東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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撮り貯めてたバビロニアのアニメを一気見しての思った事。

もしバビロニアにサモナーさんが味方側として召喚されていたら?

……やべぇよ、ティアマト戦以外全部ヌルゲーになる。そのティアマトにしても、最悪グレイプニルで梱包すればどうにかなるし。
人類悪レベルでようやく苦戦になるサモナーさんっていったい……


第四十五話 「転生香霖と迷いの竹林(後篇)」

 気付けばすっかり日も暮れて、迷いの竹林には星の輝く夜空よりも暗く、不気味さを伴う暗闇が広がっていた。

 まぁ、半分は妖怪である僕からすれば、心地の良い暗さであり、夜闇の中も普通に見通せるのだが。

 

「おーい、霖之助。二人が目を覚ましそうだぞ?」

『うん、そうかい? なら、そろそろ元の姿に戻っておこう。また気絶されても困るしね』

「あー…‥そう、だな。ちょっと残念だ」

 

 妹紅は随分と、僕のドラゴンの姿を気に入ってくれた様で、気絶している二人の様子を見ながらも、時々縁側の外に居る僕の姿を見て、感嘆の溜息を漏らしていた。

 判る。ドラゴンは格好良いものなぁ。まぁ僕の召喚モンスターの中には、格好良いというより愛嬌があると言った方が良いドラゴンも居たが。

 

 縁側から見える妹紅の家の中に敷かれた布団の上で、もぞりとてゐたちが動き始めたのが見えたため、僕はドラゴンから人の姿へと戻った。

 

「よっと、これで驚かれないかな?」

「ああ、大丈夫だろう。けど、もっと見てたかったなぁ……」

「ハハハ。なら、折角だから今日は僕の家に泊まって行かないか? それなら一晩中でもドラゴンの姿を見せられるよ?」

「お、良いな。じゃあお願いしようかな?」

「任せたまえ。今夜の夕食は、腕によりを掛けさせてもらうよ」

「そりゃ楽しみだ」

 

 その場のノリで妹紅が香霖堂に泊まる事となった。

 さて、では今晩の夕食は何を作ろうかな? と考えていると、てゐより先に鈴仙という名前であるらしい少女が起き上がって来た。

 

「うーん、ここは……って、あなたは確か姫様の…の…の…のぉ!?」

「? 何だよ急に」

「あわわわわわわわ……!!」

「うん? もしかして原因僕かい?」

 

 寝ぼけまなこで起き上がった鈴仙は、妹紅の顔を見た事で意識をはっきりさせ、次に僕を見た途端目を見開いて驚き、口をアワアワさせて怯えている様であった。

 バイブレーション機能でも搭載しているのか? というほど細かく体を震わせている鈴仙の振動が伝わったのか、続いててゐが目を擦りつつ迷惑そうな声で起き上がって来た。

 

「もう、うるさいわねぇ……何よ鈴仙、そんなに震えt」

「てててててててて、てゐてゐてゐ……!? あああ、あのお方っ!!」

「わぷっ、ちょ!? 揺さぶらないでぇ~!?」

 

 話しかけて来たてゐを鈴仙は混乱した様子でガクンガクンと揺さぶっている。

 いいぞ、もっとやれ! ……じゃなくて、僕の方を指さして「あのお方」と言っていたが、どういう意味なんだろうか?

 

「……なぁ霖之助。お前なんで鈴仙からあのお方、とか呼ばれているのか心当たりあるか?」

「いや、全然無い……と思うけど、どうかな? 一応僕は白銀竜として、竜信仰の祭神の一柱みたいな扱いになっているけど。妖怪兎の間でも竜信仰が流行っているのかな? いやでも、てゐは知らない様子だし……」

「つまり心当たりは無い、と。とりあえず本人に聞いてみるしかないか……おーい鈴仙ちゃん、その位にしとけって」

 

 揺さぶられ過ぎて、てゐが白目を剥いて泡を吹きだしていたが、そんな事には気づかずにてゐを揺さぶり続ける鈴仙に妹紅は近づき、二人の間に割って入る様にして鈴仙の肩を掴んで止めていた。

 

「あ……えっと、あなたは確か、妹紅……だったわよね? ってそうじゃなくて!」

「―――僕がどうかしたのかい?」

「あああ、はい! すみませんでしたー!」

 

 ベターッ、と鈴仙はその場で平伏した。その動きに合わせて、彼女の長い髪がさらりと広がる。綺麗な髪だなぁ。

 ‥‥…うん、現実逃避は止めて、目の前の問題に目を向けよう。何故彼女は僕に平伏しているんだ?

 とりあえず事情がある程度判りそうなてゐは……駄目だ、白目向いてる。

 

「……とりあえず、てゐが目を覚ますまで待つとしないかい? お互いの事情を説明するのに、一番役立ちそうなのが彼女だからね」

「ははは、はい! 御意のままに!」

「……なんだかなぁ」

 

 どうやら僕が話しかけたんじゃ、鈴仙が恐縮しまくって会話が成立しないみたいだ。

 てゐ、早く目覚めてくれ。君しか仲立ち出来そうな奴がいないんだ。妹紅は僕と同じで事情が把握出来てない上に、鈴仙を落ち着かせて話を聞き出せるほどは親しくないみたいだし。

 

 そんな願いを込めながら、僕はてゐに向けて回復呪文を送った。

 

 

 

「うぅ~、酷い目に遭った」

「君の場合、自業自得って感じしかしないが、まぁそんな事はどうでもいい。大して重要な事じゃないからね」

「こっちも酷い!」

「いいから、もうそう言うの。とにかくまずは、彼女を落ち着かせて会話が成立出来るようにしてくれ、話が進まない」

「うぅ、良いけど。霖之助が冷たい」

「後で甘味でもくれてやるから早くしろ!」

「はーい」

 

 やれやれ、これでようやく話が進むと良いんだが。

 

 傍にいては落ち着いて話も出来ないだろうという理由で、僕は鈴仙から離れ、妹紅の家の外でしばらく待つ。

 やがて鈴仙を落ち着かせ終えたのか、てゐが鈴仙の手を掴んで僕の元まで引っ張って来た。

 

「おーい、もう大丈夫そうだよ」

「ん、そうかい?」

「は、はい。すみません、取り乱してしまって……」

 

 良かった、今度はちゃんと会話が成立する。ちゃんと話し合うことが出来るって素晴らしい事だなぁ。改めて認識したよ。

 それはそうと、まずは自己紹介だ。彼女の名前は既にも香から聞いているが、お互いにまだな名乗りすらしていないからね。

 

「改めて、僕の名前は森近霖之助。幻想郷で香霖堂と言う古道具屋を経営している半人半竜だ。人里では、白銀竜と言う名前で信仰されてもいるね。君は?」

「は、はい。私は『鈴仙・優曇華院・イナバ』と言います。 ……えっと、霖之助さんは、月の都の方なのですか?」

「はい?」

 

 おずおずと尋ねる鈴仙の言葉に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 月の都? 確か随分昔に、そんな話を聞いた覚えがあるが……確か、都の方でかぐや姫への求婚云々の騒ぎがあった頃だったか? そう言えば、あの位の頃に文と出会ったんだよなぁ。

 

「いや、違うよ。月の都、と言うのは良く判らないが……どうしてそう思ったんだい?」

「え、そんな……だって霖之助さん、全く『穢れ』て無いですよね!? そんな人、この地上で会った事無かったのに……」

 

 『穢れ』て無い? 月の都の住人は、穢れていないという事なのだろうか?

 穢れと言うのが何を意味するのか良く判らないが、心当たりは……まぁ、あるな。

 

「それなら多分、僕が体内に展開している結界の効果だね。結界の内部を浄化するという効果のものだから、多分そのせいだろう」

「穢れを浄化する結界!?」

 

 僕の説明に、鈴仙は酷く驚いていた。

 そんなに驚くほどの物だろうか? 巫女などの神職の者が行う禊を始め、古今東西不浄を清める儀式は数多く存在する。浄化効果のある結界と言うのもそれほど珍しいものとは思えない。

 それとも、彼女の言う『穢れ』と言うのは、それらの儀式では祓う事の出来ない特別なものなのだろうか?

 

 疑問に思いその事を訊ねると、鈴仙は自身の知る穢れについての知識を語ってくれた。

 

「―――私も詳しく説明出来るほどの知識は無いんですけど……『穢れ』と言うのは地上の生命が持つ穢れの事で、生きる事と死ぬ事。生きるために争い、そして死に向かう事。それその物が穢れであり、地上の生命に寿命を齎しているのだそうです」

「ふむ……地上の生命に寿命を、という事は、月の都とやらの住人は寿命の無い存在なのかい?」

「いえ、月の都に住まわれる月人様たちもわずかながらに穢れを持っているので、限りなく寿命が長いだけでいつかは死ぬそうです。月人様たちは、穢れの無い月に住むことで、永遠に近い時を生きているんです」

「なるほど……それで穢れが無いって言う僕を月人であると思ったのか」

 

 生と死の営みから離れる事で、生と死の軛から解き放たれようとしたってことか。

 差し詰め、仏教における浄土と穢土だな。月が浄土で、地上が穢土であると言う訳だ。

 

 納得したところで、改めて鈴仙の姿を見る。

 てゐと同じように、ウサギの耳と尻尾が他の妖怪兎たちと共通だが、その服はまるでブレザータイプの学生服であった。

 また、識別スキルが組み込まれた、元『道具の名前と用途が判る程度の能力』。いや、今の効果を考えれば『見たものの情報を閲覧する程度の能力』と呼ぶべき僕の目が、彼女の種族を教えてくれる。

 鈴仙の種族、それはゲーム時代にも戦った事のある、帝釈天によって月に召し上げられたという兎、『玉兎』であった。

 先程の月の都や、そこに住む住人である月人の話を知っている事を考えれば、彼女が何者であるかなど、能力を使うまでも無く判る。

 

「―――鈴仙、君は月から地上に来た月の兎。という事で良いのかな?」

「……はい、その通りです。まぁ、あんな話をすれば判りますよね」

 

 話した時点で、彼女自身も大して隠す気は無かったのだろう。

 しょうがない、と彼女の顔に書かれてあった。

 とは言え、だからどうこうしようって気も無いのだが。

 

「まぁ、何故月の住人である君が地上に居るのかとか、妹紅の言っていた竹林の奥に住む連中とやらが何者なのかだとかは聞かないよ。聞かれても迷惑だろうしね」

「そうして貰えると助かります。あんまりべらべら話すと、お師匠様に怒られそうですから」

「いやぁ、こんだけ話したんだから、私はお説教コース確定だと思うけどなぁ」

「……て~ゐ~っ! またあんたが仕掛けた落とし穴に落ちたこと、忘れて無いわよ~!?」

「……さらばっ!」

「コラッ、逃げるなぁ~!!」

「あ、ちょっと待った鈴仙ちゃん」

「ぐえっ」

 

 文字通り、脱兎となってその場から逃げ出すてゐ。

 すぐさま鈴仙はその後を追おうとしたが、妹紅に襟首を掴まれて動きを止められてしまった。

 結構思いっきり首が締まってたけど、大丈夫かな?

 

「けほけほ、もう何よいきなり……」

「ああ、悪い悪い。鈴仙ちゃんが行く前に、どうしても聞いておきたい事があってな」

 

 軽い調子で謝りながら、そう宣う妹紅だったが……その目はいつになく真剣なものであった。

 

「効いておきたい事? 一体何よ」

「……鈴仙ちゃんはさっき、月人は穢れが無いから寿命が無いって言ってたろう?」

「正確には、わずかながらには穢れを持っているから、寿命が限りなく長いって言った方が正しいのだけどね」

「ならさ……体内の結界で穢れを浄化し続けている霖之助の寿命はどうなるんだ?」

 

 決して嘘偽りは許さない。

 そんな意志を感じさせる目で、妹紅は鈴仙を見つめている。

 その視線を受けて、鈴仙は多少怯みながらも自信無さげにこう答えた。

 

「―――詳しくはお師匠様に見て貰わなきゃ判らないだろうけど……理論的には、穢れを常に浄化し続けている霖之助さんは既に、寿命の無い不老不死の存在である筈よ」

 

 

 

 鈴仙がてゐを追いかけて竹林の奥に姿を消した後、今夜は妹紅が泊まりに来るという話しになっていた為、僕は妹紅と共に香霖堂を目指して歩いていた。

 二人で並んで歩いている間、しばらくお互いに無言だったが、やがて妹紅が口を開き、ポツリと僕に質問して来た。

 

「―――なぁ、霖之助。どうして体内に穢れを浄化する結界なんて張ったんだ? 不老不死になれるなんて知らなかったんだろ?」

「たまたまだよ。僕が張っている結界、浄土曼荼羅には結界内の自然回復速度を強化する効果があるんだ。これには集中力なんかも含まれていて、それを利用して徹夜で妹紅の着ぐるみパジャマを仕上げていたんだよ。道具作りに役立つし、常時展開で消耗する魔力よりも、結界の効果で強化された魔力の自然回復速度の方が多いから、そのままにしてたんだ。まさか、不老不死になるとは思わなかったよ」

「そっか……お前らしいな。うっかり自覚無しに、不老不死になるなんて」

 

 そう言って妹紅は苦笑しながら僕を見上げる。

 初めて出会った時から、お互いの身長差はまるで変っていない。それはこれから先も、ずっとそうなのだろう。

 

「なぁ、どうなんだ?」

「どうって何が?」

「何がって、不老不死になった感想だよ」

「……特に何か変わった感じはしないかな?」

「反応薄いなぁ」

 

 あーあ、色々考えて損したー。何て言って、妹紅は呆れた表情を浮かべて来る。

 僕としては、劇的な反応を期待されても困るんだよな。元々半人半竜の寿命がどれくらいなのか判らなかった訳だし、寿命が延びた……いや、寿命が無くなったと言われても、今一ピンと来ないというか。

 

「……なぁ、霖之助」

「なんだい?」

「お前さ、いつまで生きるつもりなんだ?」

 

 妹紅は顔を逸らしてこちらを見ないまま、そんな事を聞いて来る。

 ふむ、いつまで生きるか、か。

 

「特に考えてないかな? 元々自分の寿命がどれくらいなのかも判らなかったし、とりあえず死にたくなるまで……生きる理由がある限りは生き続けるんじゃないかな?」

「そっか、そうだよなぁ……」

 

 僕の答えに対して、妹紅が何を思っているのかは判らない。

 ただ、妹紅は逸らしていた顔を僕に向け、どこか諦めたような、泣き出しそうな顔で僕に訊ねて来た。

 

「じゃあさ……お前が死にたくなった時、それでも生きて欲しいって言ったら、一緒に生きてくれるか?」

「妹紅……」

 

 妹紅のして来た質問に対し……僕は呆れた表情で返した。

 

「君、さっきの僕の話をちゃんと聞いていたのかい?」

「え? ちゃんとって、え……?」

「はぁ……さっき僕は言ったはずだよ。『生きる理由がある限りは生き続ける』って。君を残して死ぬつもりは無いよ」

「なぇぁっ!?」

 

 僕がそう言い返すと、妹紅はおかしな声を上げながら、顔を真っ赤にしてその場で飛び上がっていた。

 一体どういう反応なんだそれ? 女の子は良く判らないなぁ。

 着地した妹紅は、真っ赤な顔のままその場で動かなくなる。

 見ると、目がきょろきょろとあちこちを向き、手足をわたわたと動かしながら、「その」だの「えぇっと」だの上手く言葉が出てこない様子だった。

 

 あまり見た事のない様子だし、落ち着くまで待っても良いが時間も時間だ。

 叢雲や煙晶竜たちも夕食を楽しみにしているだろうし、ここは無理矢理にでも連れて行くか。

 

「ほら、行くよ妹紅」

「あっ……うん」

 

 妹紅の手を握って引っ張ると、少しだけ驚いたような声を上げた後、手を引かれるままに大人しくついて来た。

 やれやれ、世話がかかるな。

 

 握った妹紅の手が、更に強く僕の手を握り返してくる。

 繋いだ手から伝わる体温が、例え寿命がなくなろうとも、お互いが確かに生きているという何よりの証に思えた。




今回転生香霖が妹紅に言った事って、要約すると「君が僕の生きる理由だ」ですよね?

やべぇよ、この会話が知られたら修羅場不可避だよ。(転生香霖の場合、修羅場ってる横でしれっとご飯の用意を始めて、女性陣が争って力尽きた辺りで「ご飯だよー」とか行って来そうだけど)
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