うん・・・読者の皆様は深く考えないで!作者からのお願いだよ!!(*'ω'*)
忘却術。
字の通り記憶を
魔法大戦と呼ばれた戦争では、魔法使いの姿を数多くのマグルに目撃された為に、この魔法が多用された。
戦場に配置されるマグルの兵士とは違い魔法使いは姿くらましを使用した機動力があり、戦場となる場所も
言わば、突発的に起こるテロ活動を迎撃する魔法省といった構図の戦闘が多発した為に運悪くその場に居合わせたマグル達には忘却術による記憶の処理をせざるをえなかったと言える。
現在では『魔法事故巻き戻し局』が破壊された物品を修復し、忘却術を使用する事で
闇の勢力の進軍を阻止するために熟練の職員から順に戦場へ赴き、散っていったのだから。
「魔法省の職員だから全てにおいて優れているということはない。彼等も同じ人間なのだから当然向き不向きも存在するの」
「儂らとて全知全能と言えないのは理解しておる」
敢えて遠回しな表現をするアリスにダンブルドアは
戦争の長期化による慢性的な人手不足。テロの様な破壊活動を行って逃走する闇の勢力に対して、魔法省は迎撃を行った後に事後処理を行わなければならなかった。
後にマグルにも戦争を仕掛ける予定だったヴォルデモート卿と現状維持(マグルに魔法界の存在を隠す)を選んだ魔法省の違いともいえる。
「闇の勢力が一石投じれば、魔法省は延焼を防ぐのに二手を必要とした」
それが各地で行われれば簡単に当時の『魔法事故巻き戻し局』のキャパシティを超える事になる。
「だから、専門職以外の職員にも忘却術の使用を許可した?」
アリスは問う。
なにもダンブルドアが当時の魔法大臣というわけでもない。責任を追及する・・・という意味で聞いたわけではないという事も老人は理解していた。
「他に方法が無かったとはいえ、安易な判断ではあった・・・」
そして、返答するダンブルドア自身も当時の判断に納得はしていなかった。
事故があったのならその記憶を忘却すればいい。
目撃されたのなら、その間際の記憶を消せばいい。
では、一般市民が巻き込まれて死亡した場合は?
その人に纏わる記憶の全てを消せばどうなるのだろう?
「過去、現在、そして未来があるように記憶にも連続した繋がりがあるの」
記憶の差異は疑問を生み、それらを追及すればやがて真実につながる。
偽りの記憶を埋め込もうとしても、その者に関わる人物全てに同様の記憶を埋め込む必要がある。
ならば単に記憶を消したのならば?
『何故ここに居る?』という疑問から『何をするつもりだった?』や『誰かに誘われたのだろうか?』という風に過去の記憶から忘却術によって空白になった記憶を探ろうとするだろう。
そこから空白の記憶が蘇ることだってある。
「些細な記憶ならば思い出す事は無かったのでしょうけどね・・・魂に刻まれた傷跡は
忘却術・・・その名の通り忘れさせる呪文。決して記憶そのものを消し去る呪文ではないのだから。
戦争から離れたマグルの兵士がふとした瞬間に戦場の記憶が蘇り、追体験するように残された傷跡は事が終わっても長くその者を苦しめる。
「白い部屋、消毒液の香り、靡くカーテン。私はその景色に意味も分からず苦しめられることになったわ」
空白だらけの記憶、気づいたら私は施設に入れられていた。
とても良い人達とは思えなかった。まるで笑顔の裏で毒を盛ってるように思えて私は差し出された手を受け入れることは出来なかった。
「嘘だらけの世界。私の目にはそう映ったの」
だから身を守る力を欲したの。嘘を見抜く方法、護身術、法律であれ、魔法であれ・・・・
「そうか・・・」とだけダンブルドアは相槌をうった。
人の人格が形成されるのは3歳~10歳までの期間。
成功、失敗。愛し、憎み。様々な体験を積み重ね、人としての人格が形成されていくのだが、在ろう事か彼女は魔法省の誤った対処でその機会を奪われてしまったのだと知った。
そして
身に着けたのだ・・・違和感なく周囲に溶け込む方法を、他者に不審を感じさせない立ち回りを。
結果、どんなに真の彼女が傷つき危うい状態でも、表面上の姿に惑わされて誰も彼女の異変に気付かない。
「あとは先生の知ってる通りよ。ホグワーツに入学して魔法を学んだ」
「知識が増えると世界の見え方も変わってくるものじゃ。君もそうだったのだろう?」
コクリと頷き同意を示す少女。
当時の戦争を知り、自身に掛けられた呪文を知った。
そしてその呪文が自身に使用されるきっかけとなった
「復讐は虚しいだけと誰かが言った。その通りだとは私も思うよ?ただ、私が地に伏せのた打ち回ってるのに加害者が罪を忘れのうのうと生きてる様に虫唾が走っただけ」
被害者に謝罪もせずに神に許しを請う。
許されれば罪は消えるとでも?・・・・違うでしょ?
人は罪を背負って生きていくべき。許されて楽になろうなんて問屋が卸さない。
「過去を清算させるために長い時間を使った」
「それが君の罪なんじゃな?」
アリスは目を伏せた
「卿が復活し友人達は戦場で散っていく。その時代の混乱さえも利用して私は復讐をやり遂げた」
「復讐をやり遂げ再び戦争に目を向ければ既に勝敗は決していた・・・そうじゃな?」
「ハリーが敗れた世界・・・闇の軍勢はイギリスを掌握し、世界に同調を呼びかけた。かつてグリンデルバルトが演説し世界全土に支持者を獲得したようにね」
貴方はグリンデルバルトを止めたけどマグルを支配するべきと主張する過激派を根絶やしにしたわけではない。
燻っていた燃料にヴォルデモートが火を投げ入れる様にそれらは簡単に炎上したわ。
「マグルとの戦争が始まる。そしてその結末は預言者でなくても簡単に想像がついた。世界の流れを止める事など私には出来ない。だから私はその日、初めて時計の針を回した」
・・・心のどこかで既に結論を出していた。それを理解していた。
だけど運命を受け入れるわけにはいかなかったの。
私には何万のも振り子の描く
「我ながら愚かな判断だと思う。だけど、それに縋るしか私には残されていなかった」
・・・それが私の
・・・
『カチリ』時計の歯車を回す。
世界が回り積み上げてきた歴史が反転する。
破壊の歴史ならば反転し再生へ。
それが創造の歴史ならば人の手が加わる前の自然のあるべき姿へと。
かつてハーマイオニーが使用した逆転時計は一回の反転で1時間。
だから気づく事が出来なかった・・・もしくは私が託されたこの時計だけが特別だったのか・・・
私の時計は一年を巻き戻した。世界を、私自身に流れる時間さえも例外なく巻き戻した。
破壊され廃墟になった街は戦争が起こる前のかつての姿を取り戻し、憎しみと恐怖の表情で銃口を向けて来たマグル達は交差点の真ん中で立ちすくむ私を好奇の目を向けた後通り過ぎていく。
「大丈夫、私なら出来る」
そう自身に言い聞かせるように呟いた。
サイズの合っていない服、縮んだ体。
戦いの中で成長した身体能力も魔力も巻き戻り、何も知らない少女だった頃と同等の物になってしまった。
「大丈夫、
そう私は呟いて雑踏の中へと歩を進めた
・・・
「ニワトコの杖、蘇りの石、透明マント。『死』そのものから作られた強力な装具、死の秘宝。きっとこの時計もそれらと何ら遜色のない性能を誇っていると思うの」
もしかしたら伝説になった3兄弟の他に、もう一人『死』から褒美を与えられた存在が居たもしれませんねとアリスが仄めかす。
「この時計を所有しながらも他の死の秘宝を探す貴方は、この時計に出来る事を正確に理解していた。そうでしょう?」
「違うのだよ、アリス。道を知るのと歩むのとは。儂にはできなかった、だが君が出来ないとは限らない」
結果が分かり切っている事に「そこに可能性がある」と示し笑顔で送り出した元凶にアリスはジト目を送り深いため息をこぼした。
「・・・ともあれ、私は時を巻き戻した。そして、使用する上でいくつか制約を自らに付けた」
一つ、自分自身・本来の姿で行動をしない。
これは逆転時計を使用する上での基本となるもの。なにも自身が2人居たら闇の魔術と勘違いした過去の自分に殺されるかもしれないなんて安直なものではない。それを考慮してもメリットよりデメリットが上回ると当時の私は判断した。
「始めはポリジュースを使用していた。だけど薬で成り代わるのには限界があったの」
姿が変わってもその人になれるわけではない。一人一人の物語があり、姿を変えるたびにその人の
地雷原の上をタップダンスをしながら前進するような行為だったわ。物語から逸脱するような人物像を演じれば簡単に正体を暴かれることになる。だから複数人に対し認識をズラす今の魔法を自身で開発する必要があったの。
「その頃からね・・・私が
「君は始めにジェーンではないと言っていたのぅ?」
「ええ、正確にはジェーンだった者って意味よ・・・」
これから起こる惨事がジェーンに紐付けされてはいけない。
過去の自身が狙われればそれだけ私の役割が増え、本来の目的を果たせずに終始ジェーンの護衛をしなければならなくなる。
「だから私は名を変える必要があった。彼女は私、私は彼女。切っても切れぬ同じ存在。しかして、私は彼女と同じであってはならない」
故に、私は過去の自分と決別して前に進むことを選んだ。
二つ、最優先で守るべき人物は過去の自分自身。
もしもハリーと過去の自分の命を天秤に掛ける必要が出たのなら私は迷いなく自身の安全を優先しなければならない。
覚悟なんてとっくに出来ている。自身の命が惜しい訳ではない。だけどそれは
過去の自分を見捨てて他の誰かを助けても、過去の自身が死ねば世界が矛盾し、エラーを正そうと今の自身の存在も消すことになるだろう。今しがた救った命も私が消えた事により本来の道筋へと向かう。
「馬鹿げた話よね。最も価値のない命を最優先で守らなければならないなんて。」
まるで過去の負債を清算していってるようだった・・・復讐を優先し、痕跡を残してしまった
「ホグワーツ決戦、残党狩り、マグルとの独立戦争。多くの優れた戦士達が散って逝った。その中で少しだけ魔法の知識がある小娘が最後まで生き残れた・・・それらは必然だったわけよ」
当然よね、ジェーンの為に何回も時を繰り返し彼女を守る為に駆け回った。リセット、リセット、リセット、リセット・・・・負った傷は跡形も無く消え去り当時の自身の姿へと巻き戻る。積み上げてきた技術、鍛え上げた魔力はリセットの度に無に返り、継承されるのは忌々しい記憶だけ。
「それでも時計の針を回したよ?カチリ、カチリ、カチリ・・・この時計を託されたのには何か理由があるんだって自分に言い聞かせて。結局本来の運命を変える事も出来ぬまま何度も何度も何度も」
三つ、一度試したルートを再度歩むことを禁ずる。
そこには確実に過去の自身が居る。
「始める前から心のどこかで理解していた。一度決定した運命を変えることは出来ないんだって」
カチリ・・・
夕暮れ、斜陽。
教室の温度は下がりゆく。
少女は自身の冷える指先を温めるように両の手を合わせていた。
ダンブルドアはその姿は何所か祈りの姿に似ているように感じた。
「・・・制約に縛られて何度も何度も繰り返す。繰り返すうちにこの物語の裏側を知る事が出来た」
色々の人になりすまし、物語に干渉してきたからね。
「破れぬ誓い、裏切り、暴走」
ハリーという物語の裏でも様々な人物がそれぞれの物語を歩んでいる。
「それが何回目かなんて疾うの昔に忘れてしまったわ。」
振り子の描く何万もの残像、望んだ未来の可能性を進み、そして叶わずにそれを塗りつぶしていく。
「そして気づいたってわけ、ハリーの居る世界に未来はないってね?」
それは真っ黒に塗りつぶした地図を見ている様だった。
これ以上続けても結果は変わらない。
「ならば、今まで選ばなかった可能性を進む必要があると感じた」
それは闇の勢力へ加担するという事。仲間を裏切り、過去の自分自身からも知らずのうちに標的として追われるということ。
それでも構わないと思った。もう後戻りなんてできやしないのだから。
どうせこれも無駄になる
分かり切った結末。それでも私は歯車を回す。
黒塗り樹形図って物語を考えてる時の作者みたいだなーって
「こんな未来もいいかも」「この展開にしたい」など思い付いては「やっぱり違う」と未来を潰していの……(´・ω・`)