神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜   作:相楽 弥

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#22 最強のステータス持ち

 フロウラ連合調査隊は、壊滅状態へと追い込まれていた。

 

「ぐぁぁ......!!」

 

 突然現れた大きな魔物、“白獣(はくじゅう)”の乱入によって、調査隊メンバー達は次々とその命を散らしていった。

 

 そして遂には──

 

「エルダ!!」

 

「ザ、ウロ......ごふっ......」

 

 騎士の一人が“白獣”が放った爪の斬撃によって鎧ごと体を引き裂かれ、一瞬空を舞ったかと思えば次の瞬間にはドシャリと生々しい音を立てて地へ落ちた。

 

「“テレポート”! “テレポート”! ......ダメだ、救出が間に合わないぞ!!」

 

 先程から俺も“テレポート”を連続で行使し、逃げ惑う冒険者達をリドルトの街へと転送しているが、あまりにバラバラになって逃げているのでまとめて転送することが出来ずにいた。

 

 と、一人の騎士を(ほふ)った“白獣”はどうやら魔力を行使している俺の方に狙いを付けたのか、地を一蹴りして一気に距離を詰めてきた。

 

「ヒロトさ──」

 

「“テレポート”!!」

 

 俺は咄嗟に隣を走っていたエストを突き飛ばすと同時に転送し、“白獣”が斬撃を放つ前に方陣を高速展開、発動させて、防御に備える。

 

「グルァァ!!」

 

「聖なる防壁よ、反射せよ! “ウォール・リフレクト”──!!」

 

 その一瞬の後に放たれた一撃を、光の障壁が威力そのままに反射。

 

 相殺には成功した。

 

 だが、衝撃波で大きく吹き飛ばされる。

 

 剣を突き立てて体勢を整え、敵を見やる。

 

 どうやらあちらも反動でのけ反ったらしい。

 

 俺はここから先の作戦をどうするべきか、頭の中で考えを張り巡らせる。

 やがて、一つの答えに至った。

 

(......もう、これしかないか)

 

 当初予定していた“テレポート”による逃亡が完全に遂行できていない今、残された手段はただ一つ。

 

 唯一離脱手段がある俺が“白獣”を他の冒険者から引き離し、その上で自身に“テレポート”を発動させて街へと逃げ帰る方法だ。

 

 それまで俺が“白獣”の攻撃を一身に引き受ける必要があるものの、逆にそれ以上の被害が出ないことを考えればそれが最も合理的な手段であることに違いない。

 

「キリシマ殿! 無事か!」

 

「俺なら大丈夫です! それよりも、他の冒険者を頼みます!」

 

 そう言って、今度は俺の方から“白獣”へと走り出す。

 今度は右手に握りこんだ剣に全神経を集中させ、最大威力で斬撃を繰り出せるように。

 

「ガルルッ!」

 

 それを見た奴もまた、俺を目掛けて一直線に駆け出す。

 

「──はっ!」

 

 またも振り下ろされた大きな腕。

 

 思い切り振り抜いた剣の一閃(いっせん)で何とか薙ぎ払うことに成功した......のだが。

 

「ガァッ!」

 

「ぐっ......!!」

 

 突撃の勢いそのままに突進。

 

 無防備になった俺の体を、衝撃が襲う。

 

 若干の痛みを感じながらも、体勢を何とか整えて着地。

 

 魔法の詠唱を開始し、次の攻撃へと備える。

 

 思いの外、俺は戦えていた。

 

「本当にすまない! ......行くぞ、皆っ!」

 

 ザウロさんは残っている騎士団員に“存在希釈”を付与すると、逃げ遅れた冒険者を引連れ、負傷した冒険者達を回収しながら野営場の方へと走って行った。

 

 “白獣”は先程から低く唸り、こちらを威嚇している。

 奴との距離は数十メートル程。

 

 だが、ゆうに三メートルを越えているであろう体躯を持つ“白獣”にとっては、さほど遠くはないだろう。

 

 一蹴りで詰められる距離だ。

 

(......さあ、ここからが勝負所だ──!!)

 

 俺は弾むように地を蹴って駆け出す。

 

 その背後には既に発動させた方陣を背負っている。

 

「ガルァッ!!」

 

 俺の動きを合図に奴もまたこちらへと走り出す。

 

 またも繰り出される爪の斬撃。

 

 それらをすんでの所で横飛びに回避、すぐさま魔法を行使する。

 

「“ライトニング・ボウ”!!」

 

 叫ばれた名と共に“白獣”の頭上に魔法陣が出現。

 

 それに気が付き、奴は回避しようとするが──

 

「───!」

 

 連続する爆発音と共に、降り注ぐ光の雨が直撃した。

 

 巻き上がる砂埃。

 

 俺は後ろに飛び退き、追撃の準備を開始する。

 

(奴が動き出す前に畳み掛ける──!!)

 

「“フレイム・ジャベリン”ッ!!」

 

 間髪付けず、轟々(ごうごう)と燃える緋色の槍を突撃させる。

 

 あの時エストが放ったのは二発。

 しかし、俺は何十発もの槍を複数展開させた方陣から射出する。

 

 響く爆音。

 

 揺れる大地。

 

 俺は更に追撃をかけるべく、高く跳躍する。

 

 と、その時だった。

 

「──なっ!?」

 

 砂煙を切り裂き、数発の鋭い雷撃が俺へと飛来した。

 

 すぐさま“ウォール・リフレクト”を発動、雷撃を反射する。

 

 しかし、反射しきれなかった一発が俺の耳の横を風切り音と共にすり抜けていった。

 

(今のは......魔法......!!)

 

 煙が晴れると、更に驚くべき光景が広がっていた。

 

「う、嘘だろ、おい......!」

 

 無数に空中に浮遊する障壁。

 それらは全て、“白獣”が発動させた魔力結界だった。

 

 つまり、今までの攻撃を避けなかったのは“回避できなかった”からではなく、“回避せずとも防御出来た”からという事だ。

 

「グルル......」

 

(......でも、流石に全部防がれた訳じゃないらしいな)

 

 白い毛に所々赤黒いシミが出来ている。

 ......微々たる物ではあるが。

 

 俺はもう一度攻勢を仕掛けるために大きく後ろへ右足を引く。

 

 だが、そう同じでは喰らってくれないらしい。

 

「ガッ──!!」

 

 大きく開かれた顎門(あぎと)からまたも雷撃が放たれる。

 

「ちっ──」

 

 先程よりも大きく、そして速い雷撃。

 

 俺は“白獣”の周りを駆ける様に回避していく。

 

 それに対応するように、雷撃の方向を変えていく“白獣”。

 

 逃げる俺の背後からは、直撃した木々が炸裂音と共に砕け散る音が聞こえてくる。

 

「“ウォール・リフレクト”ッ!」

 

 完成した反射障壁を盾に、敵の懐へと方向を変える。

 

 弾き返した雷撃が“白獣”の目前に着弾。

 

 大きく砂埃を巻き上げ、俺の姿を隠す。

 

(何でもいい......奴にダメージを......!)

 

 七発目の雷撃。

 障壁が砕け散り、発生した爆風が煙を晴らす。

 

 それを狙ったのか、敵の攻撃が正面へと繰り出される。

 

 ......しかし、そこに俺の姿は無い。

 

「上だっ! 化け猫───ッ!!」

 

 完全に(きょ)を衝いた一撃。

 

 腰から引き抜いた剣を、力任せに振り抜く! 

 

 刹那、肉を切り裂く感覚と共に血飛沫(ちしぶき)が盛大に飛び散った。

 

「───ッッ!」

 

 形容しがたい悲鳴を上げ、痛みにのたうち回る“白獣”。

 俺が切り裂いたのは右眼だった。

 

「もう、一発ッ!」

 

 返す斬撃でもう一つの目玉を狙う。

 

 が、素早く振り下ろされた腕に阻まれた。

 

 飛び退きざまに数発の“フレイム・ジャベリン”を放つも、その腕に張り巡らされた魔力障壁に防がれてしまった。

 

(攻撃は、止めない──!!)

 

 (ようや)く敵の余裕が崩れ始めた。

 

「“アイス・バレット”!!」

 

 小さい氷弾を連射し、左腕を防御に使わせ続ける。

 

 その隙に突撃。

 

 地に爪を立てている左腕を切り裂き離脱すると、周りの木々を蹴って更に追撃を繰り返った。

 

 そのままピンボールの要領で続け様に放ち続ける。

 

 一撃、二撃、三撃......! 

 

「はっ──!!」

 

 最後の一閃。

 それは“白獣”の尾を切り落とした。

 

 肌がビリビリとする敵の咆哮(ほうこう)

 

 もはや、“白獣”に余裕など存在しなかった。

 

「ガァァァ────ッ!!」

 

「のわっ......!」

 

 振り上げた両腕を大地へと叩きつけて、衝撃波を放つ。

 

 それに巻き込まれ、空中に居た俺は大きく吹き飛ばされた。

 

「グルルァ──!」

 

「がはっ──!」

 

 さらに追撃。

 

 高速で繰り出された突進を喰らい、木々をへし折りながら突き飛ばされる。

 

 しかし、逆手に握り直した剣で空いた左眼を深く突き刺す。

 

 そのまま(えぐ)り取るように回転させると、“白獣”は大きく後ろへ飛び退いた。

 

(視力を殺した! 今なら“テレポート”で──)

 

 だが後ろへと飛び退きながら、転移しようとしてハタと思った。

 

(......このままコイツを野放しにしておいて良いのだろうか)

 

 今ならきっと、逃げることは可能だ。

 だが、それでは根本的な解決にはならない。

 

 それに、今与えた傷も討伐の騎士団が到着するまでに治ってしまう可能性もある。

 

 俺は後退しようとする足を止めると、もう一度“白獣”に向かって駆け出す。

 

「舐めるなよっ! 俺は()()()()()()()()()()だ!!」

 

 瞬間、俺と敵の位置がほぼゼロに縮む。

 

 と、“白獣”は目が見えていない筈なのに正確に俺が振るう斬撃を腕で防御した。

 

 と、そこである事を思い出した。

 それはまだ俺達が冒険者になってすぐの頃。

 

『獣系の魔物は視覚よりも嗅覚が鋭い』

 

(コイツ、鼻だけで俺の位置を探ってやがるのか!)

 

 振り下ろされる腕を剣で薙ぎ払い、一旦距離を取る。

 

 そしてもう一つ思い出した。

 

『獣系の魔物は匂いの強い物でおびき寄せる』

 

 俺の着用している服には一角狼(ホーンウルフ)や“白獣”の返り血がべっとりと付着している。

 

(これだッ!!)

 

 俺は咄嗟にそれらを脱ぎ捨て、最も血が付着していた篭手(こて)を片手に敵へと突撃する。

 

 “白獣”も又、俺を目掛けて突進を開始した。

 

(チャンスは一度だけ......確実に、決める!)

 

 迫る敵。

 

 俺は手に持った篭手を自身の頭上へ放り投げる。

 

 それを追って、“白獣”は大きく跳躍した! 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 そして繰り出した縦繋ぎの一撃。

 

 それは美しい放物線を描きながら、無防備になった敵の腹を深く切り裂いた。

 

 だが、まだ攻撃は終わらない。

 

「“(いなな)け、神罰の雷よ! その威を以て突き穿て──ライトニング・ディヴァイン!! ”」

 

 俺は両手を切り裂いた“白獣”の腹へ向け、最大級の攻撃魔法を放った──




ここまで読んでいただきありがとうございました。
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