水に憑いたのならば   作:猛烈に背中が痛い

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おまたせ。番外編しかなかったけど、いいかな?

正直投稿がここまで遅れるとは思わなんだ。つっかえ!やめたら執筆?(自己嫌悪)

とりあえず前に宣言した通り真菰関連の掘り下げがクッソ薄かったので番外編一つ使うことにした。真菰ちゃん可愛いよ真菰ちゃん。何で殺した……。

つか本誌もうラスボス戦じゃん……本編完結する頃までにこの小説絶対完結しないことが確定しましたねこれは……。



番外編 冬を迎えた花勝見

 私の名は真菰。そこそこ賑やかな小さな町で織物屋を営んでいる夫婦の間に生まれた、ごく普通の子供だ。歳はこの前誕生日を迎えて十二になった。

 

 裕福では無いが、決して貧乏でもない、ありふれた当り前の幸せを甘受し、優しい父と母と共に日々を過ごす毎日。それが私にとっての日常。

 

 それが退屈だと思ったことは一度も無い。私はそれが幸福だった。

 

 朝は店の前で客を呼び込んで父の商売を手伝い、夜は母の隣で織物が出来上がっていく光景を眺める。そんな毎日が続けばどれだけ良かっただろうか。

 

 幼かった私は勘違いをしていたのだ。

 

 幸せはそこにあって当り前のものであり、それは毎日のように訪れるものだと。

 

 そこにあった幸せは、薄氷の上に成り立っていたものだったというのに。

 

 ……その日は、私の誕生日だった。

 

 毎年の記念として、その日の夕餉は白米や新鮮な魚等を使った豪勢なもの。決して裕福ではない私の家であったが、この日だけは特別だった。

 

 母が作ってくれたご飯はとても美味しかった。そしてご飯を食べた後、私は父から新品の着物を贈り物として貰った。花柄の、とっても可愛い着物だ。

 

 それがとっても嬉しくて、同時に申し訳なくもあった。私はこんなに一杯贈り物を貰っているのに、私は両親に何も返せない。まだ子供だから、まだ弱いから。

 

 だから決めたのだ。将来大きくなったら沢山お金を稼いで、両親に不自由なく、毎日白米を食べさせられるような暮らしをさせてあげたいと。その為に一杯勉強して、一杯見て学んで。

 

 そして――――唐突に、幸せの器は割れてしまった。

 

「真菰! 押入れに隠れなさい! 早く!」

「大丈夫だ、お父さんは強いからな。真菰、父さんと母さんが必ずお前を守ってやる」

 

 夕餉の片づけをしていると、唐突に玄関からおかしな音がした。直後に臭ってきたのは腐臭と、濃い血の匂い。

 

 直ぐにただならない状況だと理解した両親は私を押入れの中に隠した。その時の私は何が何だかわからなくて、とにかく両親の言う通りに押入れの隅で縮こまった。大丈夫、きっと何ともない。明日も同じような日々が続くと、根拠もない言葉で自身を言い聞かせて。

 

『な、何だお前は!? に、人間じゃな――――ぃ、お、ごぼッ』

『貴方!? いやぁぁぁぁ!! やめてっ! 放してぇっ!!』

『男と女かァ……男は死んでもいいが、女は生きたままがいいなァ。生きたままの方が美味い! 今日は大猟だ、湖に帰ってゆっくり食おう!』

 

 両親の悲鳴と共に、身体を内側から擽られるような不快感を感じる不気味な声で、訳のわからない言葉が紡がれる。ここで叫び出さなかったのは奇跡に近かった。

 

 必死に両手で口を押える。口から一言も言葉を出さない様に。目も瞑る。もし気づかれても何も目にしなくていいように。

 

 だが耳だけは、塞げなかった。

 

 遠くなっていく父の呻き声。母の助けを求める声。私はそれに応えることができない。涙を流して蹲るしかできない。怖くって怖くって、足がちっとも動かなかったから。

 

 ――――しばらくして、朝が来た。

 

 いつの間にか眠って、いや、気絶していたのだろう。私は昨晩の出来事が夢であると信じたい一心で押入れの戸を開け、玄関に出た。

 

 そこには、まるで熊が引っ掻いたような爪痕が、血痕と共に四方八方に刻まれた廊下しかなかった。

 

「あ」

 

 夢だ。夢なんだ。こんなのは悪夢で、覚めればいつも通り優しい父と母が抱きとめてくれる。昨日の様な幸せが訪れる。

 

 だけど、血が出る程握り込んだ手から伝えられる痛みはとても生々しくて。

 

 血に染まった父の羽織っていた着物の切れ端が目に入って、その望みは粉々に打ち砕かれた。

 

 

「うぅぅぅうぅぁぁああぁああぁぁぁあああぁぁああぁああああああっ!!!」

 

 

 あの日々には、もう戻れない。帰れない。

 

 惨めに泣き叫ぶ事しか、私にはできなかった。

 

 

 

 

 

◆    ◆    ◆

 

 

 

 

 

「――――うあぁぁああぁあぁぁああああああああああっ!!!」

 

 毛布を跳ね除けながら、私は飛び上がるように起床した。額だけでなく全身を濡らす汗。生暖かい汗の生み出す不快感で寝起きの機嫌は最悪を下回っている。

 

「はぁ……はぁっ……うぅっ……」

 

 頭からあの時の記憶がこびりついて離れない。もう両親の仇は取られたと言うのに、気持ちは晴れた筈なのに、あの夜の惨劇は未だに私の心を蝕んで手放さなかった。

 

 周囲を見渡せば、真菰の左右には未だにぐっすりと眠っている三名――――鱗滝、錆兎、義勇の寝顔が見える。窓の外を覗けば、綺麗な日差しが隙間から差し込んでいる頃。しかしまだ空気が冷たいから、起きるには少し早い時間か。

 

 かと言って二度寝する気は起きない。あんな夢を見た後で、どう寝付けというのか。

 

「……体でも洗って来よう」

 

 せめて汗だくで気持ち悪い感触でもどうにかしようと、私はできるだけ音を立てない様に家を出た。

 

 すると、ここに来て一ヶ月も経ってもう見慣れてしまった豊かな自然の光景が変わらず出迎えてくれる。微かに香る緑の香りが、荒んだ心を少しだけ癒す。

 

 一度外の空気を肺一杯まで取り込み、深く、息を吐く。それだけで真菰は気持ちを切り替え、近くにある川で水浴びをすることにする。

 

(……水かぁ)

 

 しかし私は自分が決めたことの筈なのに、あまり乗り気では無かった。

 

 単純に、水にいい思い出が無かった。無謀な蛮勇を絞り出した挙句鬼の手に捕まって水中に引きずり込まれた際の恐怖は未だに忘れられない。そして最近は鱗滝さんに滝壷へとブン投げられた記憶がある。

 

 正直あの時ばかりは己の師であり恩人の鱗滝さんを恨んだのは内緒だ。

 

 だが私とて女の子。体を洗わず「臭い」なんて言われるなんて真っ平御免。ここは嫌な気持ちを押し殺して、しっかりと体を洗うことを決意する。

 

 私は着替えを持って、近場の川まで足を運んだ。川に手を入れてみれば、結構冷たい。もうすぐ冬だから当然と言えば当然か。あまりの冷たさに心の奥底に押し込めていた気持ちが膨れ上がりそうになるが、そうなる前に私はすぐに服を脱ぎ捨てて川へと飛び込んだ。

 

 判断は早く行う。鱗滝さんの教えが役に立ったと思いつつ、身体に付着した汗を丁寧に洗い流していった。

 

 そうして改めて己の体を眺めると、やはりこの一ヶ月間の鍛錬でかなりの筋肉が体に付いているのがわかる。死ぬ思いをして鍛えたのだから、これくらい目に見えるほどの変化が出てくれるのはかなり嬉しい。

 

 私は女だ。女は男と比べて小柄で筋肉の付きも悪くなる。でも鱗滝さんは鍛えている内に「お前には才能がある」と言ってくれた。鬼の頸を斬るのに十分な力があると。今の体の変化を見ればその言葉は決して慰めの嘘でないことがわかる。

 

「それにしても……やっぱり強いなぁ、二人とも」

 

 体を洗いながら、ふと私は兄弟子である錆兎と義勇の二人の顔を思い出す。

 

 義勇は、普段は何を考えているのかよくわからないくらい表情筋が死んでいる。だが、意外と表情豊かだ。ちょっとだけ口下手だけど、偶に隠し持った飴や干し肉をくれたりする優しい子。鍛錬の後も私の事を沢山心配してくれる。弟がいたらこんな感じなのかなと思った。私の方が年下だけど。

 

 錆兎は……何と言うか、厳しさと優しさが一緒に住んでいるような子だ。いつもは口も態度も厳しいくせに、こっちが欲しい時に限って優しい言葉を投げかけてくれる。実は狙ってやっているのでは無いだろうか。もし無自覚だったらとんでもねぇタラシ野郎だ。将来女の敵になること間違い無しである。

 

 それで、当然だが二人は私なんかよりずっと強かった。鍛えた年数に差があり過ぎるため当然だが、あまりにも差があり過ぎるため何度も心の中でこんな言葉が過るのだ。

 

 本当に私もあれほど強くなれるのか。

 

 本当に私は――――鬼の頸を斬れるのか。

 

 怖気づいたかもしれない。諦めかもしれない。ただやはり、私の中で鬼殺に対する信念は未だ確たるものになっていないのだ。

 

 仇は二人が取ってしまった。それについて文句はないし、感謝している。それに鬼殺の道に進むと決めたのも自分の意思だ。自分以外の誰にも責任を被せるつもりなど無い。

 

 私は自分の様な物をこれ以上増やさないと覚悟して歩を進めた。しかしそれは高い壁を知らなかった子供の覚悟だ。

 

 こうして高くそびえ立った壁を前にして、ほんの少し天秤は揺れてしまった。……そんな弱い自分に反吐が出そうな気分だ。

 

「強くなりたいなぁ……」

「――――へくしっ。うぅ、冷てぇ……」

「……………………」

 

 聞きなれた声がして、私はギギギと覚束ない動作でゆっくりと振り向いた。

 

 見知った顔があった。何故かそこには――――冷たい川の水で顔を洗う、寝癖だらけの錆兎がいた。様子を見る限り完全に寝ぼけているようで、水の冷たさでようやく目が覚めたらしい。

 

 数秒間の静寂を間に置いて、私と錆兎の目が合った。

 

「………………………えっ、と、その……お、おはよう?」

 

 私はキレた。

 

 

「なぁにがおはようだゴルァァァァアアアアアアアア――――!!!」

 

 

 早朝の山中で少女の雄叫びが木霊した。

 

 

 

 

 最っ低。信じられない。

 

 女の子の裸をマジマジと見ておいて第一声が「おはよう」って何だ。喧嘩を売っているのか。

 

「錆兎、頭にたんこぶが出来てるぞ。何があったんだ?」

「あー、いや、顔を洗いに行ったときにちょっと転んで頭に石が当たってな」

「そうなのか」

「……ふん!」

「何をやっとるんだお前は……」

 

 折角の美味しい朝食もこれでは旨味半減だ。それもこれも錆兎のせい。

 

 せめてもうちょっとこう、顔を赤らめて恥ずかしがったりとかそういう反応を見せてもよいのではないか。あんな淡泊な反応では、まるで自分が異性として見られていないようで……。

 

「鱗滝さん、私は今日もいつも通りの基礎修練?」

「ああ。鬼殺において最も重要なのは、体力だ。どれだけ力が強くとも、すぐに息切れしてしまうのならば使い物にならん。せめてこの狭霧山を半日間駆け回れるようにならねばな」

「うへぇ……」

 

 このだだっ広く凸凹だらけの山の中を半日間。いまだ普通の感性を維持している私にはそれが途方も無く無茶な目標に見えてしまう。

 

「じゃあ、義勇と錆兎の二人はどうするの?」

「……俺たちはいつも通り自主的な修練だ。あの大岩を斬るには、まだ体が未熟だからな。そのためにも焦らずゆっくり、着実に鍛えなければならない」

「だな」

 

 大岩――――鱗滝さんが二人に課せた最後の試験。それは大人の身の丈をも超える岩を刀で真っ二つに叩き斬れ、というどう考えても無理としか思えないものであった。私は最初それを聞いたとき「馬鹿じゃないの」という言葉が口から飛び出たのは記憶に新しい。

 

 しかし全集中の呼吸……鬼殺隊に要求される基本技術であるそれを間近で何度も見ていれば、それが絵空事でないことはすでに理解している。

 

 岩を刀で斬る。きっと二人は近いうちに成し遂げられるだろう。当てのない勘ではあるが、それはほぼ確信に近かった。

 

 では、私は? 例え長い修練を終えたとしても、私はあの大岩を斬れるのだろうか。

 

 自信は、まだ無い。

 

「ふーん。具体的にはどんなふうに?」

「基本は走り込み数時間、素振り千回、模擬戦五本、崖登り、滝行一時間、丸太運び数十往復……とにかくやれることは全部やる」

「うわぁ」

 

 正直引いた。もしや目の前の少年たちは自殺志願者か何かなんだろうか。というかもしかして今並べた修業はいつか将来私もやることになるのか? ……マジか。

 

 私が半眼になりながら二人を眺めていると、錆兎が顎を摩りながらポンと何かを思いついたように手の平を拳で叩く。

 

「もしかして、真菰は俺たちの修行に興味があるのか?」

「え? まあ、そうだね」

「なら、今日一日俺たちに付いてきてみるのはどうだ? 見るだけでもいろいろと学べることはあるだろう」

「それは……」

 

 見たいか見たくないかと言われれば、無論見たいに決まっている。未だ未熟な身だからこそ、そのはるか先を進んでいる二人の動きを綿密に観察して見えてくるものもきっとあるだろう。

 

 ただ、鱗滝さんがそれを許してくれるかどうか……。

 

「……一日程度、好きにしても構わん。怠ける目的でないのならば、儂から言うことは何も無い。ただ、あまり一人で行動するな。今の時期は獣が多い」

「えっ、ホントに!? やったぁ~!」

 

 思わぬ許可を貰ったことで私はついつい気が浮足立ってしまう。だがこれはこの上なく良い機会だ。二人の動きを可能な限り見て盗み、今後の修練に役立てなければ。

 

 そうすれば……少しは、自信もつくだろうか?

 

 

 

 

 

◆    ◆    ◆

 

 

 

 

 

「フゥゥゥォォォォオオオオオオオオッ!!」

「だりゃぁぁぁあああああっ!!」

「うわぁ……」

 

 錆兎と義勇の二人が雄たけびを上げながら、半裸の状態で五十貫(約百五十キロ)はあるだろう、丸太を束ねた重りを押し込んでいく様を見て思わずそんな声を漏らしてしまった。

 

 一体あの小さな体の何処からそんな力が眠っているのか。呼吸の力ってすごい。私は改めてそう思った。

 

「っ……ふんっ、っしょっとぉ!!」

「よし、これでっ……ぷっはぁぁぁぁ……!」

 

 地面を抉りながら丸太をおよそ十五間(約三十m)押した所で二人はその動きを止めた。地面に着けた目印にピッタリだ。本当に押し切るとは、と私は驚嘆の表情で固まってしまう。

 

「はぁっ……はぁっ……三日前より、確かに伸びてるな」

「ああ。少しずつではあるが、俺たちが成長している証拠だ。こうして目でわかるものだと、やはり自信が付くな、義勇」

「……ねえ、二人とも。私もちょっとやってみていい?」

「「え?」」

 

 私の言葉が予想外だったのか、地面でへたり込んでいる二人が間抜けな声を出した。まあ、女の子である私が自分から率先してやるなんて思わなくて当り前か。

 

 だが、私とて二人と同じ鱗滝さんの弟子の一人。二人に負けたくない一心で、私は二人が押していた丸太の重りの前に立つ。

 

「すぅぅぅぅ……ヒュゥゥゥゥゥウウウ……!」

 

 丸太の幹に両手を添えて、教えられた通りの呼吸法で全身の血肉を活性化。身体能力が飛躍的に上昇を始め、丸太を圧す力が段々と強くなり始めた。

 

 だが――――

 

(っ……! 動か、ないッ……!!)

 

 ピクリとも動かない。当然だ。呼吸はあくまで身体機能を増幅させるだけ。地力が低ければ倍化しようと高が知れる。だけど私はそれでも諦められなくて、両手から嫌な音が聞こえ始めても手を止めず。

 

「やめろ、真菰」

「!」

 

 越えてはいけない一線を越えてしまいそうな寸前、義勇が私の着物の襟を引っ掴み、無理矢理重りの前から引き剥がした。そうしてようやく表れ始める両腕からの激痛に、私は思わず顔を渋めてしまう。

 

「……痛い」

「当り前だ。何で出来ないことを無理にやろうとするんだお前は。……少し休んで、冷静になれ」

「うん……」

 

 錆兎からの説教がグサグサと突き刺さってきた。こちらが勝手に無茶をしての自爆だ。反論の余地も無い。

 

 冷静になって振り返れば、自分が早まった真似をしたのが嫌でも理解出来て、自己嫌悪の黒い感情が淀んだ心の渦を更に濁らせてくる。焦っては駄目なのに、不安と言う獣が際限なく私に食らいつこうとしてくる。

 

 落ち着いて。駄目、鱗滝さんも言っていたじゃない。大事なのはどんな事があっても静寂を保てる精神だって。

 

「ごめん、ちょっと散歩してくるね」

「ああ。……あまり遠くに行くなよ」

 

 私はバツの悪い顔をしながら、二人にそう告げながら静かにその場を離れた。

 

 やりたいことが一杯あるのに出来ることが少ない。早く強くなりたいのに。早く鬼を倒せるようになりたいのに。

 

 ――――何のために?

 

 決まっている。私の様な者をこれ以上作らないために。守るために。

 

 ――――本当に?

 

 嘘じゃない。確かに私が決めた目標だ。決して偽りなんかじゃない。

 

 ――――本当に、()()()()

 

 

『真菰! 押入れに隠れなさい! 早く!』

 

『大丈夫だ、お父さんは強いからな。真菰、父さんと母さんが必ずお前を守ってやる』

 

 

「違う……」

 

 確かに偽りでは無い。だが、それだけでは無い。

 

 ああ、そうだ。これは、怯えだ。鬼に対する恐怖、失うことへの恐怖。そして――――()()()()()()()への、恐怖。

 

 私には鬼殺隊になる以外の選択肢があった。義勇の姉、蔦子さんの養子となって平和に生きる道が。彼女の人なりを見れば、きっと私を我が子のように可愛がってくれるだろうと言う事は想像に難くない。

 

 ――――だが私はそれを選ばなかった。

 

 何故? ……怖かったのだ。失うのが、無力なせいでもう一度大切な存在を手から取り零すのが。

 

 何より――――あの時、己を庇ってくれた父と母を見殺しにした私に、幸せになる資格なんて、無い。

 

 無いんだ、私なんかには。自分だけ楽な道を進む権利なんて

 

(お父さん……お母さん……)

 

 二人の顔を毎日のように夢で見る。だが決して良い夢などでは無い、あの晩に起こった悪夢が何度も何度も、私に忘れるなと言うかのように意識の底から浮かび上がってくる。

 

 これは戒めなんだ。自分たちの死を背負って生き続けろと言う、二人からの罰。

 

 だから、だから……早く強くなって、鬼を殺さなきゃいけないのに。怖い、怖い、怖い……!!

 

「……お父さん、お母さん……二人に会いたいよぉ……っ」

 

 心の蓋を押し出して溢れ出した感情の名は、寂寞。

 

 この手に遭ったはずの温もりをもう一度手に入れたい。例え出来ないとわかっていても、一度知ってしまった甘い蜜の味は決して忘れることなど出来やしないのだ。

 

 

 ――――怖い。寂しい。苦しい。辛い。逃げたい。憎い。殺したい。妬ましい。

 

 

「ひっ……!? いや、なんで、なんでぇ……!?」

 

 奥底に秘めていた感情が抑えていた蓋が取れてしまったことで止めどなく溢れ始める。

 

 自分でも自覚していなかった真っ黒に濁った感情の数々。もう一度押し込もうとしてもできない。心が言うことを聞いてくれない。体が震えて、涙が無情に流れ始める。もはや、自分の心身の手綱すら握れなくなったのか、私は。

 

「やだっ、やだやだやだぁっ……! 助けてっ、誰かぁ……!!」

 

 自分でもどうすればいいのか全くわからなくて、私はその場で頭を抱えて蹲りながら、情けない声を上げるしかなかった。

 

 助けてください。誰でもいいから、こんな醜い私を、罰して――――

 

 

「グルルルルルルゥ……」

 

「え?」

 

 

 ズン、ズンという足音と獣の様な唸り声が聞こえて、私は俯いていた顔を上げた。

 

 とても大きな影が視界を覆っている。そのまま上へと視線を移し、体勢が崩れて尻もちをついたことにも気づかないまま、私はそれを唖然としながら呑気に眺めた。

 

 涎を滝のように垂らす、両足で立ち上がった七尺(三m)はあろう巨大な熊を。

 

『あまり一人で行動するな。今の時期は獣が多い』

 

 ふと思い出したのは、鱗滝さんのそんな言葉。

 

 その忠告は、残酷なほどに的を射ていた。

 

「ひっ、あ、あぁ」

「フゥゥシュゥゥルルルルルルル……」

 

 本能を訴える恐怖。生物的絶対者と相対した弱者としての警鐘が、壊れるのも厭わない程に音を鳴らしていた。

 

 反射的に体を引き摺るように後ろへと移動させようとするが、それに合わせて熊が大きな一歩を進める。涙と共に股から生暖かい何かが漏れた。

 

 そしてバキリ、と何かが手の平の重みで折れて。

 

 

 

「オオォォォオォォォオォォオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

 飢えた巨獣が爆発のような雄たけびを上げた。

 

「いやぁぁぁああぁあぁぁああああああ――――っ!!!」

 

 私は全ての生存本能に任せて逃げ出した。それが熊の狩猟本能を刺激したのか、熊はその鋭い牙を見せつけながらその四脚でこちらへと突進してくる。その勢いは巨体ながら尋常では無い速さだった。

 

「グルァァァアァァアアアアアッ!!」

「やだっ、やだぁぁあぁぁあああ!」

 

 こんな状況で正確な呼吸などまともに行えるはずもなく、私は錯乱したままひたすら走り続ける。だが熊は、人より早い。何より山中という慣れない悪地で、私が万全な走りを出来るはずもなく。

 

 熊が跳ぶ。その前脚を振り上げる。それを視界の端で捉えた私の頭が出した結論は当然。

 

 

 死。

 

 

 

『お父さん、お母さん! 私ね、私ね。将来二人に腹一杯ご飯を食べられるように店を大きくするのが夢なんだ~』

 

 何年前の出来事だろうか。それが鮮明に脳裏を駆け巡る。現実では一瞬で、しかし頭の中では酷くゆったりとして再生されていく懐かしい記憶。

 

『あら~、真菰は良い子ねぇ。優しくてかわいいなんて、将来真菰を嫁に貰う子が羨ましいわぁ』

『そうだなぁ。きっとそいつは世界一の幸せもんだよ、くそぅ!』

『ん~……お父さんとお母さんは、夢とかないの? 私が頑張って叶えてあげる!』

 

 何ともまあ、子供らしく純粋で馬鹿らしい言葉だろうか。だけど、ああ、幸せだった。父と、母と、三人で暮らす日々こそ、私にとっての太陽だったのに。

 

 どうして、どうして、私だけが。

 

『お父さんとお母さんはねぇ、真菰が幸せになってくれるのが夢なのよ~』

『そうだ。父さんと母さんの可愛い娘が幸せになってくれる以上に嬉しいことなんてあるもんか』

『うーん……じゃあ、二人の夢は叶ってるね! 私は今すっごく幸せだから!』

『うふふ、そうねぇ! その通りね、真菰!』

『はっはっは! そうだ、明日も明後日も、来年も、今日みたいに家族みんなで生きていこう。それだけで――――』

 

 それだけで、よかった。

 

 それだけで、幸せだった。

 

 

 ――――真菰。

 

 

 幻影だろうか。真っ暗な場所で、父と母が手を繋ぎながら、私を見ている。ああ、よかった。そこに居たんだ。

 

 待っててね二人とも、今私もそこに――――

 

 

 ――――駄目だよ、真菰。お前はまだ来ちゃだめだ。

 

 

 なんで……? どうして!? 私は二人と一緒に居たいのに!?

 

 

 ――――真菰、お前にはまだまだやれることが沢山ある。まだ幸せになれるんだ。それを捨てて、こっちに来てはいけないよ。

 

 

 二人がいない世界なんて要らない! お父さんとお母さんが隣にいない世界なんて、私には耐えられない!

 

 

 ――――お友達の事はどうするの? 天狗のお爺さんも置いて行って、身勝手な理由でみんなを悲しませるの?

 

 

 ……それ、は。

 

 

 ――――……真菰、先に逝ってごめんな。不甲斐ない俺たちを許してくれ。俺たちの分まで生きてくれ。

 

 

 ――――幸せになるのよ、真菰。それが、私たちの幸せなんだから。

 

 

 両親の姿が遠くなっていく。やだ、行かないで。私を置いて行かないでよぉ……!!

 

 

 ――――生まれてくれてありがとう、()たちの、可愛い娘。――――

 

 

 

 

 

 景色が戻る。目の前には迫りくる熊の爪。

 

 先程までの情けない心は既に無い。何をすればいいのかも、もうわかっている。

 

 そうだ。私は生きるんだ。

 

 お父さんとお母さんの夢をかなえるために。私を家族と思ってくれている人を悲しませないために。これ以上私の様な人を生まないために。

 

 生きて、戦い続けるんだ――――!!

 

 

「ヒュゥゥゥゥゥゥウウウウウウ――――ッ!!!」

 

 

 全集中の呼吸により励起される全身の筋肉。飛躍的に上昇した身体能力を以て、私は両足で地を踏みしめ――――跳ぶ!!

 

「グルォォッ!?」

「たぁぁぁぁぁあああああああッ!!!」

 

 目の前の兎が突如変貌したことに驚いたのか、熊は困惑の声を漏らしながら爪による一撃を空振りした。間髪入れず、その間抜けな顔に私の上段蹴りが叩き込まれる。

 

 熊の頭を弾き飛ばす代償としてミシリと悲鳴を上げる脚の骨。激痛に苦悶の表情を浮かべながら、私はそのままゴロゴロと地面を転がった。

 

「はぁっ、はぁっ……うぅぅぅっ……!」

 

 私は息を荒げながらもすぐさま身体に鞭打ち、痛む足を引きずって可能な限り熊と距離を取ろうと試みた。熊の頭蓋骨は猟銃の直撃すら耐える。ちょっと強くなっただけの小娘の蹴りなどで仕留められるはずもない。

 

 あの蹴りで多少は怯んだ筈だ。その隙に出来るだけ遠く、遠くに。最後まで足掻け――――!

 

「ウゥゥゥルルォォオオオオオオオッ!!」

「ッ………ぐ、ぅぅっ」

 

 非情にも頭から血を流しながらヨロヨロと予想よりもずっと早く立ち上がる熊が見える。反撃も防御も逃走も不可能。

 

 それでも私は諦めない。諦めて堪るか。両親と約束したんだ、二人の夢を叶えるって。

 

 幸せに、なるって。

 

「オオォォォォオォォオ!!!」

「うあああああああああっ!!!」

 

 咆える。反抗するように、喉が痛むのを無視して高らかに咆える。これが今の私にできる精一杯の抵抗だ。

 

 ならば例え無意味であっても、全力で成せ。私――――!!

 

「!!!」

 

 熊が一瞬だけ、ほんの一瞬ではあったが、硬直した。私の威嚇が効いたのだろう。だが一秒にも満たない時間だ。必死の叫びは私の寿命はちょっぴりだけ延びた。

 

 爪が振るわれる。小娘の命など簡単に刈り取れる凶爪が。

 

 だが、それが私に届くことは永遠になかった。

 

 

「――――おい、熊野郎」

 

 

 何故なら、爪先が皮膚に触れた直後その腕が斬り飛ばされ、空を舞ったのだから。

 

 目の前で宍色の髪と鋼色の刃が揺れる。

 

「俺の家族に……何してんだぁぁぁぁぁああああああああッ!!!」

 

 一瞬で決着はついた。

 

 熊は突如現れた脅威に反応することすらできず、その五体を瞬きする間にぶつ切りにされた。四肢と頸を斬り飛ばされた熊の胴体からは噴水の様に鮮血が散り、それが私と目の前の少年――――錆兎へと降りかかる。

 

「あ……」

「真菰、無事か? っ、右足が腫れてるぞ! 熊にやられたのか!?」

「う――――」

 

 恐怖から解放され、身体をこわばらせていた力が抜ける。その瞬間からぶわっと溢れ出す涙と鼻水。

 

 私は恥も外聞も無く錆兎に抱き付いて号泣した。

 

「うわぁぁあぁあああぁああああぁあああああん!! ごわがっだよぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおお!!」

「ちょっ、真菰お前鼻水! 鼻水が顔に付く!?」

「わぁあぁあぁあぁぁああぁぁぁあん!!」

 

 もう絶対離れないと言わんばかりに私はぎゅーっと身体に抱き付いて錆兎を放さなかった。文句なんて知らない、泣いてる女の子くらいちゃんと慰めろ、この馬鹿。

 

「――――錆兎! 真菰! 無事か!」

「ああ、俺は無事だが……真菰が怪我をしている。今日の鍛錬は打ち切って、早く帰ろう」

「わかった。……ところで錆兎、真菰の着物に血じゃない染みがあるようだが」

「は?」

「――――――――――」

 

 五分ほど経って、私の号泣も落ち着いたころにようやくやってきた義勇。こちらを心配して声をかけてくれたまでは良かった。そこまでは何も文句はない。

 

 だが変な所で鋭い彼は、私の股から広がる何かの染みを見て首を傾げている。

 

 義勇、お前は知り過ぎた。

 

「義勇」

「え? なんだ、真こ」

 

 言葉を遮るように必殺の右拳を義勇の頬に叩き込む。かなりいいものが入ったのか、彼は先の言葉を口にすること無くそのまま地面に崩れ落ちた。

 

 私は何も言わずに錆兎の方に振り向く。

 

「錆兎、おぶってくれるかな?」

「あっ、はい」

 

 今日、私は色んな意味で大きく成長した。肉体的にも、精神的にも。

 

 

 お父さん、お母さん。ごめんなさい、態々私のところまで来てくれて。

 

 そしてありがとう、落ち込んでいる私を励ましてくれて。

 

 私、怖がらずに幸せになってみるよ。

 

 幸せになって、最期まで生きて、そして今度こそ向こうで、二人と――――

 

 

 

 

 

◆    ◆    ◆

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 私は言いつけを破って一人で山をうろついたことと、非常時とは言え無茶をしたことを鱗滝さんに怒られつつも、無事後遺症等なく復帰することができた。所詮はちょっと強めの打撲だ、薬を塗って食べて寝たら大体直っていた。

 

 そしてある程度歩くことができるようになった私は、すぐにある事を鱗滝さんからの許可の元行うことにした。

 

 別にそう特別なことでは無い。ただ、作らなければならない物を思い出しただけだ。

 

「………………お父さん、お母さん。私の事は心配しないで、ゆっくり休んでね」

 

 両手を合わせて祈りを捧げる私の目の前には、大きめの石が山状に積み上げられた物体が二つ程あった。それは私の手製のお墓。不格好で、とても自慢できるような出来ではないが、それでも二人のお墓は私が作りたかった。

 

 二人の遺体はもう見つからなかった。鬼に食われたのだから、当然だ。その代わり、墓の下で眠っているのは売り払った家から持ってきたわずかばかりの両親の遺品。

 

 そんな物しか用意できなかった私を許してください。そしてどうか、安らかに。

 

「真菰、大丈夫か?」

「あ、錆兎」

 

 何分も黙祷を捧げていると、心配そうな錆兎が声をかけてきた。今の私は、そこまで思いつめた表情をしていたのだろうか?

 

「私は大丈夫だよ。心の整理は、もう付いたから」

「そうか。……すまない。あと一日早く駆けつけていたら、お前は「それ以上は駄目だよ」え……」

 

 錆兎は優しい子だ。だから私の事を気にかけてくれる。それについては素直に感謝している。

 

 だけど、それは駄目だ。両親の死の責任は、彼が背負うべき物では無いのだから。

 

「私の両親は鬼のせいで死んだの。錆兎や義勇のせいなんかじゃないよ」

「だけど……お前は、恨んだりしなかったのか? 間に合わなかった、俺たちの事を」

「やだなぁ、そんなの一度も無いよ。私だって恨むべき対象の区別くらいはつくよ。だけど、そうだねぇ。……嫉妬は、したことがあるかな?」

「嫉妬?」

 

 私はここ数ヶ月の間で独り溜め込んでいた嫌な感情を、少しずつ零し始めた。大丈夫、きっと三人ならば、受け止めてくれる、そう信じて。

 

「羨ましかった。お父さんとお母さんの仇を討てた二人が。私はきっと……自分の手で仇を取りたかったんだと思う。でもできなかった。あの場に居た私は結局、足を引っ張っただけだった」

 

 仇を討ってくれた事は感謝している。だけど心の中で引っかかっていた棘は、そんな身勝手なもの。

 

「だから今度こそ自分の命で大切なモノを守れるように、奪われても仇を取れるように、早く強くなりたかった。二人みたいに。だけど……やっぱり、感情だけじゃどうにもならないんだね」

 

 時間が足りない。強くなるには余りにも道のりは長く、そして踏み出せる一歩は短すぎた。

 

「怖いよ、錆兎。鬼と戦うのが、また大切なものが奪われるのが。私は怖い」

「……怖いなら、戦うな。お前にはそうする権利がある」

「うん。だけどね……怖いものから目を逸らし続けて、大切なものを奪われても見て見ぬふりをするのは、もっと怖い。それじゃあ私は、幸せになれない」

 

 だからようやく決意が出来た。私は強くなる。戦い続ける。自分の手の平から何も零さない様に。自分や誰かの幸せの箱を満たすために。

 

「約束したんだ。お父さんとお母さんの夢を叶えるって。幸せになるために生きるって」

「そう、か。……いい両親だったんだな」

「うん」

 

 錆兎の称賛に素直に顔を上下させながら、私は踵を返して錆兎と向き合った。

 

 優しい顔だ。血が繋がってい無くても、鱗滝さんとよく似た優しい顔。ああ、本当に、この顔を見ると心臓の鼓動が早まっていく。おかしいな。義勇の笑顔を見ても、こんな風にはならないのに。

 

 厳しさの中に隠れる底なしの優しさ。

 

 いつも家族として見守ってくれている暖かさ。

 

 決して甘やかしたりせず、私の事を正面から見てくれる誠実さ。

 

 そんな少年の静かに燃える情熱の炎に中てられてしまったのだろうか、私は。

 

「……真菰、空を見てみろ。初雪だ」

「あ」

 

 ハッと気づいたように錆兎が呟き、それに従って私は空を見た。確かに曇り空からは小さな白い結晶がゆっくりと地に降りてきている。

 

 今はもう十二月の上旬。少し早めではあるが、初雪が降ってもおかしくない時期だ。

 

「綺麗だな」

「そうだね。……ねえ、錆兎。丁度いい機会だから聞いてみたいことがあるんだけど」

「うん? 何を――――」

 

 錆兎が言葉を言いきる前に、私は少しだけ背伸びをして彼の顔に近付いて。

 

 

 小さく、口づけをする。

 

 

「――――――――――――――――」

「私と初めて口づけしたとき、どんな感じだったのかなって。聞いてみたかったんだ」

「なっ、な、なななななっ……!?!?」

 

 完全な不意打ちにこれ以上無く顔を真っ赤にして焦り出す錆兎。ほうほう、中々に新鮮な表情と反応に私はとっても満足感を覚えた。これは弄り甲斐がありそうだ。

 

「ねえねえ、どんな感触だった?」

「そ、そんなの覚えてる訳ないだろっ!? 戦いの最中だったんだから……」

「ふーん。女の子の初物を奪っておいて覚えて無いで済ませるんだぁ」

「アレはお前からしてきたんだろっ!?」

「そっかぁ。そっかぁ。錆兎はそういう男だったんだねぇ。残念だなぁ」

 

 へらへらと挑発するように言うと、錆兎は全身をわなわなと震えさせていく。それがついつい楽しくて、私は自然と口角が上がっていくのを感じた。

 

「………柔らかかった」

「ん~? 聞こえないなぁ~」

「あああああもうっ! 何でもいいだろっ!? 帰るぞ俺は!」

「んふふふ……錆兎」

「何だ!?」

 

 顔を羞恥で真っ赤にしながら逃げようとする錆兎の手を捕まえて、私はその隣を歩く。今はまだできないけど、いつかその隣で一緒に戦いたい。そう示すように。

 

「錆兎も義勇も、私を置いていなくならないでね」

「…………ああ」

 

 三度目の口づけは、どんな味がするのだろうか。

 

 将来の出来事に思いを馳せながら、私は歩き出した。

 

 

 

 

 




誰だって黒い感情の一つや二つ持ってるよねって話。十二の子供が両親を失った悲しみで自罰的になるのいいよねよくない。
だからこうして甘々なイチャイチャを挟むことで中和するね……(CP厨並感)

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