神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜   作:相楽 弥

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#31 ひとときの休息

「……よし。 これで良いだろ」

 

「うぐぅ……テメェら、ふざけたマネを……!」

 

 イリアが召喚士の男を双剣で殴打し、気絶させた後。

 俺は念には念をと男に"ナムネス"と"バインド"を掛け、村へと連れ帰った。

 

 そうして今は"バインド"の鎖を木に結びつけ、尋問を開始しようとしていたところだ。

 目を覚ましたばかりの男はキッと俺たちを睨みつけるが、それをものともせずにイリアが男の顔を蹴っ飛ばした。

 

「うげェッっ!? い、いきなり何しやがる!?」

 

「うるせぇよ。 テメェは聞かれたことだけ答えてりゃいいんだから、余計な真似すんじゃねぇ」

 

 怖ぇぇ……! 

 何だこの子、まるでヤクザみたいなこと言ってるぞ。

 

 聞いたことないくらいドスの効いた声で尋問し始める彼女の姿に、エストも少し強ばった表情をしている。

 ……リリィがここにいなくて良かったな。

 

「テメェがこの村を襲った賊の一味だってことは割れてんだぜ? ……これ以上だんまりを続けるってんなら、俺達も付き合うがよ?」

 

 そんなイリアの隣でメイスを持った男をガイゾーさんが脅す。

 その後ろではノルドさんが……うわっ、ナイフをペロペロする人だ!? 

 

 ほんとに存在したのか、こんな人!? 

 ……これじゃあ、どっちが賊か分かったもんじゃないな。

 

「……こりゃ、時間かかりそうッスねお嬢」

 

 全く口を割りそうにない男。

 このまま続けると、そのうち殴られすぎて死んでしまうんではなかろうか。

 ……まあ、イリア達の様子を見てると結構慣れてるっぽいし、そんなヘマはしないだろうけど。

 

「弱音吐いてんじゃねーよ! こーゆーのは根気が大事なんだ。 ……2人はアビヌさんのとこ戻っててくれていーぞ」

 

 そう言ってイリアはまた尋問を再開した。

 まあ、ここにいても俺達にできることは無さそうだし……。

 さっきから男が殴る蹴るされてる度にエストの表情が青ざめていってっているので、ここはイリアに従うことにしよう。

 

 ───────────────────────────────────

 

「あ、ヒロトお兄ちゃん! それにエストお姉ちゃんも、おかえりなさいっ!」

 

 アビヌさんの家に戻ると、何故かリリィが出迎えてくれた。

 どうやらこの子は村のために戦う俺達の為に何かしたいと思い、お母さんと一緒に昼食を準備してくれたらしい。

 

 なんていい子なんだろう。

 この世に天使というものが存在するのなら、きっとそれはこの子だ。

 

 と、そこへリリィのお母さんが。

 

「キリシマさんから頂いた食材と、村のお野菜を使って作っていたんです。 ……あれ、イリアちゃんは一緒じゃなかったんですか?」

 

 そういえば、尋問はどんな具合だろうか。

 帰り道の途中で後ろの方から男の叫び声が聞こえてきたのだが、あの召喚士が無事に情報を吐いてくれているといいのだが。

 

「少し用事があるみたいで、先に帰ってて欲しいとイリアに言われまして」

 

 リリィのいる所で本当のことを話すわけにもいかない。

 ここは少しオブラートに包んでおこう。

 

「あら、そうなんですか。 それじゃあ、あの子の為にもとびきり美味しい料理を作ってあげませんとね。 リリィ、手伝ってくれる?」

 

「うんっ! それじゃ、またね2人とも!」

 

 そう言うと、リリィはお母さんに連れられてキッチンのある方へと向かっていった。

 

 俺が手を振って見送っていると、エストがくいくいっと俺コートの袖を引っ張ってきた。

 

 どうかしたのか? と聞いてみると、

 

「ヒロトさんって妹さんがいたりしたんですか? とても、小さな子の扱いに慣れているみたいだったので」

 

 そんな素朴な疑問を投げかけてきた。

 

「いや、一人っ子だよ。 まあ、年の離れた従姉妹がいたからそれで慣れてるかもしれないけど」

 

 そういやこっちに来てから元の世界のことは全く気にかけていなかったのだが、あの子は元気でやっているだろうか。

 ちょっぴり引っ込み思案で、オドオドとしている子だが自分の意見はしっかり持っていて……。

 

 ちょっと、エストに似ているかもしれない。

 

「……? ど、どうしたんですか、そんなに私の顔をまじまじと見て……。 恥ずかしいので、やめて欲しいんですが……」

 

「え、ああ、ごめんっ!」

 

 無意識の内に見つめてしまっていたらしい。

 エストは耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 

 ……そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。

 

 ───────────────────────────────────

 

 リリィ達が昼食を作ってくれている間、手持ち無沙汰になった俺は家の外で件の素振りをしていた。

 

 ぶっちゃけると、型とかそういうのは全く分からないので剣術の鍛錬にはなっていないのだが、筋力を付けるために始めたのだ。

 

 魔法と同じように見ただけで使えるようになればありがたいのだが、流石に剣術はダメらしい。

 

 ギルドの書庫で剣術に関する本を読んでみたのだが、実践しようとしても全く体がついていかなかった。

 この辺りはやはり身体能力だけではどうにもならないということなのかもしれない。

 

「お、ヒロト! 何やってんだ?」

 

 と、そこへイリアが帰ってきた。

 ……随分と篭手が黒ずんでいるのには、触れないでおこう。

 

「おかえり。 ……あれ、2人はどうしたんだ?」

 

「アイツらならマドンを捨てに行ったぞ。 もう必要な情報は手に入ったからな」

 

 マドン?

 ……ああ、あの召喚士の名前か。

 

 捨てに行ったって……いや、これ以上は詮索しないでおこう。

 

「ん? なんかいい匂いすんな! もしかして昼飯か?」

 

 イリアが目をキラキラと輝かせる。

 今日は朝食も食べそびれてしまっていたし、お腹が空いていたみたいだ。

 

「今リリィがお母さんと一緒に作ってくれてるんだ。 ……家に入る前に、体洗ってきたらどうだ?」

 

 そう言われてイリアが自分の体を見回すと、

 

「……それもそうだな。 流石にこの格好じゃ、リリィも怖がらせちゃうし」

 

 と苦笑いしながら、村の共同浴場へと歩いていった。

 

(さてと。 俺もそろそろ家に戻るかな)

 

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