東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
カンピオーネの世界観なら、サモナーさん絶対生き生きし出すよね!
サモナーさんの場合、手に入れる権能も効果によっては、戦闘が温くなるから要らねって言い出しそうw
権能を手に入れるまでも無く、純粋に神も殺せるほど強くなったサモナーさんはこれだから……
咲夜にレミリアの分も合わせた着ぐるみパジャマを渡していると、上から妖夢の声が聞こえて来たので見上げる。
すると上空から妖夢を乗せた日輪が下りて来た。その背には、妖夢の他にも幽々子が乗っているようだった。
「やぁ妖夢、それに幽々子も。僕に何か用かい?」
「こんにちは、霖之助さん。お昼を御馳走になりに来たのだけど、お店の方に居なかったから探しに来たのよぉ」
「すみません、霖之助さん。幽々子様がどうしても霖之助さんのご飯が食べたいと仰られて。いつもなら紫様が幽々子様を連れて行ってくれるんですけど……」
「そう言えば今日は紫が一緒じゃないね」
これは珍しい、と言うか初めての事だ。
幽々子が香霖堂で食事を頼むようになってから、紫は必ず幽々子に付き添って店に来ていたというのに。
「紫に何かあったのだろうか?」
「それが霖之助さんに貰ったランプで手紙を送ってみたのだけれど、返事を見ても要領を得ないのよねぇ」
「手紙の返事が来たのなら、それほど大事では無いと思うが……ちなみになんて書かれていたんだい?」
「ただ一言、『邪神いっぱい』って書かれてたわぁ」
「『邪神いっぱい』、一体何の事なん、あいたっ」
幽々子が紫から受け取った謎のメッセージの意味について考え首を傾げていると、突如スコーン!っと良い音を立てて僕の後頭部に何かがぶつかった。
何事かと振り返ると、いつの間にか僕の真後ろにスキマが開いており、地面には紫がいつも使っている扇子が落ちていた。
状況を見るに、紫がスキマ経由で僕の頭に扇子を投げつけたのだろう。一体何故?
僕が後頭部を擦りつつ、地面に落ちた扇子を拾い上げながら頭に疑問符を浮かべていると、スキマの中からずるりと紫が身を乗り出して来た。その表情は、顔に掛かった長い前髪のせいで窺い知れない。
ちょっと怖い。まるで呪われたビデオテープを題材にした昔のホラー映画みたいだ。いや、古いと言っても前世の話だから、今の時代だと新しい部類に入るのか? 外の世界に似たような映画があるのかは知らないが。
「……霖之助さん……」
体を引き摺る様にしてスキマから出て来た紫が、ぼそぼそと僕の名前を呟きながら、揺ら揺らと不安定な歩調で僕に近づいて来る。
何だかそのまま倒れ込んでしまいそうにも感じられたため、僕は一歩紫に近づき、両肩を掴んで受け止めた。
「どうしたんだ紫? ふらついているけど大丈夫かい?」
「大丈夫って、どの口が……」
僕が安否を確認すると、紫はぼそぼそとした口調のまま僕の襟首を両手で掴み、そのままガクガクと揺さぶり始めた。
僕の筋力なら、揺さぶられずにその場で耐えることも出来たが、紫の手にあまりにも力が籠っていなかった為、なされるままとなっていた。
「もう、もう! あなたって人は次から次へと! 邪神がもう一体追加されただけでも大事だって言うのに、それが一度に四体追加だなんて、キャパオーバーにもほどがあるのよぉ!」
「あぁ~、その、なんだ。すまなかった」
「謝るくらいなら事前に連絡ぐらいしてよ、霖之助さんのバカぁ!」
「ごめんて」
もぉ~! と言いながら、涙目で僕を揺さぶる紫に平謝りする。
そっかぁ、『邪神いっぱい』ってハスターやバーストたちの事だったのかぁ。
クトゥグアも含めて六体『だけ』、と僕は考えていたが、紫の感覚では六体『も』増えた、と言う感覚だったのだろう。
邪神を召喚するのに、事前に連絡も何もしなかったのも失敗だったか。
いつの間にか、紫は僕を揺さぶるのを止めて、僕にしがみ付きながらえぐえぐと泣き始めてしまった。
「ぐすっ、邪神ってただ存在するだけでも結界に影響が出るのに、それが一度に四体も増えたものだから、今藍が必死に調整に回っているのよ?」
「あちゃ~、それは藍にも悪い事をしたね。紫はここに来てて大丈夫なのかい?」
「私が直接調整しなきゃいけないところが終わったから、こうしてあなたに文句を言いに来たのよ!」
「すみません」
僕としては、着ぐるみパジャマ作りを邪魔した邪神たちに落とし前を付けさせる程度の認識で召喚した訳だが、どうやらバーストたちを召喚した事で、紫たちに余計な苦労を掛けさせてしまったようだ。
本当に申し訳ない。自分で蒔いた種だし、僕に何か手伝えることがあれば良いんだが。
そう考えていると、霊夢が僕にしがみ付く紫をグイッと引き剥がしながら割り込んで来た。
「別に気にしなくて良いわよ、霖之助さん。調整が必要って言ったって、直ぐに結界が壊れるって程じゃ無いんだし。それにこいつは普段から結界の調整を藍に任せてばかりで碌に働いてないんだから、偶には苦労した方が良いわ」
「その偶に負う苦労が尋常じゃないのよ。主に霖之助さんのせいで!」
「……問題を起こした僕が言えた事じゃないが、碌に働いてないってところは否定しないんだね?」
一番苦労しているのは藍なのかもしれないな。
今度会った時は、たっぷり労うとしよう。油揚げ食べ放題と……蜂蜜を使ったお菓子も用意しておこうか?
「……まぁ、なんだ。折角来たんだから紫もこれを試着してみてくれないか? 幽々子と妖夢もどうぞ」
「あら、私も?」
「これは……何でしょうか、霖之助さん?」
紫、それに幽々子と妖夢にも着ぐるみパジャマを渡す。
首を傾げている三人に、僕は着ぐるみパジャマについての説明をした。
「外来本のファッション雑誌に載っていた物を参考にして作ったパジャマだよ。みんなにプレゼントしようと思って作ったんだけど、折角集まっているから今渡そうと思ってね」
「そうなのね。試着って言うのは?」
「凡その目算で作ったから、細かな調整が出来ていないんだよ。パジャマだから余裕を持たせても良いとは思うけど、この辺は僕のこだわりかなぁ」
「あらあら、霖之助さんったら職人さんね」
幽々子の質問にそう返すと、そんな感想が返って来た。
僕はあくまで古道具屋の店主であって、道具作りが本職と言う訳では無いのだが、最近は色々作りまくっているからなぁ。
幽々子の言う通り、細部までこだわろうとするのは職人のそれだ。だが妥協したくないんだからしょうがない。
……もう少し、香霖堂の商品にも、僕の作った道具を増やしてみるべきかなぁ? 試しに、個人に対して作るのではない、一般販売用の着ぐるみパジャマでも作って、店においてみるか。
「霖之助さんったら真面目ねぇ。私は単に、この服を着たみんなの艶姿が見たいのかと思ったわ」
「ハハハ、着ぐるみパジャマで艶姿は難しいんじゃないかな? まぁみんなの可愛らしい姿を見たかったのは確かだけどね」
「ふぇ!?」
「あら、大胆」
可愛らしい姿を見たかったと素直に返すと、妖夢が顔を真っ赤にして驚き、幽々子はほんの少し頬を染めて口元を扇子で隠していた。
―――ガタッガタッ!
急に騒がしくなったので目を向けると、紫を抱えた霊夢、それに魔理沙や咲夜がいそいそと縁側から母屋の中に入って行った。その手には、しっかりと僕の渡した着ぐるみパジャマが持たれているため、どうやら試着しに向かってくれたようだ。
さらに一歩遅れる形で、アリスも後に続く。アリスの手には、自身とフランの分の着ぐるみパジャマが抱えられていた。
「みんな試着しに行ってくれたみたいだね。幽々子と妖夢も折角だからどうだい?」
「そうねぇ、それなら私たちも着替えに行きましょうか。ほら妖夢、早く着替えて霖之助さんに可愛いって言って貰いましょう」
「か、かわっ! わ、私がですか!?」
「他に誰が居るって言うの? さ、早く行くわよぉ~」
「ゆ、幽々子様ぁ~!?」
顔を真っ赤にさせたままの妖夢を、幽々子は首根っこを掴んで連れて行った。その場に残ったのは、僕と日輪だけである。
「……」
「メ、メェ~……」
視線を向けると、日輪はプルプル震えながら「食べないでぇ~」と言わんばかりに弱弱しく鳴いた。
未だに僕が、かつて日輪を捌いて幽々子の食事にしようとしたことを覚えているらしい。
ふむ、既に幽々子のペットである日輪にそんな事をするつもりは無い訳だし、このまま怯え続けられるのは少し困るな。
何かしら日輪を懐かせる方法は無いものか?
考えた結果、僕は召魔の森産の蜂蜜を与えて、懐柔を図る事にした。
「?」
「ほら、お食べ」
呼び出したガラス瓶入りの蜂蜜を、同じく呼び出したスプーンで掬い、日輪の鼻先に持って行く。
最初は警戒していた日輪だったが匂いを嗅いで興味を持ったらしく、しばらく鼻をヒクヒクさせた後意を決したように食いつき、蜂蜜の味に目を見開いたかと思うと、そこからは甘えた声で僕にすり寄って来るようになった。
チョロい、やはり蜂蜜の力は偉大だった。やはり動物を手懐けるのはこの手に限る。
「メェ~!」
「仲直りの印だ、お代わりも良いぞ。長い事怖がらせたからその御詫びだよ。遠慮せず、今までの分も食べると良い」
「メェ! メェ! メェ!」
日輪は必死にがっつく様に、蜂蜜を掬ったスプーンを舐めている。
よしよし、この調子ならもう怖がられずに済みそうだな。この瓶の蜂蜜は全て日輪に与えてしまおう。
それと、一応僕も着ぐるみパジャマに着替えておこうか。
これはアリスとフランに言われて作りはしたが、着るつもりは無かったものだ。
が、郷に入っては郷に従えと言うし、みんなが着替えたのに僕だけ着ないと、アリスやフランに怒られそうだからね。
ガラス瓶の蜂蜜を全て日輪に与えた僕は、一旦シャドウ・ゲートで影の中に入り、そこで僕用の着ぐるみパジャマに着替えた。
その後、着替え終わったみんなが縁側に戻って来たタイミングで、僕は影の中から姿を現したのだが、結果から言うとみんなから大爆笑されてしまった。
初見である霊夢たちはともかく、一度試着している所を見ているアリスやフランまで同じくらい笑う事は無いんじゃないかなぁ。
そんなに面白いかな? この熊の着ぐるみパジャマ。
博麗神社でみんなに昼食を作ったり、フランとの約束通りプリンを作ったり、プリンに使った『金冠鶏の卵』を産むグリンカムビの飼育を牧場で出来ないかとレミリアと相談したり。
そんな事をしながら騒いでいる内に、すっかり日も暮れて僕は香霖堂へと帰って来た。
「ただいま~」
「お帰りなさいませ、旦那さ―――ぷひゅっ」
『おお、帰ったかキースよ―――ぬくっ』
ドアを開けて中に入ると、丁度叢雲と煙晶竜も帰って来たところであった様で、カウンター奥の居間に入ろうとしたところで僕に振り返って来た訳だが、二人共着ぐるみパジャマを着た僕の姿を見た瞬間に吹き出していた。
「ふ、ふふふっ、だ、旦那様? ど、どうなされたのですか……? その、お召し物は? ふふっ」
『くっ、くははははっ! き、キースよ。随分と可愛らしい恰好をしているでは無いか!』
「……解せぬ」
やっぱりこの格好だと笑われてしまうな。叢雲は口元を抑えて堪えているが、煙晶竜などは隠す事無く腹を抱えて笑っている。
まぁいい、笑わば笑え。実際僕も、鏡で自分の姿を見てちょっとお腹が痛くなったからね。
「着ぐるみパジャマという服だよ、叢雲。今日拾った外来本のファッション雑誌に載っていたから作ってみたんだ。君の分もあるから、今夜はこれを着て眠ると良い」
「そ、そうですか。ふふ、ありがとうございます。ぷふふっ」
手元に呼び出した叢雲の分の着ぐるみパジャマを手渡す。
受け取った叢雲は僕の目を見てお礼を言って来たが、それで再び僕の姿を視界に収めてしまい、顔を背けて吹き出していた。
そんな僕らの話声が聞こえたようで、今の方からぞろぞろと邪神たちがやって来た。
『お帰りなさいませ、我が主』
『お帰りなさい、マスター!』
「お、お帰りなさいです、主様」
『お帰りである、主殿!』
『お帰りなさぁい、主様ぁ』
『お帰りなさいませ、我が君』
クトゥグア、ハスター、バースト、チャウグナー・フォーン、グロス=ゴルカ、ミゼーアの順にお帰りと言って来る。
こんなに大勢から一度にお帰りと言われるのは、随分と久し振りだな。
「―――ああ、ただいま。みんな」
その事に胸の温かさを感じながら、僕は笑い返した。
その日の夜、僕は夢の中でミゼーアと対峙していた。
『―――それでは、準備は宜しいですか? 我が君』
『ああ、もちろんだ。ミゼーア』
僕は既に、白銀竜の姿でミゼーアと向かい合っている。対するミゼーアもまた、本来の姿で僕に相対している。
その姿を何と言って例えたらいいだろうか?
基本的な形は巨大な狼とギリギリ言えるのだが、全身の体毛から眼孔、爪や牙に至るまで、全てが鋭利な直角で構成された姿はどこか機械的な印象を覚えた。
ミゼーア曰く、自身は直角を司る尖った時空の支配者である為に、このような姿となっているそうだ。
だが問題、いや、重要なのはその姿以上に、ミゼーアが鋭く刺し貫く様な威圧感を全身に纏っていることだ。
その圧は、クトゥグアやハスターを超えて、いや、二人を合わせたよりもずっと強いかも知れない。
つまりは最高って事だ!
『覚悟は良いね、ミゼーア? 全力で行かせて貰うよ』
『胸をお借りします、我が君』
胸を借りると言いつつ、ミゼーアの闘気が爆発する。
これだよ。僕はこう言うのを求めていたんだ!!
『キィャァァァァァァァァァッーーーーーーーーーーーー!』
『ガァァァァァァァァァァァッーーーーーーーーーーーー!』
互いに獣の叫びを上げながら、僕たちは激突した。
転生香霖の着ぐるみがクマになった理由は、
転生香霖=サモナーさん=戦闘狂=バーサーカー=ベルセルク(熊の毛皮を被った狂戦士)
って言う連想ゲームからですw