自分が幹事だった『アイテム』の任務の打ち上げが一時間後にあることに気付いたフレンダ。
このまま行けば打ち上げを楽しみにしていた麦野によって殺されてしまう!
焦ったフレンダは自らの人脈を使って『隠れた名店』を探すのだった。
果たしてフレンダは、『アイテム』の打ち上げにふさわしい『隠れた名店』を見つけ出し、麦野のオシオキを回避できるのか!?

──今、とある金髪の危機一髪(デンジャラス)が始まる。

1 / 1
学園都市生誕祭というSS投稿企画に用意したものです。
なお、10/9はフレンダの命日です。


とある金髪の危機一髪(デンジャラス)

 フレンダ=セイヴェルンは危機的状況に追い込まれていた。

 じりじりと、後ろから徐々に削られていくような、それでいて目の前は断崖絶壁──そんな絶望感を孕んだ状況。しかしフレンダは、この期に及んで解決策を見いだせないでいた。

 

 

「…………」

 

 

 静かに、フレンダは手に持った端末を確認する。

 情報対策の専用メッセージツールには、彼女の属する組織のリーダーからの連絡があった。

 その文面には、こうある。

 

 

『分かっていると思うけど、今日の一七時からの打ち上げパーティ、幹事よろしくね』

 

 

 それに対する、フレンダのレスポンスはこちら。

 

 

「わ、忘れてたァァああああああああああああああああッッッ!!!!!!」

 

 

 血で血を洗う大仕事を終え、珍しく上機嫌な彼女のリーダー麦野沈利は、フレンダによって提案されたこの会を殊の外楽しみにしているようだった。

 もし、準備が整わないままパーティの開始時刻を迎えてしまえば。

 よしんば準備ができたとして、麦野の満足のいくクオリティでなければ。

 その時は────

 

 

『オ・シ・オ・キ・カ・ク・テ・イ・ね』

 

 

 ──恐ろしい事態になることは、想像に難くなかった。

 

 現在時刻、一六時。

 

 

「……やるしか、ないって訳よ」

 

 

 端末で時間を確認したフレンダは、そこで覚悟を決めた。

 残り一時間。彼女の持つあらゆる人脈を駆使して、麦野が満足できるクオリティの打ち上げパーティを企画する。それ以外、彼女が生き残る道はない。

 

 

 一世一代の、危機一髪(デンジャラス)の幕開けだった。

 

 

 

* * *

 

 

 

 まずフレンダが目を付けたのは、第三学区の施設であった。

 第三学区といえば、外部の観光客をターゲットにした商業施設が多く立ち並んでいるわけだが、人間というのは外面を実情以上にキレイに整えたいものだ。それゆえ、学園都市全体の平均と比べても高級感のある施設が点在しており、それゆえ『アイテム』は集まりの場としてよく利用しているのだった。

 第三学区にある個室サロンの一つを運営している女子高生実業家の花鶏(あとり)会美(あみ)ちゃんに連絡を取って、友人権限でなんとか予約を取れないか打診してみたものの、

 

 

『ん~ごめんねぇ、流石に一時間後はちょっち厳しいかねぇ、フレンダちゃんの頼みだったら聞きたいんだけどねぇ』

 

「あー、いいって訳よ。無理言ってごめんね。また今度そっち行くから、そのときはよろしく! それじゃ!」

 

 

 さくっと通話を切ると、フレンダは考える。

 半ば覚悟していたことだが、高級感溢れる第三学区の施設は、それゆえにルールがしっかりとしており、そこらの居酒屋のように無理やり予約を捻じ込むというようなフレキシブルな対応が難しい。

 であれば、そのあたりのルールがゆるい『庶民派』の施設を選ばなくてはいけないわけだが……当然、居酒屋などに代表される凡百のチェーン店を選ぼうものなら、待っているのは破滅のみ。

 ゆえに、フレンダは考えなければならない。

 

 『庶民派』の店でありながら。

 

 麦野のことを満足させられる。

 

 そんな、『隠れた名店』を。

 

 

「隠れた名店、隠れた名店……」

 

 

 とはいえ、フレンダにそうした店の知識は皆無に等しい。そもそもミーハーな女子高生でしかないフレンダは、何かしらの分野に一家言ある専門知識など所持していないのである。

 サバ缶にはうるさいが、別に調理法だって詳しいわけではないし。

 というわけで、フレンダはまたしても友人達に助けを求めてみる。

 

 実家がラーメン屋ということで知られざるラーメンの名店に詳しい胡梓萱(フーズーシュエン)ちゃんに尋ねてみるも、

 

 

『あのねフレンダ? そもそも女子会にラーメンはどうかと思うわよ? 話を聞くに? その人たぶん「こういうの」苦手なタイプでしょ?』

 

「い、一理ある…………ッッ!!」

 

 

 と、至極当然のアドバイスを頂いてしまい。

 学園都市に蔓延る噂の調査が生きがいの私立探偵押鳥(おしどり)芽音(めおと)ちゃんに尋ねてみるも、

 

 

『ウフフフフッ、よくぞ聞いてくれましたッ。実は最高の情報が入ったばっかりでねッ、「内臓爆裂スイーツバイキング」って言うんだけどッ、』

 

「あ、うん。ありがとう」

 

 

 なんか色々と趣旨が変わりそうな感じになったので無理やり話を打ち切ったり。

 悪役令嬢からの没落コンボをキメて高級っぽい庶民食探しに目覚めた元常盤台生レイシア=ブラックガードちゃんに尋ねてみるも、

 

 

『いやいやいや、何の変哲もないハンバーガーショップも言うほど悪くなくってよ? 落ちぶれてみて初めて分かる輝きというものが──』

 

「感動的だけど、結局今そういうのを求めてるんじゃないのよね!!」

 

 

 全く求めてない感動話が始まりそうになったのでそそくさと撤退したり。

 第二二学区の商業施設を取りまとめる立場の男を父に持つ神庭(かんば)結衣(ゆい)ちゃんに尋ねてみるも、

 

『あるよー。隠れた名店。というか、「隠れてしまった名店」だねー。九月一日のテロ騒ぎがあったでしょー? アレで区画が一部断絶されちゃってねー。そのせいで客足が遠のいちゃって影が薄くなった「名店」。ただ、あそこの店主は気難しくてねー。電話予約とかしてないから、直接足を運ばないと難しいかもー。あと何分だっけー?』

 

「…………あと、四五分……!!」

 

 

 ──なんとか糸口を見つけてみたり。

 

 

 友人達の力添えもあって、なんとか細い細い糸口を確保したフレンダは、行動を開始する。

 第二二学区といえば、フレンダが今いる第七学区に隣接した学区。発達した地下施設の集合体である。レジャー施設が主に終結した学区なのだが、地下街らしく鉄道やそれに付随した商業施設もあり、学生的にもなかなか楽しめるロケーションなのだった。

 しかし九月一日、終業式の日にテロリストによって一部が崩落する事件があり、その際のゴタゴタでテナントが入れ替わったり修復作業が入ったりで、もうじき学園都市の独立記念日という今になっても一部区画は通ることができず、それによって客足が遠のいている店も一部には存在しているのだという。

 

 第二二学区に入るだけなら、ものの一〇分で済むだろう。

 しかし今言った修復作業による立ち入り禁止区画などでの遠回りを考慮に入れると──全力で向かっても間に合うかどうか。

 

 

「……考えていても仕方がないわね」

 

 

 フレンダは一人呟いて、端末を使い麦野達『アイテム』の面々に連絡を入れる。

 これで、後には引けなくなった。もし仮にフレンダが時間内に予約できなければ、その時はおそらくオシオキよりも恐ろしい結末が待っているだろう。

 だが。

 

 

「結局、きちんと間に合わせれば万事問題ないって訳よ!!」

 

 

 そんな圧倒的ポジティブシンキングで、フレンダは第二二学区に突入する。

 友人の話によると、件の『隠れた名店』はフレンダの入ったA1入口から西方向に二〇分直進したところにあるということらしい。

 フレンダは事前に暗部の情報網を駆使して獲得した『現在確実に使用できる通路』と照らし合わせてその情報を確認するが──

 

 

「……チッ、結局、道が塞がっちゃってるって訳よ!」

 

 

 やはり前情報通り、最短ルートは修復工事のため塞がっている。さらに迂回ルートを検索するものの、その場合は大きく遠回りをしなければならないであろうことが分かった。

 具体的には──五〇分のロス。

 当然ながら、そんなに時間をロスすれば麦野達との約束の時間には間に合わない。

 

 この極限状況──フレンダは決断した。

 

 

「急がば回れ? 違うわね……結局、急がば爆破って訳よ!!」

 

 

 フレンダ=セイヴェルンは爆破を武器とする少女である。

 無能力者(レベル0)である彼女は、液化爆薬から爆竹まで様々な爆弾を用いて盤面を掌握する。その扱い方の習熟度はすさまじいの一言であり、肉弾戦の中に爆破を組み込んだりといった曲芸めいたことまでこなせるほどだった。

 

 

「さて……工事のお手伝い、やっちゃいますか!」

 

 

 修復工事の現場にやってきてみると、そこはもぬけの殻となっていた。

 工事は主に夜間にやって、昼間のうちは作業を止めているのだろう。近隣に住居が多い場所ではままある措置である。だがそれは、フレンダにとっては好都合。

 にひひ、と消音性の爆薬を、道をふさいでいる瓦礫たちに設置すると、そそくさと物陰へ退避する。

 ずむっ……!! と、くぐもった音が漏れ出て、そのあとガラガラと瓦礫が崩れる音が聞こえてきた。

 フレンダが確認してみると、彼女の行く手を阻んでいた瓦礫の山が今の一撃であっさりと崩れ去っていた。にんまりと満足げな笑みを浮かべると、フレンダは崩れた瓦礫の山を越えて『隠れた名店』へと向かうが──すぐにその歩みは止まることとなる。

 

 

「え、こんなのあり……!?」

 

 

 見るとそこには……陥没した大穴があった。

 おそらく、崩落の一件で天井が崩れただけでなく、床の一部も崩落してしまったのだろう。

 第二二学区の全体は円筒状になっているため、『地下』といってもさらなる下があるのであった。

 

 

「くっ……どうする……!?」

 

 

 想定外の事態に、フレンダは思わず歯噛みする。

 フレンダの爆破は、何かを壊すことには優れている。だから先ほどのように障害物を爆破することで道を作ることについては得意だが、今回のようなケースは例外だ。

 何せ、今回の場合の障害物とは『ない』のが問題になっているのだから。大穴を爆破しようと、さらに穴が大きくなるだけである。悪くすれば自分の足元も崩れてしまうかもしれない。

 飛び越えようにも、目の前の崩落は軽く五メートル近くはある。フレンダの身体能力もかなりのものなのだが、流石に走り幅跳びで五メートルも飛べるほどの身体能力があるわけではない。

 まして、フレンダは今ローファを履いている。

 運動靴ならまだ少しは遠くまで飛べただろうが、ローファでは精々飛べたとしても三メートルがいいところだろう。仕込んであるのも、毒を塗った刃や爆薬程度。とてもじゃないが──

 

 

「…………ん?」

 

 

 そこで、フレンダは己の思考に待ったをかける。

 …………爆薬。

 足裏に仕込んだそれは、上手く使えば……なんとかなるのではないだろうか。

 爆破の衝撃を使って飛べば、それだけで通常の数倍の跳躍を生み出すことができる。

 無論、通常であれば無謀の一言だろう。常人がやれば『飛ぶ』ではなくバランスを崩して『吹っ飛ぶ』だけだろうし、最悪足が普通に吹っ飛ぶだけだ。

 だが。

 爆薬を扱う爆破のプロであるフレンダは、そんな無謀な策に常識的な勝算を見出すことができていた。

 

 

「どのみち、やらなきゃ私が麦野に殺される……! やるしか、ないって訳よ!!」

 

 

 ドバッッッ!! と。

 直後、フレンダの踵から爆裂が生じ、少女の身体が勢いよく宙に投げ出された。

 しかしフレンダは空中で上手く姿勢を制御し、五メートル近くある大穴を軽く飛び越えると、そのまま着地する。それだけでは衝撃が殺しきれずつんのめるが、そのまま速やかに前転して勢いを完全に殺すと、フレンダは悠々と起き上がった。

 

 

「……ふぅ。結局、このフレンダ様にかかればこの程度の障害なんてちょちょいのちょいって訳よ」

 

 

 障害は全て乗り越えた。

 フレンダは謎の達成感を胸に抱いたまま、悠々と『隠れた名店』へと足を踏み入れた────。

 

 

 

* * *

 

 

 

「……あるぇ? おっかしいな~?」

 

 

 で。

 無事に『隠れた名店』に到着し、予約を済ませたフレンダだったが…………約束となる一七時を少し過ぎたところで、不思議そうに首を傾げていた。

 

 麦野達が来ないのだ。

 

 一七時からと予約をしてしまったので店の人には謝って待ってもらっているものの……自分ならともかく麦野達がこうした催しで遅れるのはほぼない為、フレンダは意外に思っていた。

 こんなことなら、わざわざショートカットをしたりせず、普通に遠回りをしてもよかったかもしれない。どうせ麦野達が遅れるのであれば、自分が遅れたって何も変わらないわけだし。

 

 

「…………?」

 

 

 そう考えたところで、フレンダは自分の思考に疑問を感じた。

 何がおかしいのかは、具体的に言語化できないが……今の自分の思考に、何か根本的なズレを感じたのだ。

 そして経験上、フレンダはそれが時として致命的な危機を招くことを知っていた。だから、考える。何がズレているのか。何が致命的な危機に繋がりかねないのか。

 

 修復工事。

 

 通行止め。

 

 近道。

 

 爆破。

 

 

「…………!!」

 

 

 そこで、フレンダは気付く。

 そもそも、先んじて動いていたフレンダが時間に間に合わないのであれば……普通に向かっている麦野達もまた、通行止めに巻き込まれて約束の時間に間に合わないのは当然のことではないだろうか?

 そこに気付いて、フレンダは脱力してしまった。

 

 

「はぁ……どうせバレないならもうちょっとゆったり行けばよかったって訳よ……。結局、此処ってけっこうガラガラだから直前の予約でも問題なさそうだったし、」

 

「フレンダぁ?」

 

 

 ──と。

 そこで、声を聴くだけで底冷えするような声色の少女の声が、煤けていたフレンダの背中にかけられる。

 怒気すら孕んでいるように感じられる声に、反射的にフレンダが振り返ると──そこには、何故か怒り心頭な様子の『アイテム』のリーダー、麦野沈利の姿があった。

 

 

「む、麦野……? ど、どうしたのよ結局。なんか怒ってるみたいだけど……」

 

「どうしたもこうしたもねぇよ。()()()()()()()()()()

 

 

 突然の糾弾に、フレンダは目が点になる。

 そしてすべての種明かしをするように、麦野はフレンダにこう告げた。

 

 

「テメェ、工事現場で派手に爆薬使いやがっただろ。ショートカットのつもりだったが知らねぇが、余計なことしやがって……。お陰で騒ぎになって人混みに巻き込まれたじゃねぇか!」

 

「は? いや待って麦野、そんなはずは……確かに爆薬は音の少ないものを選んで、…………はっ!!」

 

 

 そこで、フレンダは気付く。

 確かに、瓦礫を撤去する為に使った爆薬は消音性のものを使っていた。そうしないと騒ぎになると思ったからだ。

 だが、爆破に使うつもりのなかった跳躍用の爆薬については、音の問題を全く考慮していなかった。

 そして実際に────

 

 

 ドバッッッ!! と。

 

 

 ──そう。ドバッッッ!! と、音は出ていた。

 ただでさえ数日前にテロ被害があったばかりなのだ。夕暮れ時にそんな音が出れば、騒ぎになるのは想像に難くない。そしてちょうどそのころ地下街に到達していた麦野達が人混みに巻き込まれて大変な思いをするのも、当然の帰結だった。

 ついでに、時間や爆薬の手口などから、フレンダによるものだと麦野達が悟るのも、全く無理のないことだった。

 

 

「あ、あ……」

 

 

 自業自得。

 圧倒的な因果応報の波に飲み込まれそうなフレンダは、目の前に迫る鬼神を涙目で見据え、

 

 

「ご……」

 

「ご?」

 

「ごめんなさあああ~~~~~い!!!!」

 

 

 一目散に逃げ出した。

 

 

「待てコラフレンダぁ!!!! 逃げんじゃねぇブチ殺すぞ!!!!」

 

「いやだぁ!! まだ死にたくないって訳よ~~~~!!!!」

 

 

 ──そうして、さらなる危機一髪(デンジャラス)が始まるのであった。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。