鏡の中のアリス   作:ブルーな雛菊

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ーー悪の芽を摘む者は五万と居ても
      根から絶やそうとする者は一握りしかいないーー


そして辿り着いた誰かが捨てた夢の上

「さて、今年度も残りわずかとなりました。これより皆さんは学期末試験を受け、その後は夏季休暇となります。つまり私が今学期の授業を行うのも今日が最終日となるわけです。」

 

季節はポカポカと陽気の差し込む5月末。マクゴナガル先生が朝食時に行った報告・・・(~マンドレイク回復薬の完成が間近という連絡)で生徒達の緊張が緩んだのか、教壇に立つロックハートの言葉に耳を傾ける者はいなかった。

 

「皆さんの気が緩むのも理解できますが油断は大敵です。」

 

「何故ですか?ポッターのお友達の木偶の坊がアズカバン(刑務所)に連れていかれたから、もう犠牲者は出ないと思いますが~?」

ドラコ・マルフォイがロックハートの話に割り込むように反論を言い、スリザリン生は同調するように嘲笑の笑みを浮かべながらグリフィンドール生が固まる方へと視線を投げかける。

グリフィンドールとスリザリンの合同授業。控えめに言っても雰囲気は最悪だった。

 

犯行を裏付ける証拠もなければ、無実だと証明できる物もない。ハグリットが犯人でない事は理解しているが反論したところで連行された事実が覆るわけではない。

ハリーが憎々しげに顔を歪ませた時、意外なところから助け舟は渡された。

 

「ハグリットを弁護するわけではありませんが皆さんは本当に彼が犯人だとお思いですか?この一年、誰にも見つかる事もなく証拠も残さずに複数の生徒を襲った・・本当にそうお思いですか?」

ロックハートの問いにスリザリン側からケラケラと笑い声が漏れた。

 

「あー、なるほど。君たちは勘違いしている。()()ならば自身に危害が加わらないと?」

 

最初の授業以来、焼きまわしの授業、決闘クラブではスネイプに敗北、虚言ともとれる言動をとる教授・・・いつしか無能と印を押されて誰も耳を傾ける事のなくなった教授。

しかし、今日に限ってはよく澄み渡る声で話す姿に誰も反論すら出来やしなかった。・・・正確には最初の授業の時と同様に、彼に()()()()()()

 

「もしも、更に犠牲者が出たならばの話をしましょう。この学校は自称継承者の言う通りマグル生まれを廃した学校になると思いますか?」

「答えは否。閉鎖され在学生、これより後に入学する予定の者達は他の学校に行くことになるでしょう。」

 

当然でしょう?テロリストが統治する学校に子供達を通わせようとする親が居ますか?

安全は保障すると声明があったところで誰が信用しますか?

魔法省は危険生物の生息する学校をそのままに放置するとでも?

 

「貴方達は別の学校に移動する事になるでしょう。では、歓迎されると思いますか?」

ホグワーツに名家(純血)の生まれがいる様に別の学校にも同じように()()()生徒がいます。

住処を終われて逃げ延びて来た貴方達が別の学校でもホグワーツと同じように伸び伸びと生活が出来ると?

 

「他校の生徒が貴方達に下す評価は侵略者から自身の住処を()()()()()()()()()ただの『間抜け』ですよ。」

 

だから、決して間違えないで下さい。

継承者は短絡的に襲撃を繰り返す愚かなテロリストであり、貴方達の味方になりえない存在だと。

貴方達の未来です。貴方達で決めなさいとロックハートは言い、最後の授業を締めくくった。

 

一年に渡る襲撃事件。ようやく終わりを迎えると誰もが信じてやまない時に彼だけは現実を見ていたのかも知れない……

ハリーは暗い通路を歩きながら平和な日の出来事を思い返していた。

 

 

 

ーーーー

ハーマイオニーの残した推測から怪物の正体を。

リドルの日記から得た50年前の事件、その犠牲者になった生徒が『嘆きのマートル』という事に思い立ったったハリー達は3階の女子トイレへと向かった。

 

「私の死んだ日の事?よく覚えているわ。あの日もオリーブ・ホーンビーに私の眼鏡の事をからかわれてこの部屋に閉じこもって泣いていた時だったわ。声がしたの、外国語だったと思う。とにかく嫌だったのはその声が男子の声だったことよ。」

「私は部屋を出てここは『女子トイレ』だって注意しようと思ったのよ。そうしたらあったの・・・黄色い大きな目が。」

 

マートルはそう言いながら自身が見た『ナニカ』がいた方向・・・何の変哲もない手洗いの台を指した。

ハリー達が隅々まで調べると銅製の蛇口の横に小さく蛇の様な彫りこみがあるのを見つけた。

 

「開け」

 

ハリーの口から人の言葉ではなく、「シューシュー」という音が唱えられた途端に流し台は沈み込み、大人1人が滑りこめれ程の太いパイプが姿を現す。

ロンはハリーと無言で目を合わせ、頷き合った後先陣を切ってパイプに飛び込む。

 

一瞬で見えなくなったロンの姿、未だに落下しているのかパイプから反響して響いてくる騒音。

底の見えない一寸の光の無い漆黒の闇。ハリーもロンの後を追ってパイプの中に身を投げる。

 

城の三階から遥か下層へ。パイプが曲がる度に軽くドスンドスンと衝突音を響かせながら滑走は終わらない。

ハリーが着地地点の心配をし始めたころにパイプの傾斜が平らになり始め、吐き出される様に終着地点から排出された。

 

「ルーモス(光よ)」

杖を掲げ小声で呪文を唱えて、杖の先端に明かりを灯す。

薄暗い洞窟、床には大量の小動物の骨が無造作に捨てられている。

きっとこのトンネルの上は湖があるのだろう。壁はヌラヌラと湿気を含んでおり、床にも薄らと水が張っている。

 

「行こう、何かを見つかたらすぐに目を閉じるんだ。」

 

パキパキと白骨化した小動物の骨の上を歩きながらロンに注意を促す。

怪物の正体はバジリスク。

その邪眼は直視した者を即死させる。

その牙には猛毒が纏われており、咬まれた者は数分としないうちに絶命する。

その体躯は6メートルを超し、人間の大人を丸呑みすることだって可能だ。

 

出会ったら最後、勝ち目など万が一にもありはしない。明かりを消し、息をひそめ通り過ぎるのを待つのが関の山だろう。

ジニーを救出するのが目的であり、怪物や継承者を打ち倒すのが目的ではない。

ハリーは横目でロンに視線を向ける。

緊張で顔は強張っており、ガチガチに硬直した腕、その先には真っ二つに折れ、ステロテープで固定された杖が前方に向けられている。

暴れ柳墜落事件以降、折れた杖は正確に魔法を発動する事もなく暴発を繰り返す。戦力として頭数に入る訳もなく、ハリーは正確に自身達に出来る事を把握していた。

 

・・・・ただ予想外だったのは、トンネルを曲がった先にあった巨大な蛇の抜け殻を見たロンがソレ(脱皮後の抜け殻)を生きた怪物と勘違いして先制攻撃を仕掛けようとした事だろう。

魔法は暴発。杖は爆発しロンと隣にいたハリーを弾き飛ばし、爆風の余波でトンネルの天井が崩落、2人を分断した。

合流するには二人の間に佇む岩は巨大かつ強固、時間だけが過ぎていく。

 

「ロン、先に進むよ。1時間たっても戻ってこなかった時は・・・」

「…分かった。僕はこの岩をどうにかするよ。君が戻ってきた時に帰り道が必要だろう?だから・・・」

「また後で「必ず戻ってこい」」

 

何回もトンネルを曲がり、やがてロンが岩をどかそうと奮闘する唸り声も聞こえなくなった。

緊張状態が長時間続き、全身の神経がキリキリと痛む。

そして歩き続け、ついに巨大な蛇の彫刻が刻まれた石の扉が眼前に広がった。

 

「開け」

 

 

長細く奥へ続く薄明りの灯った部屋。蛇の彫刻が施された石柱が上へと吸い込まれる様な漆黒が広がる天井を支えていて、緑がかった幽明が何本も連なる柱の影をゆらゆらと照らし出していた。

注意深く辺りを見回しながら杖を構えて前へと進む。

数分だろうか?実際にはもっと短かったかもしれない。部屋を進んだ先、終着地点。

壁を背に天井に届きそうなほど巨大な石像の足元に燃える様な髪の色をした小さな姿を見つけてハリーは駆け寄る。

 

「その子は目を覚ましはしない」

後ろから声を掛けられるが構わずジニーの様子を伺う。

体は冷たく、その目は堅く閉ざされている。だが、これまでの被害者の様に石化しているわけでもない。

 

「その子は生きているよ。辛うじてだがね。」

ハリーはジニーの状況を確認すると背後の声の主へと向き変える。

 

「トム・・・リドル」

かつて日記の記憶の中に見たそのままの姿でソレはいた。

 

「ゴースト?「記憶だよ。50年前から日記の中に残された記憶さ」」

リドルが目線を向けた先にいつの日か見た、見覚えのある黒い日記が開かれた状態で床に置かれていた。

 

「君は今、秘密の部屋の中に居るわけだけど驚かないんだね?バジリスクの邪眼は例えゴーストでも活動を停止させるほど強力なのに」

「アレは呼ばれるまで来やしないよ、それより少し答え合わせをしよう。君にとっても悪い話ではない筈だ、話している間だけ長生きが出来る」

 

リドルは杖を己に突きつけるハリーに降ろすように促す。

絶対的な強者の余裕。例え交渉が決裂しても敵対者を粉砕できるという自信。

ハリーがリドルの手元に目を移すとジニーのものと思われる杖が握られていた。

 

「君が継承者なんだね?怪物を操り生徒達を襲ったのも君が仕向けた」

「正解だ。だが、秘密の部屋を開けたのも学校の雄鶏を絞め殺したのも穢れた血や出来損ないの飼い猫にスリザリンの蛇を仕掛けたのは全部ジニーがやった事だ」

 

「まさか「そのまさかさ」」

横たわる赤毛の少女をあざ笑うかのようにリドルは続ける

 

「傑作だったよ、君に聞かせてやりたい。ローブに大量に鳥の羽を付けたおチビさんが「どうしてそうなったか私覚えてないの。ねえ、リドル、私どうしたらいいの?」」

「君がジニーを操って襲わせたんだ!ジニーじゃない!()()()やったことだ!」

「その通り。馬鹿なジニーは日記を信用して心を通わせた。苦痛だったさ、興味の無い色恋の相談だったり程度の低い授業のアドバイスをしたり・・そして長い時間をかけて信用を得て、ジニーのおチビさんの魂を僕の魂で上書きをし始めたのさ」

 

「まるで寄生虫だな、君にはとってもお似合いだよ。だけど知ってる?寄生虫は宿主と共存を選ぶ者もいる。君は食い潰すしか能のない糞虫にも劣る存在だよ」

ハリーは固く拳を握ったまま、吐き捨てるように言った。

 

「その糞虫にまんまと騙された君たちは一体どうなるというんだい?僕の話はこの辺でいいだろう君の話を聞かせてくれ。君は偉大な闇の帝王に2度も逃げおおせた、君にはいったいどんな能力があるんだい?」

ハリーはリドルに応答しながら気づかれないように辺りを見回し勝算を探す

 

「君とヴォルデモートが一体なんの関りがある?」

「まだ分からないかい?」

 

リドルは空中に自身のフルネームを書く、魔法により宙に書かれたスペルに更に杖を一振りすると文字の並びが入れ替わり始める

 

I AM LORD VOLDEMORT(私はヴォルデモート卿だ)

 

リドルの手にはジニーの杖が握られている。

姿は見えないがバジリスクも控えている。

その輪郭が時間が経つごとに次第にはっきりとしていく事にハリーは気づいた。

ジニーは命を削られそれに比例してリドルはより確かなものへと変わっていく。

戦いになるのならば時間を掛けるべきではない

 

「君が僕を襲った時なぜ殺せなかったか、君が力を失ったかを知る人はいない。だけど僕にはわかる、君が穢れた血と蔑んだ母が僕を庇ったからだ!」

「母親が君を庇って死んだのか。それは呪文に対する強力な反対呪文になりうる。結局君は何の能力も持ってない唯の子供で幸運だっただけなんだな。それだけ分かれば十分だ。」

 

「さてハリー、お手合わせ願おうか?」

リドルはハリーに呪いをかける事もなく嘲笑うかのように一瞥すると天にまで届く石像の足元まで歩を進めた。

 

 

「スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強のものよ。我に話したまえ」

蛇語で紡がれた言葉に連動するかのように石像が稼働しているのが分かる。

遥か上、石像の口が開き始め遂には大きな穴になるのを見ていた。口の中で蠢いたソレがズルズルと這い出し、やがて部屋の床に落ちる振動を感じた。

目を閉じたままでも感じる巨大な何か。ハリーにはとぐろを解きながら此方を凝視しているバジリスクの姿を肌身で感じる。

 

「そいつを殺せ」

 

埃っぽい床を伝いながら巨体がハリーめがけて接近するのを感じ

ハリーは死を覚悟した

 

 

 




原作~一応進めないと場面が飛んでしまうのでw
次話やっと戦闘~(*'ω'*)
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