に、最後のあがきなのかつま先立ちで本棚に手を伸ばす金髪おさげの少女。やがて手を下ろしどんよりとした空気を漂わせている。

「ア・・・諦めた」

「何がいけなかったんだ!!」男は嘆いた。妻子亡き後も世界中を駆け回り新薬と呼ばれるものを人には言えない様な手段で手に入れ、過去へと戻る

流石にこのまま放置するのは可哀そうだと私は少女の代わりに目的の本を本棚から引き抜く。

過去の自身と出会わないように気を付けながら新薬を二人に投与、「これで終わる・・・」男がそう思った矢先、妻の容体が急変し、同じ結末を迎えた。

「この本で合ってる?」

「!?」

一人ぼっちになった部屋の中、男は自身で薬を作ることを決意した

いきなり後ろから声を掛けられた為か、金髪の少女は小さく飛び跳ねた後に勢いよく振り返る。

なんだろう?動作一つ一つが小動物的な・・・守ってあげたくなるような可愛さが漂ってくる。

娘から採取した血液を媒体に特効薬を作ろうと何十年もの期間を研究に費やした

「あ・・・りがとうございます?」

「うん。下級生を導くのもお姉さんの役目だしね!」

時には奪い、時には浮浪者を攫い人体実験まで・・・だが、男にとってそんな些細な事はどうでも良い事だったのかもしれない

何度も戻り、何度も失敗を繰り返し、そして研究に明け暮れる

「あの・・・グリフィンドールのジェンさんですよね?2年生の」

あれ?回答間違った?少女の顔色が更に暗くなった気がしてならないのですが・・

「そして彼は悟ったってわけ。自身が過去に持ち込んだサンプルが漏洩していたって事に」

「そうだけど・・?」

「私も、2年生」

「・・・・・。」

薬が効かなかったのは?彼が持ち込んだ病原菌は幾度となく繰り返す実験で変異し、薬剤耐性がついてた

本来なら回復するはずの薬が妻子にだけ効果が無かったのは?

「またですか! 現在所有している『ホグワーツの歴史』は2週間先まで予約でいっぱいです!・・・ええ!そうです!全巻です!要件は済みましたね!?さあ!出口はあちらです!」

彼はあらゆる薬を試した。その中には副作用の強いものもあった

遠くで響くマダム・ピンスの声で飛んでいた意識が戻ってきた。まぁ、他の寮だよね?同じ寮でこんな小学生みたいな子を見て忘れてるはず無いし・・・

自身が妻子に施した全てが、彼らを死へと導く原因になったと悟ったのだ

「あの・・・「ちょっと待ってって。」」

「とはいえ・・・彼のしたことは偉大よ。1()()()()()とはいえども不可能と言われたいた時間魔法を完成させた。勿論、あえて性能を落とされた物と知る者はいない。」

まるで見せしめの様に本の予約状況を聞いた生徒が、司書様の手によってつるし上げられたばかりだ。

触らぬ神に祟りなし。現在の図書館は話し声が()()()()

「従来の薬が効かない流行り病への特効薬を作り、何十万もの人々を救った」

杖を取り出しながら本棚の端へ。

「だからこそ栄光と賞賛の中、自らの命を絶った彼の本音を理解できる者はいないの。」

「クワイエタス(静寂)」

木材の床に杖を押し当て前後の本棚と本棚を結ぶように線を引く。正式な結界や人避け呪文ではないが・・・

「ねぇ、貴方ならどう思う・・・・?」

「まぁ、気休め程度だけど大声で話さない限りは大丈夫でしょ。()()()()()ジェーン・ウィルソンよ。」

「ショザキ・スーザン・カレン・・・です。・・・ハッフルパフ」

「もしも、過去に戻る事が出来るのなら貴方は運命を変える事が出来るのかと?」

「他にも何か探してる本があるなら手伝うよ?」

ほら・・・・本来、業務の一部の筈であろう司書様は色々とお忙しいようだしね?あと・・・呼び寄せ呪文はおすすめしない!

「過去があり、今の貴方が居る。今があり、未来の貴方がある。ならば・・・」

「きっと未来の貴方はとっくに過去に戻って、今あなたが変えたいと思ってる運命を変えてる筈・・・」

「未来の貴方は失敗したのかしら?それとも戻る事すら運命に組み込まれてるのかな?・・・まぁ、私にとっては関係のない事。」

「ただ、一つ言えることは・・・きっと人類には魔法なんて品物は早すぎたのでしょうね」

 

チェシャ猫:複数の作品に登場する人間辞めちゃった元主人公。エコー。一条鈴音など複数名前がある。腰にまである艶のある黒髪、金の鈴を身に着けている小学上級生くらいの少女。物語の観測者として今作に登場!どうでも良い事を言ってるようだがこの物語の主軸を暴露しているw

この子の存在に気づいた人が居れば(=^ω^=)って感想いただければ作者が喜びますw

 




クワイエタス(静寂):元々は自身の喉に術を掛け、拡声器の様に使うソノーラス(響け)の反対魔法。今作の使い方は違うとは思うけど音は空気や物体を振動させて伝わる訳で・・・空間自体を制振、隔離すれば防音になるやろ!って安易な発想からw

マダム・ピンス:図書館の番人。音に敏感、「話しかけるな!私が法だ!」を地でいってる方!似た者同士ってことでフィルチと仲がいいらしい~知らんけど!!(*'ω'*)

ショザキ・スーザン・カレン:ハッフルパフの2年生。金髪おさげ、小学生と見間違うくらいちっこい!(友人の作品のオリジナルキャラを一足先にこの作品に出演!題名決定しましたら改めて紹介させてもらおうかな!

時間魔法:現在は1時間しかさかのぼる事が出来ないが元々は年単位で逆向可能だった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。