一生懸命書き溜めを作る作業。
ペース落としてもいいんだろうけど……
どうしてこうなった。
「あはは! よろしくね〜 悟っち」
「あれ? 柊さんと悟って仲良いの?」
「ぼちぼち……って感じかなぁ〜? これで私も何とかクラスで過ごしていけるよぉ」
「……無理だろ」
「は?」
「……すみません、柊さん」
「柊さん、意外と普通じゃん。俺からもよろしくね〜」
「意外と、って失礼だよ〜。まぁいっか! はぁ〜い! 深草君もよろ〜」
位置的には窓際の列の後ろから二番目を確保できた。それはいいんだ、狙い通りでハッピー、佑と扇に続いて神様ありがとう!
問題は周囲の席の奴らだ。前が佑、右斜め前が柊だ。佑はいいよ、だが柊テメェはだめだ。
クソッタレな神様さんありがとう! 是非とも今度からはやめてくれ。
「……初めて話をしますね。御心君、これからよろしくお願いします」
「……まぁ……そのなんだ、よろしく頼む」
「……お噂は聞き及んでいましたが、成る程。やはり自分の目で見て話さないと分かりませんね、人柄と言うものは」
「そういうものなのか?」
「そういうものでしょう……まぁ少なくとも噂ほどとっつきにくい人ではない事は分かります。
しかし、先程の大きな物音は頂けません。あれは霧島さんへの無礼にあたります。折角の挨拶の邪魔を……」
「い、いいんですよ! 岸城さん! あれのおかげで緊張もだいぶ解けましたから! 私、こう言う所……というか、環境というか、初めてだったので、凄い助かりましたから」
「……霧島さんが仰るのであればこれくらいにしときましょうか」
「……あぁ、すまなかった」
そう、俺の隣の席が岸城さん、岸城さんの後ろに転校生の霧島さんがいるのだ。てか俺に話してくる女子なんて、委員長か柊くらいしかいなかったのに、岸城さんめっちゃ話しかけてくるじゃん。何なの? 気があるの?
『そんな訳無いじゃない。現実見なさい、可能性はゼロよ』
わかってるわ! ちょっと動揺しただけだよ! ていうか俺、噂話ってのが気になります!
……何これ? 誰かの作為的な何かを感じざるおえない。佑すまねぇ、俺は後ろへ逃げる。
「扇、今年も同じになったな。よろしく」
「……あぁ、此方こそ……よろしく」
「互いに互いのペースで行こう……そんな話すタイプでも無いし」
「……そうか、すまないな……ありがとう、一人よりかお前といる時の方が……飽きない」
「改めてこの一年、よろしく頼む」
「……あぁ」
『……相変わらずね、この子も。この子なら、アンタと違ってすぐ仲のいい子増えそうな気がするのに』
フォンちゃん。先程から一言多いぞ。
そして何を隠そう、窓際一番後ろの席はなんと扇なのだ。佑は俺以外とも喋るだろうし、寧ろ学校では部活メンバーとかと過ごしてるからな。これで扇が居なかったら心完全に折れてたよ。
「よーし、各自移動終わったな。丁度いい、岸城、霧島の事は頼むぞ」
「はい、承りました」
「それぞれの委員などは明日決めるから今日は解散」
そう言って、各自部活動やらで学校を後にする……と言っても、大半は霧島さんへ話しかける為に残っていたのだが。
「霧島さん、この後時間があれば校内を案内致しますよ。私も部活がある身、人の事は言えませんが、先生から直々に頼まれましたので、私が請け負いましょう。
他の皆さんもそれぞれの部活へ早く行くべきです。また明日も時間割的には余裕がありますので。その時にでも交流するチャンスはあるはずですから。
それに初日で疲れてるかもしれませんから、あまり霧島さんへ押し掛けるものではありませんよ」
大半の生徒が霧島さんへ押し掛けようとした時、岸城さんよりストップが掛かる。流石のカリスマ、各生徒は残念に思いながらも、帰りの挨拶を岸城さんや霧島さんへしながら、教室を後にしようとしていた。さて、俺も帰ろっかな。どうせ残ってても何もする事ねぇし。佑は部活として……そうだな、扇でも誘って遊び行くか。
「あ、はい! よろしくお願いします!」
「では、まず最初は……」
いい感じで打ち解けているように見える二人。ただ気になったのは、霧島さんからずっと見られている様な感覚がした。理由は分からないけれど、俺は気付かない振りをして学校を後にした。
扇と飯でも食って街をぶらぶらしながら多くの神様と交流を図り、1日を終える。新学期初日からだいぶ環境が変わったと思うが、祐と扇がいるだけでなんとか乗り越えて行けそうだ。
「ただいま〜」
おかえり〜、と妹の声が聞こえてくる……が別の声も聞こえてきた。あいつもしかして……
「お、悟じゃん。遅かったけど遊んできた?」
「……また来てたのか柊」
「いいじゃん、明日からは伊織ちゃんが入学してくるしその前祝いって事で」
「この前もしてたろうが」
「あ゛ぁ? 何か文句あるのかなぁ?」
いえ何もありません……そう、勘付いてる人もいるだろうが、学校での柊は完全に猫っかぶりだ。うちの妹の伊織とは仲が良く、結構な頻度でうちに遊びに来る。ほんとこいつは他に友達が居らんのかと……ってすんません、ほんとその目で睨まないで下さい。まじ怖いっす。
『けど伊織しか遊ぶ相手居ないと考えると、睨まれても可愛いわね』
フォンちゃんの呟きに吹き出しそうになりつつ、部屋に戻る。あのままだと柊からの視線で死にそうだった。しかし妹と柊は何話してんだろうな、あそこまで意気投合するとは思わなかった。
『おかえりなさいませ』
『おかえり!』
ベッドの挨拶を始めとして、部屋にいるみんなから出迎えの挨拶をされる。いつもの事だが元気いいなぁ。
『主よ、私を使うか?』
「あーそうだな、付けといて〜」
『了解した』
今の声は俺のパソコン。簡単に言うと女の子のロボット……女の子と言ったが、普通にロボだからな? 本体のデスクトップが黒だからか全体的に黒のカラーリング、目は青色だ。ただ喜怒哀楽の表現を、目と服装……外装? の色を変えることで表しているらしく、分かりやすい性格をしてる。
そして、普段は制服から着替えてる間にパソコン自らが起動してくれている。パスワードとかも自然と入力されいつでも使用可能の状態へ……信頼してるが、してるからといってパスワードを他人に勝手に打たせるのは危険じゃないかって? ははっ、俺のプライベートなぞ無いようなものだぞ?
まぁパソコンに限らず今まで被害を被るどころか、むしろ守られてきたからな、大丈夫だ……ただなぁ……趣味とか、その……せ、性癖とか……さぁ〜。
パソコンを始めとして、多くの物が今か今かと自分を使ってくれと待ち侘びている。いや、いつもする事を先にやるからそんな使わねーよ? ハンガーはすぐに匂い嗅ぐのやめろ。せめて見えないとこでやってくれ。
さてと、やる事と言っても今日の勉強なんですけどね。パソコンが音楽のマイリストを既に準備してくれており、後は勉強用具を出すだけだが……
『早く座りなさい! 時間は有限なのよ!』
「言われなくても座るよ! せっかちだなぁ」
『ほら! 早く早く!』
『……チッ』
『あらぁ、何やら負け犬の鳴き声が聴こえてきたけど、些細な事よね〜。早くご主人様! 私に座って!』
……うむ、慣れたけれど「私に座って」って言葉を女の子から言われると色々と妄想が……
っと危ない危ない。それはそうとベッドさん舌打ちは辞めましょう? 顔付きも怖いし……
今聞こえた声の主は椅子ちゃん。こちらはベッドの正統派メイドって感じではなく、藍色と白を基調とした服装までは同じだが、下がミニスカートで銀髪のセミロング、そして中学生くらいの見た目をしてる。ん? 上記の言葉と相まって犯罪臭が増す? そんな馬鹿な。
『ふふんっ、ご主人様ー今日は椅子に座ったまま寝てもいいのよ?』
「いや、いつもベッドで寝てるじゃねぇか。それに体痛めるし」
『もー、素直じゃ無いんだから〜。あ、肩揉もうか? 疲れてない? 大丈夫?』
「あー! 勉強やらせてくれ!」
三角座りで俺のすぐ横にしゃがみ込み頬を膨らませた椅子ちゃん……可愛くても駄目なもんはだめなんだからねっ!
なお、その瞬間に妹から「いつもいつも煩い! まひろさん来てるし静かにしてて! ほんとその独り言は悪い癖だよ!」とドアを叩かれた……客観的に見てて独り言を叫んでる変人だもんなぁ……悲しくなってきた。
そして煩くて集中できないからヘッドホンを耳に当て、パソコンに繋げて音楽を聴く……が流れてこない。いや、普通に俺が操作してもいいんだけど……ってえっ! ボタンが反応しない!?
「……ねぇ、パソコンちゃん、音楽流れてねぇよ?」
『……主が私とは業務的な会話しかしてくれない』
デスクトップの上に座りながら足をぶらぶらしてるロボ娘。体が藍色に点滅している……あ゛ぁ゛〜! 今日はこいつもか!
「そんな事はないぞ、いつも俺はお前に助けられてる。動画とか見たり作業する時も頼っているし、むしろ静かにしてくれていて作業も捗るから助かってるんだ」
『……けどもう少し話してくれてもいいと思う。携帯とは特に会話してるではないか』
『え? そこで私に飛び火するわけ?』
『これは私だけが思っていることでは無い。
『ほんとそうなのですよー!! 悟くんはもっと平等に私達へ構うべきなのです!』
来やがったな、トイレットペーパー。お前、普通なら部屋に置いてねぇからな? 三ロール分置いてあるけれど、妹と姉になんでトイレットペーパーを飾ってるか質問されたんだぞ? むしろ姉には変に察せられたんだが?
トイレットペーパーで拭くとベタついてチリが付くから拭かねぇよ!? いや、その前にそんな事を誤解された挙句察せられるの超つれぇよ!? そもそもこいつらのいる部屋でそんな事できねぇよ!!
『平等に扱わないにしても、私と悟くんがこの中で初めて出会ったのですよ! ならば優遇するのは私の筈です!』
『……それはおかしい、主は私を毎日使用してくれている。そこには心に安らぎを欲していることと主の勉学への意気込みを感じる。その為に必要としてくれているのは、まさに私が大切だからでは?』
『そんな事言ったら私も毎日使ってくれているのです! ちゃんと丁寧に拭きあげているのですよ? むしろ悟くんの
『むむむ』
『あー、私も毎日使われているのねー。しかし……毎日、使われる、ってなかなかいい響きをしているとは思わない? 悟?』
……お前ら……勘弁しろやぁぁああ!!
パソコンはむむむじゃねぇよ、負けるなよ!フォンちゃん、いちいち話にノらなくていいから! 棒読みがより一層腹ただしいわ!
一番はトイレットペーパー、お前だよ! えっへんってなんだ、可愛いけどお前との出会いは最悪だわ! 毎日トイレで女の子の喘ぎ声聞かされる身にもなってみろ! 昔なんてスッキリさとかそんな事考えてたのに、今は苦痛でしかは無いわ!
しかも丁寧に拭き取る? 大切な場所? わざわざ口にするなぁ! しかも拭いてるのは俺じゃねぇかよ!
そんな口論をしているうちに周りがヒートアップし始め、いつのまにか勉強どころではなくなっていた。
俺と一部の男? 勢は頭を抑えながら騒ぎ始める神様達を見つめていた。
あぁ、早速勉強出来てねぇ。
いつもより早く甲高いベルと声に起こされ、ベッドからはからかわれる事を繰り返し、制服を着込み、早めに学校へと向かう。今日は入学式となっており、在校生は早めに待機しておくことになっている。
クラスの奴らは新入生が気になるのかその話題で持ちきりだ。
「ふふ、後輩が増えるというのはやはりいいものですね」
「……そうか?」
「私はそう思います。特に今年は私にとって妹と呼べる親戚の子が入学して来るんです」
「あぁ、それは確かにいいかもな……俺にも妹がいて、今日入学して来るんだ」
「あら! それはおめでとうございます。しかし、妹がいらしたのですね」
仲はそんなに良くないけどな、と岸城へ返答する。やはり隣の席という事もあって話す機会が恵まれていると言っていいのか……他の男子からは凄い目で見られてるが。
「岸城さんも御心くんもなんですねっ! 私も一緒に来た子が一年生なんですよ。その子も女の子なので、みんな仲良く出来ればいいですね!」
「霧島さんも? これは何かの縁なのでしょうね。もし機会があればお話ししてみたいものです」
ふふふっと二人が笑い合う。俺には眩しすぎる。まぁ確かに妹達は妹達で仲良くしてくれるといいかな。ここにたまたま三人がいるように、縁があるかもしれない。
「悟っちは日々の独り言の癖直さないと、伊織ちゃんから他人のふりされちゃうぞ〜」
『確かにそうよね。悟、気を引き締めていきなさい。家族から他人のフリされるというのは……あら? 今更だったかしら?』
本当にこいつらは……柊が俺の妹を知っているという事で、岸城達から質問されている。まぁ伊織も柊と仲良くできるんなら、岸城達と仲良くできるだろう。先輩としては頼もしい奴らだと思うし。
『少なくとも悟よりか頼もしい子達だと思うわね。そもそもその思う、ってのが噂からの判断でしょうが』
お、俺みたいな奴にも話しかけてくれるし、昨日と今話したからいい奴だと思ったんだよ!
『はいはい、そういう事にしといてあげるわ……ってそろそろ移動ね。伊織の晴れ舞台見てあげなさいな』
確かに少しずつ移動を開始していた。まぁ今日は入学式と後半のちょっとしたHRで終わりだし、楽勝だな!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」
クラスにいる誰もが岸城へ話しかける事が出来ない。俺にしか見えないだろうが、岸城の所有物である物の神様たちが、触れる事は出来ずとも岸城に気を遣ってるのが分かる。
入学式が終わった、それは良い。ただ入学式そのものが問題大有りだったんだ。
問題点はただ一つ、入学試験首席者による代表挨拶だった。ぱっと見は長い黒髪で遠目から見てもとても美人な子だったのだが……まさか挨拶からかましてくるとは。
『我の同胞となる者たち、そして先達者達よ! く、ふふふふ……なんなのあの子、面白すぎない? あれは知ってるわ。所謂厨二病って奴でしょ? 確かにあれは病気よ、ふふふ』
フォンちゃんや、俺も笑い釣られそうになるからやめろ。今の岸城を見ていても笑えるか?
そう、そんな挨拶の初っぱなからかましてきた子こそが、岸城が朝言っていた妹分だったのだ。この姉貴分からどうしてあぁなったんだよ……
『ほら、話しかけてあげなさいな? 早いうちになんとかしておかないと、ずっと隣が辛気臭いわよ。クラス全体がなんとも言えない雰囲気になってるし、佑なんか窓ガラスの反射で悟に助け求めてるじゃない』
まじかよ、ってまじだわ。あの佑が何も出来ない程なのかよ。え? まじで何かやれと?
「……岸城、とっても可愛い妹だったな」
「……」
クラス全員が行ったぁぁと思ってからのそれはダメだろとシンクロした瞬間だった。俺も言っててまずいと思った。
『まさに』『ヒューっ!』『て』『言えるくらい』『の』『美少女』『だったぜぇ!』
途切れ途切れの男性女性の声が流れる。それは俺の胸ポケットから……おい、おいおい! フォンちゃんは控えめな胸を張って胸を叩いていた。
「……御心君」
「……なんだ?」
まさに空気が死んでいた。なんて事をしてくれたんだフォンちゃん。あんな手の込んだ事までしてくれやがって。普段からあんな音声を作って持ってる奴と思われるじゃないか。
って今はそんな事考えてる場合じゃない。目の前の壊れかけの人形のような同級生をどうにかしなければ。
かた……ぐるりと、正に人形のような動きで此方を見据えてくる岸城。金髪とか瞳の色が相まってめっちゃ人形っぽくて怖いんだが!? しかも目に光がない。
「……御心くん」
「……どうした?」
『心配しなくても』『大丈夫』『さぁ!』
おい、火を油に注ぐな。
『っ! ……あの子は……あの子はあんな子じゃ無いんですよぉ!』
時期生徒会長候補のガチ泣きが炸裂した。