ダンジョンにキャロルが居るのは間違っているのだろうか? 作:ヴィヴィオ
ボクの始めて出来た
それもあのロキのファミリアと一緒に中層で狩りをしていたというじゃないか。しかも、ロキの子供達に彼女のスキルについてもある程度バレてしまった。
これに関してはボクの考えが至らなかったこともある。まさか、ダウルダブラを仕舞っていた空間が他にも物を入れられるなんて思わないじゃないか。
「いいかい、キャロル君。君のスキルはレアスキルと普通のスキルがある。いや、君が使うともう普通のスキルじゃないんだけどね」
ベッドに寝転がるキャロル君の上に乗ってステータスを更新しながら話をする。
「知っている」
「そうか、知っているのか……って、それならなんでロキの子供達の前で使ったんだい!」
「使う必要があったからだ。連中はそれなりの実力を持っていた。だったら金や資材、コネクションを持っているのだろう?」
「それはそうだけど……」
悔しい事にあのまな板はボクのファミリアと違って大手だ。資金力や資材、コネクションではボクとは話しにもならない。
「雇われる可能性を勘定に入れたら、別に使うのは問題ない。そもそも荷物を収納するなどそんなに珍しくもないだろう」
「いや、珍しいからね!」
普通に考えて、そんな馬鹿みたいな容量を重さも感じずに収納できれば、ダンジョンの探索はかなり楽になるだろう。ロキの子供達が目をつけるのも納得だ。
「まあ、知られてしまったのは仕方がないけど、基本的に糸とその収納はスキルという事にしていい。錬金術も別に知らせていいか。錬金術は他の子達も発現している能力だし」
「他の錬金術師か。基本的に何をしているんだ?」
「調薬がメインだね。あとは鉱石を精錬したりかな。どちらにしろ、キャロル君みたいな事はできないよ」
「オレに追いつくのなら生半可な研鑽ではできぬだろう」
実際にこの子、数百年以上も研鑽しているみたいだしね。まあ、気をつけるように言っておこう。
「ところで、ヘスティア」
「なんだい?」
「帰還用の転移結晶って売れると思うか?」
「売れるよ! 大騒ぎだよ! 作れるの!」
「作れる」
「止めてくれ、お願いだから。他の神にとって恰好の玩具にされるし、
「ほぅ、このオレを神々の玩具にすると。殺すか」
「待って、待って。お願いだから止めて! 大丈夫! ボクが出来る限りは守るから。だから、キャロル君も気をつけてくれ!」
「わかってはいたが、色々と常識が違うな。オレ達錬金術師にとって、転移などできて当たり前の領域だったのだが……」
「いや、当たり前じゃないから」
嘘じゃないんだよね。キャロル君が居たのはどんな魔境なんだよ。
「まあいい。では資金を稼ぐのは薬の販売と演奏、ダンジョンにしておくか」
「それがいいよ。ん? 演奏?」
「ああ、昔は歌が嫌いだったが、歌も悪くないかもしれないと思いだした。だが、まずは演奏技術を磨こうと思っている」
「ダウルダブラの演奏か。確かにお金にはなるだろうけれど、そのダウルダブラを狙って盗賊がきそうだね。その対策さえしたらいいよ」
「それなら考えがある。用はダウルダブラを見られなければいいだけだろう? だったら、酒場などで隠れながら演奏すればいいだけだ」
「ん~それならいいかな? 薬の販売に関してはボクに心当たりがあるから、神友に聞いてみるよ。必要な道具があるなら買いに行こう」
「わかった。それならいいか」
ステータスの更新が終わったけれど、全然の成長していない。中層のモンスターを虐殺していたにしてはだけど。基礎アビリティもまだIから出ない。キャロル君がレベルアップするのって、とっても大変なんじゃないかな?
「更新終わり。全然成長していないよ」
「そうか。まあ、そう簡単には上がらないだろう」
キャロル君のレベルを上げるには深層に行くしかないだろう。そうなると、やはりロキのファミリアに頼るしかないのかな?
でも、アイツに頼み事なんてしたくないけど……本人に聞いてみよう。
「キャロル君は急いでレベルを上げたいかい?」
「ん? オレは別にそんな事は思っていないな。まずは設備を作る事が重要だしな」
「そっか。わかったよ」
うん、しばらくは様子を見よう。キャロル君も無理に上げるつもりはないみたいだし。まずはミアハを紹介するぐらいかな。
「じゃあ、ボクとちょっとお出掛けしようか。ポーションを売っている神友がいるんだ。彼に頼んだらキャロル君が作ったポーションを置いてくれるかもしれないよ」
「商業ファミリアか。販売を委託できるのならありがたい。すぐにでも行くぞ」
「お~!」
キャロル君をミアハのお店へと案内する。ついでにポーションを買って売り上げの貢献でもしてあげようかな。
さて、嫌がるキャロル君の腕を抱きしめてミアハのお店まで連れてきた。もちろん、抵抗されたけれど、行き先を知らないことを盾にして抱きしめてやったのだ。
「ここがボクの神友であるミアハのお店だよ」
ボクが案内したのは大通りの一角にある小さなお店。回復薬を扱う道具店・青の薬舗。エンブレムは、五体満足の人の体。ミアハはミアハ・ファミリア主神で、男神だ。借金のためにファミリアは没落しているけれど、借金を抱えているにもかかわらず、多くの知人にタダ同然でポーションをばら撒いたりしているんだ。ファミリアの経営は常に火の車らしいけどね。
「そうか。ならさっさと入るぞ」
「うん。ミアハ、居るかい?」
店の中に入るけれど、相変わらず人がいない。キャロル君はすぐに店内を歩き、綺麗な金色の三つ編みを揺らしながら商品を確認していく。
「その声はヘスティアか。どうしたんだい?」
奥からミアハと彼の眷属であるナァーザ君が出て来た。彼女はかつて冒険者だったけれど、瀕死の重傷を負い、現在は心的外傷によりダンジョンに潜ることができないため、冒険者を廃業して薬師に専念している。
確か、右腕は本物の腕と変わらず自在に動かせる高度な魔道具で作られた義手だったはずだ。ミアハが莫大な借金をして得た物だね。
「今日はボクの眷属を紹介しにきたんだ。キャロルく……ん……?」
目に見えてキャロル君の機嫌が悪くなっている。もしかして、ボクに腕を抱きしめられたのがそんなに嫌だったのかな!?
いや、確かにキャロル君の胸はアレだけど……
「ヘスティア・ファミリア団長、キャロル・マールス・ディーンハイムだ」
「私はミアハという。こちらは私の眷属であるナァーザだ」
「ナァーザ・エリスイスです。同じく団長をしています」
「そうか。それで、コレはお前の仕業か? それとも、主神も兼ねてか?」
キャロル君が発した言葉にミアハとボクは不思議そうにするが、ナァーザ君はキャロル君を睨み付けた。
「どういうことですか?」
「どうもこうも、この薄いポーションはなんだ。品質が悪い上にこれは水で薄めて甘味でも入れているのか? そのくせポーションの相場よりも高い。これを主神ぐるみでやっているのなら、詐欺師の店だ」
「「なっ!?」」
「っ!?」
「どちらにせよ、こんな劣悪品を置くような店をオレが認める事はない。ヘスティア、帰るぞ」
「ちょっ、ちょっと待って!」
キャロル君が嘘をついていない事は神のボクにはわかるし、子供の言う事を信じるのは親の役目だ。だから、彼女の言葉は間違っていないのだろう。
キャロル君は錬金術師なんだから、薬などの解析は専門家だと言える。ましてや、世界を解き明かすようなとんでもない子なんだからね。
「待つ理由はない」
「いいから待ってくれ! ボクがしっかり聞くから!」
「……いいだろう。オレは先に別の用事を済ませてくる。それまでに話をつけておけ」
「う、うん、わかったよ」
キャロル君が店から出ていき、ボクはミアハに向き直る。
「で、ミアハ。どういうことかな? キャロル君が嘘を言っていないのは君ならわかるだろう?」
「ああ、そう、だね……ナァーザ、どういうことかな?」
「それは……」
「嘘偽りなく答えなさい」
「……」
ボクは二人の会話を壁に背を預けながら聞いていく。ナァーザ君によると、ナァーザ君がつけている彼女専用の義手とミアハの悪癖に理由があった。ディアンケヒト・ファミリアから借金した額の返済が間に合わなくなりだしているそうだ。
ミアハのポーションを無料で配るのもダメージになっていて、このままでは店も差し押さえられてしまうということだった。
「すまない、ヘスティア」
「ボクは被害がないからいいけど、他の人に売ったりしたの?」
「それは……入れ替えたばかりでしたから……一人だけ買われていきました」
「その人は冒険者かい?」
「いいえ、違います。常連の方でした」
「そうか。ヘスティア、すまないが私は少し出てくる。君は……」
「ボクはキャロル君を待っているよ。それと、借金返済についてはあてがある。まあ、キャロル君次第だけどね」
「……そうか。わかった」
臨時休業としたミアハ達を見送り、ボクはしばらくキャロル君の帰りを待つことにした。
◇
オレ、キャロル・マールス・ディーンハイムは詐欺師の店から出て、冒険者ギルドに向かう。この街の事ならここが一番詳しいはずだ。街の事に詳しくなくても、冒険者については詳しいのは確実だ。
「キャロルちゃん、どうしたの?」
「エイナか。レベルの高い冒険者に人気のある酒場を教えてくれ」
「値段は高いけれど、いいの?」
「ああ、食事をする訳ではないからな。ダンジョンに行かない時に少し働こうと思っているだけだ」
「そうなんだね。じゃあ、幾つか見繕ってあげるね」
「報酬として今度そこでご馳走してやる」
「本当!?」
何故かエイナの隣に居た別の職員が答えた。
「本当だ。だから、いい店を紹介してくれ。二人でも構わない」
「わかりました」
「それじゃあ……」
二人から教えてもらった店を実際に回り、確認していく。どの店もいい感じだが、一つだけ面白い店があった。そこは西のメインストリートに面している店で、教えてもらった内容によると従業員は全て女性のようで、オレとしてもありがたい。また、中から強い気配を感じたのも決め手だ。
店はまだ開店前だが、気にせずに中に入る。するとすぐに従業員が気付いてこちらにやってくる。
「申し訳ございませんが、まだ開店しておりません」
「そうにゃ。だから帰るにゃ」
「生憎と客として来たわけじゃない。店主は居るか?」
「ミア母さんにですか?」
「何の用にゃ?」
「売り込みだな」
「ん~確かにキツイ印象は受けるけれど、可愛いにゃ。よし、こっちにゃ」
「ちょっとアーニャ!」
「大丈夫にゃよ」
猫の獣人についていき、奥に向かう。
「ミア母さん、お客さんにゃ!」
「アタシに客かい? う~ん、見ない顔だね」
「売り込みにきたそうにゃ。だから、ウェイトレスになりにきたにゃ」
「違う」
「違うらしいが……」
「そんにゃ!?」
話が進まなさそうなので、オレはダウルダブラを大きくさせて演奏に丁度いい大きさに戻す。
「ほう、変わった魔道具だね」
「オレが来たのは演奏する場所が欲しいからだ」
「嬢ちゃんは吟遊詩人か芸人というわけかい」
「そうとも言える。冒険者でもあるからな」
「そうだねぇ……」
「まずは演奏を聞いて判断してくれ。それで雇うか雇わないかはそちらに任せる。そもそも不定期になるだろうしな」
「冒険者ならそうなるだろうね。いいだろう、演奏してみな。審査は厳しめでいくからね」
「ああ、任せろ」
オレの本気を思い知らせてやる。行くぞ、ダウルダブラ!
◇
演奏が終わると、店主と従業員が固まっていた。オレは気にせず、ダウルダブラをペンダントの大きさにして首にかける。
「どうだった?」
「どうもこうも……」
「最高だったにゃ!」
「ええ、聞き惚れてしまいました」
「こいつなら集客は充分だろう……というか、うちの店が分不相応に感じてしまうね」
「演奏する時は姿を隠してやらせてもらう。勧誘が鬱陶しいだろうからな。それで、いかがだろうか?」
「雇いましょう!」
「そうにゃ!」
「アンタ達……まあ、確かにいいけれど、問題は客が聞き惚れて売り上げが下がるかもしれないことだよ」
「それなら、演奏つきのスペシャルメニューを作ればいい。注文したファミリアを盛大に宣伝してやれば競って買ってくれるだろう」
「なるほど。確かに大手ほど買ってくれるか。このレベルの演奏をさせたとなれば自慢になるだろうし、いいね。雇ってやるよ。アタシはミア・グランド。アンタは?」
「ヘスティア・ファミリアの団長をしているキャロル・マールス・ディーンハイムだ。よろしく頼む」
豊穣の女主人で月に四回からプラスαで演奏することになった。早速、お昼から頼まれた。外には先程の演奏を聞きつけた連中で溢れていたのも理由の一つだ。ただ、ヘスティアが待っているので、連れてこないといけないのだが……出れそうにない。
「ミアハ・ファミリアの青の薬舗にヘスティアを迎えにいかないといけないのだが……」
「これは無理だろうね。リュー、ちょっと青の薬舗まで行って、この子の主神を迎えに行ってきな」
「かしこまりました」
「キャロルは早速演奏の準備だ。演奏は店の一部に壁を作ってそこでやってもらうか」
「了解した。素材さえあればオレが作る。オレは錬金術師だからな」
「できるのなら、頼むよ。何がいるんだい?」
「木材で充分だ。そうだな、木箱などでいい」
「アーニャ、ちょっと手伝ってやりな」
「はいにゃ! シルも来るにゃ」
「わかりました」
三人で木箱を運び込み、それを錬成して壁に作り直す。ついでに扉を増やして、裏からそこに入れるようにする。小さなスペースだが、そこに椅子を置けば後は演奏するだけの簡単な部屋だ。一応、楽譜を置く場所も作ったのでこれで十分だろう。
ベートは銀髪犬耳尻尾ロリアイズから戻れるかどうか
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ツンデレ銀髪犬耳尻尾ロリアイズは正義
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ベート君が可哀想なので正規の方法で戻す
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キャロルちゃんの気まぐれで直す