魔導変移リリカルプラネット【更新停止】   作:共沈

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時が止まる。

 

 しかし表現に対して、周囲の閑静を無視してカチコチと秒針が音を刻み続けるのが聞こえる。

 

「…………………………」

 

 人と獣、互いが互いに動けぬコチラは動物病院、夕方のサイトオブインパクト。

 

「…………………………」

 

 人の方は動物が人語を喋るという芸を見せたことに対しあまりの衝撃を受け、

 

「…………………………」

 

 片や獣の方は目的の人物だと思って話しかけたのにあまりにも初な反応をされた上、その大声にびっくりして固まっている。ついでにそのまま顔が固まるというあらたな動物芸を見せているのは余談だ。

 

 ――果たして一番最初に復活するのは誰か!!

 

 

「ってそんなわけあるかぁあぁぁぁぁあああ!?」

 

 

 アリサだった。

 

 

 

 

「おかしいでしょ!おかしいでしょ!?なんで動物が喋っるっのっよぉ!!」

「にゃぁぁぁ!揺らさないでアリサちゃ~ん!?」

 

 ブンブンガンガングラングラン、あまりの振動になのはの頭が転げ落ちそうなくらい揺れている。振り回すはシェイカーアリサ。只今絶賛混乱中である。

 

「これは、なんというか、ねえ?」

「あはは、……私もどう反応していいのかわかりません」

 

 院長とすずかの二人は比較的落ち着いているように見えて、心には嫌な汗が流れ落ちている。反応に困るとはこのことだ。

 

「えーっと、その……」

 

 ドッキーン。4人の動きが再びフェレットの発言によって止まる。フェレットにとってはただ話しかけているだけなのに、何故コレほど驚かれなければいけないのだろうかと首を傾げる。

 

「……えぇ!えぇ!もういいわ!なんだってしゃべってみなさい!」

「諦めるのが早いねアリサちゃん」

「覚悟を決めたって言いなさいよすずか!」

「ゆ、揺れるの……頭が……」

 

 

 

 

「そ、その、あなた達は現地協力の嘱託魔導師では無いのですか?」

「…………なにそれ?」

「え、でも魔法使ってましたよね?」

「使ったけど、それが?」

「じゃ、じゃあ時空管理局という言葉に聞き覚えは……」

「そんなSFな組織名なんて聞いたことないわよ」

 

 バッサリと切り伏せるアリサ。

 それを聞いてなんてこったぁ!と頭を抱えるフェレット。これまた見たこと無いシュールな光景。

 

「……何してるの?えーと……」

「あ、ユーノ・スクライアっていいます。治癒魔法、使ってくれてありがとうございました」

「うん、じゃあユーノ君だね。私は高町なのはだよ、よろしくね。それで、どうしたの?なにか困ったことあるの?」

 

 互いに自己紹介を交わしつつ、なのははユーノが何か重大なミスを犯したらしいことに気づいて探りを入れる。

 

「いえ……その、ちょっとした失敗をしてしまったと思って」

「失敗って何のこと?」

「コッチの話なので気にしないでいただければ……」

「そんな頭かかえて落ち込むようなことを気にするなって言われても無理ね。何かあるならチャキチャキ話しなさい。さっきの嘱託だとか、管理局だとかも気になるしね」

「……う、はい。その……」

 

 ユーノは今の失敗について簡単に説明をすることにした。彼が言うには管理局によって管理されてない世界、管理外世界である惑星の現地住民、または技術流出を避けるための不用意な接触や行動を避けなければならないらしい。

 

「現地住民との不用意な接触?」

「どういうこと?」

「昔のアメリカ大陸のインディアン的な扱いなのかな?」

「それって随分失礼な話ね。何様よこのフェレット」

 

 フェレットが悪いのではない。これは魔法を上位と取る管理世界が定めたことで、管理外世界にとって新たな技術が争いの火種にならないようにするための措置だ。

 

「えーっと、それについては次元世界に付いて知って貰う必要があります。まず次元世界というのは隔たれた次元にある惑星、世界を含む上位構造の事です。その中でも人が住んでいて、魔法が使える世界は時空管理局という組織のもと、共同運営しています」

 

 言うなればそこは魔法技術を主体として、もしくは使えていた事が前提の世界が寄り合って生活をしている連合のようなものとまとめる。 

 

「それで、僕達管理世界の人間は管理外世界の人間とうかつに接触してはいけないという規定があるんです。魔法という存在を知られてはいけないので」

「そんな事言っても、私たちは普通に魔法を使ってるわよ」

「まぁ、そうは言っても公式では3年前からだからね。まだ黎明期と言ってもいいくらいだよ」

「へぇ、そうだったんですか。それでまだ管理世界に入ってないんですね」

 

 余談だが魔法が使えるようになったら管理世界入りという話はない。しかし、ここは管理外世界とあるように管理局に人が住んでいる星として認識されている。ならば管理局の巡回ルートに入っているはずだ。なのに、魔法反応に3年も気づくこと無くスルーされているというのは一体どういうことだろうか。ユーノは返答を返しつつ心のなかで首をひねった。

 

「というか、今すごく聞き捨てならないことを聞いた気がするだけど」

「何がですか、先生?」

「僕達管理世界の人間って言ってたでしょ?動物じゃないの君」

「え」

 

 院長は先の一言に違和感を感じて、指摘を入れた。

 

「もしかして……」

「え、あ、えっと、実はコレ、変身魔法で……本当は人間なんです」

「なんですってぇぇぇ!?」

「あぁ、またアリサちゃんの琴線にふれちゃった」

「さっきから衝撃の連続だからしょうがないわね。大人の私も驚いてるもの」

「何で動物さんの姿なの?」

「魔力がなかったんで、回復のために節約状態にしてたんです。でもこの星、魔力素の取り込みが悪くて……。それで動物の姿をとってたんですけど、その、先に言っておくべきでしたか?」

「ううん、多分どっちにしろアリサちゃんが爆発してるから気にしなくていいの」

「い、いいのかなぁ……」

 

 完全にオーバーフローしてバーニングしてるアリサを放置し、会話を続けることにするなのは。しばらくアリサが戻ってこないと確信しているのだろう。えらく豪胆である。

 

「それにしても、めくるめくスーパーマジカルワールドというか。すごいね変身魔法?質量はどこへ行ったのかな。その小さなカラダに詰まってるの?」

 

 すずかはユーノの首根っこをひょいと摘んで持ち上げてみるが、特にコレといって重たいことはなかった。どうやらその技術力に興味があるらしい。

 

「つまんでみても普通にフェレットの重さだね。……解体してもいい?」

「僕デバイスか何かですか!?」

「すずかちゃんも壊れてるの……」

「えー、だってデバイスと同じで自身を量子変換してるんだったら随分思い切ったことしてるなぁって。ある意味命がけじゃないかなソレ、気にならない?」

 

 魔法一つで分解されたらたまらない。ユーノは焦りながら適当な言い訳で取り繕うことにした。

 

「気にされても困るんですが……。一応スクライアの秘伝ってことになってるので」

「むぅ、そっかぁ。残念だなぁ」

「私は病院がスプラッターにされなくて助かるのだけど」

「病院だから大丈夫ですよね先生」

「そういう問題じゃないわよ!?」

 

 ややマッド化しつつあるすずかの問題発言に院長までツッコミを入れる始末。研究方面においては暴走しだすと全く手に負えない、それが月村すずかである。

 

「あ~~~~ぁ、もうぅぅ!」

「あ、帰ってきたのアリサちゃん」

「どこにも行ってないわよ!それにしても何よ地球が管理外世界とか!思いっきり見下してるじゃない!管理局って何様!?」

「どうどう、落ち着いてアリサちゃん」

「っふー!!って私は馬!?」

 

 やたらと愛国心、もとい地球愛が強いアリサには上位に位置しているように見える管理局が悪に見えるらしい。ここで彼女らが知る話ではないが、管理局に合併されてしまうと地球の国別で法律などが別れていても全部一緒くたに変更されるか、もしくは国際条約以上の強制力が働いてしまう可能性はある。質量兵器を取り上げられるなどしたら現状のパワーバランスは一気に崩壊するだろう。最悪植民地化もあるかもしれない。そういう意味ではアリサの見方は合っていた。

 

「はぁはぁ……それで、嘱託魔導師って何のことなのかしら。もう少し詳しく説明してくれない?」

「えっと、そうですね……」

 

 管理局には就職せずとも、嘱託魔導師という資格がある。その資格を持っていると、いくつかの権限が与えられ、異世界での行動の縛りが緩くなるのだ。加えて、希望すれば管理外世界への在住も可能になる。その代わり現地で何かあった場合は、捜査協力員として協力する義務が発生するというものだ。その対象は広く魔法犯罪からロストロギアにまで及ぶという。

 

「つまり、そのロストロギアとやら魔法犯罪やらを監視するために現地協力員として嘱託魔導師がいる場合がある。で、なのはがそうだと思って話しかけてみたらおもいっきり勘違いでした、と」

「もしかして、無差別の広域念話を使ってたのってそれが理由?」

「そういうことです。あの、一応聞きますけど皆さん魔導師なんですよね?」

「そういえばさっきから魔導師って言ってたわね。別に地球ではそんな区分無いけど、何でそう思ったの?」

「え、デバイスを持ってるじゃないですか。だったら魔導師だと思うんですけど」

 

 管理世界内ではデバイス持ちと魔導師がイコールである。リンカーコアを持っていないと使えないのだから当然だ。

 

「地球では誰でもデバイスさえあれば魔法は使えるんだよ、ユーノ君」

「そうなんですか!?それはすごいですね。リンカーコアもなしにどうやって?」

「あ、そのへんは同じなんだ。んと、私のネームレスみたいなのだったらリンカーコアから魔力を使うけど、すずかちゃんやアリサちゃんが持ってるような防犯用デバイスにはあらかじめ魔力が封入されてるの。今はお家で充填出来たりするんだよ?」

「使える魔法が限定されてたり、ほとんどオート発動のみのものに限られてるけどね」

「僕達の世界とは結構違うんですね。でも、あれ?魔法が出来てたった3年なのにもうデバイスがあるんですか?しかもそこまで洗練されてるものが……それに使ってもらった治癒魔法の術式がミッド式に似ていたような気もするし……一体どうなって……」

 

 ユーノは魔法関係の歴史的観点から、地球の魔法技術の急速の発展に不自然さを感じたらしい。 根っこが同じでも発展の仕方は、同じ道を辿るか別ベクトルに行くかどちらかだ。しかし地球は前者のように見えて、その実状はほとんど管理世界と変わらない。本来ならばまずは魔力の研究から、それらを利用するためにプログラミングが使えること、人体にリンカーコアが存在すること等を初めとして、知るべきものは多岐にわたる。発表から3年、おそらくそれ以前から研究されていたとしてもここまで発展するのは異例の速度だといってもいい。ユーノからすれば、地球の魔法の歴史にはミッシングリンクが存在しているように思えてならなかった。

 

「何か考えだしたわね?」

「とりあえず軽く話をまとめましょ?要約すると、管理局が管理してる次元世界があって、ユーノはそこから来た宇宙人。ユーノ達にとって地球は管理外世界と呼ばれてて、ある意味未開の地扱い。そして彼にとって魔導師というのはリンカーコアを持った人間しかなれないある意味特別な存在ってことね」

「地球でも統計はとったけど、リンカーコアを持っている人は地球人口の3%もいなかったもんね。他の世界でもそうなのかな」

「うーん、多分そうみたい?というか、私達地味に地球人初の宇宙人との邂逅なの?」

「ボルテージ振り切ってそんな程度じゃ感動しないけど……。それより、一番大事な「この子が何故地球に来た」かを聞いていないじゃない」

「あ、そういえばそうだったね」

「えっと、ユーノ君?考えてるところ悪いんだけど、何で地球に来たのかな?」

「…………え、ああすいません。その、ちょっとしたトラブルがあって」

 

 ユーノは次元航行艦でロストロギア、ジュエルシードを運んでいた。ロストロギアはひどいものでは次元世界すら破壊する力を持ち、管理局において監視、回収を行う失伝したオーパーツだという。スクライア一族は遺跡を探索する仕事を生業としていて、それらを発掘し管理局に護衛を依頼して持っていく予定だったという。しかしその護衛をするはずの管理局は来ず、現地の滞在期間を過ぎてしまったために自分で持っていかざるをえないことになった。ところがその道中、なんらかのトラブルが起きハッチが空きジュエルシードを紛失、それを回収しないとと自分も飛び出して地球に来たらしい。ジュエルシードは細い位置はわかっていないが、全21個あるそれはほとんどが海鳴市に落ちたらしいということだった。

 

「何気に海鳴の危機じゃないの、これ?私はもう驚かないわよ」

「なんだか、王道の映画みたいな感じがするね。大規模のトラブルとか」

「ご、ごめんなさい……」

「うーん、ユーノ君が悪いわけじゃないと思うんだけど」

「何にしても、私達には荷が重い話になりそうね。警察に相談したほうがいいと思うわ。……こんな眉唾ものの話を聞いてくれるかどうか問題だけど」

「どっちみち街が危険なんだから働かざるを得ないわよ。さっさと連絡しましょ」

「あ、そういえば公園の係留所壊れてたのってユーノ君が関係してるの?」

 

 連絡ついでに一応今日の破壊現場についても聞いてみる。知っておけば捜査もはかどるし悪くはない。

 

「池みたいなところですか?多分そうだと思います。ロストロギアにとりつかれた生物が暴れまわったので」

「じゃ、ソレ込みではなしとくわね。ちょっと待ってなさい」

「あ、佐伯さんに直接連絡したほうが話が通りやすいと思うの」

「わかったわ」

 

 次から次へと明かされる事実に聞き入ってしまい、すでに時刻は子供が帰るにはまずい時間になっていた。あたりはすでに暗くなっており、鮫島が待機しているのが唯一の安心できる要素だろう。

 

「電話してきたわよ。それにしても、随分時間が経っちゃったわね」

「あら、もう閉院の時間だったのね」

「あ、ごめんなさい。長くいてしまって」

 

 病院の院長は完全に巻き込まれ損だった。あまりの出来事につい一緒になって聞いていたが、果たしてこれは聞かせていいことだったのかわからず、すずかは「あ、まずいかも?」と冷や汗をかいた。ぶっちゃけユーノの話は国家機密レベルだったのかもしれない、と考え自分たちも同様だと思ったが、もはや後の祭りだった。

 

「いいの、気にしないで。ちょっとおもしろかったから」

「面白かったで済ませるって、随分と豪胆なんですね先生」

「人生は面白おかしくよ。多分今日のは人生ベスト1ね……!?」

 

 話もおおかた終わり、全員が落ち着いたところで地面揺れるほどの爆音が聞こえた。間を置かずに外で待機していたはずの鮫島が駆け込んでくる。

 

「お嬢様方!大変です!早くこちらへ!」

「え!え!?何々何なの!?」

「魔力反応!?まずいです、皆さん逃げ……」

 

 ユーノの叫び声も間に合わないまま、破壊音を奏でながら壁面のブロックを蹴散らしながら黒い異形が侵入した。

 




一話以降が悩みどころでなかなか話がすすまんとです。

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