※後でマテリアルTIPSを更新、順序を変えて後ろに回します。こちらは新しい話題が出るたびに頻繁に修正が入る予定です。最新話基準にしますので未読の方はネタバレにご注意を。
ユーノの一日のローテーションは、とにかく調べることに終始する。まず朝起きたら、持ち合わせがないため佐伯刑事に連れられ食事を買う。コンビニではおにぎりやお菓子やらを見て食文化を学ぶ。それが終れば仕事始め。夜勤の人から引継をしながら、朝礼、会議を済ませて捜索に移行。間で昼食を取り、夕方まで捜索、そしてなのはと合流して数時間ほど探して署に戻る。その後は署員の人々と話をしながら、地球の様々なことを教えてもらう。勿論それには魔法の法体制や普及率といった突っ込んだ話も含まれる。逆に管理世界についてもより詳しく聞かれ、差し障りのない部分を教えていた。その後は資料室から許可が出た本などを読み、寝るまでを過ごす。余談ではあるが、管理世界の人間は世界ごとで言語が違うことが多く、多言語に対応するため魔法が使える人は翻訳魔法を、そうでない人はコミュニケーターを持っている。そのためユーノとの会話が始めから成立していたのだ。それを使えば日本語の本であろうと、網膜に投影される文章が自動でミッド語に変換される。実に便利だ。以上、ここまでが平日の一日の流れである。
だがその流れに待ったを入れる日がある。ハードワークに悩む日本人全てが望む息抜きの一時、人それを休日と呼ぶ。
その例に漏れず、ユーノも休日と相成った。当人としては間断なく探しまわりたいところであろうが、休息は健全かつ効率的な作業をする上では必要な処置である。平日が元々オーバーワーク気味であったために、佐伯刑事からは無理をするなとストップを掛けられた。
そんなわけで捜索から数日。警察協力の下行われる探索はそこそこに効率的で、既に合計8個のジュエルシードが集まっている。その中にはいくつか、原生生物に取り憑いて暴れた魔法生物もいたようだ。しかし前回のように人間の意志を反映させていない魔法生物はそれほど強くなく、例え筋力過多になろうとも獣らしい攻撃しかしてこない。つまりは空を飛んで乱射すれば相手からは攻撃できず完全にハメれるわけで。ビルの隙間に潜られてもコチラ側にはキャパディテクターがあるので意味を成さない。と、いうのがユーノがこれまでの経緯を聞いた内容だった。
現在は休日ナニソレな署員と、実戦経験が出来るかも?といった理由からボランティアで大学生がついて来ている。海鳴大学のネジのイカれた彼らだ、勿論しっかり監視込み。巷では空を飛んでいるのが魔法少女じゃない!と憤慨している方々がいたとか。空を飛んでいる女子大学生は少女扱いされず涙を流した。
既になのはが遭遇したものも含めてジュエルシードが変化した数は4回。だが不思議な事に、それだけあったにもかかわらずけが人が出たことは一度もない。現在は市街地を中心として探しているため人の行き来は多い。だというのにけが人すら出ないのはどういうことか。モノがモノだけに不可解にすぎる。勿論被害が出てないことは僥倖であるが、頭の中にある漠然とした不安を取り除くことは出来なかった。
暇が出来たユーノは、資料室で許可が出た本を読み漁っている。地球の魔法に関する情報、日本の歴史、サブカルチャーに戦争関係、常識本からビジネス、果ては何故かあった料理本まで様々だ。遺跡発掘調査を仕事とするユーノにとって、情報は何よりの武器である。物事の流れというのは、全体を一つの根として分岐している。そのためジャンルが違っていても、どこかにつながりがある限り、それは物事を理解するためのヒントになる。日本で言えば精神性は食文化に強く現れている。精進料理などがソレに当たるだろう。
「…………」
あちこちから出してきた本はうず高く積まれ、座禅の型をとるユーノの周りで塔を形成している。更にその周囲をいくつかの本が宙を舞い、ペラペラとページをめくり続けている神秘的な光景が広がっていた。これがユーノが得意とする、独自で編み出した読書用の魔法。マルチタスクをふんだんに用いたこの魔法は、複数の本を同時に速読することが可能だ。デバイス無しでも魔法を組み立てる事が出来る非常に繊細なユーノの本領。
それにより読了した本は多く、まだ朝も早いというのに一般的な日本人並と言える程度には補完出来ていた。これならば外に出しても立派にお使いをこなせるだろう、とは佐伯刑事の談である。本人がソレを聞いたら怒るだろうが。
汲み取った知識のひとつの推察をユーノは続ける。「魔法」、管理世界では当たり前のように利用され、地球では新興技術「マギテクス」と呼ばれるそれを。魔法は魔力素と呼ばれるエネルギーを魔力に変換し、いくつかの現象を起こす技術だ。それらはどれも科学技術の延長でありながら超常的であり、かつプログラミングで制御できるという異質なものである。
ユーノにとって地球は、質量兵器全盛のカルチャーショックもいいところの前世紀だ。管理世界の歴史の流れからすれば、魔法が発明されたばかりの時代は数百年以上前に遡る。彼からすればタイムスリップをしたような錯覚に陥るようなものだ。単純に見れば世紀の瞬間に立ち会えたような高揚とした気分に浸れるだろう。しかし、発掘家、そして歴史学者でもあるユーノにとって、地球の状態はいささか不自然だった。
まずそのようなエネルギーが見つかった場合、基礎研究から始まり、少しずつ何に使えるかを見定めていく。しかし、発祥からたった三年で魔法を、そしてデバイスを作り出せるか、と言われればNOとユーノは答える。あまりに早すぎるからだ。果たして誰が、魔力に対してプログラミングという機械的なアクセス方法で、現象を行使出来るようになると気づけたのだろうか。代替エネルギーとしての利用はともかく、そこに行き着くまでには十数年はくだらない時間が必要になる。それはまがいなりにも魔法が高度な科学であるからだ。つまり、地球の開発速度は異常どころではなく、さながらミッシングリンクを発生させたような様相を呈している。
「これは……、管理世界の誰かが開発に関わっている?」
その疑問が、確信に変わったのはとある条約を読んだ時だ。
マギテクス利用規約に関する条約
国連において発表と同時に結ばれた、しかししっかりと報道されておらずあまり大衆には知らされていない、大発表の裏に隠れた法がある。ここには簡潔に述べれば「マギテクス技術は地球の平和利用に準ずる」、といった類の条項がつらつらと述べられているが、一部許可が必要、もしくは禁止されている魔法が列挙されていた。それは以下、
・サーチャーの不正利用
・召喚魔法の行使
・幻術魔法の行使
・結界による捕縛行為
・個人による転移魔法
・変身魔法の行使
・使い魔契約の行使
と書かれていた。
「やっぱり変だ、この世界」
単純な出力で利用できる砲撃はわかりやすい。下手な制御を必要としないからだ。加えてビームとなればSFをこよなく好む人なら、できるとわかれば誰だって開発しそうなものである。その理論から行けば「魔法」というジャンルに含まれる時点で、好奇心旺盛な地球人はあれこれ開発しそうな気はするが。特に日本人あたり。
邪念を払い、冷静に考え直す。研究そのものは3年より更に前からでも、果たしてこれほどのジャンルを確立させて、その危険性のノウハウを蓄積できるのか。間違いなく無理だ、知識を有する誰かが関わっていなければ。
ジョニー・スリカエッティ。
アメリカ国籍の世紀の大発明家である。しかしその有名具合とは反比例して、顔を見た人物は少ないと言われる謎の人物。極度のひきこもりだとか、コミュ障だと揶揄されはするが、まず間違いなく怪しい人物筆頭候補である。もしもこれほどの魔法を一手に開発できるのだとすれば、この人物は管理世界においても名を馳せていた人物ではないかとユーノは推測する。
しかしそのような名前に覚えはない。
元より科学方面の知識に疎いユーノは、自身の記憶が頼りになるとは思えなかったため案の定といったところか。だが開発系の人物だと思い当たるのには、理由があった。例えば管理局員の場合は、戦闘用に必要に応じて魔法を取得するが、畑違いのために自身で開発するほどの人間は早々いない。更には魔法は得手不得手もあるので、これほど多岐にわたる魔法を開発できる人間は戦闘員なぞやっていないだろうことが一つ。同様に、これほどの手段と才能を持っているなら間違い無く英雄レベルの尊敬を浴びているような存在だ。加えて、局員であるなら不用意に魔法バレをしない。なのでこれはありえない。
残りは管理世界にいられないような犯罪者くらいだろうか。しかしわざわざ管理外世界に逃げるような人間なら自分から目立つようなことはしないだろう。まがいなりにも管理外として番号を打たれた地球である。管理局の巡回コースには入っているだろうから、そんな愚挙を犯せば確実に居場所が割れる。
となると、あとは魔法関係に有能であるのは開発者くらいしかいないだろう。それも相当野心家の。魔法技術を管理外世界に流出させるのは管理局法によって禁止されている。それは発展途上の世界にとってオーバーテクノロジーであるため、順当な発展を促せないことにある。管理局の歴史的観点に倣わせられる事は、地球側からすればおこがましいとでも言われそうだ。しかし、大きすぎる力は災いを呼ぶと言うように、自分たちの前の世代がロストロギアを手に戦争を繰り広げていた歴史はけしようのない事実であり、教訓であった。ここで開発者を野心家と結論づけたのは、そんな事は知らぬとばかりに魔法を使い名を馳せようとしたのではないかと結論づけたためである。命知らず、この言葉がよく似合う。
「それでも、ここまで見つからないというのは不自然だ」
3年という長い期間、地球の現状が噂にすら上がらない。多数の世界があり足りない人手で巡回しているにしても、数回くらいは通っていてもいいだろう。魔法反応があれば反応が小さくとも、量が多ければ気づけるはずだ。次元航行艦の検知能力は並ではない。管理外世界が魔法を使えるようになった、という事例は滅多に無かったはずで、知れば大騒ぎどころではないだろう。
誰かが情報を止めている。
筆頭は管理局。件のジョニー・スリカエッティと共謀しているという、魔法秘匿の前提条件を翻した荒唐無稽な理由ならばおかしくはない。ただ、それによって管理局が得られるメリットがわからない。何より管理局は「正義」を標榜する組織であるため、他世界を巻き込んだ行為は批判の的にしかならないはずである。
そして、それだけの情報封鎖などをしているということは常時監視に近い状態になるのは間違い無いだろう。本当にそうだった場合、「目的」からそれるような事が起こった時に対処しなければならないのは管理局自身だ。
だとしたら、何故ロストロギアを落とした自身を助けにこないのか。
――もしかしたら、このような事態も予想済みで放置されている?
いやいや、それこそ荒唐無稽が過ぎるだろうとユーノは考えを切って捨てた。発掘家という気質柄、最悪の事態をいくつも想定しておくことに慣れているユーノはどんどん泥濘に嵌りそうになる。しかし、管理局のあり方の矛盾が出てきたあたりでさすがに考えすぎかと思ったのか、コレ以上考えるのをやめた。もしもそこまでの事態ならば、既にユーノの状況は詰んでいるのと変わらない。
どのような対応をしていたかが分かるのは、ロストロギアが次元震を発生させるなどのトラブルを管理局が感知した時。もしくは自分の乗っていた航行艦の救難信号を管理局が受信して、地球にやってきたときのいずれかだ。もしも巡回している局員が黙っているだけならば、他の局員によってお縄になるだろうし、管理局全体の悪巧みであればきっと自分では関わりようのない、地球側組織との空の上の出来事が繰り広げられる事となる。遅いか早いかの違いではあるが、ある意味自身は管理局に知らせるきっかけを作ってしまったと言ってもいい。
そういえば、海鳴署は組織の上位である県警や警視庁に応援要請を求めていた。先日の大学の事件での脅威度を再認識したのか、とりあえず県警の管区機動隊は出てきてきたものの、ソレ以外は議論が真っ二つに割れているらしい。
理由は2つ。正直に報告したユーノが宇宙人でジュエルシードがどうとかいう、フィクションのようなデタラメ話を信じていないこと。そして科学的見地から見てただの宝石がそんな不可解な現象を発生させるかバカバカしい。というのが否定派の言い分らしい。報告には証拠映像もつけて提出しているのだが、映画じゃないの?と頑なに認めない人物がいるとか。正直問題はそこではなく市民の安全なのだが、こういった論点が摩り替わってしまう人がいるのもまた人間である。信用ならない部分があるのは管理局とて警察とて変わらない。それこそ未だ目に見えて大きな被害が出ていないことも大きい。そこまで人員がいるのか?と。
後は個人的に政府の役人と繋がりのある高町士郎の連絡に期待するしか無い。もしも仮に、それが上手く行って要請が受け取られた場合どうなるか。まずは自衛隊の出動、ジュエルシードを災害と取るか否かで判断が分かれるがありうることだ。次に政府としての対応。宇宙人の存在が明らかになり、強大な組織である管理局への交渉、または対抗手段を整えなければならない。その場合はユーノと、ジュエルシードの確保が鍵になる。もしもそうなった場合、日本政府だけでの交渉にとどまらず、国連も出てくるだろう。相手は星の群衆、ただの一島国の政府だけが抱える問題にするには許容を超えている。
話が広がれば広がるほど、事とユーノの存在価値も比例して大きくなる。一つの街に落ちただけの石ころが宇宙を股にかける大スペクタクルになるのだ。ならば管理局が反応しようが地球が反応しようが、ほとんど取るべき道は決まってしまったといっていい。恐らく自分はその橋渡しを務める事になるだろう。未来の責任は重大だ。
「例えそうだとしても、今はジュエルシードを集める事しか出来ない……よね」
できるだけ現地の人々に被害を与えないように。ただそれだけを決意しながら、彼は読んでいた多数の本を一斉に閉じた。かなり長い推測のようだったが、時間はまだ朝。なのはから電話がかかってきたのは、ちょっとした脳の疲労をため息に込めて吐き出した、そんな時である。
あいも変わらず説明会で申し訳ないです。次回から頑張ります。