12/18 ジェットエンジン部の表現修正、カバー等
※リニスの表現を間違えてたので後々修正します。尻尾も耳も出してませんでした。申し訳ございません。→修正しました。
部分修正:
H25.02.15
国枝&三本をPMCから自衛隊員へ変更
――夢を、夢を見ていました。
――長くて近く、短くて遠い、時の彼方に埋もれた悲しい夢を。
何故そんなふうに感じたのか、ワタシニハワカラナイ。
空を裂き森を駆け、天を白桃の光線が疾走る。
対するは、金。回避機動を取りながら靡く髪が光り、高速で駆け巡る閃光はジグザクにラインを描き私に迫る。
それに抗おうとして私は剣を振るおうとする。しかし反して私の体は硬まったまま。
動けないからだが、こんなにももどかしい。眼前に迫りつつある脅威は今にも、突っ込んでこようとしているというのに。
そこまで考えて、私の脳からはそもそも近接武器等を持っていないことを告げられる。
そして気づく。
これは、私じゃない。
普通なら浮かぶはずのいくつもの回避パターンが浮かばない。
愚直なまでに射撃する魔法にはフェイントの欠片も入っていない。
プロテクションも、身体操術も、何もかもが稚拙……!
考えている間に、私は金色の鎌に叩き落される。真紅に塗られた悲しい瞳だけを心に焼き付けたまま。
「――……!だい……うぶ――!」
遠くから声が聞こえる。私はソレに反応して倒れたまま顔をその方向に向けた。
あれは、お兄ちゃんだ。心配そうに、こわばった顔で、今の私では追いつけないほどの速度で駆け寄ってくる。
そして傷ついた私を抱えて、お兄ちゃんは叫んだ。
「大丈夫か!!かなみぃぃー!!!」
「かなみって誰なのお兄ちゃぁぁーーん!?……あれ?」
起きたばかりの視力の戻らない目にビシビシと太陽光が入る。
叫んで体を起こしたなのはのいた場所は、ベッドの上。今見ていたのは紛うことなき夢、夢オチである。
しかしなんという夢を見たのだろうか。まさか自分の名前を間違えられるというショッキンドリーム。これが普通の少女であるならふてくされて3日は口を利かないレベルだ。そういえば昨日は夜遅くまでアニメを見ていたことを思い出す。もしかしたらそれが影響したのかもしれない。どこからかリュウホーゥ!カァーズマァー!と幻聴が聞こえそうだがそんなことはない。ないったら無い。
『おい、どうしたなのは?開けるぞ』
「あ、はーい」
渾身のツッコミを聞いていたのか、恭也がドアを開けてあたりを見回す。ゴキブリでも見たと思ったのだろうか、確認し終えると特に叫ぶようなものはない、と考えて首をひねった。
「……何叫んでたんだ?」
「え、えーと。なんでもないです……にゃはは。あ、そうだお兄ちゃん」
「何だ?」
ふと疑問に思って、なのはは兄に問うた。
「かなみって誰?」
「いや、知らんぞ?誰だソレは」
「だ、だよねぇ……」
もしこの質問を月村忍の前でしてみたらどうなるだろうか。多分「へー、ちょっと屋上まで(以下略」となること必定。ただの質問が浮気の問答にレベルアップしてしまうのは間違いない。
「ところでなのは。今何時か、わかってて言ってるのか?」
「え、何時ってそれは6時じゃ……あれ?」
普段は優しいはずの兄の笑顔が、ドコか恐ろしい。そして携帯を見て固まる。今の時間は――!
「そう、10時だ。まさか訓練をすっぽかして爆睡しているとは俺も思わなかったよ」
やばい、となのはの顔が青ざめる。確か今日は午前中は近所の神社まで階段を駆け上り、そこから模擬戦をする予定だったはず。つまり敬愛する兄と姉をほったらかしにしていたことになるのだ。普段はシスコンではないか、と思われるほどなのはを猫可愛がりする恭也だが、事修練に関しては生真面目で鬼のようなトレーニングをなのはに課すこと日常茶飯事。とはいえそれも護身のためと思えば、そんな行動も偏に彼の愛ゆえに、である。
「さぼった罰だ。月村邸まで走ってこい。全力でだ」
「お、お兄ちゃんの鬼ぃぃぃーーーー!!」
高町家の朝は今日も騒がしい。そのせいで、先程見た夢の違和感も霧の中へと消えてしまっていたなのはだった。
月村家は海鳴に拠点を置く富豪の1つである。ブルジョアを正しく表した広大な土地を持ち、中心に座する邸宅までの距離は庭と称する土地も含めるとかなり長い。そのため市街地からはそれなりに離れた距離にあり、近隣のバス停からもそこそこの時間、歩かなければたどり着かない場所にある。
今日はその月村邸で、ちょっとした慰労会をしようと話が持ち上がった。ジュエルシード捜索が開始されたから既に二週間。海からの引き上げも無事に終わり、これから市外や外縁部が捜索のメインに移り変わることで一定の安全を確保出来たためである。そのため日夜駆り出されるユーノと、戦力の充実により予備人員となったなのはを労おうと少女たちからの提案である。
「それで、なんでなのはは初っ端からへばってるのよ」
「……ぜっ……はぁ、はぅ。アリサちゃんもお兄ちゃんの特訓を受ければわかると思うの」
「そういう事を聞きたいんじゃないんだけど、全力でお断りするわ」
「あはは、災難だったねなのはちゃん」
月村邸の門前に到着したアリサ、それと迎えに来たすずかは揃ってなのはに声をかけた。結局、ペース無視の走りこみは実行されることになった。最初は兄の乗るバスを追いかけ、その後は走る兄(手加減)に追われる鬼ごっことなった。送迎されるアリサの乗る車を全力で横切っていったなのはを見て、彼女は「あぁ、またか」と呟いたらしい。追う兄は実に涼しい顔をしていたが、この二人でなければ少しばかり犯罪臭ただよう光景である。高町家の誰かが走っているのはもはや海鳴名物といっても過言ではなかった。
「ま、それはいいとして。私たち自身が言うのも何だけど、この光景はちょっとハマり過ぎじゃない?」
「そうだねぇ、深淵のお嬢さ、じゃなくて貴族の息子……みたいな?」
「あ、あはは……。ってすずか、さりげにすごい間違いしてない?」
ブルジョア娘二人が見たもの、それは今しがた到着したユーノのことである。さらりとすごいことを言うすずかにツッコミをいれるものの、その判断はあながち間違いではない。
彼の後ろには、屈強なボディーガード二人組とリムジンが当たり前のように侍っていたからである!
「僕も正直、ここまで大事になるとは思ってなかったんだけどね……」
ユーノが語るのは、先日交わした契約内容についてだ。確かにボディーガードをつけるとは言われたが、まさかそこらの警備員レベルではなく軍人レベルが来るとは思ってもいなかったのである。何せ背後のその二人、三本陸夫と国枝裕二は日本の誇る自衛隊の隊員なのだ。恭也も二人を見て感心しながら目を細めていた。彼らは主にデバイスやMW(マギテクスウェポン)のテストをメインに活動しており、そこを引っ張られるようにして今回の任についたとユーノは聞いていた。
その結果がコレであり、さながら御曹司のような見た目になってしまったのは無理もない事だった。あの契約の翌日、僕は他のことに気を取られすぎて想像力が欠如していたんだと放心したままなのはに語っていたという。
「ま、そんなわけでよろしく皆様方!三本陸夫34歳、妻三人に子が一人……!あ、逆ね逆」
「こんなクソウゼー先輩は刑事罰でしょっぴいときます。国枝裕二、敢えて言いますが独身です」
二人の態度は他が呆気にとられるくらいフランクだ。ソレは彼らの経験からくるものだ。三本陸夫はそれなりに年になるが、肩まで届くロンゲと鋭い切れ目がどこか若々しさを保っている。いわゆるイケメンというやつだ。そして彼の言ったことは真実であり、若いころに海外のあちらこちらで現地妻を作っている女泣かせの人間である。ただ彼女たちとの関係は良好らしく、そこは彼の軽くも丁寧な性格が幸いしているといっていい。国枝裕二はその後輩、ほぼ丸坊主で普段から険しい顔をしているが、大体が三本に振り回されるせいであり、嫉妬から来ているものもある。とはいえ既に二人は長い付き合いであり、一見ズケズケした関係に見えてもタッグを組んでいるあたり仲はいい。それこそ戦闘ともなれば阿吽の呼吸を発揮するだろう。闘牛親子、それが彼らに付けられた二つ名である。
「よろしくお願いします。ノエル、二人を別室に案内してあげて?」
「かしこまりました。忍お嬢様」
「お、いいんすか?悪いね」
忍がメイドのノエルに彼らの案内を任せ、その後を追う形で全員が邸内へと入っていった。
月村邸は猫屋敷である。すずかの飼う猫達はのびのびと室内を闊歩していた。その光景を見て、
(フェレットでなくてよかった!!!)
と、ため息をついていた。どこか悲壮感漂う未来を幻視してしまったのかもしれない。なのはは普段から動物とのふれあいが無いのか、黙々とオヤツを噛むデブ猫を膝に抱えている。
「それにしてもユーノ君までブルジョアだと、一般人は私だけになっちゃったね」
「ど・の・く・ち・が!そんな事を言うのかしらぁ~?個人資産はアンタが一番多いでしょうが!」
「ぐぇ!アリサちゃんギブギブギブぅ!」
4人はほとんどテラスと大差ない部屋で、テーブルを囲んで紅茶を飲んでいた。話が盛り上がる中で、なのはは唐突に当たり前のようなことを言ったのだが、それはアリサにヘッドロックでツッコミを入れられる。何せなのはは例の空撮動画をアップして以降、オファーによりいくつも製品を出している。それらはワールドワイドにヒットを生み出し、今や小学生とは思えないほどの金持ちとなっていた。彼女の動画が売れたのは斬新さとマギテクス利用の先駆けもあるが、何より彼女の撮影センスが映えていたからだろう。戦闘機並みのアクロバット飛行を低地で繰り返しても、視聴者が酔わないよう丁寧に撮影されているのである。木々の間をするすると抜け、ターンを描いて一気に太陽光あふれる空へと飛び出す。もはやこの一連のシーンは彼女の代名詞となっていた。
余談ではあるが、なのはの自室クローゼットの中には大量の撮影機材が置いてあったりする。収入にモノを言わせて買ったのだが、女の子らしくないカオスな光景が閉じ込められているようで怖いものがあった。
「うぅ、ひどい目にあいました」
「自業自得よ」
「ちなみに僕の場合はブルジョア(笑)だと思うんだけど……」
「卑下しすぎじゃないかな?たしかに物珍しさはあるかもしれないけど、ユーノ君頑張ってるし」
互いが互いに感想を言い合いながら、話題はコロコロ移り変わり話が盛り上がっていく。前回会ってからの一週間で、話したい事が色々溜まっていたのかアレコレ飛び出していた。その途中、ある程度落ち着いた間を狙ってかどうか知らないが、目を爛々と輝かせた忍が入ってきた。何かを取りに行っていたのか、後ろをついてきた恭也はどこか渋い顔をしている。
「さぁ、私は恭也と部屋でイチャイ……ゲフン。の前に、マギテクス発表会を行いたいと思います!」
どこからかワーと歓声が聞こえる。合いの手を入れたのはノエルとファリン、さすが従者の鑑である。子供たちはイキナリのサプライズに何が起こるのかとワクワクと戸惑いが半分ずつ。
「勿論すずかのも持ってきたわよ」
「それ作りかけなんだけどなぁ……」
姉は暴走しているようだ。こうして大勢にお披露目出来る機会を単純に待ちわびていたのだろう。
「それじゃぁ恭也はこれをつけてね?」
「これは……指輪か?」
「左手の薬指につけてもいいのよ?」
「いや、それは……その。……そういうのは、俺から渡したいんだ、がっ!?」
「きゃー!!やだ恭也ったら!!」
バッシンバッシンと顔を赤らめながら背中を叩く忍。訂正、姉は大暴走しているようです。なのはは両親並みに広がる超絶桃色空間に拍手喝采である。ここでまともなのは唖然としているその他三人だけ。むせながらも、とりあえず指輪は人差し指に付けることにした。
「それで、これからどうすれば?」
「その指輪の上に反対の手のひらをすっと、差しこむようにかざしてみて?」
「……こうか?」
何か嫌な予感がするな、と感じながらも言われた動作を行う。瞬間、指輪から電子ボイスが流れ、
『シャバドゥビタッチヘンシーン』
「おい、やめ……」
止める間もなく、恭也は光りに包まれて衣装が変わる。元々着ていたシャツに被せるように黒い外套が出現し、彼の姿は暗殺者、もしくは旅人のような姿に変化を遂げた。周りの目線が痛い。首から錆びた音がするような動きで、恭也はニコニコと笑う忍に向き直る。
「……で、これはなんだ?」
「変身ヒーローってかっこいいと思わない?」
「今直ぐ普通の機能にしてくれ……」
えー、と文句を言いながらも、渋々忍は機能設定をオフにする。どうやらオプションだったらしく、搭載したのは茶目っ気によるものだそうだ。
「で、結局これはなんなんだ?」
「フフ、なんと量子格納庫!カバンみたいなものね。コートは一応魔力コーティングがしてあって、その内側に恭也の武器を収納できるようにしてあるわ。個別に取り出すことも可能よ?ストレージデバイスの亜種みたいなものね」
ようするに、魔法機能無しの容量特化型デバイスらしい。ほう、と感心したのか恭也は何度かオンオフを繰り返す。今度は音声は鳴らなかった。なのはを追い回す際に持っていた刀や飛針、鋼糸も一緒に格納しておく。
「……いいわね、変身ヒーロー。子供に受けると思わない?」
「間違いなく採算が取れないと思うなぁ」
アリサはあれでオモチャが作れないか考えていた。すずかはそれをやんわりとたしなめる。少なくともデバイスコアだけでおもちゃではない値段になることは確定だ。
「じゃぁ次はすずかの番ね。あなたの才能、存分に自慢しちゃいなさい」
「は、恥ずかしいけど。うん、じゃぁこれを、なのはちゃん」
「にゃ?私?」
ノエルたちが持ってきた、荷台に積まれた何かに寄ったすずかに呼ばれて近くに移動する。
「じゃぁバリアジャケットを展開してもらえるかな」
「はーい。ぱっと、これでいい?」
「うん、じゃぁちょっと動かないでね」
変わらず重装甲気味のバリアジャケットを展開し、指示に従う。すずかはソレを見て荷台からいくつかのパーツを取り出すと、アタッチメントをバリアジャケットに付け足してからそれらを装着していく。
肩と腰後部に二基ずつ取り付けられたそれは、一つずつに両翼が備えられた飛ぶための機械。ウィングバインダーの存在する純白のフレームの中央には円柱形の何かがあり、カバーパーツに覆われた部分を興味本位で開けた場所に見えたものは、
「ってこれ、え?ノズル?……見た目スラスターとタービン、ってまさか!?」
「ピンポーン。マギテクス式ジェットエンジンでーす」
その回答に、月村家以外の全員がこんどこそ衝撃を受けた。一体何を作ってるんだこの小学生は、と視線が集まる。いまのなのはの見た目は、背面にロケットを搭載したロボットのような状態になっていた。肩部にとりつけられたものは腰部に比べサイズは2/3と小さいが、すずかは一つの回答を生み出していた。
「空戦って基本的に、戦闘機の真似事だよね?いくら慣性や重力制御を魔法で行なっているとしても、急激なターンを行うにはやっぱり限界が出てきちゃうの。で、それを解消させるために作ってたのが、コレ」
確かに、となのはは思う。一応アクセルフィンという高速移動魔法は習得しているが、アレはほぼ直線限定であり、急制動をかけてしまうために使った直後のディレイが長く、連続使用には不向きであった。ソレに比べてこの装備は、魔法に直接関係なく使えるために、ダイレクトに方向転換が出来る。しかもそれぞれが可動式で思念制御できるため、その場での高速旋回も可能となる。つまりこれ、ゲームで言うなればいわゆるクイックブースターというやつだ。
「今は圧縮魔力を内蔵したバレットを使ってて、一回使ったらリジェクトされるようになってるの。それぞれに5個入ってるから、使い切ったらおしまい。……本当なら、動力を常時供給できる魔力炉を載せたかったんだけど。四機分ともなるとさすがに個人で抱えるには大きくなりすぎるから今はまだ。もっと小型化出来たら一基ずつに搭載しようと思ってて、その改良型を別に製作中です。……どうかな?」
本当はデバイスごと作りたかったんだけど、レイジングハートにとられちゃったから。そう語るすずかは熱意をそのまま外部装備のみに注力したのだ。
「うん、ありがとうすずかちゃん!大会に向けてがんばるからね!」
新たな翼を手に入れたなのは。彼女の顔は友達の期待に答えようと力に満ちていた。
「……一体、この世界のドコが技術ランクBなんだろう」
こっそりと、管理局の判断基準に頭を悩ませる少年がいたのは秘密である。
「さて、それじゃあ改めて私は恭也と部屋でイ「あぁ!?」……何事?」
これからさぁプライベートの時間、そう言おうとしたところでなのはが驚いたような声を上げた。同時にユーノも外を向いて同じ顔をしている。
「ジュエルシード反応!?こんなところに!?街の探索は終わったんじゃ……」
「レイジングハート!」
『It was out of a detection range(探知範囲外でした)』
「え!?まだいじけてるの!?」
またあらぬ疑いをかけられては困ると自己保身に走るレイジングハート。実際のところ、容量検知では範囲が狭いのでそのままそのとおりなのだが。
「なんであれ、さっさと行ったほうがいいだろう。何が影響を受けたのかわからんからな」
恭也が音頭を取って、なのはを落ち着かせる。ここにいた一同は固まって動いたほうが安全だろうということで、全員移動することとなった。
深い深い森の奥、月村家の抱える土地はジュエルシードの反応地点に行くまでもかなり移動させられたが、それでも数分は掛かる程度に広い。初めは走っていたメンツも、途中でアリサが力尽きかけたためになのはが抱えて空を飛んでいる。
「そういえばここ私有地だったわね。そりゃ警察も入らないわけよ、盲点だったわ」
しかも面積が広く外からでは検知に引っかからない位置にあったようで、誰にも非はない。
「……到着!……え?」
駆け抜けた足を休め、彼女らはジュエルシードが発動した場所を少し遠目に視認する。しかし、そこにいたのは危害を与える何かではなく、
「……でかにゃんこ?」
アリサの問いに答えるようにニャーと鳴いた、木々の高さをも超える巨大な子猫の姿だった。
「間抜けとはこのことよね」
少し離れた場所を歩く巨大ネコ、もとい化け猫。鳴き声をあげる光景は平和で脱力してしまう。自分たちは危険をなくすために全力でここまでやってきたのに、という肩透かし。まぁ、何も無いなら無いでいいのだ。しかしそれゆえに疑問が残る。
「なんでああなってるの?」
「……多分だけど、大きくなりたいとか願ったんじゃないかな?成長が拡大になってるあたり、ジュエルシードらしい誤認だとは思うけど」
「願いがシンプルなほど叶いやすいってことなのかしら?ところで歩く度にズシンズシンいってるけど、体重も重くなってるのかしら?子猫の骨密度であの重さを耐えられるのかしらね恭也?」
「俺に聞かれてもな」
だが内容はやっぱり適当なままだったりする。完全に気が抜けてしまったらしい。強いて言えば気をつけないといけないのは、ジュエルシードの抽出方法だろう。さすがにネコを攻撃してしまうのは気が引ける。そのネコは実にマイペースに、更に少し離れた後、開けた場所でゴロリと寝転がっている。
「ところで、うちの庭に落ちたジュエルシードなんだから私のものにならないかしら」
「まだ言ってるんですか!?諦めてください……」
「とてつもないジャイアニズムに全ユーノ君が泣いてるよ、お姉ちゃん」
「じょ、冗談よ冗談。オホホ」
絶対冗談じゃない、主の痴態(科学的暴走癖)を知っているメイド二人はこっそりと断定した。
「……うーん。……あれ?」
「どうしたのなのは?」
ネコの足元を見ていたなのはは、不意に映った影に気がついた。
「あそこ、ほら人がいない?1、2、……4人かな?」
「言われてみればそんな気もするわね」
「確かにいるな。気配がある」
恭也も同意したということは間違い無いだろう。彼は警戒心を強め、忍はうちの庭で何してんのかしらと不穏な空気をまとう。ちょっと怖い大人組に威圧されてなのは以外の3人はザザッと後ろに引いた。
「コッソリ近づいてみよう。俺は木の上から。ほかは下からゆっくりと、だ」
「空飛んだらダメ?」
「隠れる場所がないだろ?やめておけ」
恭也が忍者のようにフッと消えたのを合図に、なのは、ユーノを先頭に非武器所持者が後ろをついて近づいていく。ある程度近づいたあたりで、件の4人は何やら騒がしく、不穏な空気をまとっていた。一人は金髪の、なのはよりも年上の女性。成長期に入ったのか子供と大人の中間のスタイルの綺麗な少女、もう一人がそっくりの、恐らく妹のような存在。そして残りは、犬耳とメイドだろうか?何故コスプレをしているのかはわからない。加えて前者は露出気味のナイスバディと、後者は装いこそ高級感溢れる衣装にロシア帽か聖職者の帽子のようなものをかぶっているが、ノエルやファリンと似た雰囲気を感じている。ご丁寧に犬耳にはパタパタと動く尻尾までついていた。
「なぁフェイト、少し落ち着きなって。何も必ずやらなきゃいけないってわけじゃないんだからさぁ」
「ううん、私は、私がやらなくちゃいけないんだ」
「頑固だね。リニスはどう思う?」
「……フェイトお嬢様も初めてのことですから、お好きにしてみればいいかと」
帽子の女性はリニス、小さい金髪は、フェイトというらしい。ネコをじっと見つめる赤目に、今朝見た夢を脳裏に思い出させた気がして、
「ダメだよフェイト、それだけはやっちゃだめだ!」
「答えはノーだよアルフ!私は今、我慢をやめる!」
足に力をぐっと貯め、彼女はネコに向かって駆け出そうとする。それがなのはにはとてつもないデジャヴを生み出し、攻撃をしようとしているように見えて、
「や、やめ……」
「子猫のモフモフに向かって……ダァーイブ!!」
「フェ、フェイトー!!」
飛び上がる金の少女。両手を広げたその様は、翼を広げた天使のように見えたとかなんとか。
「てぇーーーー!?」
あんまりなギャグ時空に、盛大に足を取られてずっこけてしまっていた。「この泥棒猫がぁー!!」とアルフの残響が、虚しく響き、その他全員も本日何度目のか呆れを感じていたのだった。
最近よく「期待通り」を「期待どうり」みたいな間違いをするのを見かける。通例、通常という単語があるように、ひっくり返せば常の通り、例の通り、のように「とおり」となるはずなのだが、最近の国語は大丈夫なのかとふと思った。自分の国語力も大したことはないですが。