転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります   作:田舎犬派

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#14 初めての記念配信(後編)

 

滝か湖の実装予定地よりさらに下山した山の麓に着きました。

特に何もなく、森が広がっているだけの空間です。

 

「さて~それではここら辺で本日のメインの建築を始めていきたいと思います~」

 

『ついに何か建てるのか』『寝る場所さえ無かったからな…』『わんころちゃん野宿してたの?』『風邪ひかないようにね』『俺が温めてやんよ』『純粋にキモイ』『お前を燃やしてやんよ』

 

「も~、皆さん何言ってるんですか~?わんこーろは電子生命体だから風邪なんてひかないんですよ~?」

 

『おっそうだな』『アッハイ』『ネットにもウィルスとかあるからワンチャン?』『元気なのが一番』

 

「ウィルスは発見次第このハサミで~じょっきん、ですよ~」

 

そう言って持っていた裁ち取り鋏を動かす。じょきじょき。思ったよりも大きな音が出てしまいました。

 

『ヒェ』『おい温めニキ行って来いよ』『俺はウィルスじゃねえ!』『似たようなものだろ』『切ってもらえば少しはまともになるかもしれん』

 

「はいはい~それじゃあもうそろそろ作業を始めていきますよ~まずはこのあたりをハサミでばっさり~」

 

裁ち取り鋏を横薙ぎにすると一定の範囲の樹が軒並み倒され、切り株も残らずすべて消失した。

裁ち取り鋏の持つ能力の一つである"初期化"です。

 

「……ここら辺に建てていきますね~」

 

『おいなんで誰も突っ込まないんだよ!』『まだしにたくないですはい』『時々天然で狂気染み出る系幼女ゾ』『なにじきに慣れる』

 

 

「いや、私もちょっと派手にやっちゃったかな~と……ええと、今回建てるものはじゃ~ん!神社になります~」

 

いやいや私だってこんなあたり一面消滅させるつもりなんてなかったんですって!

話題を無理やり変えて私は配信画面へといくつかの画像データを表示させます。これらは私がサルベージしたデータでして、そのすべてが神社の外観が詳細にわかるものになっております。

 

「今回建てる神社は流造という様式を採用しようと思います~特に理由があるわけではないのですが~過去データの中で最も多くのデータがサルベージ出来たのがこの様式の神社についてだったからというのが大きいです~」

 

木々を一掃した後の地面を裁ち取り鋏の先端で溝を掘って囲い、その範囲を初期化。素材の変更を行い一瞬で石畳と玉砂利に変える。

 

「とは言っても~映像データは揃えられても神社の建築なんてやったことないんですよね~どうも建築の手順を含めたデータはネットから隔離された別管理か紙媒体で記録されていたか口伝だけのようです~」

 

『そんなんで受け継いでいけるのか?』『電子化した方が情報の劣化は少なくね?』『ネットにあれば半永久的になくならないしその方がいいのに』

 

「まあ、映像データを参考に素人ながら造っていきましょ~」

 

『いきましょ~』『わんころちゃんのいきましょ~すき』『かわいいし力が抜ける』

 

「せっかく檜の森に囲まれているので屋根は檜皮葺でいきましょ~柱や床も檜材を使って仕上げていきますね~」

 

あらかじめ制作しておいた檜の木材を取り出し、黙々と作業を続けていたのですが、ふと気づくと無言の時間が延々続いていたようで、コメント欄は『無言配信助かる』が大量に流れておりました。

 

「あわわわ~もうしわけありません~ちょっと作業に集中しておりました~」

 

『焦ってるみたいだが、声音と口調のせいで全くそんな感じなくて草』『わんころちゃんそういうとこあるよな』『無言でも見てて楽しいぞ。』『リアルタイム3Dモデリング(わんころ式)』

 

「本当に申し訳ありません~確かに建設している画だけではつまらないかもしれないので雑談でもしながらやっていきましょうか~」

 

『わーい』『わんころちゃんにお話聞いてほしい』『ありがたい』

 

「改めまして今回はわんこーろの記念配信に来てくださってありがとうございます~みなさまのおかげでチャンネル登録者数も1000人を突破いたしました~」

 

『w?』『あれ?もしかして?』『気づいてなくて草』『作業に集中してたからなw』

 

へっ?一体なんのことでしょう?

 

『もうすでに登録者数2000人突破してる件』『しかもさらに伸びてる様子』『メイクの配信実況勢がわんころ式モデリングがネタじゃない事に気付いて混乱しているの草生えますわ』

 

「えっ、ええっ~!に、2000人ですか!?」

 

あわてて確認しますが、確かに登録者が2000人を突破しているじゃないですか!あ、しかも更新したらもう3000人いきそうなんですけど!

現在の視聴者数もすでに2000人近いですし……。

 

「……」

 

『……』『……』『衝撃で固まってて草』『珍しい顔みれた』『スクショしとこ』

 

「み、みなさ~ん初めまして~電子生命体でV配信者のわんこーろといいます~よろしくお願いしますね~」

 

『お、おう』『またかw』『完全にキョドっておめめぐるぐるなんですが』『初見に優しいわんころちゃんすき』『初見です(本日2回目)』『初見詐欺やめろや』

 

いや~まさかこんなに登録者数が増えるとは思っていなかったのですよ~数十人もいれば今日はたくさんの人に見てもらえてる、って嬉しいけどびくびく緊張していたんですから。

今なら登録者数が数十万の配信者が跋扈するフロントサルベージさんに放り込まれているわちるさんの気持ちを本当の意味で知ることができている気がします。

 

「わちるさんもがんばってほしいですね~」

 

『ん?』『今わちるって言った?』『わちるさんってFSの?』『お知り合い!?』『やっぱ初回配信のわちるって』

 

おっと、思わず口に出してしまっていたようです。初回配信を御覧になっている方もおられるようで気になっている視聴者の方も多いみたいですね。

ええと、どれぐらいの事を言っていいのかな?あまりわちるさんの話題を話し続けるとFSさんから何か言われるかもしれないし……

 

「ええと、ですね~わんこーろとわちるさんはお友達なんです~私の初配信にもコメントを書き込んでくださって~そのときにいただいたデータがきっかけで今の3Dモデリング配信を始めたんですよ~」

 

ふと配信画面外からコールが聞こえたので視線を移してみるとメイクにてわちるさんがつぶやいているようでした。

 

【私とわんこーろさんは友達!友達なんですよ!】

 

いやいやあなた私の配信見てるんですか!

 

「みなさん気になっていると思うのですが、このわちるさんというのはフロントサルベージ所属のわちるさんで間違いありません~……本人がメイクにてつぶやいてます~」

 

『マ?』『ほんまや』『わちるん初配信の練習してたんじゃ……』『奴さん死んだよ(練習完了)』『ずいぶんと余裕がありそうだ。これは完全な進行で完璧な滑舌を披露する新人初配信になるんやろなぁ(フラグ)』

 

【視聴者のみなさんひどくない!?】

 

あ~あ、これは自業自得という奴では?

 

「あ、そうそう~わんこーろが配信で制作したわちるさんの人形も本人からの許可が降りたのでもう一度ご披露したいと思います~これです~お狐さまを模した木製の人形になります~かわいいというよりかっこいいという言葉が似合いますよね~実は今回神社を造っているのもこの人形を神社で祀るためだったりします~」

 

『ほ~』『ええやん』『てぇてぇ』『一視聴者としてそんな大事にされたら嬉死するわ』『なおわちるんはすでに限界化している模様』

 

【ああ~~~すき~~~~ありがとうございます!ありがとうございます!】

 

その後もどこまで話して良いか悩む私をよそに、ダイレクトメッセージの内容をメイクでぶちまけるわちるさんに視聴者さんがつっこみを入れたり、私がなぜかフォローを入れたりとカオスな感じになりながらも何とか制作中の神社が形になりました。

緩やかな曲線を描く屋根に、檜により形作られた本殿。新築という事で真新しいその姿はかつての日本に存在していた年月を経たそれよりも新鮮さがあり、若々しく感じる。

そのためかこじんまりとした姿も相まってかつて日本に存在していた神社の、威厳のようなものはあまり感じられない。

けど、私の初めての建築物として素人ながらなかなかの出来栄えなのではないでしょうか?

 

「内部はまた今度の配信で、ですね~。今日の長時間配信を最初から見ていただいている方は薄々ご理解していただいているとは思いますが~わんこーろは最初にガワを作っておいてあとから細部や内装を追加していくという制作行程を踏んでおります~これは効率とかが理由でなく~単純にこのほうがモチベーションが保てるからなんですね~」

 

『別ゲーの話だが、巨大建築するのにモチベは重要』『楽しくないとやってらんないしね』『ガワだけってもここまででかなりのクォリティーだぞ』

 

「ほんとはもうちょっとやりたいことがあったんですけど~それはメイクにでも投稿しようかとおもいます~、見てください~太陽が地平線に沈んで真っ赤になってます~」

 

私が創ったまだまだ無骨な大地。ほとんどなにもないまっ平らなその地平線へと赤く染められた太陽がゆっくりと沈んでいきます。

 

『うおおおおお』『これはすごい!』『これが夕日!初めてみた!』『太陽ってこんなにきれいなんだな……』『やば、泣きそう……』『分かる…こんな光景映像データじゃ見れん』

 

「今日の作業は太陽が沈むまでと決めていたので今日はこれで終わりたいと思います~本日はわんこーろの長時間配信におつきあいくださり本当にありがとうございました~」

 

『いかないで』『ありがとー』『たのしかった!』『夕日に照らされた神社の前で手を振る浴衣犬耳幼女……イイ!』

 

「あ、あとですね~私のお友達のわちるさんの初配信が近々行われるらしいのでもしよろしければわちるさんの応援もよろしくお願いしますね~」

 

そう言って私は今日の配信を終了した。結局私の配信は数千人の視聴者の方がお越しになり、チャンネル登録者数は4000人に到達、メイクフォロワーも4000人を突破していた。

まさかこの4時間だけで登録者数が四倍になるとは……。

これからもみなさんのご期待に応えられるようがんばらないといけないですね。

 

 

 

 

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