東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
これこそ我が二次創作の本懐よ。
つまり何が言いたいのかと言うと……
東方香霖堂二巻とサモナーさんが行くⅥ巻、私はいつまでも待っているからな!
「それでは旦那様、本日も行って参ります」
「ああ、こっちでも追加で物資を用意しておくから頼んだよ。煙晶竜もお願いします」
『うむ、任せよ』
本来なら人里に置かれている黄金の像に憑依した煙晶竜と、それに乗った叢雲が人里へと飛び立って行く。
煙晶竜は僕が地獄の閂で作成したコンテナを運んでおり、中には人里への支援物資である食料や薪、それからクトゥグアの力も借りて作った、特殊なランプが詰まっている。
飛び去る煙晶竜の姿を見ていると、はらはらと雪が舞い落ちて来るのが目に入った。
「また降るのか……」
少しだけ陰鬱とした気分になりつつも、僕はクトゥグアを店番代わりに残して、香霖堂地下ダンジョンへと再び向かった。
今日は五月一日。本来初夏の季節だが、幻想郷の冬はまだ終わらない。
この異常事態に気付いたのはいつ頃からだったろうか?
三月になった時点では、今年の冬は長いなぁ。としか思っていなかった。
しかし三月が終わり、四月が過ぎ、遂に五月となった今でも冬が終わらない。これは明らかに『異変』だ。
霊夢もその事には既に気付いているはずだろう。実際、魔理沙は少し前から独自に動き始めているようだ。
だが、霊夢はまだ動かない。何か理由があるのかもしれないが、もどかしく感じるのも事実だ。
けれど、異変解決は博麗の巫女である霊夢の役目だ。僕の口出しする事では無い。
しかし、異変解決が僕の仕事では無いとは言え、このまま何もしなければ人里から餓死者や凍死者が出てしまう。
そんな中で僕が何をしているのかと言えば、叢雲と煙晶竜を通して、竜信仰からの援助という名目で、人里に支援物資を送り続ける事だった。
「よっ、と」
力を込め過ぎない様に蹴り飛ばした、全身が木で出来た人型のモンスターが洞窟内の壁に叩きつけられてそのまま動かなくなる。倒したのは各種原木をドロップするモンスター『ブランチゴーレム』だった。
僕がこの終わらない冬の中、人里への支援物資を揃える為に狩っているモンスターは主に薪となるこのブランチゴーレムと、キノコ類をドロップする『ファンガス』に、牛肉……もとい『闘牛』と、果物類をドロップする『コボルト』系統のモンスターたちである。
狩っているモンスターは主に二種類に分けられる。
一つは倒した後、『剥ぎ取りナイフ』を使ってドロップアイテムを確保するモンスター。
もう一つは、倒した死体をドロップアイテム化させずに、そのまま利用するモンスターだ。
前者は主にファンガスとコボルト。こいつらはドロップアイテム化させないと食料が手に入らない。
後者は主にブランチゴーレムと闘牛。こいつらは死体をそのまま解体すれば、薪や肉が手に入るからである。
解体の手間はかかる物の、後者の方が一度に獲得出来る量が優れている。しかし、栄養バランスを考えると、一度に入手出来る量は少なくとも、キノコや果物はどうしても確保しておきたかった。
地下ダンジョンでの物資確保が一段落したところで、僕は地下塔の中に増設したガラス工房へと向かった。
ここではクトゥグアの協力の下、とあるマジックアイテムを製作している。
製作しているマジックアイテムの名前は『炎の精のランプ』。煙晶竜に運んで貰ったコンテナの中にも入っていた物だ。
このランプは『サンドコロッサス』というモンスターがドロップする『魔珪砂』というアイテムを原料にした、特殊なガラスを用いて作成している。
魔珪砂を原料として作る『封魔のフラスコ』というアイテムがあり、これには中に注がれた物質の劣化を防ぐという効果がある。
同様に、魔珪砂を使用して作ったこのランプには中に居る存在の劣化を抑える特性があり、炎の精のランプには文字通り、クトゥグアの呼び出した精霊と言うか眷属である『炎の精』という存在が入っている。
炎の邪神の眷属であるこいつらの入ったランプは、燃料要らずの暖房器具として人里で重宝されている。
なにせこれ一つで人里の民家一つを丸ごと温め続ける事が出来るのだ。
薪の節約にもなるし、腰から下げておけばたとえ薄着で外を出歩こうとも風邪をひくことが無いほどである。
これもまた、人里全体に行き渡らせるために大量生産をしているであった。
『―――主よ、来客だ』
『うん? そうか、今行く』
炎の精を入れる為のランプを新たに百個ほど作成したところで、クトゥグアからの念話が届いた。
クトゥグアは発声器官を持たない為、声を出すことが出来ないのだが、今の様に念話を使っての会話は出来る為、意思疎通に苦労した事は無い。
離れていても直ぐに連絡が来るため、こうして店番を任せるには丁度良かった。
地下塔から店へと戻ると、そこにはお茶を淹れて客をもてなしているクトゥグアの姿があった。
見た目こそ赤い人魂だが、この邪神は触手を使って人間の手先以上に細かな作業すら出来る器用な邪神なのだ。
クトゥグアに店番を任せてよかったと再認識した僕は、クトゥグアの淹れたお茶を飲むお客様へと声を掛けた。
「いらっしゃい、『アリス』。何だかボロボロだけど、大丈夫かい?」
「大丈夫じゃ無いわ。魔理沙にやられたのよ、酷い目に遭ったわ」
店に来ていたのは魔法の森に棲む魔法使いの少女『アリス・マーガトロイド』であった。彼女の隣には、いつも連れ歩いている人形が浮かんでいる。
彼女は霊夢や魔理沙の古くからの知り合いで、昔から偶にうちの店に顔を出している。
レミリアや咲夜ほどの頻度では無いが、この店にとってはお得意様と呼んで良い相手だろう。
「魔理沙がかい? あの娘は異変解決の為に動いていたはずだが……」
「手掛かりが見つからなくて、行く先々で出会った相手に勝負を吹っかけているみたいね」
「何をやっているんだあの娘は……」
あ、頭が痛い。また方々で暴れ回っているのか。
見知らぬ相手ならともかく、アリスが異変に関わっていない事なんて判るだろうに。
「……すまないね、アリス。今度何かお詫びの品でも届けるよ」
「あら、霖之助さんが謝る事は無いのよ。それに、拒否せず受けて立ったのは私だしね」
何でも無い事の様にそう言ってのけるアリス。この少女、見た目の可憐さに似合わず、意外と好戦的だ。
まぁ、見た目と中身の差が激しいのは、幻想郷の少女たちの大半に言える事だが。
「そう言って貰えると助かるよ。それで、今日は何をお探しなんだい? サービスさせて貰うよ」
「あら、本当? 嬉しいわ。実は、この前霖之助さんから貰ったこのランプの事なんだけど……」
そう言ってアリスは、腰から下げていた炎の精のランプを外して、店のカウンターの上に置いた。
アリスに渡した物もそうだが、僕個人が知り合いの少女たちに直接渡したランプは、、叢雲と煙晶竜が人里で支援物資として配っている物と少し違う。
人里で配っている物は、封魔のフラスコと同等のガラスと、普通の鉄や木材で作った金具や台座を組み合わせた物だ。
しかし、アリスらに渡した物は、封魔のフラスコの上位アイテムである『封神のフラスコ』と同等のガラスに、最近地下ダンジョンの最奥で採掘出来るようになった『ミスリル』と鉄の合金で作成した金具、そして耐熱性に優れる地獄の閂で台座を作った特別性である。
竜信仰が配っている物を、僕が作成して知り合いに配って回るのは問題があるように見えるが、僕が半人半竜であり竜信仰と繋がっている事は、妖怪たちにとっては周知の事実となっている。
その為、生粋の魔法使いであるアリス相手に、僕がランプの製作者であるとバレる事は問題では無い。
「炎の精のランプだね。アリスにあげた物は、人里で配っている物より材料にこだわった特別製なんだけど、何か問題でもあったのかい?」
「ランプ自体に問題は無いわ、重宝してるし。今日はランプに使われているガラスや金属が欲しくて来たのよ」
「ああ、素材の方が目的だったんだね」
お目当ては封神のフラスコとミスリル合金だったか。
確かに両方とも、魔法使いにとっては非常に有用な素材だ。アリスが欲しがっても無理はない。
「古道具屋さんに頼む事じゃないけれど、このガラスにしろ金属にしろ、今まで見た事の無かった素材だし。霖之助さんに頼む以外に手に入れる当てが無いのよ」
「まぁ、それはそうだろうね」
ゲーム時代のアイテムは、僕の能力によって生み出されているといっても過言では無い物だ。
世界中で僕以外に、同じ物を用意出来る者は居ないだろう。
「―――判った。あの素材は僕以外には用意出来ないだろうしね、請け負おう」
「ありがとう、霖之助さん。助かるわ!」
「ただ、販売となると結構高いよ? 入手自体はそう難しくは無いけど、一度に手に入れられる量が少ないからね」
「高いって、どれくらい?」
「量にもよるが、このランプを一つ作る程度の量なら……サービスしてもこれ位だね」
「……おぉう」
算盤ではじき出した値段を見せると、アリスは女の子らしさの欠片も無い声で呻いた。かなり珍しい姿である。
「こ、こんなに高いの……?」
「何せ幻想郷中探しても、僕以外に用意出来る者は居ないだろうからね。稀少中の稀少素材で、効果も高いんだ。どうしたって高額になるよ」
「そう言われるとそうよね。けどこの値段は……」
「ちなみに、これがランプにする前の見本だよ」
僕はアイテムボックスの中から、器に入った魔珪砂と封魔のフラスコ、封神のフラスコにミスリルインゴットとミスリル合金のインゴットを取り出してカウンターの上に並べた。
「こっちのフラスコがアリスのランプに使われているのと同じガラスで、隣のは人里で使われているのと同じガラスのフラスコだよ。こっちの砂がガラスの原料になる。こっちのインゴットは金具に使っているのと同じ合金で、隣のは合金化する前のインゴットだ。合金に使われているもう一種類の金属は普通の鉄だよ」
「これは……手に取って見ても良いかしら?」
「もちろん」
アリスは僕が並べた素材たちを真剣な目で眺めている。
僕が提示した値段を見て躊躇していた彼女だったが、この様子を見る限り、彼女の気持ちは固まったようだった。
「……これ、全部いただくわ。お勘定をお願い」
「毎度あり」
アリスは即金で全額支払い、購入した素材を人形に持たせて帰って行った。
出費は痛かっただろうが、店を出て行く彼女の表情は、手に入れた素材の使い道を考えてワクワクしている。と言ったものであった。
僕もまた技術者だ。彼女の気持ちは良く分かる。
アリスの背を見送りながら、いつかパチュリーも交えて三人で意見交換会を開くのも良いな。と、僕は考えていた。
夜になり、夕食の準備をしながら叢雲と煙晶竜の帰りを待っていると、慌てた様子の叢雲と煙晶竜から念話が届いた。
『旦那様。聞こえますか、旦那様!?』
『叢雲? どうしたんだい、そんなに慌てて』
『それが……わたくしたちは今、冬が終わらない異変の元凶の元に辿り着いたのですが、少々面倒なことになりまして』
『キースよ。すまんがこちらにクトゥグアを寄越してくれんか? 術式の構築にあやつの力を借りたいのじゃ』
『判りました。僕が手伝えることはありますか?』
『キースはそのまま店で待機していてくれ。幻想郷側にも、いつでも動ける者が残っていて欲しいからの』
『了解です。叢雲もそれで良いかい?』
『はい、よろしくお願いします。旦那様』
『ああ、そっちも頑張って』
念話を切ると、僕は手短に念話の内容をクトゥグアに伝え、二人の元へと向かって貰った。
「と言う訳だ。二人の手伝いを頼むよ」
『了解した。主よ』
(シャドウ・ゲート!)
僕は闇魔法の『シャドウ・ゲート』を使ってクトゥグアを二人の元へと転移させた。
現地で何が起きているのかは判らないが、きっと今夜中にでも長かった冬が終わるだろう。
僕はそう予感した。
アリスさんがログインしました!
そして、まーたヤバそうなもんを作っているいつもの転生香霖である。人里中でSANチェックが起こってそう。(起こってません)
Q、クトゥグアが術式構築の役に立つの?
A、クトゥグアのINT(知性)の値は28である。(人間の限界値が18)
なお、「INT28? ザッコwww」とかぬかしやがったイゴーロナク君(INT30)は燃やされました。
固有の二つ名すら持ってない没個性が、外なる神にも喧嘩を売る、二つ名『生きている炎』なクトゥグア様に喧嘩を売るから……。(クトゥルフ神話TRPGのルールブックに記載されている邪神の中で、イゴーロナク含め四体だけ固有の二つ名が無く、単に『グレート・オールド・ワン』としか書かれていない没個性邪神が居る)