人々は集められた強大な力を一匹の獣に例えた・・・
「聞いたか?ロニー坊や」
新学期早々何だよ!
と面倒そうに返すロン。
一言で言うならば雑な対応。
それは、例えロンがその様な対応をとっても関係性が崩れる事のないという絆であり、信頼であるのかもしれない。
単に、家族、年の近い兄弟、イタズラ好きで些細な事は気にもせず、お調子者で常にロンを弄ってくる双子の兄弟への通常の対応と言えばそれまでの事なのだが……
「俺達の宿敵が、遂にホグワーツへ浸入してきた!」
「全く、偉大なるダンブルドアは一体何を考えていらっしゃるのだろうか!!」
両膝を床に付き、両手を天へ……世の中の不条理を嘆くかのようなオーバーリアクションをするフレッド。
対するロンは、その場に居合わせたグリフィンドールの女子から(クスクス)と笑われ耳まで真っ赤になっていた。
「そもそも宿敵って誰だよ!」
「おお、兄弟!由緒正しいウィーズリー家と相反する忌まわしき門番の存在を知らないとは何とも嘆かわしい……」
「我が盟友は既に、寮監殿に話を持ちかけ『魔法生物飼育学』を専攻から外したというのに……我が弟は何も知らないとは、なんたる怠惰!」
魔法生物飼育学。去年までこの学科を受け持っていた教授は「腕か足が一本でも残っているうちに退職したいんでね!」と言い残しホグワーツを去った。
したがって、闇の魔術に対する防衛術と合わせて2人の教員がホグワーツに訪れる事となったのだ。
すなわち、闇の魔術に対する防衛術のルーピン教授と
魔法生物飼育学のハグリッドだ。
ハグリッドは去年まで『禁じられた森』と呼ばれる魔法生物が生息する広大な森の森番役としてホグワーツに滞在していた。
当然、イタズラ好きの双子が禁じられた森で『面白そうな怪物』を捕獲してホグワーツへ持ち帰ろうとするのを幾度となく阻止して来たわけで………
「もしかして、そんな事で宿敵なんて呼んでいるの?」
「おお、兄弟……残念な事に俺達の聖戦を理解できる者は少ない……そう、居ないんだよ……俺達には……味方も……そして、敵もね……」
「あぁぁぁいぃぃぃしぃてるんだぁぁぁぁ!!きぃみぃたちぃをぉぉぉぉぉ!!HAHAHA」
盛大なコント、もしくは役を演じてる双子を尻目にロンはため息をこぼした。
愉快な兄弟の話ではジェーンは既に魔法生物飼育学を除外して別の学科を選択したようだ。
「他人事ではないぞ兄弟!」
「そう、俺達はハグリッドがどんな刺激的な怪物を飼育してるのかワクワクしてるんだ!」
「毛むくじゃらで足の多い巨大な御友人と仲良くなれるチャンスかもな!!そう言えばロン……足の生えた熊の人形は今何処にある?」
………僕もジェーンを見習って飼育学を外すべきなのだろうか………。
魔法生物の危険性
今年度一世間を騒がせているのは逃亡犯、シリウス・ブラックであることは誰も異論を上げる事のない事実である。しかしながら魔法界では『闇の魔法使い』以外にも数多くの危険が存在するという事も忘れてはいけない。近年で最も偉大な魔法使いと称される、アルバス・ダンブルドアが校長を務めるホグワーツ魔法学校。最も安全で、優秀な教師が滞在する事で有名な当校でも不意な事故を防ぐことは難しいと言えるだろう。
9月半ば、『魔法生物飼育学』の授業の最中に、男子生徒がヒッポグリフ(上半身がグリフォン、下半身が馬の合成獣)の攻撃により負傷したという事実が明らかになった。当生物は鋭いくちばし、30センチの鉤爪を持ち危険度の高い魔法生物である。
校長であるアルバス・ダンブルドアは授業、監督に不備はなく適切な授業がされていたとコメントを残しているが一方で危険動物処理委員会は「ヒッポグリフと一括りにしても狂犬病を発症した犬の様に手に負えない凶暴な個体も存在する」と返答し、危険個体について適切な処分を行うように協力を仰いだ・・・
・・・・・・・
「ねぇ、ジェーン・・・ハグリットの事なのだけど・・・」
グリフィンドールの談話室、熾火になりつつある薪がチロチロとか細い炎を上げる空間にはまるで人払いをしたかのように人気がない。
白熱するクィディッチ合戦。ハリーの転落、ニンバス2000の破損、送られてきたファイアボルト、呪い調査の為の箒の分解。そして返却された芸術品とも思える様な最強の箒。初のお披露目となるグリフィンドールVSレイブンクロー戦。当然、全校生徒が試合に行き、校内が閑散となるのも然り・・・箒に呪いが掛かっていると疑い、提出するようにマクゴナガルへ進言した一人の少女を除いてだが。
「そんな事よりも少し休みなさいよ」
目の下のクマは酷く、頬はやつれ目も充血している。まるで何日も寝ておらず十分な休息、十分な食事が取れていないかのようだった。
少なくとも箒の返却されるまでの間、かつて寮の点数を一晩で150点減点された時の様に寮全体から敵対視されている針の筵の様な状況で穏やかに過ごすなんて胆の据わった度胸は彼女にはなく、日に日に憔悴していく様を見る事しかできないジェーンには歯がゆい状況でしかなかった。
「
「・・・それは貴女が背負うべき問題なの?」
何を言っているのとハーさんの目が見開かれる。
「法律ってものは私達が平和に日々を過ごす為に存在しているの」
勿論、例外もあるわ・・・狡賢い政治家が自身の有利になるように抜け道を用意することだってある。
それを知っている者と知らない者では大きな差が生まれもするけどね。
「重要なのは、法律は私達の守るべきルールであるって事」
大昔では人間の正しき在り方として『神の言葉』とか『神罰』なんて仰々しい言葉を使って人々に犯すことのない様に意識付けていたのかもしれない。それが現在では『国家』が守るべきルールとして『法律』が存在するの。安易に反故し、他者に危害を与える様な人物には、それ相応の罰を与え、法律の鎖で縛り付ける。そうしてこの世の中は回っている。
例え話をするならば・・・
「訓練された猟犬をけしかけて他者を殺した場合・・・飼い主は罪に問われない?」
そうではないでしょ?そんなことが
『犬が勝手に食い殺した!俺には殺人の意思などなかった!』なんて言い分なんて許されない。だからこそ法があるの。飼い犬の罪は当然、飼い主が負うべき責務・・・そうでしょ?
「ハグリッドはどうかしら?マルフォイ氏は最初に授業の監督体制の不備を指摘した。ハグリッドは否定し、ダンブルドアはそれを肯定した・・・」
ハグリッドには罪はない。ならば、ドラコの負傷は誰が責任を取る?
「犬なんかに咬まれる奴が馬鹿なんだ?当然、そんな言い分が通る訳もない。…となれば、飼い犬に罪を清算させようとするのは当然の流れよね?」
そうでしょ?適切、厳重な監督の下で行われた授業にも関わらず起こった事故。つまり、手が付けれない凶暴な猛獣ってことなのだから。
「つまり、私には当然の結末だと思うわよ?それで、どうしてハーさんがハグリッド
教師が生徒に尻ぬぐいをしてもらう?笑わせないでよ。
責任をとれる立場の大人がなにもせず、日々の生活で余裕の無い少女の負担になるなんて・・・そんな奴とっとと職を辞めた方がいい。
「なら私達はどうすればいいの?」
疲れ切った表情でソファーのクッションの中に沈み込むハーさん
ジェーンは少し考えた後、結論を呟いた。
「ハグリッドも含め私達には権力も発言力も無い。頼みのカードであるダンブルドアはハグリッド免罪で使ってしまってしまった」
「ならば法律を熟知した専門家に状況を検分してもらうべきね。それと動物好きで擁護してくれそうな著名人に協力をお願いしたら?」
世間、大衆を味方につけて危険動物処理委員会が雑な対処を行わないように枷を付けるの。
「それでも駄目なら・・・・」
ドラコ達が本当に欲しいのはハグリッドの首でしょ?なら渡してやりましょうよ?
ハグリッドも『家族』の様に可愛がっている大好きな怪物の為に職を失うのは本望でしょ?なに、去年までの暮らしに戻るだけ・・・実質あいつは何一つ失うことなく日常に戻れる。
「・・・やっぱり貴女はハグリッドには優しくないわね・・でも、ありがとう」
ハーマイオニーは深く息を吐いた。
「どういたしまして・・・おやすみなさい、ハーマイオニー」
パチパチと音のなる部屋。
規則正しく聞こえる寝息を聞きながらジェーンは暖炉へと薪をくべた。
シリウス・ブラックまたもや逃亡か!?
1993年。シリウス・ブラックはこれまで脱獄不可能、難攻不落の要塞刑務所と名高いアズカバン刑務所から脱獄した初めての囚人となる。
その後、魔法使いの収容されたアルカトラズ刑務所を襲撃し囚人、看守共に全員を殺害し姿を眩ませていた。
以降、足取りの掴めていなかったブラックだが1993年10月31日、ホグワーツ魔法学校へ侵入。『太った貴婦人の肖像画』を破壊。『生き残った少年』ハリー・ポッターの部屋へブラックが侵入など・・・正に神出鬼没ともいえる大胆不敵な凶行を繰り返してきた。
これは、ブラックが脱走した当初にコーネリウス・オズワルド・ファッジ魔法大臣が指摘していた『今後、考えられるブラック行動』の予想が的中したといっても過言ではない。魔法省とホグワーツの監視のを目を搔い潜り行われていた犯行だが、遂にシリウス・ブラックを一時的に拘束したという情報を当局は極秘に入手した・・・
激戦の末の悲劇
三大魔法学校対抗試合、最終戦の事故によりホグワーツに在籍する生徒が命を落とすという痛ましい事故が起こった。同大会は複数の機関の監督の下行われ、事故当日の最終確認でも『特に異常はない』との報告を受けたと関係者は述べている。
事故の際、間近で人の死を目撃したハリーポッターは錯乱しており・・・・
英雄の末路
長年、闇の魔法使いと剣を交えてきたアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアの功績は20世紀で最も偉大な魔法使いと断言しても過言ではない。しかし、昨年度末に『闇の帝王が復活した』等、複数の問題発言を公言しており、周囲に混乱を与えている。1996年現在115歳になり、最前線で杖を振るった栄光時代と現在の衰え行く体との差異で錯乱していると専門家は述べている。魔法省はこの事態を重く捉え、ドローレス・ジェーン・アンブリッジ次官をホグワーツの闇の魔術に対する防衛術教授に任命し、正しい教育が行われるようにと宣言した。
不審死相次ぐ
今日未明、聖28一族として知られているクラッブ氏の邸宅で火災が起きているとの通報があった。魔法省が駆けつけた頃には家屋は全焼しており、中からは3人の身元不明の遺体が見つかった。通常の火災では炎凍結呪文の使える魔法使いが死亡するケースは稀で、当局は殺人の疑いがあると捜査を進めている。闇の勢力に対抗した騎士団として有名な『不死鳥の騎士団』だが、団長であるアルバス・ダンブルドアは近年、折り重なる激務と老いで正常な状態ではないと専門家が診断しており、暴走した騎士団が純血の一族を『闇の勢力』として私刑を行っている可能性を示唆した・・・
・・・・
「人々は自分の生命を守る権利があり、自由に行動する権利がある。しかし、それらの自然状態では互いに他者の権利を損害してしまう恐れがある。したがって、人々は平穏を享受するには個人の力を『国家』へ譲渡する必要がある。国家権力はそれらの力を使用し個人の権利の保護と社会の管理を行う義務がある」
「貴族が義務を負うのならば、王族はそれに比してより多くの義務を負わねばならない。ノーブレスオブリージュに似ていますね。最近では、主に富裕層、有名人、権力者、高学歴者が社会の模範となるように振る舞うべきだという社会的責任に関して用いられる」
「国家と民の在り方を説いたものです。まぁ、似たようなものではありますね。」
ガチガチと硬質な物を叩き合わせた様な異音、木々をなぎ倒す音、周囲の落ち葉を踏み荒らす音をまるで最初っから存在しない音かのように無視し、のんびりとした口調で話す少女とは対照的にロックハートの声は若干震えているようにも聞こえた。
「もし、力を譲渡した国家が外部からの脅威に対応できないと民が知ってしまったらどうなるのでしょう?」
「自らの国を捨て、他国に服従するか・・・国への力の譲渡を辞め、個人が自身の身を守る為に使うかもしれませんね」
日没し、暗闇が辺りを包み込む森の中。杖を構えながらキョロキョロと見回すロックハートは心ここに在らずといった感じで投げやりな回答をアリスへ返した。
最終的にはそうなるかもしれませんね・・・ですがそれは最後に起こる事です。とアリスはロックハートへ返答する。
侵略する他国の言葉など信用するには値しない。甘い言葉で誘惑し蓋を開けてみれば家畜の様な扱いなんてこともあるかもしれませんね。私達は敗者なの。不満を口にする権利さえありはしないのだから。
「秩序が破壊され、万人の万人に対する戦争が始まるのは最後に起こる事。実際はもう一足搔きあるでしょうね・・・」
国家が責務を果たせないのならば、民衆は次の代表者へ力を譲渡しようとする。新しい王へ、大統領、総理大臣、天皇陛下、英雄、勇者へ・・・力を持ち、侵略者へ対抗できる組織、もしくは個人へと・・・
貴方みたいな英雄へ投資を行うのですよ、とアリスが笑う。
ロックハートは顔を顰めて嫌な顔をするがアリスの言葉を否定する事はなかった。
「本当に私にとっては迷惑な話ですよ」
薄暗い地下室で目が覚めて、病院に入院すればファンレターの山と婚約者を名乗る女性が複数人。
「アリスを名乗る少女も数人いましたが・・・」
「責務を果たせと詰め寄る助手はいませんでした?」
ため息と共に肩をすくめる。当時の事は鮮明に思い出せる。
仄かに香る薬品の匂い。
中央には簡素なベッドが設置されているだけの何もない部屋。
天井、壁・・・シミ一つない真っ白な壁紙で統一された空間は何所か非現実的と思えてしまう。
風に靡くカーテン。
唯一、開けっ放しにされた窓からのぞく景色・・・雲一つない青空だけが何もない部屋を彩っていた。
何もない部屋、数十にも及ぶ身に覚えのない家族や恋人の見舞いに疲労を感じていた私の姿を見たアリスは心底面倒そうな顔をしたのだ。
「何人も私を名乗る娘や家族を名乗る人が居たのでしょう?その人達を『本物』と選んだのなら私としても身を引くつもりでしたよ?」
「君が第一声で『責務を果たせ。英雄である貴方が平穏な生活を送る事など、この世界は認めない』と脅したからでしょう?」
闇の帝王に忠誠を誓う死喰い人。裏切者を処分し、主の仇をとる為に厳戒態勢のひかれるホグワーツに強襲を掛けた凶悪犯。
それらに戦いの記憶を失った魔法騎士はどの様に映るのでしょうか?力を失ったのなら戦う価値の無い者として見逃してもらえるとでも?情勢が闇へと向かった時、世間は貴方を戦いに駆り出さずに、そっと見守ってくれるのでしょうか?と少女は困惑するロックハートへと聞いたのだ。
「君の言った事は真実だと私は判断した。私の意思で君と共に戦う事を選んだ」
まぁ、選択肢なんてありませんでしたし、こんなに過酷な訓練と冒険になるとは思いませんでしたがねと笑うロックハート。
「まぁ、やるって言うのならば本気でやらないとね。そっちの方が楽しいでしょ!」
「私は嫌いですよ!こういうマジなやつは!!」
風に吹かれ木々の隙間から差し込んだ月明り。
アリスとロックハートを包み込む盾の呪文、それを隔てて相対するアクロマンチュラの群れ。
5メートルにも及ぶ巨体、黒い毛がびっしりと胴体を覆っていて集団でガチガチとハサミをカチ鳴らす様は正しく『死』そのもの。
「さあ、先生。戦闘はダンスの様に。重く、軽やかに、規則正しく、そして変則的に」
盾の魔法が解除されると同時に動き出す巨大なクモの群れ。
『パチン、パチン』と連続した軽快な炸裂音の様な音が鳴り響き、魔法を弾く硬質な外殻を持つアクロマンチュラの胴体が両断される。
「先生を病室から連れ出して3年。共に戦闘訓練をしてきましたね・・・見せてください、貴方の力を・・・」
ロックハートは少女の言葉に答えるように巨大なクモの群れ目掛けて緑の閃光を放った。
時間経過を新聞記事風にしてみました~この話でアズカバンから騎士団終盤くらいまで時間経過しています(読みにくかったらごめんなさい!)
シリウスさん・・・結局無実だけどどんどん余罪が増えていく可哀そうな人
ロックハート・・・記憶喪失、アリスに回収されてしまったが故に騎士団も真っ青になる実地訓練(実戦)の毎日を送る事に。実力もかなり上がってる!
姿くらまし、現し・・・一般的には移動手段、『パチンパチン』と軽快な音が鳴る。他者と密着して姿くらましする事で同伴する事も可能。ダドリー軍団から逃げる為にハリーが無意識に発動したこともあるので杖もマントも必要条件には当てはまらない。つまり移動する範囲を明確に意識して発動すれば、物体の硬度を無視した切断(バラけさせる)事も可能になるってことに・・・
ハグリッド・・・飼い犬の命と自身の職を天秤に掛けて、彼は決断する事が出来るのでしょうか?