魔導変移リリカルプラネット【更新停止】   作:共沈

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あけましておめでとうございます、今年も当SSをよろしくお願いします。年賀絵を描きましたので以下からどうぞ。

https://twitter.com/kyout_n/status/286178489533599744

ってこれで見れるのかな?
(´・ω・`)一話で書ききれるかと思ったが無理だったよ。弱い相手に対する蹂躙って普通に強いもの同士の戦闘より書くのが単調化してしまい難しい……。

それと前話の修正分はまた後日です。

部分修正:
H25.02.15
傭兵集団のバリアジャケットにおける信頼性を若干低下


Leeeeeeeeeet's Partyyyyyyy!!_1

――数日前 管理局首都航空隊

 

 禿げかけた頭を隠すように手で抑えながら、深いという面を隠さず通路を歩く男がいた。

 通りすがりの下士官は彼を見て、しかし敬礼は適当にそそくさと立ち去っていく。ソレも仕方ない、この男、ロス・ドッグ三等陸佐は所内の腫れ物として有名だからである。付いたあだ名は現場知らずの「蛙」だ。それを知ってか知らずか本人は気にした様子もなく通り過ぎる。今彼が気にすべきことは頭……ではなく、これからの未来についてだ。

 

 ロス・ドッグは文官であり、つまりリンカーコアが無いと判断された局員である。管理局の一般常識として、現場に出られる者、リンカーコアがある人間はそれが大きければ大きいほど昇進が早い。魔法が多く使え、威力の高い魔法が使えることはそのまま点数として加算される。有能な人間ほど危険地に派遣され、功績を持って帰る。勿論その分、給与も弾まれている。緊急手当に危険手当、保険に、その他もろもろ。ついでに設備利用費に装備の申請、金のかかることが何もかもが優遇される。それ故才能があれば子供でも使う、という管理局の方針から上層部は学校にも行っていないような脳筋だらけという極端な魔力至上主義が出来上がっていったのだが、とりあえず閑話休題。

 

 まぁソレを考えれば、文官で三等陸佐まで駆け上がれたのはすごいことだと思うだろう。が、彼は既に限界を感じていた。この階級まで上がってきた段階で既に入局25年、年老い後は定年を待つばかりの苦境に立たされている。Sランクの魔力持ちなら駆け足4年でたどり着く階級だ。そして、彼の知っている中でコレ以上の階級になった文官は、ほとんど存在しない。三等陸佐がほぼ上限、このまま何年も同じ階級にとどまる人間を何人も見てきたからだ。ついでに言えば彼の所内での心証も低い。事務仕事ばかりに明け暮れていたせいで現場を知らず、判断命令処理全てにおいて二歩遅い。だというのにしゃしゃり出ようとしてくるから局員にも嫌われ、命令を聞かない下士官に対して憤り本人もひねくれる。完全な悪循環。

 

 だが、それでも悪い意味で向上心の高いロスは出世欲も人一倍である。そんな彼だからこそ、どうにか上に駆け上がれないかと悩み、こうして顔を歪めているのだが、

 

「ああ、知ってる?第97管理外世界にロストロギアが落ちたらしいよ」

「へぇ?でも一概にどんなものか、わからないわねそれじゃ」

 

 曲がり角から、そんな会話が聞こえた。何故かふと気になってしまい、彼は角からコッソリと会話の主を覗く。そこにいたのは二人、茶髪の少年とメガネをかけた美人の女性局員の二人。傍から見れば少年が話題をキッカケに、背伸びしたナンパを敢行しようとしているようで少し微笑ましい。しかしロスが注目したのはそこでなく、そこから続く話の内容だ。

 

「ああ、ジュエルシードっていうんだ。なんでも21個あって、願いを叶えてくれるらしい」

「ソレって、なんでも?」

「そう、なんでも」

「素敵ね。なら私は最高級のネックレスでも願おうかしら」

 

 すました顔の女性に「俗物が……」との視線を向けながら、彼は思う。願いを叶えるロストロギア、それが一回につき消費されるものだと考えても、21個は破格過ぎる量だ。それが第97管理外世界に、落ちた。それをイメージした瞬間、彼の欲望がむくむくと湧き上がるのを感じる。しかし自分は唯の陸の局員。華の海のエリートが時期に回収してしまうだろうことを悔やんだ。しかし、彼らの話はそんなことに関係なく続いている。

 

「でもあなた、なんでそんな事知ってるの?」

「ロストロギア運搬の依頼申請だったんだけどね、なんとこの依頼。他のロストロギア発見報告の山に埋もれてスルーされたのか、受理されていないんだよ。それが気になってさ、色々調べたってわけ。海の奴らはそのごたごたでほとんど出払ってるし、チェックしてる奴は未だにいなかった」

「深堀したってわけね。ふふ、職務怠慢じゃないのそれ?報告はしたの?」

「知らないよ。俺は陸だぜ?いちいち海のエリート様にかまってられないよ」

「あら、イケナイ子ね」

 

 それを聞いて、ロスは即座に踵を返した。向かう先は自分の執務室。PCと向かい合い申請内容を上から順にたどっていく。そうすると、確かにあった。ユーノ・スクライア、かの有名な発掘一族であるスクライアからの依頼だ。申請日から既に何日も経過しているにも関わらず、言っていた通りの状態になっている。その上も同様にロストロギア関係の依頼で山積みになっていた。この申請直後に来ていた大量の依頼はほとんどすべてがわずかな時間差で並んでいる。作為的、ともとれる報告だったが目先のことばかりに向いている彼は気づかない。

 

 そして彼はその申請が解決したことにし、そのデータを隠蔽した。即座に有給休暇を取り、執務室を後にしてかけ出した。

 彼は気づかない。その噂を流していた少年が管理局員でないことも、話していた相手から注意して聞きとればわずかな機械音が出ていたことも。

 

 

「……あれ?」

「どうした、ティーダ」

「いや、今ドッグ三等陸佐が走ってどこかに行っていたような」

 

 それを聞いた相手の局員がなんだそんなことか、と一言入れた後大げさにため息をついて頭をふる。

 

「いいんだよ、蛙の事なんざ気にしなくったって。どうせいてもいなくても変わりゃしねえんだ。それよりもほら、さっさとメシにいこうぜ」

「あ、ああ……」

 

 今は一介の局員であるティーダ、彼もまだ、そしてこれからも知ることはない。このロスの一連の行動が、自分自身の閉ざされた運命の戸口を大きく開けることを。

 

 

 

 

 

魔導変移リリカルプラネット:急転直下

 

Sub title : Leeeeeeeeeet's Partyyyyyyy!!

 

 

 

 

「皆っ、大丈夫!?」

「ええ、なんとか……!」

「もぅ!何よ、何が起こったの!?」

 

 自身の周囲をゴゥっと巻き上げられた粉塵が渦巻く。恭也の声に即座に反応し、既にバリアジャケットとレイジングハートを展開していたなのはは、ワイドエリアプロテクションを張ることで事なきを得た。他の全員も個別にプロテクションを展開していたが、最終的には彼女の防御がすべてを覆っていたのだ。しかし、守ることができたのはこの場にいた人間のみ、すなわち――

 

「子猫は!?」

 

 距離が離れていた子猫を守ることは出来なかったのだ。なのはの顔に脂のような汗が張り付く。レイジングハートの先でわずかな砲撃魔法を爆発させ、風を生む。猫のいた直線上に向けて、周囲を覆っていた煙幕が晴れて一気に道が開けた。しかしその先にいたのは、

 

 

「悪いが、こいつは頂いた」

 

 

 ジュエルシードを抜き取られ、既に元の大きさに戻っていた子猫を踏みにじるグレー調のバリアジャケットの傷ついた顔の男と、その後ろに控える一党、計20人もの団体だった。

 

 

 

 

 

 次元航行艦を所持する盗賊は多い。運送業で利用されるほど一般的であるため、中型艦程度なら買うのもさほど苦労しない。もっとも彼らは盗賊であり、当然のごとくそれは盗品である。こういった違法魔導師は特定できないものも含めれば数多く、管理局は対応に苦慮しているそうだ。

 

 その中でも彼らは、ダークアイズは傭兵集団というくくりである。基本的に依頼を受け、条件を達成するためなら、もしくはその過程であれば何をしても構わないというスタイルだ。普通に盗賊でないのは、トップであるデュアリスという男とその子分達との認識に齟齬があるからである。

デュアリスは魔導師ランクAAの元管理局員だ。それが傭兵という身にやつしているのは、単純に彼らの標榜する正義と相性が悪かったことにある。

 

 ただ、強くなる。

 

 それだけを思い、ただ戦い、戦った相手を完膚なきまでに潰し、それ故彼が検挙したはずの犯人はそのすべてが重傷か、もしくは死体と化した。管理局の倫理からすれば明らかにやりすぎであり、非殺傷を解除する彼の行動は当然問題視されることになる。そのため彼は処罰が自分に届く前に姿を眩ました。

 

 そして殺しても構わない危険な依頼、いわゆる裏稼業を生業とした。世界を渡り歩きながらデバイスを強化し、技術を盗み、依頼主にとって目障りであるならそのものの善悪に問わず組織を潰し歩いた。子分たちはその中で運良く生き残り、彼の暴力性に惹かれて追従した者たちである。

 

 彼らに共通点があるとすれば、それはどちらも貪欲だということだろう。デュアリスは強くあるために他者を潰し、その残飯を漁るように群がって好き勝手をする子分、ハイエナだった。そのため子分たち自身はさほど高い実力があるわけではない。だが彼にすがり強さにあやかることで自分たちを大きく見せる卑しい男達だ。

 

 しかしその互いの関係が空虚というわけではなく、子分たちが手にする金銭や物資は彼らの運営費となりデュアリスもその恩恵に授かることになる。歪ではあるが、彼らは共存関係にあり互いが互いを頼っている状態に自然となったのだ。

 

 そして暴力の限りを尽くしていた時、とある依頼が入る。管理局員からのロストロギアを確保という、あからさまな罠だと思えるようなそれ。しかし話を伺えば、確保したロストロギアは一個以外はすべて自分のものにしていいということだし、何より依頼した当人も相応に強欲であった。ならば彼らが断る理由はなく、強くなるために、奪うために、魔法文明の無いとされる第97管理外世界に降り立つこととなった。

 

 

 

 

 

「おいおい、いい女がいるじゃねえか。見ろよジョッシュ、ボンキュッボンだぜボンキュッボン!」

「グヘ、おいはそれよりあそこのガキどもがいい……」

「っげ、お前ロリコンかよ!?いいかぁ〜、近づくなよ?変態がうつっちまうからなぁ!!」

「無機物フェチに言われたくねぇよこのダラずが!」

 

 少女たちに下卑た視線が突き刺さる。しかし彼女たちは泣くでもなく怯えるでもなく、猫を害された怒りから燃え上がるような睨みを返した。戦う心構えのできていないアリサやすずかのような一般人も、わずかな足摺だけをして耐えた。彼女たちは立場上、誘拐など特殊な状況に陥り、こういった視線にさらされた経験がある。もちろん慣れているわけではない。だがここには、頼りになる友がいる。戦う力がある。守るための手段がある。なればこそ、彼女たちは引き下がらない、下がってはいけない。

 

 それを眺めていた男たちは、その態度に嘲笑から怒りに変化した。自分たちを恐れるのは当然であり、彼らの力は絶対だからだ。次に彼らはメンチ切りをし数々の罵声を浴びせる。

 

「すましたツラしてんじゃねぇぞごらぁ!!」

「舐めた真似してどうなるかわかってんだろうなぁ!!」

「俺たち管理世界に名を轟かすダークアイズを知らねえとは言わせねえぞ!!」

 

 バカバカしいまでに、三下。こんなでは蹴散らされる未来が目に見えている。ていうかダークアイズって何、中二病?中二病レベル1なの?というか管理世界なら知るわけないでしょこのバカども!!以上、アリサが抱いた感想である。しかしその煮えたぎるツッコミはおいておき、彼らには言っておかなければならないことがある。

 

「それをどうするつもり、あなた達?危ないものと知っていてやってるのでしょうね?」

 

「知らぬ」

 

 てっきり三下が答えるのかと思ったが、答えたのはボスと思われる角刈りの、顔に多くの傷がついた無骨の男。彼の言動はシンプルではあるが、なんらかの凄みがある。だが、と彼は前置きを置き、

 

「強くなるために、ただ奪うのみ」

 

 重い空気を纏った告白は続き、

 

「魔導師がいたのは、いい意味で誤算だった。潰す楽しみが増えるというものだ」

 

 言い切り、彼はニヤリとあくどい笑みを浮かべる。

 

「そお、なら……うっとうしいからとっとと倒れなさい!」

「月村の敷地に入って、ただで出られると思わないことね!」

「子猫を、許せない!」

「続きなさい、アルフ!」

「舐めてんじゃないよあんた等!」

「僕が猫を助けます!」

 

 アリサの喉を掻っ切る動作に続き、次々と彼女たちは口火を切り突撃を開始した。彼女たちの怒りもまた、すでに頂点に達していた。

 

 

 

 

 瞬く間に森は戦場と化した。あっちこっちで魔力弾による土煙が上がり、敵の非破壊を解除した魔法により木々はなぎ倒されて行く。しかし、その騒々足たる中で、戦闘ができるはずのフェイトは展開したデバイスを立て、静かに佇んでいた。

 

「どったのフェイト?いかないの?」

 

 身体中のあっちこっちから、何に使うのかわからないメカニカルアームを展開装備したアリシアが問いかける。しかしフェイトはどこか茫洋としたままで独り言のようにつぶやく。

 

「私たち、ピクニックにきたんだよ」

「うん、そうだね……?」

 

 それ、本題からそれてない?と思うが、フェイトの独白は続く。

 

「久しぶりに庭園から出て、お日様の光を浴びて、おっきな猫と遊んで、それから、たくさんのお友達ができて」

『OK,Boss』

 

 いやいやいや、何がOKなのか。フェイトのインテリジェントデバイスであるバルディッシュの電子音声に続き、ガキンガキンと撃鉄を打ち続ける音が二つ。おいおい、それはカートリッジじゃあないのか。指示も無く何を勝手に装填しているのだ。

 

「絶対に、許さない……!」

「はい、退避ー」

 

 もうダメだ、今の一言と前の文章が全くかみ合ってない。ぼうっとしていたわけでなく、フェイトは静かにキレていた。それも相当に。彼女の繰り出す一撃に備え、アリシアは静かにきれているフェイトのそばからこっそりと逃げ出した。

 

「轟け!!」

『Plasma Smasher』

 

 金髪の少女が振り上げる金の魔力を圧縮した腕。本日午後、局地的な雷が日本の一都市で発生したという。

 

 

 

 

 

「……フェイトちゃん!……なんて威力」

 

 拡散する雷が魔力の誘導に従い、敵だけを穿つために瞬動する。なのはをブラインドにして両端から飛び出した雷は、空にいた数人の敵魔導師を撃ち抜いた。いくら非殺傷とはいえ、レアスキルによって変換された擬似雷の痛みは壮絶にし難く、耐性のないバリアジャケットではそのダメージもしかりだ。それをなんとか耐えようと踏ん張るが、追加とばかりに桜色の一閃が切り抜ける。

 

――ディバインセイバー

 

 なのはが得意とする収束剣、ナノスライサーと呼べるほどに薄く伸ばされた魔法だ。これは通常の固体化された魔力刃と違い、収束の名のとおり常時流動する魔力を制御されている。細かく振動する魔力は例えるならビームサーベル、固体化されたものはヒートホークぐらいの違いが出るのだ。

 

 つまり、恐ろしいほどの威力の剣を通り過ぎ様に振り抜かれた魔導師たちはすべて、地上へと落下することになる。

 

「そんな、あいつらが落ちるなんて!」

「化け物かなにかかよ!?」

 

 地上では動揺が広がる。それを見やったなのはは、切り捨てた悪を振り落とすようにレイジングハートを一振りするとわずかに首をあげ上を見上げる。ただ一人、金の輝きを受けずに逃げ切っていた男がいたのだ。少女たちがまだ名前も知らぬ男、デュアリスだ。

 

「やってくれる……。強いのだな、貴様ら」

「……あなたとは、語る口を持ちません」

「良い。なればただ、戦うのみだ」

 

 その言葉を最後に、ふたりは構えを取る。なのはは半身を前に出してレイジングハートの切っ先を相手に向け、デュアリスは斧型のデバイスを後ろ手に降り下ろせる体制で。自身の正義のために、片や自身の欲のために。互いが相入れることはない。

 

 

 

 

 

「そら、甘いんだよ!」

「逃しません!」

 

 一方、地上。一定の才能がいる空戦魔導師はごく少数で、その他のほとんどが陸戦魔導師だ。この傭兵集団も例に漏れず8割がたが陸戦魔導師だ。とはいえ所詮はデュアリスにつきまとう有象無象でしかなく、空戦魔導師たちはフェイトの怒りの雷撃によって完全に沈黙してしまった。それにより、相手を蹂躙できると踏んでいたはずの傭兵たちは、大威力の魔法に対する驚きで混乱を余儀無くされる。何故こんな奴らが、未開地にいるのだ、と。

 

「な、なんだこいつらぁ!?」

「やめろやめろやめろやめろ!くるなぁぁぁぁあっ!」

 

 なればこそ、蹂躙するのはこちら側になり立場は完全に逆転する。統率が取れずあちらこちらに逃げ回り、散逸的に攻撃を繰り返す。しかしその程度の豆粒では、アルフとリニスを止められはしない。

 

「クソ、オラァ!」

「甘いよ!これでもくらいな!」

「ッ、プロテクションでーーぐべっ!」

 

 敵のシューターを紙一重で躱し、空を移動する速度と体の捻転を力にして拳を思い切り相手の腹部にぶち込む。勿論男はプロテクションで防御にかかるが、そんなお粗末なものに意味はないとばかりにガラスに似た破砕音を立てて砕け散った。予定通りに突き進んだ拳は相手のバリアジャケットにめり込み、ミリミリと骨をきしませながら吹き飛んで行く。

 

 バリアブレイク、アルフが得意技としている妙技。その名の通りプロテクションに対するカウンターであり、インファイターには必須に近い技能でもある。

 

 あまりの威力に吹き飛んだ男を見ながら、アルフはフッと息を吐き伸ばした拳の残心を解く。傍らではリニスが、フェイトと同様、雷に変化する魔法を持って蹴散らしていた。樹木が多いここでは、それらがアースがわりになって威力が減衰しがちだ。しかしそれもリニスにとってハンデとなるものではなく、使い魔とされた素体であった山猫の特性を持って俊敏に駆け回り、敵の至近距離で火花を散らしていた。

 

 遠近両対応した使い魔のコンビ、共に高ランク魔導師の力を受けた上級の二人、ただの人間には全く引けを取らなかった。

 

 

「へっへっへ……いやいや、いるじゃねえか。魔法が使えねえやつもよぉ」

「男ってのは残念だが、まずはてめえからやってやることにするぜぇ!」

 

 情けなく自信が砕ける一方、こうして復調している者たちもいた。逃げ惑っていたはずの彼らはいたぶる対象を見つけることで、わずかな尊厳を取り戻し協調を始める。魔法が使えないということはバリアジャケットも張れず、遠距離攻撃もできないということだ。リンカーコア持ちというのは、極端にいえば選民思想に引っかかった人間であり自尊心が高い。それに彼らが高ぶらない訳がなく、未開地であることを思い出したのか余計に活気づく。そこに一人、つれた魚のように男が迷い込んだ。4人がかりで囲い込み、集団の有利を持って襲いかかる。その姿は平凡な杖のデバイスを持っていても、野盗にしか見えない。このまま男は砲撃で体をチリにされるだろう。

 

 しかし相手が悪い。彼らが相対したのは、この地球上で最も強い「人間」の一角高町恭也。あと30人雑魚を持ってきたとしても足りはしない。

 

「ここに手を出すとはな。覚悟しろ、お前らが行くのは地獄でも生ぬるい」

「ほざけっ!」

 

 叫び、全員同時に小さな砲撃を放つ。十時にクロスするように打たれた。それをよけられるはずが無く、周りは木々に囲まれている。彼らの中に当たるという確信が生まれる。しかしその程度、覆してこその

 

「ふっ!!」

「なああ!?」

 

 目にも留まらぬ高速斬撃。いつの間にか握られていた二刀の小太刀が振るわれわずかに音がした刹那、砲撃がかき消えた。わずかな風だけが振るったと思われる名残を纏う。

 

「なっ、あ、馬鹿な!?魔法が消えただと!?」

 

 驚くのも無理は無い。なんと恭也は魔法を切ることで完全に魔力を拡散させたのだ。げに恐ろしきは御神流、さすが木刀で斬鉄をこなせる剣術か。生半可などあり得ない。

 

「この程度、なのはの砲撃に比べたら止まって見える。そして、お前達程度には奥義を使うまでも無い」

 

 瞬歩、まるでワープでもしたかのように魔導師の目の前に恭也が現れる。彼がいたはずの場所には深く踏み抜いた一歩の陥没のち。驚きで固まった間をつき、恭也は小太刀をはなした手のひらを彼の胸に向けて軽く、トンと打ち放った。

 

 掌底、物理攻撃の多くをシャットアウトするバリアジャケットにはなんら意味の無い行為。早さに驚きこそしたものの、攻撃を受けていない三人はそれをあざ笑う。

 

「う、おげぇ………!」

 

 だが、受けた方はそれどころでなく、ガクガクと体を揺らし泡を吹いて倒れた。そして再度、残った三人は動揺する。

 

 御神流の基本として伝えられる技、"徹"。対象に衝撃をダイレクトに徹す事でダメージを与える技だ。人体に使えば内部破壊を起こし、武器に対してならば破壊、もしくは強い痺れを引き起こす。そして、この技相手にはバリアジャケットなど無いも同然。それをスルーして内部に与えられたダメージは魔導師に気絶を齎した。

 

 この技は剣でも使用する事は可能だ。しかし恭也が剣を用いて行った場合、魔導師はバリアジャケットごと切り裂かれて血の海に沈む事になるだろう。これは敵に対する手加減ではなく、少女達が血を見ないで済むようにした彼なりの配慮である。

 

 しかし、その配慮は残った魔導師たちには奇怪に映った。彼らにとってバリアジャケットは物理に対しては高い信頼があるのだ。それが破れる事すらなく倒されるなど、理解出来ないし、あってはならない。

 

 自然体で立ち、静かにこちらを見やる恭也に、彼らは心底恐怖した。

 

 

 

 

 

「よし、これで大丈夫だ」

「よかったぁ……!」

 

 牽制をかましに行ったなのはに続き、ユーノは転がるように子猫を回収して即座にもといた場所に舞い戻った。今ここにいるのはユーノに加え、ノエル、ファリン、月村姉妹にアリサ、アリシアの六人。ユーノは攻撃手段を持っていないため、彼女たちの防衛と子猫の治療を優先した。何より攻撃力過剰な数人が迎撃に出ているのだ。むしろ自分がいたら逆に邪魔になるだろう。そんなやるせない感情を食いしばって抑え込み、彼は彼に出来る事を冷静に選択した。そして、治癒魔法によって怪我をなんとか回復させた子猫は今、すずかに優しく抱きかかえられている。

 

「ありがとう、ユーノ君。このこの命を守ってくれて」

「いえ、助かって何よりです忍さん」

「あれ?うちのフェイトは?」

「森の中の敵を追い回してるよ」

 

 見れば、逃げ惑う敵をサーチアンドデストロイとばかりに金色の閃光が森の中をジグザグに駆け回っていた。魔導師たちがあちこちに散開しているせいで非効率な移動をしいられているが、一つ、また一つと彼らの悪意を蹴散らしている。

 

「カッとなっちゃったけど、結局彼らは何者なの?管理世界関係なのはわかったけど」

「多分、盗賊か何かだと思います。それにしてもこんな場所にまで来るなんて……情報が漏れていた?管理局は一体何をしているんでしょうか……?」

「一応言っておくけど、私達じゃないからね?(多分、ジェックが釣ったんだろうけど、まさかこんなものが釣れたなんて当人も思って無いでしょうね。ま、これで地球側は管理局の管理のずさんさという情報と、警戒に値するだけの名目を手にいれられる。未だ管理世界を信じていない各国の官僚もいるらしいし、いい冷や水かな)」

 

 何もかも手のひらの上では無いなぁ、と嘆息するアリシアだが、この状態は逆に好機であった。訪れた出来事のインパクトが強ければ強いほど、比例して政治家たちの警戒心も高まるというもの。ちなみにこの事はフェイトには教えていなかったため、子猫が怪我する様を見させてしまったのはちょっと悪い事したかなぁ?と罪悪感が募る。

 

「げりゃあー!隙ありイィィ!」

「うるさいよ!」

「げぶぁ!」

 

 いつの間に後ろに回り込んでいたのか、森の奥から突っ込んできた敵にメカニカルアームで殴り飛ばす。当然ただの殴りでは敵のバリアジャケットを抜くことは出来ず、吹き飛ぶだけにとどまった。

 

「ゲゲゲ、その程度でやられる俺様じゃねえ!ヒヒ、ついてるぜ……こっちにゃ戦えるやつがいねぇなぁ!?」

「では、私がお相手しましょう」

 

 すっとメイドの女性、ノエルが彼女たちの前に一歩立ちはだかる。ユーノはそれを危険と見て前に出ようとするが、任せてくださいという彼女の自身に満ちた表情から非戦闘者達の防御をより硬くすることにした。

 

「うひょー!マジかよ、やっぱりついてやがる。さぁって、どうしてやろうかなぁ」

 

 指先をワキワキさせながら近づく男。歪んだ顔面の気持ち悪さにアリサは吐き気を催しそうになる。だがノエルは意に介さず、左手を添えた右手をまっすぐに相手へと向けた。それも、グーで。

 

「へへ、一体そりゃぁ、何の真似だ?」

「こうするんですよ」

 

――彼女は唱えた、”ロケットパンチ”と。

 

「ぐぁ!?」

「嘘、マジ!?」

 

 ロボットの定番、ロケットパンチ。腕から切り離されて加速、空を飛び相手に力の限り物理ダメージを浴びせる必殺技。つまり、ノエルはロボットだったということだ。厳密には自動人形と呼ばれる彼女たちは、現代では他企業でも持っていない月村家独自の超技術によって作られている。ソレに驚いたのはアリシアだ。管理世界にはいくつもロボット兵のようなものを作った歴史があるが、どれもが大成せず、技術体系が出来上がらずにいる。だというのにこんな片隅の星に高度なAIが搭載されたソレを見るとは、アリシアもさすがに思ってなかったらしい。

 

「さすが魔力バレット型。炸薬に比べて実にエコですお嬢様、ついでに敵にダメージも通っています」

「勿論、忍さん渾身の力作だもの。思いっきりやりなさい」

 

 元々ノエルには炸薬による爆発推進によるロケットパンチが搭載されていたのだが、マギテクス発表以来改造を重ね、その体は対魔導師用にも対応できるようになっていた。そのため腕部の炸薬カートリッジは排除され、魔力バレットにより推進力とパンチにコーティングをする仕様となったのである。パンチを当てられた男は見事なエビ反りを表現し、そのまま地面に倒れ落ちていた。だが、まだ敵は半数近くいる。

 

「おりゃぁぁぁ!すっきありぃぃぃ!」

「な!?まだ空戦魔導師がいたのか!?だけど!」

 

 空を飛んできたのは、最初から飛んでおらず森に潜んでいた空戦魔導師。デバイスを持って突っ込んでくる男に、ユーノはチェーンバインドを発動させる。先端の輪に、両側からガッチリと掴まれた男はその罠を解除しようと必死に振り回すが、ユーノの堅牢な魔法が早々解けるわけがない。

 

「っち、クソ。とれねえ!」

「今です!三本さん、国枝さん!」

「……あぁ?何が――グォ!?」

 

 ギュゴッと唸りを上げる遠距離からの砲撃。魔導師の背後、認知の外からいきなり飛んできた魔力光が炸裂する。魔導師はそれに耐えようとするが、バインドによって無防備だったために直撃によろめいた。グラリと体が傾きそれる。だがこれだけでは終わらない。遠くから徐々に聞こえてくる音、タービンが出す独特の高速回転音だ。彼はそれを確認しようと精一杯の力を込めてなんとか後ろを向いた。

 

そこにいたのは、鳥。

 

 いや、徐々に大きくなるソレは距離と比べて明らかにサイズがおかしい。でかすぎるのだ。日差しで黒いシルエットがどんどん近くなっていき、ようやく魔導師はそれを認識することが出来た。

 

「ば、ばかな!?戦闘機だと!?」

 

 先端から鋭角に伸びたノーズ、そして揚力を生むためのウィング、後部には赤い魔力光を放出しながら唸りを上げるジェットブースター、ドコからどう見ても紛れもない戦闘機だが、そのサイズはソレというには少しばかり小さい。そして魔導師は更に驚く。その機体が変形を開始したのだ。翼は背部へと折りたたまれ、ジェットブースターは内蔵された魔力炉ごとそのままバックパックへとその姿を変える。あちらこちらの装甲が量子格納され、なんとその中からは人が現れた。それも底部に付いていた魔力砲にバイクのように跨り、それと一体化された操縦用のスティックを持っている。変形が終わると中にいた男、国枝裕二はそのスティックをずらし、そのまま逆手に大型のライフルとして装備した。

 

 その機体の名はホワイトバード。魔力炉を内蔵した小型魔導戦闘機であり、必要時には変形によって人型になることの出来る万能機である。

 

「おらっっっっせぇい!」

 

 国枝は変形しながらも、魔導師に近づいてきた時の勢いのまま突撃を敢行した。逃げ場のない魔導師にライフルから伸びた魔力刃が落下速度を加え衝突、バリアジャケットでも緩和しきれずに魔導師は即座に気絶する。

 

「やった!」

『よーぅ、これで良かったかいユーノ君?』

「ありがとうございます、三本さん。国枝さんも」

「やー、マジで危なかった。あんな勢いでツッコむもんじゃないわ。鳥ちゃんがおしゃかになっちまう。もう二度とやらねぇ」

 

 狙撃をしたのは国枝の相方、三本だ。彼らはユーノが傭兵集団を見た時に、こっそりと念話で連絡を入れていたのだ。彼らはその職務上ホワイトバードのテスターも兼任しており、彼らの実力について教えられていたユーノは即座に戦力に組み込んだのである。結果、イイトコ取りのヒーローのようなノリで出てくるはめになったのはご愛嬌だ。

 

 空中に浮遊する国枝は探知魔法のデータを含めたいくつかのディスプレイを眼前に投影したまま、あちこちを探る。既にいくらか倒されているとはいえ、まだ半数以下ほどは残っているはずだ。もうすぐやってくるだろう三本も合流して、これからは少女たちを守りつつの殲滅戦となる。敵魔導師達が全滅するのは既に時間の問題だった。

 




地球側が化物過ぎてバランスが取れない……!次回はなのは対デュアリスの続きからです。
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