神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜   作:相楽 弥

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すいません、少々雑な仕上がりになっています。


#21 白色の死神

街を出て小一時間が経過した所で、馬車の揺れが治まった。

 どうやらギルド直営の野営場(キャンプ)に到着したらしい。

 

 俺達は御者を担当してくれた職員に礼を言うと、ぞろぞろと馬車から森へと降り立った。

 ここから目と鼻の先に、フロウラの森深部への入口が存在する。

 

「......中部よりも空気がずっと澄んでるな」

 

「そうですね......」

 

 たまに森林などにハイキングへ行くと、「ここは空気が美味いなぁ」と言っている人を見掛けるが、多分こういう事を言うんだと思う。

 

「ヒロトくん、エストくん。 向こうでギルドの職員が物品を配っているようだし、取り敢えず行ってみようか」

 

「そうだな」

 

 エイリック達に連れられて、野営場のロッジ前に出来ている行列に並ぶ。

 どうやらこれから深部に行く俺達に様々な物品を無償で貸し出してくれるらしい。

 

「のおジャド。 必要なのは消臭ポーションとなんじゃったか」

 

「......“バインド”用のロープの予備だ。 他は揃っている」

 

「おお、そうじゃったなぁ」

 

 ジャドさんとヤビさんの二人が前で物品について相談をしている。

 ......はて、俺達は何が必要なんだろうか。

 

 俺は隣に居るエストの耳に顔を寄せ、小さな声で聞いてみる。

 

「エスト。 物品って何が要るんだ?」

 

「取り敢えず消臭ポーションは必須じゃないですか? あとは......あれ、何が要るんでしょう?」

 

 と、そんな俺達を見かねたのかエイリックが教えてくれた。

 

「君達なら消臭ポーションと魔力回復薬(マナポーション)が必要なんじゃないかな」

 

「お、魔力回復薬なんてものがあるのか」

 

 魔力回復薬。

 その名の通り服用すると魔力を回復してくれる薬品だ。

 治療薬(キュアポーション)と同様、液体薬品(ポーション)の中では最もオーソドックスな部類だ。

 

 基本的に冒険者達は魔法を行使する時に魔力を消費する。

 そして、消費した魔力はある程度時間が経過するまで回復する事はまず無い。

 

「深部での戦闘は混戦になるだろうし、すぐに回復できるように持っていた方が良いと思うよ」

 

「なるほど......。 ありがとうございますっ、エイリックさん」

 

「お役に立てて何よりだよ」とエイリックは笑うと、ジャドさん達の所へと戻った。

 

(あれ、そういえば俺っていつも魔力がすぐ回復してるような......)

 

 俺には必要なんだろうか、魔力回復薬。

 ......まあ、一人一つまで貰えるようだし、貰える物は貰っておこう。

 

 

 

 

 

「冒険者諸君! これより深部へと足を踏み入れる訳だが、知っての通り魔物の強さはだんちがいになる!」

 

 数分後、今回の調査隊の陣頭指揮をとる騎士。

 ザウロさんが冒険者達に対する最後の説明と激励を行っていた。

 

「我々フロウラ連合調査隊の目的は“白獣”の調査だ! 一人でも勝手な行動を取れば、それが隊員全員の命に関わると思え!!」

 

 彼のその言葉に、誰かがゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。

 ピリピリと緊張が辺りを満たす。

 

「さて、オルグから貴殿等宛に言伝がある。 ──総員、生きて街へ帰って来い──!」

 

「「「うぉぉおおおおお!!!」」」

 

 オルグからの一言だけの言伝が読み上げられた瞬間に、冒険者達から大きな雄叫びの嵐が起こった。

 

 それだけ、オルグが信頼されているということなのだろうか。

 

 さながら有名アーティストのライブのような熱気に包まれて少々気圧された俺だったが、隣でエストが頑張って「おぉー!!」と大声をあげていたので、思わず笑ってしまった。

 

 

──────────

 

 

 深部へと足を踏み入れると、何処か今までの森とは違う空気に包まれた。

 

 音を立てずに慎重に先へと進む俺達は、魔物の攻撃に即座に対応できるように先程から神経を張り巡らせている。

 

 ザウロさんの“存在希釈”はここぞと言う時にしか使えないので、暫くはこうしてゆっくりと進まなければならない。

 

(......気配は感じるけど、こっちに気付いてないみたいだな。 数は......そこまで多くないか)

 

 俺は初めてのコボルトとの戦闘で身に付けた技能である“熱源感知”を使用しながら、周りの気配を探っている。

 この技能は半径数百メートル内に存在する生物の熱を感じ取って、大まかな位置を把握する事ができるようになるという物。

 

 あの時の戦闘で突発的に目覚めたらしい。

 

 と、前を歩く冒険者がふとこんな事を呟いた。

 

「......このまま、何事もなく調査が済めば良いんだが......」

 

 思わず息を呑んだ。

 ......間違いなくフラグになる発言じゃないか、と。

 

 慌てて“熱源感知”をフル稼働させて周りの魔物達の動きを探ってみる。

 ......良かった、どうやらまだ動いて居ないらしい。

 

(まぁ、よくよく考えてみればフラグなんてそうそう回収されるものじゃないし......ちょっと呟いたからって起きる訳ないか)

 

 と、その時だった。

 

 パキッ、と前方から枝を踏み折る音が聞こえた。

 それと同時に周りの魔物達の意識がこちらへと向けられる。

 

 それを察知したのか、最前線に居るザウロさんから冒険者達に指揮が飛んだ。

 

「総員、臨戦態勢! 魔物が来るぞ──!!」

 

 その言葉を合図にするかのように、周りの気配が一斉にこちらへと動き出した。

 

「ひ、ヒロトさんっ」

 

「落ち着けエスト。 あの作戦を思い出すんだ!」

 

 腰から剣を引き抜き、どの叢から魔物が飛び出して来ても大丈夫なように構える。

 

 エストも腰のワンドを引き抜いて、俺の後方へ構えた。

 

「──来るっ!」

 

 誰かがそう叫んだ瞬間、隊列の左右から角の生えたオオカミ達が飛び出して来た! 

 

一角狼(ホーンウルフ)だ!! 突進に気をつけろっ!!」

 

 大盾で一角狼の突撃を防いだ騎士の一人がそう助言する。

 激突の瞬間、金属が削られる様な嫌な音が響き渡りその威力を俺達に教えてくれる。

 

(狙うのは......!)

 

 飛び出してきた敵の初撃を横っ飛びに躱すと、既に冒険者達と交戦を始めた個体の方へと向き直る。

 

「風の刃よ、裁断せよ! “ウィンド・カッター”!」

 

 瞬間、俺の右手に発生した方陣から三発の風刃が放たれ、今まさに冒険者へと襲いかかろうとする一角狼の胴を寸断し、絶命させた。

 

 命中した事を確認すると、すぐさま次の標的に向かって駆け出した。

 

「“アイス・バレット”!! “アイス・バレット”!!」

 

 その背後では、エストが氷弾を連射して敵達の攻撃を阻止し、他の冒険者達の援護をしている。

 その正確な狙いで胴を撃ち、空中でのバランスを崩させているのだ。

 

「“ウィンド・カッター”!!」

 

「すまねぇ! 助かった!」

 

 一匹を斬り伏せた冒険者の背後から飛びかかる一角狼を俺も負けじと裁断すると、今度は発動させている魔方陣を“風”から“闇”に切り替える。

 

「縛り付けよ、呪われの縛鎖! “カースド・チェイン”!!」

 

 発動と共に生み出された魔力の鎖は突撃する一角狼達の身体へとまとわりつくと、その速度を完全に殺して静止させた。

 逃れようともがけばもがく程に絡みつくその鎖によって動きを止められた彼等は、他の冒険者達の手によって次々と殺されていく。

 

 俺達が決めた“生き残る為の作戦”は十分に成果を上げていた。

 

 と、背後から急接近してくる気配に気が付き即座に後ろへと振り返ろうとして──

 

「しまっ──」

 

 足を滑らせた俺へと一直線に突撃してきた敵の角は、俺に届くあと少しの所で側面からの衝撃波に吹き飛ばされた。

 

「はっ......無事か、ヒロト!」

 

「危なかった......助かったよ、ベック!」

 

 咄嗟にベックが放った“衝槌”によって命拾いした。

 ......油断は禁物だな。

 

 ベックは両手に装着したガントレットをガツンと打ち合わせると、また他の冒険者の援護へと向かっていった。

 

「......よしっ! まだまだ行くぞっ!!」

 

 そして俺もまた、剣を握り直して駆け出した──! 

 

 

──────────

 

 

「はぁ......はぁ......」

 

 息も絶え絶えになった冒険者達が各々楽な姿勢で体力の回復を図っている。

 

 襲いかかってきた魔物を殲滅した俺達は、ザウロさんが発動させた“存在希釈”の効果範囲内で傷や魔力の回復を行っていた。

 

 幸い大きな怪我をしたものは居なかったようで、俺も回復魔法が使える者として負傷した冒険者達の治療にあたっていた。

 

「“ヒール”! ......よし、これで大丈夫だろ」

 

「ありがとう、助かったよ」

 

 一角狼の突撃で腕を負傷した冒険者を治療すると、他にまだ負傷した者が居ないかどうか探し始める。

 

 正面切っての戦闘を避けていた俺達四人は怪我を負わずに済んだ。

 それだけこの作戦が効果的に働いたということだろう。

 実際、多くの冒険者の援護にも成功した。

 

「ヒロトさん、魔力の方は大丈夫ですか?」

 

 隣に付いてきていたエストが魔力回復薬を手に俺へと話し掛けてくる。

 

「まだまだ魔力には余裕がある。 エストの方こそ、大丈夫なのか?」

 

「私もまだ大丈夫そうですっ。 ......けど、深部の魔物ともなれば本当に強いですね......」

 

 確かに、あの一角狼と呼ばれていた魔物は、今まで相手にしてきたコボルトやゴブリンなどの比較的弱い魔物とは比べ物にならないレベルの強さだった。

 

 あの角の一撃で装備していた盾を貫かれた前衛の冒険者も居た程だ。

 鎧を着た冒険者ならまだしも、今の俺の様な軽装備でまともにあの一撃を喰らおうものなら、まず命は無いと考えた方が良さそうだ。

 

「とにかく気を引き締めていこう。 ......本当に、油断したら死ぬ......」

 

「そう......ですね」

 

 そして、俺達も少し休息をとろうと樹木を背に座りこもうとしたその時だった。

 

(......ッ!? な、何だこの大きな気配は!)

 

 戦闘後にもずっと発動させていた“熱源感知”に、先程の一角オオカミの気配の数倍の大きさをした何かが引っかかった。

 

 他の冒険者達はまだ気付いていない。

 青ざめる俺の顔を見て、エストが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

 

「皆!! 今すぐここから逃げるぞ!! 何かヤバいのがこっちに向かって走ってきてるんだ!! 

 

 突然大声を上げた俺へと視線が集まる。

 そして、その言葉を聞いた他の冒険者が“熱源感知”を発動させたのか、急に青ざめると

 

「に、逃げるぞ!! この気配は多分......!」

 

 俺と同様、焦りを滲ませた声色で他の冒険者達に訴えかける。

 流石に異変に気が付いたのか、休息をとっていた騎士達も気配がする方向へ向き直って臨戦態勢に入る。

 

「キリ──」

 

 そしてザウロさんが何かを俺に伝えようと叫んだ瞬間。

 

「ガルルァァ!!!!」

 

 骨身に響く程の咆哮(ほうこう)と共に、目の前の木々を薙ぎ倒してソレは現れた。

 

「......ッ!?」

 

 思わず体が竦む。

 ......逃げようと思っても、体の方が動いてくれなかった。

 

「総員、撤退せよ!! 一心に“野営場”を目指せ!!!」

 

 白く透き通るような体毛に覆われた巨躯の獣。

 “白獣”が、その凶悪な爪を冒険者達に振りかざした───! 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
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