神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜   作:相楽 弥

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#28 それぞれの夜

「そんじゃあ、改めて自己紹介を…… 俺ァ、風狼傭兵団の団員が1人、ガイゾースッ!」

 

「同じく風狼傭兵団のノルドッ! ……これから短い間ですが、よろしくお願いしやす、兄貴ッ!」

 

 これから一緒に戦う仲間ということもあって、お互いに自己紹介をすることにした。

 他の4人は襲撃してきた賊の行方を探っているらしく、現在村にいるのはこの2人とイリアだけだったらしい。

 

 ガイゾーとノルド。

 傍から見れば賊そのものな見た目の彼らだが、これでも傭兵団の中ではかなり腕の立つ方らしい。

 ……というか、いつまにか兄貴になってるぞ、俺。

 

 どう考えたって、この人らの方が俺より年上だろ。

 

「エスト嬢も、これからァよろしくお願いしますッ!」

 

「ッ!? は、はいぃッ!」

 

 エストは彼らの圧に押されて圧に押されてビビってしまっている。

 ……これから大丈夫だろうか。

 

 少し先行きが不安ではあるが……まあ、大丈夫だろう。

 

「ヒロトー! エストー! ちょっとこっちに来てくれないかー?」

 

 家の外からイリアが呼んでいる。

 相談したいこともあるし、向かってみよう。

 

 ───────────────────────────────────

 

「あっ! ヒロトお兄ちゃーんっ!!」

 

 外へ出ると、小柄な少女が懐に飛び込んできた。

 受け止めてやると、こっちを見上げてニッコリと笑う。

 

「リリィかい? 元気になったんだなぁ、見違えたよ!」

 

 あの時の痩せこけた姿の面影は全くない。

 年相応の快活とした姿の少女は、"リザレクション"で命を救ったリリィだった。

 

「良かったですねっ、もうすっかり元気そうで」

 

 そう言って嬉しそうに笑う、エスト。

 そんな彼女をリリィは見つけると、俺の懐を飛び出して抱き着いた。

 

「エストお姉ちゃんも、元気そうだねっ!」

 

「あわわっ、お姉ちゃんだなんて……えへへ〜」

 

 あらら、完全に堕とされたな。

 頬が緩んですごいことになってるぞ。

 

「リリィのやつ、ずっと2人に会いたがってたんだ。 ……良かったな、リリィ」

 

「うんっ!」

 

 と、そこへリリィのご両親がやってきた。

 

「お久しぶりです、キリシマ様。 ……あの時は本当にありがとうございました」

 

 そう言って深々と頭を下げる2人に慌てて頭をあげるように伝えると、ある提案をしてきてくれた。

 

「お2人がこの村のために戦ってくださるとお聞きして、何かお手伝いが出来ないかと考えておりましたが……どうでしょう、この村におられる間は私共の家に泊まられては?」

 

 なんと、願ってもない提案だ。

 

「ありがとうございます! ……あー、でも……」

 

 とても嬉しい提案であるのは間違いないが、一つだけ問題がある。

 

「女の子3人と、同じ家に泊まるっていうのはちょっと……」

 

 別になにかしようというわけでは断じてない。

 ……単純に気持ちの問題、そう、気持ちの問題だ。

 

 そう自分に言い聞かせていると、リリィのお母さんが察してくれたらしい。

 

「なるほど……でしたら、エスト様だけ泊まって頂きましょうか。 ……よろしいですか?」

 

「はいっ! ……なんだか楽しみですっ」

 

 リリィが何やら残念そうなのが気になるが、この方がいいだろう。

 ……のちのち相談して、俺は長老のアビヌさんの家に泊めてもらうことにした。

 傭兵の2人も一緒だ。

 

 ───────────────────────────────────

 

「狭苦しい部屋ですが、自由に使ってください。それでは……」

 

 その夜。

 リリィの家で食事を楽しんだ俺は、傭兵の2人と一緒にアビヌさんの家へと帰ってきた。

 

 リドルトを出る時、アルバーさんが色々と食材を持たせてくれていたのが早速役に立った。

 村の皆にもお裾分けしたのだが、中には泣いて喜ぶ人も居て驚いた。

 

 ……この村の財政状況というのは思った以上に芳しくないらしい。

 

「兄貴、なにか考え事ですかい?」

 

「まあ、そんなところ……です」

 

 寝床で武器の手入れをしていたノルドさんが話しかけてきた。

 ……タメ口で良いとは言われたものの、中々難しいな。

 

 ガイゾーさんは夜間の巡回の為に外に出ている。

 夜警は2人とイリアで交代して行うらしく、俺達にもやらせて欲しいと頼んだのだが、流石にそこまでさせる訳にはと断られてしまった。

 

 まあ俺達は冒険者で、彼等は傭兵だ。

 慣れないことはあまりしない方が良いのかもしれない。

 

「にしても驚いた! 白獣がリドルトの冒険者に討伐されたって話は聞いてたんですが、まさか兄貴達がその冒険者だったとは……。 やっぱりお強いんですねぇ」

 

 ノルドさんはというと、さっきからずっと白獣の話を聞きたがっている。

 ……料理を食べている時にうっかり話してしまったのが良くなかった。

 

「まああの時は色々運が良かったから倒せたというか……って、もうこの話は良いじゃないですか! ノルドさんも巡回の交代があるんだし、早く寝ましょうよ」

 

「えーっ……まあでもそうっすね、寝られる時に寝とかねぇと後で尾を引きますし、寝やしょうか」

 

 なんだか不服そうだったが、納得してくれたらしい。

 俺達はランタンの灯を落とすと、眠りについた。

 

 ───────────────────────────────────

 

「ねぇ……ねぇ、エストお姉ちゃん」

 

「……なんですか、リリィちゃん」

 

 リリィちゃんのお母さんが作ってくれた料理をみんなで食べて、色んな話をして……。

 

 3人で一緒にお風呂にも入ったし、なんだかお泊まり会みたいで楽しかったな。

 ……勿論、今は村が盗賊達に狙われてる状況だし、そんな呑気なことは言ってられないんだけど……。

 

 なんだか歳の近い妹が2人できたみたいで、不思議な、暖かい気持ちになった。

 

「わたし、まだ眠たくないの。 ちょっとだけ、お話しようよ」

 

 そう言っておねだりするみたいに上目遣いをするリリィちゃん。

 ……うっ、私の中のお姉ちゃん魂が目覚めてしまう……! 

 

 まあ、私は一人っ子なのですが……。

 

「お話ですか? ……うーん、どんなお話をしましょうか……」

 

 リリィちゃんくらいの歳の子だとどんなお話がいいんでしょうか? 

 冒険の話を聞かせてあげようかな? 

 ……て言っても、私もヒロトさんもそんなに冒険の経験がある訳じゃないし……。

 

 と、そんな感じで話の種に悩んでいたところ、リリィちゃんが

 

「エストお姉ちゃんはヒロトお兄ちゃんのこと、好きなのー?」

 

「え」

 

 爆弾を投げこんできました。

 ……最近の子供達ってちょっと進んでるみたいです。

 

「ねぇねぇ、好きなのー?」

 

「えぇっと……うーん……そのぉ……」

 

 どうしよう……! 

 ヒロトさんは私にとって恩人で、大切な仲間で、お、お友達……なんでしょうか? 

 考えれば考えるほど分からなくなってくる……??? 

 

「私はねー、ヒロトお兄ちゃん大好きだよ! 大きくなったらお嫁さんになるの!」

 

「ええっ!? お嫁さんですかっ!?」

 

 思わず大きな声が出ちゃった。

 ……お、お嫁さんって……。

 

「それでねーっ、イリアもエストお姉ちゃんもみーんなお嫁さんになってーっ」

 

「ちょっ、ちょちょちょっと待ってっ! は、ハーレムなんですかっ!?」

 

 リリィちゃん、とんでもない野望を持っていました……!!! 

 

 ていうか、わ、私もヒロトさんのお嫁さんに……!? 

 

(こ、心の準備が……! って、別に私はそんな風に思ってるわけじゃ……)

 

 あ、あれぇ? 

 何が何だか分からなくなってきました……??? 

 

「きゅー……」

 

「エストお姉ちゃん? エストお姉ちゃーん!」

 

 ───────────────────────────────────

 

(……参りましたね。 まさかあの村に冒険者がやってくるとは……)

 

 村の外れ、切り立った崖の上。

 想定外の戦力の登場に、唇を噛む者が居た。

 

(まあ、この辺りの冒険者の腕前など知れてはいますが……一応、頭領にお伝えするべきでしょう)

 

(あれは、頭領にこそ相応しい。 ……必ず手に入れてみせる……!)

 

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