神様、俺を異世界へ! 〜ふと呟いたら異世界へ送り込まれました〜 作:相楽 弥
「あの、ヒロトさん」
「どうしたの、エスト」
リカント武具店をあとにして、ギルドへと続く大通りを歩く俺達。
すると不意にエストが俺に質問を投げかけてきた。
「そのタイプの
どうやら俺の帯剣スタイルがおかしいらしい。
いや、その位は分かってるよ。だってこれ刀じゃないもの。
でも、俺の中にある日本人の心がどうしてもそうさせるというかなんというか。
それをエストに熱弁してあげようかと思ったけど通じなさそうなのでやめておこう。
「その、このスタイルの方が抜剣しやすいかなって思って」
「まあ、武器は自分の扱いやすいように装備するのが一番ですからね」
少し不思議な顔をしたエストだったけど、なんとか納得してくれたみたいだ。
......そういえば、この世界に刀は存在するんだろうか。
もしあるのなら、
と、そうこうしている内に目的の場所へと到着した。
大きな木の扉、その中から聞こえてくる人々の声。
数段ある石段をゆっくりと登って、その扉の前へと到着した。
「ここが冒険者ギルド......」
「なんていうか、すごい大きい所なんだな」
完全に
こう、この大きな扉に形容しがたい威圧感があるというか......。
だが立ち止まっていても始まらない。
覚悟を決めると、俺とエストはその扉を開けた。
──────────
「ようこそ、冒険者ギルドへ!
ギルドに入ると、元気なお姉さんが出迎えてくれた。
中には他のパーティーが壁に取り付けられた大きな掲示板に貼られた紙を取っては悩みを繰り返していたり、備え付けのバーで酒盛りをしている。
......というか、昼から酒とかこの人達は一体何を考えているんだろう。
漂う酒の匂いにエストが若干顔をしかめている。
もちろん俺も。
「......早く登録を済ませて出ましょう、ヒロトさん」
「そ、そうだな」
あまり長居すると気分が悪くなりそうだ。
俺達は先程案内をしていたお姉さんに話を聞き、登録窓口の方へと連れて行ってもらった。
その途中、酒の匂いにゲンナリしかけているエストを見てお姉さんが、慣れれば大丈夫。とあまり励ましになっていない言葉を掛ける。
慣れって怖いね、ホント。
「それでは、こちらの窓口にてお待ちくださいね。直ぐに担当の者を呼んできます」
「どうも、ありがとうございます」
深々と頭を下げて、用意された丸椅子で到着を待つ。
と、窓口の端にパンフレットのような物が置いてあることに気がついて、手持ち無沙汰な俺はそれを手に取って読んでみる。
(『冒険者心得』ねえ。お、持ち帰りは自由って書いてある)
茶色い紙を紐で留めてあり、冊子の様になっている。
少し時間が掛かりそうだったので今読んでみようか。
はじめに。
冒険者は、常に勇敢なる心を忘れるべからず。
冒険者は、如何なる時も
冒険者は、仲間を重んじるべし。
冒険者は、手を取り合い、支え合うべし。
冒険者は、酒と女に溺れるべからず。
(......最初の四つは分かるけど、最後何だよコレ。てか、ここいる大半の冒険者はこれ守ってないだろ)
まあ、気を取り直して次へ進もう。
『冒険者ギルド規約』
その一
冒険者とは、各国の王都より認定を受けた街に設置された『ギルド』において正式な手続きを踏んで認可された者を指す。また、国より直々に認められた場合も同義。
その二
冒険者は依頼を受ける際、必ず依頼受付へ報告を行う事。また、依頼達成時は報酬窓口へ報告を行い、適正な報酬を受け取る事。尚、受注した依頼を失敗、または破棄する場合は必ず依頼受付へ方向を行い、
※依頼遂行中にイレギュラーが発生した場合のみ、違約金の支払いを免除する。
その三
以下の条件に
・依頼を三年間一度も受注しなかった場合。(例外を除く)
・他の冒険者への妨害、または攻撃を行った場合。(例外を除く)
・違約金を滞納した場合(三回以上)
・その他、所属するギルドの評価を下げる行為をした場合。
※
※正当防衛が認められた場合は免除する。
その四
ギルド所属の全ての冒険者には等級が付けられる。
白→緑→赤→青→紫→黒→銀→金→
尚、軽度の罰則行為を繰り返した場合、冒険者等級の降格を命じる場合がある。心するように。
(......まあ、こんなもんか。けど、色々決め事があるあたり、組織としての
「あ、それヒロトさんも読んでたんですか? 」
「ちょっと暇だったからな。......お、担当の人来たみたいだぞ」
冒険者心得を
何やら色々道具を持ってるみたいだけど......。
「初めまして。私はこのギルドで冒険者登録の担当部署長を務めています、ミラ・レドナーです。これからよろしくお願いしますね」
「「よろしくお願いします!」」
ミラ、と名乗ったその職員はどうやらなかなかの重役らしい。
俺の中のイメージでは、ゴツゴツとした髭の男が仕切ってるようなイメージだったのだが、彼女はスタイルが良く美人揃いの他の女性職員と比べてもずば抜けた
「まず、こちらのパーティー証明書にサインを。それが終わりましたら、次はこちらのカードに貴方の個人情報を記入してください」
提示された用紙にインクペンでスラスラと書いていく。
やっぱり知らないはずの言語がスラスラ書けるというのは不思議な感覚だ。
......よし書けた。
「それでは次に、こちらのオーブに手をかざして下さいね。これから、カードへ貴方方の魔力を
言われるがままにオーブに手をかざす。
結構大きな物なので下がどうなっているのか見にくいが、ほんのりと手のひらが暖かい気がする。
これが魔力なんだろうか。
それから程なくして、俺とエストの冒険者登録が無事完了した。
俺達の冒険者等級は白。
まあ当たり前だろうな、今日登録して依頼を一度も受けていないのだから。
貰ったカードを手に取って、エストはとても嬉しそうだ。
両手で大事に持って、じっと見つめてはにへらと笑っている。
時折、俺の方を向いても嬉しそうな顔をするので、こっちも良い気分だ。
「それではキリシマヒロトさん、エスト・シルヴィアさん。貴方方の冒険者人生に幸があらん事を、ここで祈っています」
ミラさんは、そう言って深々と頭を下げてニッコリと笑った。
俺とエストは顔を見合わせて少し笑って。
「「ありがとうございます!」」
冒険者になれたという喜びを噛み締めるように、深々と頭を下げた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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