神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜   作:相楽 弥

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#33 間一髪

「───とまあ、そんな訳で白獣の時は持っていかなかったし、今も使ってないんだよ、アレ」

 

 俺が魔法剣についての出来事を話すと、一同様々な反応を見せた。

 

 イリアとガイゾーさんはスゲェー! とでも言わんばかりに目を輝かせているし、アビヌさんはただただ驚嘆して言葉を失ってしまっている。

 

 エストは……あの時のことが忘れられないくらいに脳に焼き付いているらしく、顔を少し青くしていた。

 

「……でも、これでハッキリした。 アイツらはどういう訳かヒロトの魔法剣が持ってる能力を知ってたんだ。 で、それを手に入れようと狙ってる」

 

「そう言う訳でこの村を襲撃したということですね。 ……けれど、既にあの剣をヒロトさんが譲り受けていたために見つからなかった、と」

 

 あの破壊力。

 その賊がどういう組織なのかは分からないが、あの力を知った上で欲しがっているという時点でたぶんロクな考えは持っていないだろう。

 

 それに、さっきみたいな召喚士を使っての襲撃があったように、今後も剣の所在が掴めるまでこの村を襲うつもりだろうというのも、簡単に想像できる。

 

「……どうする? 相手の狙いが分かったなら、いっそ叩くか?」

 

 そんな俺の提案にイリアは首を振る。

 

「今、賊のアジトを探らせてるんだけど、もう3日は経つのに一向に連絡が無いんだよ。 ……アイツらだって索敵のプロ達なのにこんだけ見つかんねーっことは、なにか裏があるんだと思う」

 

 なるほど。

 迂闊に動くのは危険、ということみたいだ。

 

「にしても妙ッスけどねぇ……。 見つからねぇなら見つからねぇでそろそろ連絡に1人くらい寄越しそうなもんなんスけど……」

 

 ガイゾーさんが頭を掻きながら困ったように言う。

 と、その時だった。

 

「た、大変だっ!!!」

 

 大きな音を立てて扉が開いたかと思えば、外で見張りをしていたノルドさんが飛び込んできた。

 顔が随分と青ざめていて、汗もダラダラとかいている。

 

 何かとんでもないことが起きたということはすぐに分かった。

 

「お、お嬢ッ! それに兄貴ッ!」

 

「どうしたんだよっ! 落ち着いて話してくれっ!」

 

 焦りのあまり言葉が出てこない様子のノルドさんを宥めながら、イリアが問い質す。

 

 ……よく見ると、彼の篭手には血がベッタリと着いている。

 見るからに新しい、今そこで着いたような血だ。

 

「テッセンが……! テッセンが血まみれで村の外にッ!!!」

 

「なっ……!?!?」

 

 ───────────────────────────────────

 

 村の外、イリアがテッセンと呼ばれた男の体を揺さぶりながら必死に声を掛ける。

 

「おいっ! 何があったんだよ……おいっ、しっかりしろっ!!!」

 

 何があったのか、詳しいことはまだ分からない。

 だが、彼の倒れている血溜まりからポタポタとたれたような血痕が森の中へと続いてる。

 

 死にものぐるいでこの場所へとたどり着いたのだ。

 

「そ、そうだっ、ヒロトっ! コイツの傷、治してやってくれよ!」

 

「ああっ、任せてくれ!」

 

 俺は青ざめたイリアをどかすと、彼に首元に手を当てる。

 そして"ヒール"をかけて回復を開始する。

 

(……なかなか傷が塞がらない……、相当深く斬られてるぞ……!)

 

 両足首に両腕、体にも数箇所の切り傷が見受けられ、特に左足首の傷が一番深い。

 この状態で歩いたのか走ったのか、いずれにせよそれが傷口を悪化させてしまい、ほんのわずかの肉でかろうじて繋がっているだけだ。

 

 時間の猶予はあまり無さそうだ。

 

「エスト! 今から魔力を全開で込める。 ……サポート頼めるか」

 

「は、はいっ!」

 

 俺は"ヒール"を発動する右手の魔法陣に全開で魔力を流しつつ、空いていた左手でも"ヒール"を発動させ、一気に治療を開始する。

 

 そして万が一の暴走を防ぐためにエストが魔法陣を安定させるための魔力を流す。

 

 治療すること数十秒。

 深かった傷が徐々に塞がっていき、青くなっていた唇や肌にも赤みが戻ってきた。

 

(あと一息……っ!!!)

 

 最後のひと押しに、俺はさらに魔力を流し込む。

 

「……かはッ!」

 

「! テッセン、聞こえるか! アタシだ、イリアだ!」

 

 彼を包む光が少しづつ小さくなり、ついに目を覚ました。

 

 俺は駆動する魔方陣を消すと、急にやってきた目眩に少し振らつく。

 それを隣に座っていたエストが支えてくれた。

 

「……お嬢? それに、ガイゾーとノルド……か?」

 

 やがて目を覚ましたテッセンさんは辺りを見回し始める。

 ちゃんと回復に成功したみたいだ。

 

「「うおおおおおおッ! テッセンが息を吹き返した──ーッ!!!」

 

「よ、良かった……ホントに良かった……!」

 

 テッセンさんの声を聞いて涙を流しながら抱き合っているガイゾーさんとノルドさん。

 ……イリアはホッとしたようにその場にへたり込むと、少し涙を拭った。

 

「じょ、状況がイマイチ読めんが……。 いや、そういえば俺の体の傷が……」

 

 起き上がったばかりで記憶と意識が混濁しているのか、自分の体を見回すテッセンさん。

 

「ヒロトが。 ……この人がお前の傷を治してくれたんだ」

 

 イリアに促され、俺の方へ向き直るテッセンさん。

 地面に両膝を付いてそのまま土下座をした。

 

「ありがとうございますッ! ……お嬢のみならず、オレの命まで……!」

 

「ちょ、ちょっとやめてくださいよ! ……って、なんで俺の事知ってるんです?」

 

 同じ傭兵団のガイゾーさんとノルドさんは俺の事を知らなかったみたいだけど、どういう訳かテッセンさんは知ってるみたいだ。

 

「ま、まあ取り敢えず村に戻りましょう。 そこでゆっくり話は聞きますから」

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