ダンジョンにキャロルが居るのは間違っているのだろうか?   作:ヴィヴィオ

4 / 11
第4話

 

 

 

 

 

 オレの知っている曲を幾つか演奏を行った。腕は多少鈍っていたが、すぐに元の腕前まで近づけられた。もっとも、更なる領域を目指すべきだが。

 どちらにせよ、腹が減ったので演奏を止めて酒場の方へと移動する。どうせならここで食事を食べさせてもらおうと思ったからだ。

 奥の扉を開けて酒場兼食事処へと移動する。するとそこは戦場だった。ウエイトレスは駆け回り、騒がしい感じだ。

 その中で知り合いを見つけた。カウンターで大量のパスタを食べているのはヘスティアだ。それはもう旨そうに食べている。

 オレは別の席に座ろうと周りを見渡すが、彼女の横以外は空いていない。また、その席には物が置かれていて封鎖されている。不思議そうに他の客は気にしているが、誰も文句は言わない。それを考えると予約席とかそんなものなのだろう。

 

「あ、キャロルさん。あちらの席へどうぞ。主神様も食事をなさっていますから」

「確か、シルだったか」

「はい」

「シル、忙しいんだから止まるんじゃないよ」

「すいません! それでは失礼します」

「わかった」

 

 ウエイトレスの一人、シルに言われたので嫌々だが、席に着く。当然、隣の奴はこちらに気付いて……

 

「ほぐほむむぁ」

「喰ってから喋れ」

「んぐ。お疲れ様。いい演奏だったよ」

「それはどうも」

「キャロル、注文はどうする。アンタはただでいいからね」

「そうか。感謝する。では……適当にお勧めを頼む。栄養を取れればどれでもいい」

「ほう、良い度胸だ」

「キャロル君、それは駄目だよ?」

「オレは基本的に──いや、そうか。そうだな。やはりお勧めを頼む。こちらの料理など知らないからな」

 

 今のオレの身体にスペアボディは無い。スペアボディがあればこの身体など、いくら壊れようが問題ないが……そういうわけにもいかん。言われた通り、しっかりと食事をとらねばならんな。

 

「あいよ。腕によりをかけて美味いのを食べさせてやるよ」

 

 ミアが厨房に入っていったのを見送ると、ヘスティアは皿に入っている自分の分を小皿に別けて渡してきた。

 

「美味しいよ」

「まあ、もらおう」

 

 口に入れるとミートソースがほど良い感じで絡んでいるパスタだ。小麦の味もしっかりとでている。

 

「で、どうだった?」

「ミアハとナァーザ君は謝りにいって、許してもらったそうだよ。それでなんだけど……キャロル君。君なら彼等の問題は解決できるんじゃないかな?」

「できるかできないかで言えばできる。だが、やる理由はない」

 

 こちらとしてはいくらでも方法がある。錬金術師のオレにとって、世界を構成する物質はなんであれ、必要なエネルギーさえ用意できれば解析し、分解し、再構築できる。

 自らのフォニックゲインを錬成のエネルギーと使えば等価交換が可能だ。逆に言えば変換するエネルギーがなければ何もできないが。

 

「ミアハはボクの神友なんだ。だから、できたら助けてあげたい」

「オレには関係のないことだな」

「うん、そうだね。だから、キャロル君が欲しい代価を言ってくれ。ボクができる事ならなんでもして支払うよ」

「他人の為にそこまでするのか?」

「他人じゃない。神友の為だ。それにボクの子供であるキャロル君なら、そこまで酷い事はしないだろう?」

「……なんでも、か。それとお前の子供ではない」

「眷属は主神の子供さ」

 

 さて、どうしてくれようか。なんでもしてくれるのか。それならそうだな。ヘスティアは神様だ。使えるだろう。

 

「あ、神力を使うのは駄目だからね!」

「じゃあ、その身体で客でも取って稼いできてもらうか」

「嘘だよね!? ボク、処女神なんだけど! というか、思ってもいないよね!」

 

 ヘスティアの言葉で客が全員こちらに向き、中には買うぞという言葉まであった。そいつは他の女性達に冷たい表情をされている。

 

「仕方ないな。じゃあ、腕一本だ」

「待って。それ、嘘じゃないよね」

 

 ヘスティアの腕一つで色々と作れる。聖遺物ではないが、神の腕だ。それはつまり、シェム・ハが復活した物と同じという事。ガリィ達を作る素材としては十分だろうよ。

 

「いや、それをしたら送還されちゃうからね!」

「致命傷にならなければいいんだろう?」

「片腕って致命傷には……微妙? まあ、それなら……」

「いや、待て。そこまでやるなら、それはミアハにさせるべきことだろう」

「むしろ、主神に片腕なんて求めるんじゃないよ」

 

 目の前にドンと置かれる木でできたプレート。そこには様々な料理が少しずつ乗せられている。

 

「あまり多いと食べられないんだが……」

「後で包んでやるから朝飯にでもしな。そこの主神様から聞いたけれど、ろくな食事が取れなさそうだしねぇ~」

「ふむ。それなら提案がある。オレ達のファミリアは朝と夜の食事を用意してくれないか? 代金は売上からでいいし、夜にもらって朝に食べればいいしな」

「キャロルがもたらした売り上げから天引きでいいならいいよ」

「ではそれで頼む」

「それってボクもいいのかな?」

「好きにしろ。ただし……待てよ。ヘスティア、働く場所は決まったのか?」

「まだだけど……今、ヘファイストスに探してもらってるところ」

「なら、ここで働いたらいいんじゃないか?」

「神様をここで働かせるのかい?」

「少なくとも賄いがでるだろう」

「ほほぅ」

 

 真剣に考えだす二人。ミアはヘスティアを上から下まで見て……頷く。

 

「いいだろう。こちらとしても人手が足りないからね。神様が居るのなら変な事をする連中は減るだろうし、こちらとしても助かるよ」

「ボクも仕事ができて助かる。うん、そうしよう」

「じゃあ、決まりだね。で、腕とかというのは流石になしにしてやりな。働く効率が悪くなるしね」

「確かに勘弁してほしいね」

「腕が駄目なら髪の毛の一部とかでもいい。爪でもいいが、女なら髪の毛の方がいいだろう。それとヘファイストスか。彼女の髪の毛でももらってきてくれるとありがたい。追加でファルナを物に刻んでくれるのなら、あの店を助けてやる」

「わかった。聞いてくるよ!」

 

 ぱっと席から飛び降りて駆けだしていくヘスティアを見送る。

 

「アンタも大概だけど、あの主神様も結構おかしいね」

「身内にはとことん甘いのだろう」

「騙されないように注意しとくんだよ」

「オレがしっかりと手綱を握っておく。それに騙した奴は騙される覚悟があるという事だ。オレに被害がでるのなら、錬金術師を相手に喧嘩を売ったこと、しっかりと後悔させてやる」

「凄い顔だけど、殺しとかは止めてくれよ。アタシの店で雇っているんだからね」

「安心しろ。殺すにしても色々とあるだろう。社会的にとか、金銭的に、とかな」

「……見た限り、アンタの錬金術はかなりやばいレベルのようだし、あんまりやばいことはするんじゃないよ」

「手加減をするかどうかは相手次第だな。ああ、それと金を払うから情報を教えてくれ。欲しいのはディアンケヒト・ファミリアだ」

 

 とりあえず、助ける準備はしておいてやろう。助けるといっても、無料でするつもりはないが。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 食事をしてから豊穣の女主人を出て本屋に向かう。この世界では本は高級品のようで、中には億単位のもあるそうだ。もっとも、そちらは魔導書らしいが、解析してみたい。だが、現状では必要ないので、後回しにする。

 複数の白紙の本とペン、インクを購入し、鉱石を購入する。それから豊穣の女主人に戻る。今日は夜の演奏も頼まれたので、あそこで時間を潰させてもらう予定だ。

 豊穣の女主人でカウンターに座りながら白紙のページを一枚切り取り、そこに術式を書いてペンとインク、魔石を置く。インクにオレの血を垂らして混ぜ、それから構築した術式を発動。

 分解と再構築を得てあちらの世界でオレが使っていた魔導具のペンを生み出す。こいつはオレが前に使っていたインクの無くならないペンだ。インクはフォニックゲイン、こちらでは魔力で生み出される。空中に文字を書くことも可能だ。また思考をそのまま文字にして自動で書き写すこともできる。

 そいつを使いながら、この世界に来て解析した大気や鉱石の成分。魔石の構造や力などを書き込んでいく。一応、誰に見られても大丈夫なように暗号化し、かつオレの世界で使われていた複数の言語を使用して書く。傍から見たら料理のレシピにしか見えないだろう。

 オレの脳内に入っている記憶を書き出す必要もあるだろうが、それはまだいい。こちらで全てがそのまま使えるわけではない。確かにスキルによってオレはあちらの時代と同じ事ができるが、普通に錬金術を使うよりこちらの法則に乗っ取って使った方が消費も少ないし威力も高くなる。

 一冊はこの内容で書き連ねながら、もう片方の手でガリィ、レイア、ミカの設計図を記憶から転写していく。必要な術式と素材も書き出してチェック項目を作成する。

 彼女達に使われている術式を修正し、より強力になるようにシェム・ハとの戦いで得た真理も適応させる。七つの音階による神の力の無効化または突破。それを行えるようにしないといけないのだから、改造は必須だ。だが、幸いにも素材はその辺に転がっている。

 特に重要なのはガリィだ。

 彼女は聖杯の力を与えて錬金術の行使に必要な想い出を扱う能力に長けさせた。 他のオートスコアラーと同様に対象の粘液から強制的に想い出を搾取する機能に加え、蓄えた想い出を分配するという独自の機能も与えた。想い出を搾取する機能を持たないミカに想い出を与える役割も担うためだ。

 戦闘に於いては水を扱う事に長けており、特に空気中の水分を鏡に見立てて幻像を投影する撹乱戦法を得意する。また、足元の地面を氷結させてスケートのように高速移動したり、剣状の氷柱を瞬時に作り出して剣戟に用いるなど、高い汎用性を持ち合わせているが、もっと強化しないといけない。

 水に関する素材を集める必要もある。それに思い出を集めるには人から奪うのが一番効率がいいが、それをやればエルフナインやあいつらは五月蠅いだろう。代わりになるものもあるのだし、そちらで代用しよう。

 

「ずいぶんと凄いことをやってるにゃ」

「アーニャか。どうした?」

「これ、ミア母さんからの差し入れにゃ」

「ああ、いただこう」

 

 ガリィ達の設計図を書き終えた本を仕舞いながら、ふと受け取ったコップに口をつけつつ見ると、不思議そうにしているアーニャがいる。

 

「なんにゃ?」

「いや……」

「ふにゃぁっ!?」

 

 アーニャの耳を掴み、ふにふにしてやる。どうやら本物みたいだ。毛を一本貰い、分析してみる。

 

「い、痛いにゃ。な、なにするにゃ!」

「少しもらうぞ。ふむ。構成はこんな感じか」

「ひっ」

 

 アーニャの手足を錬金術で拘束し、解析用の術式を発動する。身体構造と猫耳、尻尾など全てを解析する。

 

「何をしているのですか!」

「解析だ。すぐ終わる。よし、終わりだ」

 

 エルフのリューが怒鳴り込んできたので指を鳴らして解放してやると、涙目でこちらを見詰めてくる。代わりに鉱石を錬成したアクセサリーをやる。細胞を再生させる力を強くするものだ。肌の再生を施すので美肌になる。

 

「これをやるから許せ」

「なんにゃ?」

「少量の魔力を消費することで常に綺麗な肌を維持できる。いらないのなら構わ……」

 

 差し出したアクセサリーが消えて、いつの間にか隣に居たシルが持ってつけていた。

 

「ちょっ!?」

「こ、これすごいです! 本当に肌が綺麗に若返っていきますよ!」

「人体構造などほぼ変わらんから効果はでるだろう。効果は」

「シル! 返すにゃ! それは私の物にゃ!」

 

 二人が争いだすと、リューが止めようとする。だが、オレはそれを手を上げて止める。

 

「まあ、見ていろ。因果応報になる」

「え?」

 

 少しすると、シルは蹲って頭に手を当てだした。リューがこちらを訝しんでいるが、次第に気付いたようだ。

 

「なんですかこれ!」

「猫の獣人用に調整した奴だぞ。用法用量は守れ、ということだ」

「にゃははは! シルに猫耳と尻尾が生えてるにゃ!」

「本来ある場所がないんだ。それだったら作るよな」

 

 しかし、ない部分を生み出すのでは消費する魔力量がかなりするはずだが、シルは軽く出せたようだな。

 

「こ、これは戻るんですか!」

「人型のを用意すればな」

「用意してください!」

「そうだな……330万ヴァリスでいいぞ」

「高っ!」

「アーニャにやったのは身体を調べさせてもらった礼もかねてだ。だが、ヒューマンのお前を調べたところでオレになんの得も無い。何か知的好奇心を満たすようなものを用意するのなら別だがな」

「……りゅ、リュー……」

「自業自得です」

「なんの騒ぎだ……い……ぷっ」

 

 ミアも来て盛大にシルを見て笑いだす。皆で笑っていると、彼女はむくれだしていく。それから事情を説明する。

 

「人間の構造を弄れるのかい」

「人体錬成など、錬金術師なら誰もが考えることだからな」

「まあ、それはいいけど……もどせるんだよね?」

「金かそれ相応の代価をもらえばな。そもそもアーニャにやろうとしたのを横取りしたのが悪い」

「うっ、反論できません」

「アンタが言えたことじゃないでしょう。同意を得てからやりなさいよ」

「耳をみていると押さえられなくなった。反省も後悔もしていない」

 

 ミアの拳が落ちてくるが、金色の◇を整列させた障壁で防ぐ。ミアは手を痛そうに撫でてから、呆れた表情をしだした。

 

「錬金術師ってのはどいつもおかしいのしかいないのかい」

「錬金術師とは真理を探究し、この世界を解き明かす者達だ。故に行動は知的好奇心によるものが多い。なんの問題もない」

「やれやれ……アーニャはそれでいいのかい?」

「別に問題ないにゃ! 若々しい肌を維持するのは全ての女が望む事にゃ!」

「まあ、オークションに賭けたら億単位はいくかもしれないね」

「それはやった奴だ。好きにしろ」

「りゅ、りゅー」

「うっ……これは……助けるべきなのでしょうか?」

「よし、シルはそのまま店に出な。一週間後に治してやってくれ。代金は店から出すよ。解除だけならできるだろう?」

「可能だ」

「なら、使い回して猫耳で接客してみるか」

 

 ミアの一言により一週間の突発イベントが行われた。店員が全員、猫耳と尻尾を生えさせて接客する恥ずかしそうな姿は冒険者達を狂気に彩らせ、盛大に金を落としてくれたそうだ。

 特にロキ・ファミリアの主神を始めとした神々がよく現れたそうで、オレもほぼ常に演奏してやったし、オレも少し酔っ払い共の片付けを手伝ってやった。その時に髪の毛の数本がなくなっていてもなんの問題もない。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 一週間。狂喜乱舞した宴は終わり、オレはヘスティアに連れられて青の薬舗へとやってきた。

 

「これでどうか助けてくれ」

 

 頭を下げて差し出してきたのは袋に入った髪の毛が三つ。どれも解析してみると神の物だ。

 

「二人で土下座してヘファイストスにお願いしてきたんだ」

「うむ。これでどうか頼む」

「わかった。オレが借金を肩代わりしてやる。だから、お前達はオレにしっかりと返済しろ。そちらが真面目に商売をしている限りはこちらは利息なしで無期限に待ってやる。ただ、オレの商品も置いてもらうし、神ミアハには髪の毛を多少提供してもらうが、その程度だ」

「それはもちろんだ。その程度なら問題ない」

「それとその義手だったか。見せてみろ。オレはそういうのには詳しい。物によっては本物の腕を用意してやる」

「できるのかい!」

「可能だ。それ相応の……この場合だとその銀の腕になるかはわからないがな」

 

 神であるディアンケヒトとナアサが作った義手だぞ。それはつまり、アガートラームの原形またはそれその物ではないか。構造を解析、ミカに取り付けてやるのもいい。なんならオレの武器として装備してもいいだろう。いっそのこと、シンフォギアでも再現してみるか? いや、詠うのは嫌だからなしだな。

 

「わかった。とりあえず、準備をしてくるから待っていろ」

「ボクはついていくよ!」

「いや、来るな。邪魔だ。必要な時に呼ぶから、それまではここで店を徹底的に綺麗にしておいてくれ。それとミアと店員の話を正式にしてきた方がいい。あれから会ってないだろ」

「あ、そうだったね。わかったよ」

「ナァーザだったか、少し手伝ってくれ」

「わかりました」

 

 さて、ナァーザを連れて街へと出る。行く場所は馬車を借りられる所だ。そこで二台借りる。

 

「しばらく待っていてくれ。今から二時間後に向かえにくればいい。こなければ助ける事はなしだ」

「わかりました」

 

 さて、オラリオの外に手続きをして徒歩で出る。冒険者が外に出るには手続きが必要らしい。それをしてから荒野を歩く。しばらく移動して誰も居なくなった事を確認し、手頃な岩を鋼糸魔弦を使いながら集める。集めたら術式を発動し、必要ない思い出を焼却して金塊を錬成する。

 調べた限り、ここの錬金術師は金塊の錬成はまだできない。そのレベルまで達していない。むしろ、鉱石に関する知識が乏しい。精々が抽出する程度だ。つまり、法律上でも違法でもなんでもない。

 まあ、知られたら規制されるだろうが、今は大丈夫だ。つまり現状で大量生産して亜空間に仕舞っておけば、バレたとしても作った日付的に罪には問われない。神は嘘を見抜くのだから、堂々と宣言してやればいいのだ。

 

「売れそうなのは金銀に宝石か。ダイヤモンドは道具としても使えるな。とりあえず一種類10tほど錬成するか」

 

 焼却する記憶は結社の連中の物だ。奴等はすでに敗北した。その技術だけ残しておけば後はいらん。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 さて、大量の錬成を行い、ほぼフォニックゲインが無くなってしまったが、亜空間には金銀財宝が補充された。オラリオの総資産には届かんだろうが、確実に値崩れを起こす程度には作れた。

 

「来たか」

「おまたせ、しました……あの、これは……」

「見ての通り金塊だ。オレの隠し財産という奴だ。馬車に積み込め」

「わ、わかりました。ですが、これだけの量、馬車には積み込めませんよ」

「仕方ない。それなら積めるだけでいい。後は人と馬車を追加する」

「わ、わかりました」

 

 御者にも手伝わせて場所を動かせる限界までいっぱいにする。御者は盗もうとしたら殺すとも伝えてあるし、後でチップを十分に支払ってやると言えば大喜びだ。俗物だが、扱いやすい。

 もっとも、量が多いので追加で呼んだ連中にも手伝わせた。中には冒険者もいるが、この程度は雑魚だ。オレの障壁を突破すらできないだろう。

 

「おい、この金塊があれば……」

「相手は小娘だ……」

 

 そうだ。それでいい。徒党を組んでダンジョンで襲ってこい。思い出の補充は急務ではないが、必要だ。問題は粘膜摂取か。アーニャの尻尾をもした物でも作るか。舌を再現させて口の中に入れさせる。うむ。それでいこう。

 

「あの、積荷は……」

「全て金塊だ。税金はいくらになる?」

「しょ、少々お待ちください……」

「面倒だ。数を数えて金塊一つで手を打て。まさかそれ以上な事はないだろう」

「も、もちろんです、はい」

「余った分は好きにしろ」

「ありがとうございます! どうぞお通りください!」

 

 金塊一つをくれてやり、街へと入る。連中にとってはとてもありがたいことだし、手早く終わらせてもらった。

 その後、ミアハ・ファミリアによってから、ディアンケヒト・ファミリアの前へと移動する。

 

「ねえ、君、まさかこの金塊……」

「問題ない。法律を調べたが、規制はされていない」

「……そりゃ、こんな事をできるなんて誰も思わないさ。で、このお金ってファミリアには……」

「一切入れん。全てオレの個人資産だ。教会の修繕などは行うがな」

「だよね~うん、家がましになるならいいか」

「それとだ。ホームを俺に売れ」

「へ?」

「ヘスティアは騙されやすいし、今回のような事があって連帯保証人にでもなられてホームを追い出されるのは困る。だから、オレ個人の資産として貸し出すことにすれば知らぬ存ぜぬで、そのまま使える。また、それなら俺が好き勝手に改造しても文句は言われない」

「……確かにそれだといいかも。でもね……キャロル君に頼りっきりなのは嫌なんだよ」

「まあ、考えておけ」

「うん」

 

 どうせ亜空間にオレの工房は設置するんだ。だったら、教会が無くても問題はない。不動産屋で別の拠点を購入し、そこにも扉を繋げればいいだけだしな。

 

 

 さて、ナァーザを見張りに残し、ディアンケヒト・ファミリアに入る。もちろん、誰も馬車に近付けないようにするため、ナァーザに馬車の上から見張ってもらい、周りを鋼糸魔弦で封鎖する。不用意に馬車の中に手を入れたら斬り落とされることになるので、注意だけしておく。

 

「失礼。ディアンケヒトはいるかな?」

「ミアハ様、返済ですか?」

「あ~うん、似たような事かな。とりあえず、取りついでこっちに来てくれるように言ってくれないかい? 見てもらった方が早いしね」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 しばらくすると、奥から男がやってきた。そいつはいやらしい笑みを浮かべながら、ミアハをみる。そして、隣にいるオレとヘスティアをみると不思議そうにする。

 

「お前がディアンケヒトか」

「無礼な!」

「まあ、まあ、子供のすることだ。私がディアンケヒトで間違いない」

「そうか。なら、ミアハ・ファミリアの債権を買いにきた」

「子供が出せる額ではないのだがね?」

「いくらだ?」

「それはだね……」

 

 言われた借金の額にミアハが文句を言う。

 

「待て! 金額がかなり上がっているぞ!」

「利息だよ」

「契約書を見せてくれ」

「本当に買うつもりかい?」

「ああ、そうだ」

「わかった。おい」

 

 見せられた書類を確認し、利息の部分もしっかりとみる。法律で決められた上限ぎりぎりだな。

 

「確かにあっている」

「本当かい!」

「まあ、問題ない。では、買い取ろう」

「本当に? いや、嘘ではないのだが、そんな額をヘスティアが用意できるはずがない……」

「ボクは用意していないからね」

「オレの個人資産だ」

 

 書類を返してから外に出ると、騒ぎが起こっていた。一部の冒険者が馬車に入ろうとして、ナァーザに打ちぬかれ、その間に背後から入ろうとした奴は腕を失ったようだ。

 

「さて、この馬車の中には金塊を積み込んである。確認してくれ」

「アレは無視かい?」

「強盗がどうなろうと知ったことではない。オレはしっかりと警告をしておいた。こちらが指示する部分から運び出さないとこうなるから気を付けろ」

 

 一部の鋼糸魔弦を解除し、金塊を置いていく。

 

「現在、金の相場は……」

 

 相場を告げてから金塊を置いておき、追加で一つ置く。まだまだあるが、ここらは相手次第だ。

 

「ふむ」

「ああ、これが本物かどうかはしっかりと確認していい。手間賃として金塊を一つだ。拒否するのなら、こちらで換金して正式な手続きとして返済するまでだ。金額は他の神々の前で確認したし、これ以上の増加は認めない」

「……いいだろう。確かに売り渡そう。だが、迷惑料については……」

「しらん。そいつらから貰え。何故強盗の分までオレが払わなければならん。もしそうなら、お前達の時も同じになるぞ」

「わかった。彼等から徴収しよう。それにしても、何処かの王族か富豪のお嬢さんか?」

 

 富豪ではあるかもしれんな。

 

 

 契約を行い、必要分の金塊を支払った。これでミアハ・ファミリアの債権は手に入れた。続いて木材屋や石材屋などを回って半分の資材を購入して亜空間に収める。店の連中はあんぐりとしていたが、気にする必要はない。

 続いてミアハ・ファミリアの近くにある店舗を買収に入る。店主たちにはそのまま雇う事を条件に売ってもらった。売り上げも丸々懐に収めていいと伝えてある。ただし、建物の改造や区画整理などをさせてもらう。

 何をするかと言えば簡単だ。商店街ではなく、ショッピングモールを作る。どうせこの金塊を狙って馬鹿共が来るんだ。それだったら盛大に使ってやる。後々利益を吸い上げるシステムにしてな。オレの利益? 思い出だ。大量に収集するのには粘膜摂取が必要だが、微かに複数の者達から少しずつもらうのならどうだろうか? ショッピングモールで楽しく過ごし、帰る。別の店での買い物の思い出を少し頂く。そうすればまたこちらにやってくるだろう? 

 これは欧州の錬金術師がよくやっていた収集システムだ。中には街ごとやっていた奴もいる。

 まあ、反対する奴もいるので立ち退きを頼むか、こちらの計画を図面などを見せながら懇切丁寧に教えていく。個人資産による大規模開発。ギルドの許可は? 

 買い取ってリフォームするだけだ。商店はそのままで内装などが変わるだけ。ギルドは一切関与させない。法律上で問題ない範囲で行うのだしな。まあ、仕事はガネーシャ・ファミリアというところに通すのもいいし、なんならオレ一人でやってもいい。

 

「ねえ、キャロル君。いいのかな?」

「問題ない。オレ個人の収入源を作るだけだ」

 

 盛大に仕事を発注し、店主達には商品の開発やオレの知識にあるレシピを教えて作ってもらう。さて、面白くなってきたな。

 低レベル冒険者もギルドを通さない雇用形態で日払いにするし、やはりガネーシャには通した方がいいか。

 

 

 

 

「俺がガネーシャだ!」

「そうか。オレはキャロル・マールス・ディーンハイム。ヘスティア・ファミリアの団長だ。個人的に群衆とオレの為に雇いたい」

 

 計画を詳しく話し、オレが莫大な資金を投じるものと、その証拠として残りの金塊を全てガネーシャ・ファミリアに預ける。

 

「ふむ。オラリオの開発。確かにこれだけの金塊が有れば可能だろう。しかし、君に利益はないのではないかな!」

「あるさ。オレ直営の店舗も構えるし、オレが作った品物も置いてもらう。それにオークション会場も設置するつもりだしな。その辺りからは金を取る。それに仕事中はポーションを大量に配布する。怪我をしたり、病気をしたりしている奴も治療して働いてもらう」

「了解した。群衆の為になるのならよかろう!」

「ではよろしく頼む。それと女神連中に伝えてくれ。ギルドの介入を許さずに作らせてくれるのなら、美容にいいアイテムを販売する。内容はこのようなものだ」

 

 アーニャに渡したアクセサリーを始め、美容関連の物を沢山用意した。これはすでにヘスティアに街中でわざと話しまくるように伝えてある。女神達が必要なくても、その眷属は違う。眷属から突き上げを受ければ動かざるをおえない。また、こちらに降りてきている神は食べたりするのだから、たまるものはある。

 治安の維持が問題だが、そこはオレが全てを担う。監視カメラを設置し、警備ゴーレムを配置すればいい。また、ここで何か有れば美容関係の商品を止めると言えば女神やオラリオの女性達は動く。オラリオの三分の一はいる女性を相手に勝てるかな? 

 

 

 

 少しすればギルドに呼び出されたが、自分から来いと追い返した。やってきた副ギルド長と名乗る男に色々と言われたが、利益を寄越せと脅して来たので、録音して公開してやった。

 それから民衆を扇動し、ガネーシャ・ファミリアを旗頭にしてギルドに抗議を入れさせる。当然、その間にかかる損失はすべてオレが持ってやるといえば民衆達もこぞって詰め寄る。

 ギルドの業務に問題がでればギルドの神はどう動くかなどわかりきっている。処分をしなければ叩かれるだけだ。当然、他の冒険者からも突き上げがある。さて、ここで問題になるのは開発に出している金が個人資産であり、オレの利益が外から見る分にはほぼないということである。

 民衆にはどううつるか? ミアハ・ファミリアのことも合わせれば美談にしかならない。零細ファミリアを救い、私財を投じて利益がほぼでないのに街を再開発して雇用を生み出す。

 脅しをかけてきたギルドとオレ、どちらを味方するかなど明白だ。そもそも決められた範囲で買い取って行っている上に追加で金、賄賂の要求など受ける必要はない。

 

「ねえ、やりすぎな気がするんだけど、これ狙われたりしないかい?」

「するな」

「ちょっ!」

「ほら、来たぞ」

 

 裏路地を歩けばすぐに暗殺者が襲ってくる。そいつらの手足を鋼糸魔弦で拘束し、口に尻尾を入れて思い出を採取する。その情報を公開し、所属ファミリアなどに追及する。

 冒険者の思い出というのはファルナを受けている影響でとてもエネルギーになる。ガリィ達を蘇えらせるためだ。どんどん襲って来い。その分だけ連中の資産を奪わせてもらおう。

 

 

 

 ちっ、予想外に早く事態が収まった。脅してきた奴はオラリオ追放で、ファミリアからは資産をある程度奪えたが、途中で諦めやがった。流石に都市では動かないようだ。

 まあ、ある程度の資金回収という名のマネーロンダリングは終えた。もともとただの土だ。オレにとっては十分な収入だな。この金を使って次は冒険者を率いれるか。保険や孤児院の経営などもいいな。虐待されている子供を引き取って、記憶を奪って手駒として育てる。各ファミリアなどに送り込んで情報の収集……利益はかなりでそうだ。

 これ以上何かをする時は言えと五月蠅かったので、ヘスティアに教会だから孤児院を作っていいかと言うと、大喜びして泣きついてきた。

 

「もちろんだよ! ぜひお願いするよ!」

「ああ、任せろ。だから、どんどん拾ってこい」

「わかった!」

 

 ヘスティアが出て行ったので、まずは教会を手に入れた思い出を焼却して、購入しておいた周りの建物と一緒に錬成する。大聖堂と呼べるべき建物を錬成し、骨組みと足場を作り、シートで覆って作成段階だと誤認させる。実際は完成しているし、500人くらいは生活できるようにしてあるし、地下も問題ない状態にした。

 防衛システムも完備させ、アルカノイズとはいかないまでも警備用のゴーレムを配置する。手慰みで作った奴で性能はよくないが、獣型なので番犬とすればいい。後は鳥型も作って監視を行っておく。それと装備は銃火器だ。

 

 

 

 

 




装備は銃火器。弾丸はゴム弾とガチのもの。

ベートは銀髪犬耳尻尾ロリアイズから戻れるかどうか

  • ツンデレ銀髪犬耳尻尾ロリアイズは正義
  • ベート君が可哀想なので正規の方法で戻す
  • キャロルちゃんの気まぐれで直す
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。