神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜   作:相楽 弥

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第2章 王都への旅路
#26 プアブ村再び


 リドルトのを旅立ってから小一時間。

 

 もう街の影は遠く、見えなくなった。

 

(……少し寂しい気がする。 これがホームシックってやつか)

 

 積荷に背を預け、馬車を操舵するエストを眺めながらふと思う。

 少しの間だけとはいえ、あの街ではとても濃い体験をした。

 

 異世界へとやってきた最初の日。

 初めて食べる食事に、初めての仲間。

 気のいい宿の主人や、活気に溢れる街の人々。

 

 瞼を閉じれば、彼等の楽しげな笑顔が簡単に思い起こされる。

 

 知らず知らずの内に、あの街は俺にとっての故郷になっていたのだろう。

 

「……? ヒロトさん、どうしたんですか?」

 

 ふと後ろを振り返ったエストが俺を見て少し不思議な顔をする。

 

「え? ……ちょっとだけ、懐かしい気分になってたんだ」

 

「もしかして……リドルトの皆のことですか? ……実は私も、少し寂しくなってました」

 

 そういうとエストは少し気恥しそうに、にへらと笑う。

 けれども初めて会った時のような自信なさげな感じじゃなくて、どこか楽しそうでもある。

 

 王都への旅路。

 これから約1週間程、馬車に揺られて旅をすることになるのだ。

 その旅路の途中にどんな出会いがあるのだろうか。

 

 良い出会いも悪い出会いも、きっとこの先待っている。

 

「楽しみだな、これからの旅が」

 

「はいっ!」

 

 まだ見ぬ出会いに思いを馳せて、俺達2人を乗せた馬車は王都への道をゆっくりと進んでいった。

 

 ───────────────────────────────────

 

「そういえば、このままこの道を進むと途中でプアブ村の近くを通りますねぇ」

 

 しばらく話をしながら、のんびりと馬車を進めていた俺たちだったが、不意にエストがそんなことを言った。

 

「イリアとリリィ、元気にしてるかな」

 

 あの後、一度彼女たちから手紙が届いたことがあった。

 

 手紙には助けてくれてありがとう、という2人のメッセージとプアブ村と2人の近況が書かれていた。

 

 どうやらリリィはあの後すっかり体力も取り戻し、今では家事や畑仕事のお手伝いをしているみたいで、イリアも傭兵家業の傍らそれを手伝ったりしているみたいだ。

 

 手紙の末尾にはまた機会があったら会いに来て欲しい、と添えられていた。

 

「折角だし、寄っていくか? 別に急いでる訳でもないしさ」

 

「ホントですかっ!」

 

 俺がそう提案すると、彼女はぐいっとこっちを振り返り目をキラキラと輝かせる。

 ……よほど行きたかったらしい。

 

「よしっ、それじゃあプアブ村に向かうか!」

 

 ───────────────────────────────────

 

「久しぶり……って訳でもないけど、ちょっと懐かしい気分になるな」

 

 村の入口近く、ボロボロになったゲートを潜り抜けかろうじて舗装されている通りを進む。

 エストは馬車は手頃な場所へ置きに行ってくれている。

 

 村を少し進むと、なにか違和感を感じた。

 

(村の人の姿が……無いぞ)

 

 前に来た時には畑仕事に精を出す農民の人々の姿をよく見かけたのだが、どういう訳か今は人一人見つけられない。

 ちょうど昼時というのもあって皆昼食をとって休憩でもしているかと思ったが、それにしても静かすぎる。

 

 更に進むと、その違和感は確信へと変わった。

 

「道がボコボコになってる! 畑も荒らされてるぞ……!?」

 

 元々この村の道のほとんどはボコボコの未舗装道ばかりだ。

 だが、明らかに破壊の跡がある。

 

 この道を馬車かなにかが凄いスピードで通っていったような、そんな跡が残されている。

 畑も育った作物が根こそぎ無くなっており、丁寧に作られた畝も踏み荒らされたのか、ところどころ凹んでいる。

 

(2人が危険だっ、急がないとっ!!!)

 

 ───────────────────────────────────

 

 村の奥、長老の家がある辺りにリリィの家はある。

 

 俺は全速力で村の中を駆けると、一目散にリリィの家へと向かう。

 

 と、何かが"熱源感知"に引っかかった。

 

(左……近いっ!)

 

 瞬間、感知のあった方向から矢が飛来する。

 俺がそれを躱すと、反応が森の方へと離れていく。

 

「逃がすかッ! "ギア・アクセル"ッ!!!」

 

 魔法で敏捷力を強化、一気に差を詰める! 

 

「嘘だろッ!? クソッ!」

 

 まさかこんなに一瞬で距離を詰められるとは思っていなかったのか、敵は焦りの交じった声で悪態を付いている。

 黒い装束に身を包んでおり顔はよく見えないが、この際そんなことはどうでもいい。

 

「ちょっと痛いが我慢しなッ! "ナムネス"ッ!!!」

 

「あがッ……!!!」

 

 俺が魔法を唱えた瞬間、敵の周りを薄明かりが包んだかと思えばすぐに悲鳴をあげてその場に倒れ込む。

 

 "ナムネス"。

 闇属性の妨害魔法で、対象を麻痺させて体の自由を奪う魔法だ。

 この旅に出る前に実践的な魔法をいくつかエストに習っておいて良かった。

 早速役に立ったぞ。

 

「か、体が動かねェ……!!!」

 

 俺は目の前で倒れている男の顔を確認しようと手を伸ばす。

 と、その時だった。

 

(更に反応が……!!! 森の中かッ!!!)

 

 "熱源感知"に更に1つ反応が引っかかった。

 と同時に森の木々の影から詠唱が聞こえてくる。

 

「"凍てつく氷刃よ、その威を以て突き穿てッ───フロストフルーレッ!!! "」

 

 瞬間、鋭い氷の刃が俺を目掛けて飛来する。

 

「"ウォールリフレクト"ッ!!!」

 

 しかしその氷刃は俺に突き刺さることはなく、逆に反射されて姿の見えない敵へと襲いかかる。

 

「うぎゃあッ!!!」

 

 なにかが突き刺さるような音の後に痛々しい悲鳴が聞こえてきた。

 

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