神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜 作:相楽 弥
「そんじゃあ、改めて自己紹介を…… 俺ァ、風狼傭兵団の団員が1人、ガイゾースッ!」
「同じく風狼傭兵団のノルドッ! ……これから短い間ですが、よろしくお願いしやす、兄貴ッ!」
これから一緒に戦う仲間ということもあって、お互いに自己紹介をすることにした。
他の4人は襲撃してきた賊の行方を探っているらしく、現在村にいるのはこの2人とイリアだけだったらしい。
ガイゾーとノルド。
傍から見れば賊そのものな見た目の彼らだが、これでも傭兵団の中ではかなり腕の立つ方らしい。
……というか、いつまにか兄貴になってるぞ、俺。
どう考えたって、この人らの方が俺より年上だろ。
「エスト嬢も、これからァよろしくお願いしますッ!」
「ッ!? は、はいぃッ!」
エストは彼らの圧に押されて圧に押されてビビってしまっている。
……これから大丈夫だろうか。
少し先行きが不安ではあるが……まあ、大丈夫だろう。
「ヒロトー! エストー! ちょっとこっちに来てくれないかー?」
家の外からイリアが呼んでいる。
相談したいこともあるし、向かってみよう。
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「あっ! ヒロトお兄ちゃーんっ!!」
外へ出ると、小柄な少女が懐に飛び込んできた。
受け止めてやると、こっちを見上げてニッコリと笑う。
「リリィかい? 元気になったんだなぁ、見違えたよ!」
あの時の痩せこけた姿の面影は全くない。
年相応の快活とした姿の少女は、"リザレクション"で命を救ったリリィだった。
「良かったですねっ、もうすっかり元気そうで」
そう言って嬉しそうに笑う、エスト。
そんな彼女をリリィは見つけると、俺の懐を飛び出して抱き着いた。
「エストお姉ちゃんも、元気そうだねっ!」
「あわわっ、お姉ちゃんだなんて……えへへ〜」
あらら、完全に堕とされたな。
頬が緩んですごいことになってるぞ。
「リリィのやつ、ずっと2人に会いたがってたんだ。 ……良かったな、リリィ」
「うんっ!」
と、そこへリリィのご両親がやってきた。
「お久しぶりです、キリシマ様。 ……あの時は本当にありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げる2人に慌てて頭をあげるように伝えると、ある提案をしてきてくれた。
「お2人がこの村のために戦ってくださるとお聞きして、何かお手伝いが出来ないかと考えておりましたが……どうでしょう、この村におられる間は私共の家に泊まられては?」
なんと、願ってもない提案だ。
「ありがとうございます! ……あー、でも……」
とても嬉しい提案であるのは間違いないが、一つだけ問題がある。
「女の子3人と、同じ家に泊まるっていうのはちょっと……」
別になにかしようというわけでは断じてない。
……単純に気持ちの問題、そう、気持ちの問題だ。
そう自分に言い聞かせていると、リリィのお母さんが察してくれたらしい。
「なるほど……でしたら、エスト様だけ泊まって頂きましょうか。 ……よろしいですか?」
「はいっ! ……なんだか楽しみですっ」
リリィが何やら残念そうなのが気になるが、この方がいいだろう。
……のちのち相談して、俺は長老のアビヌさんの家に泊めてもらうことにした。
傭兵の2人も一緒だ。
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「狭苦しい部屋ですが、自由に使ってください。それでは……」
その夜。
リリィの家で食事を楽しんだ俺は、傭兵の2人と一緒にアビヌさんの家へと帰ってきた。
リドルトを出る時、アルバーさんが色々と食材を持たせてくれていたのが早速役に立った。
村の皆にもお裾分けしたのだが、中には泣いて喜ぶ人も居て驚いた。
……この村の財政状況というのは思った以上に芳しくないらしい。
「兄貴、なにか考え事ですかい?」
「まあ、そんなところ……です」
寝床で武器の手入れをしていたノルドさんが話しかけてきた。
……タメ口で良いとは言われたものの、中々難しいな。
ガイゾーさんは夜間の巡回の為に外に出ている。
夜警は2人とイリアで交代して行うらしく、俺達にもやらせて欲しいと頼んだのだが、流石にそこまでさせる訳にはと断られてしまった。
まあ俺達は冒険者で、彼等は傭兵だ。
慣れないことはあまりしない方が良いのかもしれない。
「にしても驚いた! 白獣がリドルトの冒険者に討伐されたって話は聞いてたんですが、まさか兄貴達がその冒険者だったとは……。 やっぱりお強いんですねぇ」
ノルドさんはというと、さっきからずっと白獣の話を聞きたがっている。
……料理を食べている時にうっかり話してしまったのが良くなかった。
「まああの時は色々運が良かったから倒せたというか……って、もうこの話は良いじゃないですか! ノルドさんも巡回の交代があるんだし、早く寝ましょうよ」
「えーっ……まあでもそうっすね、寝られる時に寝とかねぇと後で尾を引きますし、寝やしょうか」
なんだか不服そうだったが、納得してくれたらしい。
俺達はランタンの灯を落とすと、眠りについた。
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「ねぇ……ねぇ、エストお姉ちゃん」
「……なんですか、リリィちゃん」
リリィちゃんのお母さんが作ってくれた料理をみんなで食べて、色んな話をして……。
3人で一緒にお風呂にも入ったし、なんだかお泊まり会みたいで楽しかったな。
……勿論、今は村が盗賊達に狙われてる状況だし、そんな呑気なことは言ってられないんだけど……。
なんだか歳の近い妹が2人できたみたいで、不思議な、暖かい気持ちになった。
「わたし、まだ眠たくないの。 ちょっとだけ、お話しようよ」
そう言っておねだりするみたいに上目遣いをするリリィちゃん。
……うっ、私の中のお姉ちゃん魂が目覚めてしまう……!
まあ、私は一人っ子なのですが……。
「お話ですか? ……うーん、どんなお話をしましょうか……」
リリィちゃんくらいの歳の子だとどんなお話がいいんでしょうか?
冒険の話を聞かせてあげようかな?
……て言っても、私もヒロトさんもそんなに冒険の経験がある訳じゃないし……。
と、そんな感じで話の種に悩んでいたところ、リリィちゃんが
「エストお姉ちゃんはヒロトお兄ちゃんのこと、好きなのー?」
「え」
爆弾を投げこんできました。
……最近の子供達ってちょっと進んでるみたいです。
「ねぇねぇ、好きなのー?」
「えぇっと……うーん……そのぉ……」
どうしよう……!
ヒロトさんは私にとって恩人で、大切な仲間で、お、お友達……なんでしょうか?
考えれば考えるほど分からなくなってくる……???
「私はねー、ヒロトお兄ちゃん大好きだよ! 大きくなったらお嫁さんになるの!」
「ええっ!? お嫁さんですかっ!?」
思わず大きな声が出ちゃった。
……お、お嫁さんって……。
「それでねーっ、イリアもエストお姉ちゃんもみーんなお嫁さんになってーっ」
「ちょっ、ちょちょちょっと待ってっ! は、ハーレムなんですかっ!?」
リリィちゃん、とんでもない野望を持っていました……!!!
ていうか、わ、私もヒロトさんのお嫁さんに……!?
(こ、心の準備が……! って、別に私はそんな風に思ってるわけじゃ……)
あ、あれぇ?
何が何だか分からなくなってきました……???
「きゅー……」
「エストお姉ちゃん? エストお姉ちゃーん!」
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(……参りましたね。 まさかあの村に冒険者がやってくるとは……)
村の外れ、切り立った崖の上。
想定外の戦力の登場に、唇を噛む者が居た。
(まあ、この辺りの冒険者の腕前など知れてはいますが……一応、頭領にお伝えするべきでしょう)
(あれは、頭領にこそ相応しい。 ……必ず手に入れてみせる……!)