「具体的に何か対策は?私は一体どうすれば・・・」
マグルの営む極々普通のホテルの一室。窓から見える夜景、道を行きかう人々。
賑やかに車が行きかう繁華街。
頭を抱えて悩みこむ
その様子を気にする事も無く、少女は私の前、机に置かれたチェスの駒を一つ進める。
「戦いはチェスに似ています・・・ほら、貴方の番ですよ。」
私はさしてチェス盤を見ることもなく、駒を進める。
自身の置かれてる状況は、このチェスと同じようだ。既に王手を掛けられている状態。再び頭を抱えてブツブツと念仏のように言葉を呟きたい気持ちでいっぱいだった。
「私はこのままでは破滅だ・・騙し続けるなんて出来ない・・・逃げても・・」
少女は私の様子にも構うことなく駒を進める
「駒は私達。戦いとは
「チェスと私の未来が一体どう関係があるんだ!」
彼女の言葉を真に受けるならば、私は必要な犠牲。誰かの栄光の糧となれと訴えているように感じられた。
私の事など何も気にしていない様な少女の態度に苛立ちを感じる。
「チェックメイト。」
「私達は駒です。皆自身のゲームの上で踊っている。
私のキングが居なくなったチェス盤、少女は終わったゲームにもかかわらず自身の駒を動かして、残った私の駒を詰んでいく・・・
「一つの戦場を対極的に見るなら私は駒の一つに過ぎないの。私が詰まれても・・戦いは終らない。」
一方的な虐殺は続く。
坦々と私の駒を詰んでいく。まるで戦いはまだ終わっていないというように・・・
「勝負が終われば互いが手を取り合って、互いの勇姿を讃え合う?」
最後の私の駒を回収して・・・
「そんな未来は訪れない。」
そして、黒の少女の駒だけになった。
「話がそれましたね。
私の人生を些細な事と例えられて苛立ちが増すが、ここで暴れる程自制心が無い訳でもない。
「それは良かった・・・」
少女はそうですねと相づちをうち、更にチェスの駒を進める。
既に私の駒は無く、彼女の駒しか居ない盤上。
彼女は自身の駒を進めて自身の駒を殺していく。
やがて、最後の一個になった駒。
それを間近に見た私は、信じられないものを見るような目つきで少女を眺めていた。
「誰も居ない盤上。これが現実になるのなら悲惨ですね。いったい何時まで戦いは続くのですか?」
クフフフと少女の口から笑いが漏れる
「さあね、だけど詰まれた駒は戻ってこない。家族を殺した相手を目の前にして戦争だから仕方ないと納得できる人間なんてごく僅かなんですよ。」
だから、戦いは終わらない。
人は人である以上、行き着くところまで進むしかないのだから。
「この結末は彼らの夢。彼等が望んだ結末。そして本質なのかもね。」
さて、英雄殿は何処を目指すのでしょうかね
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年度末テストが始める3日前。
朝食の席でマクゴナガル先生が「良い知らせがあります。」と報告した。
耳を傾けていた生徒達は一斉に
「ダンブルドアが帰って来るんだ!」や「継承者が捕まったのか!」
なかには「クィディッチが再開されるんだ!」とそれぞれの『良い知らせ』を先生の報告を聞く前から想像し勝手に喜んでいた。
クィデッチ狂いの1人を除いて、大半が継承者に関するもの。
連日の犯行を止められなかった責任として、ダンブルドアを停職。ハグリットは容疑者としてアズカバンへと連行された。
最も偉大、そして最強と言われている校長が不在の今、次の犠牲者は誰になるのかと・・・皆が皆、精神をすり減らしながら日々の生活を送っているのだ。
『良い知らせ』で自身への脅威が無くなったと、そう想像してしまうのも仕方の無い事だと思える。
しかして、マクゴナガル先生の報告はその『願い』とはどれにも当てはまらないものだった。
「スプラウト先生の話では、とうとうマンドレイクが収穫できるとのことです。今夜、石にされた者達を蘇生できるのでしょう。言うまでもありませんが、そのうちの一人が誰、又はナニに襲われたのか話してくれるかも知れません。この恐ろしい一年が犯人逮捕で終わる事を期待しています。」
歓声が爆発した。
当然だが、スリザリン寮のドラコは面白くなさそうにしていたがハリーにとってはそんなことすらどうでも良かった。
「ハーマイオニーさえ戻れば犯人なんてすぐに捕まるさ!」
ロンがここ一番嬉しそうな顔で話す。
その背後、教員席の端。
大歓声の木霊する中、一人だけ渋い顔をしているロックハートの表情を見たハリーは何故か腑に落ちない気持ちに襲われた。
その違和感が一体
「生徒は全員、それぞれの寮に戻りなさい。教師達は大至急、職員室にお集まりください。」
とマクゴナガル先生の全ての廊下にも行き渡る様な魔法で拡声された声が響き、まだこの事件が終わっていない事をハリー達に告げた。
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ハリーの生涯で最も最悪な日と言えるかもしれない。
テストは中止。全校生徒が各寮に帰され、生徒が溢れかえっているにも関わらずこんなに静かな談話室は初めてかもしれない。
ウィーズリー一家がマクゴナガルに呼び出され、その中に居る筈の少女が居ない事、普段ならば「良かったな!もうすぐ回復薬が出来る頃さ」等と陽気に笑っていただろう双子ですら押し黙っている事からグリフィンドール生は内容を聞かずとも何が起こったのか正確に把握していた。
パーシーは両親に梟を飛ばした後は部屋に閉じこもり、双子も何もすることが出来ずにジッとしておくのが堪らなくなって寝室へと上がっていった。・・・きっと一睡もすることは出来ないだろう。
「なあ、ハリー」
この後に続く言葉はハリーにも予想は出来た。
「ほんの少しでも希望はあるだろうかーーーつまり、ジニーがまだーーーだってそうだろう?ジニーは秘密の部屋に
ジェーンが聞いたら、犯人が残した犯行声明を真に受けるなとロンを怒っただろうな、とぼんやりと今では懐かしく感じる友人の姿を思い浮かべながらロンの話に耳を傾ける。
ジニーが生きている可能性は限りなく低い。しかし、ロンの言葉を否定などハリーには出来る筈もない。
ハリーにとっても友人の家族。夏休みの間共にすごした、もはや
「ロン・・・僕たちでは無理だ。せめて戦える人が居ないと・・」
「先生達は!?僕達は秘密の部屋への入口を知っているし、怪物の正体も知っている!」
ハーマイオニーがが残した手掛かりから怪物の正体を知り、入り口と移動手段を予測した。
この情報を教師に伝えれば手を貸してくれる筈とロンはまくしたてる。
「ロン・・・寮から出ていた事で減点されて強制送還するのが目に見えてる。話なんて聞いてもらえないよ、ましては相手がバジリスクならば尚更。」
「ロックハートなら・・・仮にも闇に対する防衛術の教師で魔法戦士なんだろ。」
ハリーは思った、さんざん馬鹿にしてきた相手を案に出す程ロンには余裕がないのかと
誰からも引き留められることもなく、談話室を抜け出してロックハート部屋へ。
「逃げてなければね」
扉をノック。
しかし、ハリーのノックは響くことはなかった。
鍵の掛かっていない扉が開き、かつては自身の肖像画や本、ファンレターで溢れかえっていた部屋は最初っから
「考えれば予想は出来た。奴は怪物の正体を知っているだの、秘密の部屋の場所を知っているなんて言ってたんだ。ジニーが攫われて責任を取って
「じゃあ!僕たちは一体どうすればいいというんだ!!」
教師陣は当てにならず、他の生徒達は手を貸してくれるとは思えない状況。
正確には怪物の正体が分かっていても、その危険度の高さから迂闊に踏み入る事が出来ない。
そして、生きているかどうかも分からない寮生の為に自らの危険を顧みずに立ち向かおうとする者がいないというだけの話。
簡単に言うならばリスクに対するリターンが
「割に合わない・・・」
ハリーの呟きを聞くこともなく、ロンは相変わらずロックハートの部屋をウロウロと目的もなくさ迷い、状況を打破するためのきっかけを探しているように思えた。
「ロン・・・」
「ハーマイオニーさえ居てくれれば・・・この3人なら継承者も倒せる筈・・・だってそうだろ?去年、力を合わせてあの人の配下を退けたんだ!」
もしもなんて意味はない。ハーマイオニーは襲われ、今も医務室で眠っている。
「ロン・・・」
「せめてジェーンがいれば「ロン!いい加減にしろ!自身が何を言ってるのかわかってるのか!」」
バジリスクの情報を掴んだハーマイオニー。
その同日、ハーマイオニーとは反対方向で怪物と
そうじゃない。ならば何故?
本当はロンも分かっていた筈だ。
「彼女はハーマイオニーを逃がすために
全て言わずとも伝わるはずと思いを込めてロンを叱責する。
襲われる必要のない人物を巻き込んでしまった事。
「何故ハーマイオニーを一人にした?何故彼女はグリフィンドールから離れた?」
ハリーは知っている。
ハリーが継承者ではないかと疑われた同時期にもう一人『怪しい人物』としてジェーンの名前が上がっていたことを。
確かに、自身の所属していた寮には帰らずに行方知れずな事を疑問に思う者もいたが、
「君が彼女を孤立させ、僕はそれを否定しなかった。
目の前がチカチカするような感覚、荒い呼吸音、嗚咽。
すがるような目線を向けていたロンは、今は俯き血が滲むくらいに拳を握りしめている。
静かになった部屋でハリーは仰ぐように天井を見上げる。
(彼女なら・・・彼女達ならどうしただろうか?)
「ロン・・・行こう。」
ロンが望む未来が訪れる可能性は低い
しかし、もし彼女達がこの場に居たのなら一通り叱責した後に、きっと呆れながらこう言うだろうな・・・
「まだ、何も終わってはいない。逝くんだろ?僕達の手で終わらせよう。」
差し出した手をロンが力強く握り返した。
ーーーー
「それで、わたしゃいつまで待てばいいんです?」
老犬は狩人の指示を待つ。
敵の正体も、移動手段も、それがどこに居るのかも当の昔に絞り込めている。
それなのに未だに
自身を焚きつけた男が土壇場で臆病風に吹かれたのかと。
「まだ最後のピースが揃うのを待っているところです」
狩人はさも当然の様に老犬へ返答した。
「根拠は?話を聞くと何でも回復薬が完成したそうで数日中に石にされた者達が元通りになるそうで」
愛猫がもうじき自身の元に返って来るにも関わらず、老犬の声は堅い。
「根拠ですか・・・まだ犯人を特定していないにも関わらず犯人へタイムリミットを設けてしまった。犯人に残された時間は何に使います?例えば証拠となる
「そうですかい。わたしゃ、この手で落とし前を付けれればその後の事などどうでもいい」
「それは重畳」
・・・それで今日がその日ですかい?
狩人との合図や連絡などのやり取りはしていない。
それにもかかわらず、老犬は導かれるように自身の事務所、鍵の掛かったロッカーへと手を掛けた。
廊下も教室にも生徒達の声はなく、まるで廃墟の様に感じられる寂しい校内。
真っ赤に燃える様な太陽が地平線に沈んでいく中、老犬は古びたロッカーの中から鉄の筒を取り出し、筒の中にプラスチック製の円柱を一つずつ納めていく。
「生憎、わたしゃ出来損ないなんで高貴なる使命とやらはてんでわかりはしねぇんで」
セラミックの板とケブラーが編み込まれたベストを羽織り、
「何をやっても中途半端。正真正銘の出来損ない」
自身を鼻で笑いながら黒塗りの鋭い金属板を眺めた後、強化プラスチック製の鞘に納める。
「だけど、どうしても譲れないものが一つだけあるんだ」
金属製の野球ボールくらいの球体が納められたポーチを、ベストに設けられた帯に縫うように固定していく。
ロッカーの扉を閉めた男、半年以上使われる事無く放置されたエサ入れが目に止まる。
浅く息を吸い込み、吐き出しながら歯を食いしばる。
一方的に奪われ、馬鹿にされ続けてきた。私が地べたを這いずり回っているというのに奪った当人は何食わぬ顔?
「簡単な事だ。」
手に持つ筒をスライドさせ、薬室に初弾を送り込む。
「死者にとって生者は・・・羨ましくて・・・妬ましくて仕方のないものなんだよ」
───憎悪を込めて殺してやる
明確なる目的、揺らぐことのない意思。人はそれを復讐と呼ぶ。
原作読み直すとあれ?って思うところがチラホラw
牽制で使う情報もあれば、相手を仕留めるために秘匿する情報もありますがー先生はどちらのつもりでカードを切ったのでしょう?