東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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後篇で終わらせようと思っていたのに、結局長くなっていつも通りの中篇になってしまった。
おのれディケイド!!(冤罪)


第二十四話 「転生香霖と冬の終わり(中篇)」

 妖夢さんと共に、西行妖のとまで辿り着くと、そこには何らかの術を発動させようとしている霊夢さんと、霊夢さんを守るために弾幕を撃ち落とし続けている魔理沙さんと咲夜さんの姿が目に入りました。

 弾幕自体は、西行妖を背に浮かぶ曖昧な人型の何かから放たれているようです。

 

「叢雲、煙晶竜! それに、そっちの半人半霊も来たのか」

「加勢します! ざっくりとで良いので状況の説明を!」

「幽々子様は、幽々子様はどうなったんですか!?」

「説明するから先ずは落ち着きなさい。一瞬でも気を抜くとそのままお陀仏よ」

『ふむ、あの巫女は封印術の類を用意している様じゃの。一体何があったのじゃ?』

 

 魔理沙さんと咲夜さんの話を纏めると、今回の異変の黒幕は冥界の主である亡霊の姫君『西行寺幽々子』。

 その目的は、今も死の穢れ撒き散らし続けている西行妖を満開にさせる事であり、その為に妖夢さんを使って幻想郷から春を奪って集めていたそうです。

 霊夢さんたちは、話を聞いてそのまま幽々子さんと交戦したそうですが、その途中で異常事態が発生しました。

 西行妖が幽々子さんを取り込み、暴走状態となったのです。

 霊夢さんの見立てによると、西行妖は元々封印されていた妖怪桜であり、今回春を集めて力を得た事で、自力で封印を破ろうとしているそうです。

 幽々子さんは、西行妖の封印に何らかの形で繋がっているらしく、西行妖が封印を破ろうとする過程で取り込まれてしまったようでした。

 今は、西行妖を再封印する為の術を、霊夢さんが準備している状態のようです。

 

「待って下さい。それじゃあ幽々子様はどうなるんですか!?」

「……判らないぜ。もしかしたら、妖怪桜と一緒に封印してしまうかもしれない」

「そんな……!」

『ふむ、ならば儂は巫女のサポートに回ろうかの。封印術の構築に余裕が出来れば、その幽々子とやらをあの魔樹から引き剥がす余裕も生まれるじゃろうて』

「では、その様にお願いします。妖夢さん、私たちは霊夢さんと煙晶竜の護衛に回りましょう。お二人を守ることが、あなたの主を救う事にも繋がる筈です」

「……はい!」

「話が纏まったのなら、こっちを手伝ってくれるかしら? いい加減そろそろきつくなって来たわ」

 

 咲夜さんは普段と変わらぬ余裕ある態度を崩してはいませんが、放っている弾幕からは余裕の無さが伝わってきました。私たちも直ぐに迎撃に加わります。

 それにしても、この場において凄まじいまでの戦果を挙げている方が居ます。魔理沙さんです。

 魔理沙さん自身と、魔理沙さんの周囲に並ぶ精霊たちが放つ無数の弾幕によって、西行妖の放つ弾幕の半分以上が無力化されています。

 その上で、魔理沙さんは咲夜さんよりもずっと余裕があるようです。

 旦那様の作成したミニ八卦炉の恩恵もあるでしょうが、魔理沙さん自身の魔法技能も日を追う毎に高まっています。よほど良い師に恵まれたのでしょう。

 

 このまま行けば……そう思った時、事態は更に厳しい物となりました。

 西行妖はより密度の高い弾幕に加え、複数の光線を放って来たのです。

 

『いかんな。あの魔樹も儂らを邪魔せねば自身が再び封印されると理解しているのじゃろう。なりふり構わず抵抗して来よった』

「……面倒ね。これだけ暴れられたら封印がかけ辛いったらありゃしないわ」

「おいおい、面倒とか言うなよ霊夢! ……お前でも無理そうなのか?」

「煙晶竜が手伝ってくれてるし、普段より速いし楽なくらいよ。 ……けど、どうしても術の完成直前に邪魔が入るの」

 

 煙晶竜様は現在、霊夢さんの肩に止まって封印のサポートを行っています。

 霊夢さん自身が言う様に、余り術には詳しくないわたくしから見ても、術の構築が目に見えて速くなっているのが判りました。

 ですが、それが理解出来ているのは西行妖も同様で、あと一歩のところで複数の死の穢れの乗った光線が霊夢さんに襲い掛かり、術の発動を阻止され続けています。

 

「困ったわね。私は守りの手段が無いから、あのレーザーには対応しきれないわ」

「わたくしもです。鉄扇で光線を弾き返すぐらいは出来ますけど、複数の方向からとなると手数が足りません」

「……その鉄扇ってレーザーも弾けるの?」

「もちろんです。旦那様に作っていただいた物ですから」

「旦那様?」

 

 わたくしの旦那様という言葉に、咲夜さんが首を傾げています。

 ……そう言えば、皆さんの前で旦那様の事を旦那様と呼んだことはありませんでしたね。

 そもそも他の方が居る時は、旦那様との交流を邪魔しない様に控えていましたし、わたくしが旦那様を旦那様と呼んでいるのを知らない方は、意外と多いのかもしれません。

 

『……ふむ、ここはもう行って欲しい所じゃな。叢雲よ、キースに連絡を取ってくれんか?』

「旦那様にですか? 判りました。直ぐに」

「キースって誰だよ煙晶竜? ってか旦那様って、叢雲って結婚してたのか!?」

 

 そう言えば、煙晶竜様が旦那様の事をキースと呼んでいるのも、あまり知られていませんわね。

 魔理沙さんは、わたくしに自分が会った事の無い夫が居るのだと勘違いされている様で、顔を赤らめてそう訊ねて来ました。

 

「いいえ、籍を入れている訳ではありません。ただわたくしが旦那様とお呼びして慕っているだけですよ」

「そ、そうなのか。って、慕ってるって事は、好きなんじゃないのか!?」

「ええ、もちろん好きですし、寧ろ愛していますよ」

「お、おぉう。そうなのか、大人だぜ……」

「それに、旦那様は魔理沙さんも良く知る方ですよ? 森近霖之助様です」

「「「なにぃぃぃっ!?」」」

 

 わ、ビックリしました。

 魔理沙さんだけでなく、霊夢さんや咲夜さんまで大きな声で驚いています。

 それと、一人だけ黙々と弾幕を打ち払い続けている妖夢さんですが、こちらの話にはしっかりと聞いている様で、耳が真っ赤になっていました。お年頃ですね。

 

 と、それはさておき、早く旦那様に連絡をしなくてはなりません。こうしている間にも、状況は悪化してしまうかもしれませんから。

 わたくしは煙晶竜様と共有する形で、旦那様に念話を繋ぎました。

 

『旦那様。聞こえますか、旦那様!?』

『叢雲? どうしたんだい、そんなに慌てて』

『それが……わたくしたちは今、冬が終わらない異変の元凶の元に辿り着いたのですが、少々面倒なことになりまして』

『キースよ。すまんがこちらにクトゥグアを寄越してくれんか? 術式の構築にあやつの力を借りたいのじゃ』

『判りました。僕が手伝えることはありますか?』

『キースはそのまま店で待機していてくれ。幻想郷側にも、いつでも動ける者が残っていて欲しいからの』

『了解です。叢雲もそれで良いかい?』

『はい、よろしくお願いします。旦那様』

『ああ、そっちも頑張って』

 

 念話が切れてから少しして、わたくしの影の中から赤い人魂の様な存在、今年の初めから旦那様に付き従う炎の邪神、クトゥグアが姿を現しました。

 

『―――到着を確認、状況説明を求める』

「手短に話しますと、今回の異変の元凶である亡霊が、あの暴走状態の妖怪桜に取り込まれました。現在霊夢さんと煙晶竜様が、亡霊の救出と妖怪桜の封印の為に術式を組んでいる所です。クトゥグアにはその手伝いをお願いします」

『了解、これより両名の支援に入る』

 

 堅苦しいを通り越して、無機質にも感じられる返答と共に、クトゥグアは霊夢さんと煙晶竜様の元へと向かいました。

 そっけないようにも見えますが、クトゥグアは自分の仕事に誇りを持ち、きっちりとやり遂げるタイプです。その仕事ぶりに不安はありません。

 

 わたくしがクトゥグアを見送ると、入れ替わる様に魔理沙さんと咲夜さんが弾幕を維持したままこちらに近づいて来ました。

 

「おい叢雲! どういうことだよ!? 何でお前が香霖をだ、旦那様なんて呼んでいるんだ!?」

「私も気になりますね。お二人にどのような馴れ初めが?」

 

 魔理沙さんは顔を真っ赤にして、咲夜さんは普段通りに見えて、その実好奇心に目を輝かせながらわたくしに訊ねて来ました。

 

「旦那様と呼んでいるのは、わたくしが生涯尽くす方だと決めているからです。馴れ初めの方ですが、きっかけは魔理沙さんですね。魔理沙さんはわたくしと旦那様を引き会わせてくれた大恩人なのです」

「まぁ!」

「生涯尽くすって……それに私が引き合わせたってどういう事なんだ!? そんな事した覚えはないぜ!?」

 

 そう言えば、魔理沙さんはわたくしが元々魔理沙さんが持っていた剣であることを知らないんでしたっけ?

 わたくしの正体を知っているのは、旦那様と煙晶竜様にクトゥグア、それから紫さんたちくらいでしょうか? その他の方には、竜信仰の巫女であるとしか自己紹介していませんし、当然と言えば当然でしたね。

 

「そのお話はまた後程、今は目の前の問題を解決する事を優先しましょう。魔理沙さん」

「ぐっ、けど……!」

「魔理沙、優先順位を間違えてはいけないわ。叢雲から話を聞き出すのは、後でいくらでも出来るのだから」

「くっ、判ってるよ! 叢雲! 後で徹底的に話を聞き出してやるから、逃げるなよ!!」

「逃げも隠れもしませんので、いつでもどうぞ」

「くそっ、余裕ぶって……こうなったら、化け桜に八つ当たりしてやるぜ!」

 

 言うが早いか、魔理沙さんの放つ弾幕がより一層激しさを増し、西行妖の弾幕のほとんどを撃ち落としてしまいました。

 火力と手数の多さに更に磨きが掛かっています。今のわたくしでは、煙晶竜様のサポートがあっても勝てるかどうか怪しいですね。

 

「やれやれ、私の出番がなくなりそうね。 ……それで叢雲、結局あなたと店主さんはどのように知り合ったの?」

 

 魔理沙さんが相手の弾幕を軒並み撃ち落とし続けている為、手持無沙汰な様子となった咲夜さんがそう聞いて来ました。

 

「それほどドラマチックな出会いでは無かったのですよ? 魔理沙さんが、ミニ八卦炉の修復を旦那様に依頼した時、旦那様がその対価として求めたのがわたくしだったのです」

「……え? それって、店主さんと会う前は魔理沙の元に居たって事? と言うか人身売買?」

「いえ、人身売買と言う訳では。確かに魔理沙さんの元には居ましたが、正確には所有されていたと言うべきですし」

「魔理沙の奴隷として物扱いでもされていたの?」

「いえいえ、実際物でしたよ? 何せ、当時のわたくしは物言わぬただの古びた剣でしたから」

 

 そう前置きしてから、わたくしは咲夜さんの前で少しの間だけ、本来の姿である剣の姿となりました。

 その様子を見ていたのは咲夜さんと妖夢さん、それから遠目ですが霊夢さんも視界に入れていたようです。

 霊夢さんは特に動じた様子はありませんでしたが、咲夜さんと妖夢さんは目を丸くして驚いていました。

 

「……驚いたわ。あなたって人間じゃ無かったのね」

「いえ、角もありますし元から人間だとは言ってませんでしたけど? まぁこの通り、付喪神の一種みたいなものです」

「あの、叢雲さん。あなたの手刀と打ち合って楼観剣が欠けちゃったのって、もしかして……」

 

 剣の姿を見せたわたくしに、妖夢さんが話しかけて来ました。

 聞きたい事は何となく判りますから、ここは旦那様の剣として胸を張って応えましょう。

 

「妖夢さん、名乗った時に言った筈ですよ? 『我が身に勝る武器など無し』と。わたくしの剣としての名は『草薙の剣』、もしくは『天叢雲剣』。この日ノ本において最強を自負する神剣です。妖怪が鍛えた剣風情に耐えられるほど、『天羽々斬』を欠けさせたわたくしの刃は甘くはないですよ」

「天叢雲剣!? あの伝説の!?」

「どの伝説かは判りませんが、わたくしですわ」

 

 咲夜さんはピンと来ていない様子でしたが、妖夢さんはわたくしの事を知っていたようです。

 驚くと共に、キラキラとした憧れの目で見られてしまいました。少し気恥ずかしいですね。

 

「昔、お祖父ちゃんが読み聞かせてくれた須佐之男の八岐大蛇退治に出て来た、あの天叢雲剣ですよね!? まさか本物に巡り会えるなんて……あなたほど有名な剣が、どうして幻想郷に?」

「時代の流れ、と言う奴です。いつの間にやら幻想郷に流れ着き、巡り巡って今の担い手である旦那様の元に辿り着いたのですわ」

「天叢雲剣の担い手……まさか幻想郷にそんな方が居たなんて。その人はどんな方なんですか?」

 

 妖夢さんが、興味津々と言った様子で訊ねて来ます。

 旦那様の事を語ろうと思えば、わたくしはいつまでも語り続けられる自信がありますが、旦那様を語る上で必要な事はそう多くはありません。

 ただの一言で事足りてしまいます。

 

「強い。ただただ誰よりも強い剣士。そういうお方ですわ。恐らく。いいえ、間違いなくわたくしを手にして来た今までの誰よりも強いお方です。最初の担い手たる須佐之男でさえ、旦那様の前では膝を付く事でしょう。最強にして最後の担い手、それこそがわたくしの旦那様です」

「……それほどまでの、方なんですか」

 

 わたくしの言葉に、妖夢さんは武者震いと共に好戦的な笑みを浮かべました。

 畏れなく上を目指す、良き剣士の顔ですね。

 

 妖夢さんは、将来剣士として大成する事でしょう。

 わたくしがそう一人頷いていると、後ろから声がかかりました。

 

「君達、非常事態だと聞いて来たけど、結構余裕そうだね?」

「だ、旦那様!? 何故こちらに」

「いや、煙晶竜に呼ばれてね。妨害が鬱陶しいから封殺してくれって」

 

 わたくしに声を掛けて来たのは、お店で待機していたはずの旦那様でした。

 旦那様のお手を更に煩わせることになってしまいましたが、わたくしは何とも気の抜けた気分になってしまいました。

 

 旦那様であれば、如何なる状況でも必ず勝利する事でしょう。

 わたくしは、それを当たり前の事の様に確信していました。




一話ぶりの主人公登場。勝ったなガハハ(フラグですらないただの事実)

次回の後篇で春雪異変は終わります。
転生香霖なら、戦闘シーンなんてサクッと終わらせてくれるはず。帰って神社で宴会だ!
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