神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜 作:相楽 弥
翌日、少し早くに目を覚ましたので、外の空気を吸おうと家を出た。
どうやら昨晩は襲撃がなかったみたいで、今はノルドさんもガイゾーさんも眠っている。
今は多分イリアが見張りをしているはずだ。
(確か……櫓はこの方向だったな)
村の中を歩きながら少し考え事をする。
なぜ賊がこの村を襲ったのか、ということだ。
昨日は結局答えを見つけることが出来なかったが、相手の狙いが分かればこっちも防御しやすいはず。
……問題は、狙われるようなものを見つけられない、という点だ。
傭兵団や村の人々は最初、村の女を狙っての襲撃だと考えたそうだが、誰一人として攫われたりはしていなかったらしく。
次に破壊された倉庫の食料を確認したが、これも全て無事。
賊から目立った要求も無く、しばらく破壊活動をした後、去っていったという。
(ますます分からない。 ……破壊されたのは耕作地や倉庫、それと村の真ん中を通る道だ。 家や人に直接攻撃しなかったのには、なにか訳があるはず……)
実際、耕作地の破壊に抵抗しようとした何人かの村人が反撃を受けて怪我を負ったそうだが、それ以外の人々には目もくれなかったと言う。
(……まあ、これ以上考えても今はどうしようも無いか)
と、そうこうしている内に櫓に到着した。
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「ん? ……もしかして、ヒロトか?」
「お、よく分かったな」
櫓の上、イリアは目を凝らしながら見張りを続けていた。
……さすが傭兵と言うべきか、気配に関してはとても敏感らしく、足音と気配だけで俺だと当ててしまった。
「どーした? あんまし眠れなかったのか?」
「いや、グッスリだったよ。 ……ただ、ちょっと話し相手が欲しくてさ。 見張り手伝ってもいいか?」
そう言ってイリアの隣に並ぶ。
おお、結構いい眺めだな。
「……にしても、イリアは凄いな」
「え? な、なんだよ、おだてたって何にもでねーぞ、このっ」
そう言って俺の横腹を小突くイリア。
「俺やエストより年下なのに、傭兵団の副団長だろ? それに夜遅くから見張りしてるのに、疲れてる素振りも見せないし……」
「ま、マジメに褒めるなよっ! ……まあ、でもありがと」
ボソッと呟いてそっぽを向く。
……ちょっと耳が赤くなってるのは、言わないでおこう。
「そ、それよりも! 昨日の話、また聞かせてくれよっ」
昨日の話。
食事を楽しんでいる途中にイリア含む傭兵団の3人に白獣の話をしてやったのだが、これがイリアも随分と気に入ったらしい。
こういう人の冒険譚に興味がある辺りは、年相応の元気な女の子って感じだな。
「良いけど、どこまで話したっけなぁ」
「ほらっ、ヒロトが皆を逃がして───」
そうやっていつまで話をしていただろうか。
不思議とイリアと話している間、懐かしいというか暖かい気持ちになっていた。
俺は元の世界にいた頃一人っ子だったのだが、これがいわゆる妹を持つ兄の気持ちなのだろうか。
俺の話を目をキラキラと輝かせながら聞いてくれる彼女に、そんな感覚を覚えていた。
と、その時だった。
「……? イリア、何かこっちに来るぞ」
”熱源感知”に複数の反応があった。
場所は村の外、櫓のある場所から少し離れた位置だ。
と、横を見ると既にイリアは臨戦態勢に入っていた。
双剣に手をかけ、じっと目を瞑っている。
相手の気配を探っているのだろうか。
「……ヒロト。 やれるか?」
それだけ聞いてきた。
「ああ、任せろっ!」
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村の外。
俺は新たに身につけた能力、”鷹の目”で敵の姿を確認する。
このスキルはリドルトを出る前、街の見張り番をやっていたホークさんから教えてもらったものだ。
……というか、本来は固有技能を他の人間が使うことは出来ないらしい。
なのだが、俺は魔法だけでなく特殊技能も全て使えるようになっているようで。
この鷹の目も興味本位でホークさんに見せてもらったのだが、いつの間にか俺にも出来るようになっていた。
……もしかしなくても、見ただけでコピー出来るようだ。
(お、見えたぞ。 ……コボルトの群れか)
敵を視認。
イリアに合図を送って臨戦態勢に入る。
「イリア! 魔法で援護するから、先鋒を頼む!」
「任されたっ! 援護頼むぞーっ!!!」
敵の姿が目視で確認できる位置まで近付いてきた。
瞬間、イリアが踏み込むと同時に姿を消す。
……いや、正確にはとんでもないスピードで敵へと突撃したのだ。
(は、速っ!? ……いや、”鷹の目”なら何とか追えるっ!)
再び”鷹の目”を発動し、援護の為に魔法陣を3つ待機させる。
「……フッ!」
1頭の首が飛び、続けざまに2頭、3頭と敵の数がどんどん減っていく。
その動きはまさに、吹き抜ける疾風の如く。
(……これ、俺の援護いるかな)
そのくらい、圧倒的だった。
とても人とは思えない程の超高速の双剣捌きでコボルト達があっという間に蹴散らされて───
「ふぅ……いっちょ上がりだなッ!」
「援護の隙無し……凄いな、イリア」
結局1人で全て片付けてしまった。
飄々とした風に返り血を拭うイリア。
場馴れしているのは傭兵だし当たり前かもしれないが、今の彼女はいつもの元気一杯の少女ではなく、歴戦の剣士の風格が漂っていた。
と、イリアが仕留めたコボルトの死体を見て不思議そうな顔をしている。
そして、双剣の片方を使って首の着いていた切り口から体を開いていく。
「お、おいイリア、何やってるんだよ!?」
淡々と死体をバラしていくイリアに少し引いてしまったが、暫くして彼女の奇行の意味がわかった。
「……ヒロト、コレ見てくれ」
そう言って差し出してきたのは血まみれの丸い何か。
何か禍々しい気配をこの何かから感じる。
「洗ってみるか。 ……”ウォーター”!」
そうして現れたのは、鈍く光る紫色の球体。
かなり微弱ではあるが、魔力を感じる。
そしてこれが明らかに自然のものでないということもすぐ理解出来た。
「帰ろう、イリア。……この石が何なのか、調べた方が良さそうだ」