東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
そろそろオリジナル小説の一つでも書きたいなぁ。
「RPGの男主人公に転生したら、幼馴染として女主人公も居たから敵国への仕官ルートに進んだ」話と、「転生チートは持ってないけど、色々やってたら魔法チートになってた一般転生者辺境王子様」の話。
今書きたいのは、この二つかなぁ。
その日僕は、香霖堂地下塔の工房で初めての試みに挑戦していた。
きっかけと閃きは同時にやって来た。
きっかけは、慧音とほとんど同じくらいの付き合いになる少女に、少し特別な着ぐるみパジャマを作ろうと思った事。
そして閃きは、彼女の為に作る着ぐるみパジャマの作成方法を考えていた時に舞い降りた。
僕が思いついたのは、邪神たちから介入されずに最高の素材を使って着ぐるみパジャマを作成する方法だった。
「それじゃあ始めよう。クトゥグア、頼んだよ」
「了解」
素材を並べた作業台に向き合いながら、右肩の辺りに浮遊するクトゥグアに声を掛ける。
よくよく考えれば、簡単な話だったのだ。
金羊毛を主軸とした、最上級の素材を使って着ぐるみパジャマを作成すると、僕がまだ召喚していない邪神たちに介入されて、邪神の依代となってしまう可能性が高い。
だが、既に召喚している邪神が、最初から依代にならない程度に加護を掛け続けていれば、他の邪神が加護を掛ける余地がなくなる。
こうすれば、邪神からの介入を気にする事無く、好きな素材で着ぐるみパジャマを作成することが出来る。と言う訳だ。
今回作る着ぐるみパジャマは、渡す相手の事情を考慮して、火属性に対する耐性が欲しいと考えていた物だ。
炎の邪神であるクトゥグアの加護があれば、尋常の炎では決して燃える事無く、更には着た者の使う炎の力を高める効果も付けることが出来るだろう。
彼女にはぴったりの性能となる筈だ。
(浄土曼荼羅!)
(十二神将封印!)
(ミラーリング!)
パジャマの製作に入る前に、僕の使う封印術の最高位呪文である『浄土曼荼羅』を発動させる。
この呪文は本来、対象空間を世界から隔離し内部を浄化するという効果の結界なのだが、僕の能力である『召喚術を操る程度の能力』に組み込まれたことで、元々の使い方とは違う応用方法を編み出す事に成功した。
それこそが、結界の体内展開による効果の増幅である。
浄土曼荼羅は本来、範囲内に自然回復効果を高める結界を張るというものだったが、僕はその応用として結界を体内に展開する事により、自然回復効果を更に高める事に成功したのだ。
マジックアイテムの作成には体力や集中力、そして当然ながら魔力を大量に消費する。
僕の場合、保有している魔力の量が膨大である為、魔力の消耗自体は苦にならなかったが、体力や集中力が減ると、アイテム作成のパフォーマンスが落ちる為、今まで最高の素材でアイテムを作成する場合、何日もかかるのが当たり前だった。
しかし、浄土曼荼羅の体内展開という新たな手段を得た事により、事情は一気に変わった。
元々半妖としての身体能力で、不眠不休でも大丈夫な体だったが、結界の体内展開により自然回復速度が上昇したため、少しの休憩で最高のパーフォーマンスを維持する事が可能となったのだ。
おかげで、以前よりも長時間集中して作業し続けても、全く苦にならなくなってしまった。
楽を覚えるのはあまり良い事では無いかもだが、実際便利なのだからしょうがない。
これからは、浄土曼荼羅を常時体内展開してても良いんじゃないかな? もちろん常時展開すれば相応に魔力を消費するが、自然回復量の方が多いから問題にもならないし。
『―――主よ、何やら気配が変わられましたね?』
「自然回復効果を高める結界を体内に展開したんだよ。これからはこの状態で過ごそうと思うけど、問題あるかい?」
『いいえ、良いのではないですか? 今の主からは、何やら清浄な気配が漂って来ます』
「ふむ? 確かにこの結界は内部の空間を浄化する効果を持っているが……本来外界と切り離される結界を敷いて、気配が漏れる物なのか? 本来のものとは違った使い方をしているから色々変わっているのかもしれないな。これも後で調べてみるか」
また新たに気になる事が生まれたが、とりあえず今は作業に取り掛かるとしよう。
とは言え、まずはパジャマのデザインを決めてしまわなければいけないな。
デザインは……彼女には鳥、特に鳳凰などが似合うと思うが、ストレートにイメージ通りの鳳凰着ぐるみパジャマを作った場合、派手過ぎる上に皮肉が利き過ぎている気がする。
……折角だ。ここはひとつ、奇を衒って行こうじゃないか。
基本デザインは鳥のままで、意外性のあるあの動物をモデルに―――
翌日、体内展開した浄土曼荼羅の効果で、貫徹しても全く疲れの無い体と心のまま、完成した着ぐるみパジャマを手に、僕は彼女の住む『迷いの竹林』へと来ていた。
迷いの竹林は、その名の通り中に入った物を迷わせる特性を持つ竹林だ。彼女曰く、侵入者対策に張られている結界の効果であるらしい。
その結界を張った者と彼女は面識がある様なので、どのような人物なのかと何度か訊ねてみたのだが、その度に何故か彼女は機嫌を悪くして答えてくれなかった。なんでだろうな?
意地でも教えない、と言わんばかりに頑なな彼女の態度を思い出しながら歩いていると、その内に彼女の家へと到着した。
「おおーい、妹紅ー! 居るかーい?」
到着したのは古い木造の、今にも崩れそうに見える粗末なあばら家だ。
扉をノックしただけで崩れてしまいそうだから声を張り上げた訳だが、参ったな。僕の声だけでも倒壊しそうだぞ?
本人は自分で作ったこの建物を気に入っているようだが、その内地震でもあれば、倒壊して中の住人ごとぺしゃんこになりそうで怖い。
後で萃香に、新しい家を作って貰う様に頼んでみるか。あいつの建築の腕は確かな物だからな。
「―――うん? 霖之助か、居るぞー!」
僕が声を掛けてから直ぐに、あばら家の中から目当ての少女の声が返って来た。
しばらくすると、ガタガタと不安になる音を立てながら扉が開かれ、中から長い白髪を持ち、霊夢とはまた違った紅白の衣装を身に纏った少女が姿を現した。
彼女こそが僕と慧音の共通の友人である『藤原妹紅』だ。
「お、いらっしゃい。霖之助がここまで来るのなんて久しぶりだな。今日はどうしたんだ?」
「今日は君に渡すものがあって来たんだが……それにしても、いい加減この家どうにかしないか? 軽く触っただけでも崩れそうで、迂闊に近付きたくないんだが」
「はっはっは! いくらなんでもそんなに軟じゃ無いよ。私がこうして暮らしている訳だしな」
いや、僕が不安なのは、半竜として覚醒した今の僕の身体能力が、並の鬼を軽く超えているからなのだが……けどその辺りを説明しても、妹紅の態度は変わらなそうなんだよなぁ。
「君がこの家を気に入っているのは知っているが、地震や台風が来たらあっという間に崩れてしまいそうだし、いい加減立て直さないかい? 腕の良い大工の知り合いがいるから、そちらに頼むて言うのでも良いし。もし自分でどうしても建てたいと言うのなら、せめて僕にも手伝わせてくれないか?」
「うん? 霖之助が手伝ってくれるのか?」
腕の良い大工云々の話を無視して、妹紅は僕が手伝うという部分に食いついて来た。
何故そこに食いつく? と聞きたくもあるが、折角妹紅が乗り気になりかけている訳だし、ここはそのまま押し込もう。
「もちろんだとも。 ……言っちゃ悪いが、正直これだけ全体的に傾いだ建物に入るのは、毎回結構不安でね。香霖堂を建てた時の経験もあるから、色々と力になれると思うよ」
僕がそう言うと、妹紅は腕を組んでしばらく考えていたが、やがて結論が出たのか笑顔を見せた。
「そう言う事なら、今度手伝って貰おうかな。いつにする?」
「出来れば台風が来る前に完成させたいから早めの方が良いが、資材や道具の準備もあるし、来週あたりでどうかな?」
「来週だな? 楽しみにしてるよ!」
予定が決まると、妹紅は楽しそうに笑っていた。
こうして笑っている分には外見相応の少女にしか見えない為、時々彼女の方が僕より年上であるという事を忘れそうになる。
まぁ、僕の周りには彼女より更に年上であろう叢雲なんかも居るんだが。
藤原妹紅と言う少女は、端的に言って不老不死だ。
聞いた話によれば千年以上も前に、飲んだ者を不老不死にする霊薬『蓬莱の薬』と言うものを口にして、それ以来老いる事も死ぬ事も無くなってしまったそうだ。
その為、同じ時間を生きる事の出来ない人間社会に長く留まることが出来ず、長年各地を放浪していたらしい。この辺りは僕も似たような感じだったが。
妹紅とは、慧音とその両親と共に幻想郷を目指して旅をしている途中で出会った。出会ったというか、正確には襲われたのだが。
後から聞いた話によれば、僕が慧音たちを攫っている悪い妖怪だと勘違いしたらしい。
炎を纏って襲い掛かって来た妹紅を僕が迎撃し、向かって来た妹紅の首を僕が蹴り足で刎ね飛ばす寸前で、慧音が止めてくれたんだったか。
その後、慧音とその両親が事情を説明してくれたことで誤解が解け、勘違いで襲い掛かったことを詫びる為に妹紅が護衛として同行し、それ以来付き合いが今も続いているのだ。
そんな事を思い出していると、妹紅がいつの間にか僕に近づき、下から見上げるように僕の顔を見ていた。
「? どうしたんだい、妹紅?」
「……やっぱ似てるなぁ。なぁ、ちょっと眼鏡を外してくれないか?」
「またかい? 構わないけど」
妹紅の要望で、僕は眼鏡を外して懐に仕舞った。
この眼鏡は度の入っていない伊達眼鏡なので、外しても特に問題無いが、霧雨道具店で修業していた時に親父さんから貰ったものなので、今でも大切に使っている。
……まぁ、親父さんが僕に眼鏡をくれた理由は、素顔だと目つきが鋭くて客が寄り付かないからと言うものだったが。
「……うん、やっぱりあの人に似てる。霖之助のご先祖様だったりするのかな?」
妹紅が似ているという人物は、かつて妹紅が不老不死になるよりも前に、妖怪に攫われた自分を助けてくれたという男だそうだ。
妹紅曰く初恋の相手で、容姿が僕に非常に似ているらしい。
「さてね。過去の出来事を知ることが出来る能力の持ち主とかなら判るんだろうが、少なくとも僕には判らないよ。 ……先祖だの親戚だのの話なんて、聞いた事も無かったしね」
「あ、ごめん! 嫌な事思い出させて」
「別に良いさ。もうそれほど気にしていないしね」
僕は生まれついて半妖の忌子として両親から名前を与えられなかった。
大体十五歳くらいの時に家を飛び出すまでは軟禁状態で過ごしており、それまではどのように扱われていたこと言えば、端的に言って道具作りの素材として飼われていたと言えばいいだろう。
僕の父親は鍛冶師をしていたが、余り腕が良いとは言えず、家もそれほど裕福では無かったらしい。
そんな中で、生まれつき白髪金眼の姿をした僕が生まれ、どうするべきかと考えた父親は、大陸から流れて来たとある話を思い出したそうだ。
その話こそが、中国の名剣『干将と莫邪』の逸話であり、父親はその逸話に倣い人外である僕の爪や髪の毛などの体の一部を素材にすれば、自分でも名剣と呼ばれるほどの物を作り出させるのでは? と、考えたようだ。
実際その考えは当たっており、僕の髪の毛などを素材に作った鍛冶製品は、二流の腕しか持たない父親が作ったとは思えないほどの逸品となったようである。
それらの道具が高く売れた事で家はどんどん裕福になり、父親と母親は文字通り金のなる木である僕を幽閉し、一生飼殺そうと考えていたようだ。まぁ、結局僕は逃げ果せた訳だが。
この話は、文や萃香と言った昔馴染みたちや、慧音と妹紅にも既に話している。
その為、妹紅は僕の両親を思い出すような話を振ったことに対して謝罪したのだ。
ちなみに、霊夢や魔理沙たちにはこの話はしていない。あまり気持ちの良い話では無いし、べらべらと喋るつもりも無いからね。
慧音や妹紅にこの話をしたのは、確か出会って二百年くらいたってからだったか……。
「さて、そんな話は置いておいて、本題に入ろう。さっきも言ったが、渡すものがあって来たんだ。受け取ってくれ」
「―――ああ、そうだな。っと、これは?」
暗い話は終わりにしようという僕の無言の提案を妹紅は受け入れ、僕が手渡した包みを受け取った。
「人里で流行りの着ぐるみパジャマと言う服だよ。慧音には既に渡していたんだが、妹紅のは少し工夫が居ると思って完成が伸びたんだよ」
「そう言えば、この間慧音の家に泊まった時、変な服を着ていたな。真っ白い獅子みたいな外見だったが」
「慧音に渡すものだから白澤をモデルにしたんだよ。と言っても、僕が前世で見た白澤だけどね」
あいにくとこの世界の白澤には遭遇したことが無い為、この世界の白澤の姿を知っているものからしたら「こんなの白澤じゃない!」と言われるかもしれないが。
「なるほど、確かに慧音にはぴったりだな。それで、私のは何をモデルにしたんだ?」
「妹紅のは鳥だよ。何て言う鳥かは、見てのお楽しみだけどね」
「ふーん、鳥ねぇ……? これ、鳥か?」
「鳥だよ。幻想郷じゃあ、外来本に載っている写真ぐらいでしか、姿を見られないだろうけどね」
妹紅に渡した着ぐるみパジャマ、それは前面が白く、背面が黒く染色され、袖の部分が指の無い手袋の様になっている。
モデルにした鳥はペンギン、中でもアデリーペンギンと言う種類の姿をしていた。
これが完成した時、脳裏に『ペンギンもこたん』というフレーズが浮かんだのは何故なんだろうな?
「これが鳥……何て言う鳥なんだ?」
「ペンギン、正確にはアデリーペンギンって言う種類のペンギンをモデルにしているよ。ペンギンは蝦夷よりもずっと寒い地方に生息していて、空が飛べない代わりに泳ぎが得意なんだ」
「へぇ」
妹紅は手に持ったパジャマを広げながら、僕の話に相槌を打っている。
反応が薄いなぁと思ったが、よく見るとパジャマに視線が釘付けな為、どうやら気に入って貰えたようだ。
「それじゃあ早速着てみてくれ。実際に着ている所を見ないと、細かな調整が出来ないからね」
「着て見ろって……まさか霖之助、覗く気か?」
「そう言うの良いからさっさと着替えて来い、アホ! 早くしろよ!」
「ちょ、押すな押すな! 昔の口調に戻ってるし、あんたほんと道具作りに関しては頑固ね」
職人なんて頑固なものだ、オレに限った話じゃない。
……ああそうか。憎んではいないが、オレが父親嫌いなのはそう言う部分だったんだろうな。
素材に頼りきりで、自分の腕を上げようとしなかった。職人として堕落しきっていた姿が、今でもオレは心底嫌いなんだ。
転生香霖はもこたんの方が年上だと思っていますが、本当はもこたんの方が年下です。
それと、もこたんの初恋云々の話ですが「もこたんは蓬莱の薬を飲んで髪色が変わって、容姿が変化している」ことと「第三十四話の感想返しで書いた『白鬼丸』の逸話」の事を考えれば、大体お察しですねw