「来た?」
「うん……」
エリちゃん救出作戦の知らせは、会議から二日後の深夜にメールで一斉に飛んできた。
全員考えることは同じだったのか、思わず部屋を出たとたんに隣部屋の梅雨ちゃんと目が合ったのには思わずびくっとした(薄暗がりの中で、半開きのドアから音もなく梅雨ちゃんの顔が覗いているのが見えたら多分誰でもこうなる)し、間接照明以外の照明の消えた寮内を足音を忍んで階下に降りれば、同じエレベーターに一つ下の階のお茶子も乗ってきて、エレベーターが開いた途端、隣の男子棟用エレベーターからイズクと切島くんが出てきたのだから、全員が吹き出した口を押さえたのも無理はなかった。
「ついに来たね……」
「決行日……!」
「明日がナイトアイ事務所でブリーフィング、明後日の早朝に決行か。朝一なのは、外出されて不在なのを防ぐためかな」
「なるほど……!」
「やるぞ緑谷ァ!」
「切島くん、声デカイよ! 皆起きちゃう」
「お、悪ィ」
**
翌日。学校を公欠して向かったナイトアイ事務所で、私たちは全員目を見開いていた。
「本拠地に居るぅ!?」
「なんだよ、俺たちの調査は無駄だったわけか!」
まさかのまさか、本命のエリちゃんが居場所を移されず、本拠地に留まっている確証が得られたというのだ。
その確証を得たのが他でもないサー・ナイトアイ……近くのデパートで、八斎會構成員が似合わない女児向けのおもちゃを買っていたというのだ。モーレツ!プリユア!とファンシーな柄があしらわれたピンクの大型玩具に、サラリーマンらしい風体のナイトアイが手を置いているのがちぐはぐすぎて、ちょっと笑いそうになる。……ファットガムもツッコんでいたが、なんでナイトアイまで買ってるんだ……。
その構成員に近づいて、予知の個性を使ったところ、買ったらしい玩具を手に包帯を巻いた少女に見せている光景を見たというのが、エリちゃんが本拠地に居るという確証になったという。
「予知使うのかよ!」
「確信を得た時、ダメ押しで使うと先日も言ったハズ」
「とにかくこれで、ようやっと決まりっちゅうワケやな!」と息巻くファットガム。
「奴が家にいる時間帯は、張り込みによりバッチリでございます」とは、センチピーダー。
「令状も出ている。後は……」とつぶやくグラントリノの語尾に被せるように、
「緑谷くんやるぞ!! やるんだ!!」と叫んだのはミリオ先輩だ。
ワサワサワサ、と心なしか残像が見えるぐらいのスピードで両腕を動かす気合十分なミリオ先輩に、呆気に取られているイズクの姿を横目に見つつ、私も胸の前に持ってきた手の平を少し見つめた後、ぐっと握った。
水面下で動く思惑に一石を投じる救出作戦……その火蓋が、切られようとしていた。
支部で掲載してる最新話まで追いついたので連続更新ここまで!
本年も何卒よろしくお願いいたします。
原作も佳境なので、今年こそは更新頑張りたい所存です。