魔導変移リリカルプラネット【更新停止】   作:共沈

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この回から(出来れば)5話連続投稿開始します。キリがいいかは不明ですが。

前回の考察から特に意味もなくユーノ君強化フラグ立てました。まぁ周りについていけないと可哀想ですし。
すいませんが二部は次回からになります。

※StSのアリサは何故髪型が残念シャマルさんになったのか。色も変わってるし……。私的にはどう考えても閃の奇跡に出ているアリサ・ラインフォルトが成長例としては一番近い気がするです。

あのアリサちゃんのほっぺめっちゃプニプニしてぇ……。


Gossip_6

「――はい、56番から87番までのチェックは終わってます。安全性も確認されましたし、次の作業に移ってください」

「ユーノくん、こっちの制御術式なんだけど」

「ああ、そこは……」

 

 海鳴大学の一角に置かれた研究室で、少年ユーノを中心に人々が入れ替わり立ち変わり動いている。現在この教室はユーノと教授たちによる魔導研究所海鳴支部として使われている。管理世界から戻ってきてやっと地に足が着くようになった頃、日本政府の要請に彼は応えていた。今では高町家に居候しながら聖祥大付属小学校に通いつつ行うという忙しくも充実した日々を送っていた。

 

 思い返せば転入時には大パニックとなったものだ。管理世界出身の人間が二人。それも輝く金色の髪を持った少女とクリーム色の穏やかな色を持った可愛げのある少年の同時転入であったのだから。揃って美形であるためかそれはもう上から下までいろいろな意味で叫び声が止まらない。正直、可愛いと言いながら追いかけてくる上級生組にはほとほと参った次第である。ちなみにこの時アリシアも中等学部に転入しているのだが、男女別だというのに噂を聞きつけた少年たちの一目惚れによる告白が止まらなかった。比較的早熟で女性らしい体格になりつつあるアリシアは紛れもない美人であったのだから。恐らくフェイトも将来は同じ道を通るだろうと笑っていた。

 

「ユーノ君、こんなプログラム作ってみたんだけどどう?」

「どれです?……えーっと、多点ボーンに思考制御を用いて動かす触手ですか、って何作ってるんですか!?まじめに作ってください!」

「君には男のロマンがわからないのか!?……いやいや真面目も真面目超真面目だよ。これで彼女と……じゃなくてそう、がれき撤去とかに使えそうじゃない?」

「今変なセリフが聞こえたような……まぁいいです。作ったら一応レポート出してくださいね」

「おっけーおっけー」

 

 彼らの研究は主に民間で使える魔法であり、使用用途は多岐に渡る。ついこの間はバイクを製造している企業が話を聞きに来たし、植生の再生やそもそも魔法で行うべきでもないような事まで質問が飛んでくる。まぁソレも仕方ないことで、いくら発表から三年経ったとはいえ発展途上な上にノウハウが確立していないため具体的に何が出来るのかということが把握できていない。魔法という言葉もおおいに拍車をかけているのだろう。何でも出来ると勘違いしている人だっていないことはないのだ。ユーノはそれらの範囲や施行する際の難度等をこんこんと説明する役割も持っている。一応給料も出ているので割にあわないことは無いが、コレが中々に大変だ。

 

 とはいえ研究室にいるメンバーは比較的常識人が揃っている。民間利用で即座に行き着くのはまずパソコンや携帯電話といった電子機器の代用、高性能品としての扱いだ。そのため彼らが行うのはその延長上、例えばアプリケーション等をウィンドウ内ではなく現実に持ってきて制作するような内容のものが多い。ある人は投影された粘土をこねるようにして物体を作る3Dモデリングソフト等を作っていた。最早ディスプレイなどというものが不要となった事を利用して様々なジャンルに挑戦している。これから未来において出るはずであったスマートフォンやスマートグラスの存在が完全に危ぶまれるかもしれないが、今そんなことがわかるはずもない。

 

「お久しぶりです、ユーノ君。抱きしめてもいいですか」

「唐突に何を言ってるんですか紫葉さん……」

 

 どうやら今日は定期の査察日だったようで、文部科学省から紫葉楓がやってきていた。研究が開始されてから度々やって来るようになったが、どうもその度に彼女のネジが外れているような気がするとユーノは感じている。主に自分に対して迸る愛が溢れすぎているようだ。その表情は常にクールであるが大体発言が一致していない。それでも仕事だけは確り真面目にこなしていくのでなんとも言えないのだが。

 

「すいません、少し焦りました。もう少し段階を踏んでからにしましょう」

「いえ、そういうことではなくて……。ていうか怖いので鼻血を止めてください」

「おっと、コレは失礼」

 

 さっと整えた彼女は再び真面目な表情に戻り現在の進展状況の確認や資材の発注、不備などあれこれ点検していく。魔法も用いてチェックする様は実にスムーズで、つい最近研修を受けたのが嘘だと思えるほど手際が良い。ものの10分もあればすべての作業が終了していた。

 

「さて、本日の私の仕事はコレで終わりましたが、実はユーノ君宛にお届け物があるのです」

「お届け物ですか?」

 

 渡された物品の梱包を解くと、翠色に輝く宝石、否デバイスが姿を見せた。

 

「貴方用のデバイスです。基本はストレージで仕様はパソコンに近いものにしていますので、どちらかといえば連絡用といった感じが強いですね。新製品のテストも兼ねていますので、気兼ねなく使ってください」

「ああ、ありがとうございます。これなら外で仕事をしても問題ないですね」

「そうですね。……しかし、気になるのですが、あなたほど優秀な魔導師が何故デバイスを持っていないのですか?」

 

 魔導師はデバイスを使って魔法を行使する。これは楓が教わった常識であり、無い場合は行使できる魔法に制限がかかる。だというのにユーノにはソレがなく、提示された使用魔法には明らかに大魔法クラスのバインドまであったりするのだ。そのうえ発動速度もデバイスを持った一般魔導師より明らかに早い。これははたしてどういうことなのだろうか。

 

「まぁ、確かに不思議ですよね。でもこれを見てもらえれば納得できると思います。今からこのデバイスで変身魔法を使いますから、よく見ててください」

 

 そう言ってユーノはプログラムを走らせる。しかし即座にエラー音が返ってきて魔法の発動が中断された。

 

「……エラー数23、言語化不可能数45……、ってどういうこと?」

「簡単です。僕が使う魔法の一部は、基本的にデバイスで行使不可能なんです」

 

 ユーノの使うフェレットへの変身魔法はスクライアの秘奥、と呼ばれているが、それは実は使える人間がほとんどいなかったからだ。何せ解読しようにもデバイスが言語化できず読み込んでくれない。だからユーノはアナログな手法で手を付けた。デバイスに頼らない自己演算、それを聞いた時楓は卒倒しかけた。機械に頼らなければマルチタスクへの負荷が高く、高度な魔法は発動できないというのにこの少年はそんな事知ったこっちゃないと言わんばかりに行なっている。これは明らかな異常だ。

 

「っと、こんなかんじでデバイスを使わないならフェレットに変身できるんですが、結局持っている意味があまり無いので今まで使わなかったんです」

 

 そこには手のひらサイズになったフェレットユーノがいた。これまた可愛い、と思うがそれよりも原因究明が先にきている楓はとんでもないことに気づいてしまった。

 

「…………ちょっと待ってユーノ君。あなたその状態で普通に魔法使えるの?」

「?ええ、使えますけど」

「威力、質は変わりなく?」

「ええ」

 

 わずかばかり目をつぶって考えをまとめた楓は再びユーノに質問を繰り返す。

 

「じゃぁ聞くけど、マルチタスク数が変わってるとか、そういうのはないの?」

「数えたことはないですけど、多分無いですね」

 

「変身って体ごと存在を変えてるのでしょう?私の推測ではかなり魔力が必要だと思うのだけれど?」

「いえ、むしろ単純魔力砲やプロテクションなんかよりも必要量は少ないです」

 

「変身している間状態維持のためにどのくらいの魔力が必要なの?」

「全くいりません。むしろ僕はこの状態を魔力回復のために用いようとしたくらいですから」

 

 それだけ聞いて、楓は頭痛を起こしそうになった。楓が研修で学んできたのは純粋物理学と同レベルで扱われる魔法でしか無く、ここまで自然現象に反した魔法というのは聞いたことがない。つまり、健全たる(?)オカルトの領域に有る魔法だということだろう。だから機械翻訳が不可能なのだ。例えばとある書籍では「ネクロノミコン機械語版」といったものがあるが、これも同様にオリジナルから翻訳しきれない部分は魔法が発動できないとされている。

 

「これは、しっかり研究する必要が有るわね……」

 

 

 

 

「と、いうわけで特殊な能力を持つ方々に集まってもらいました」

「は、はぁ……どうかお手柔らかに」

 

 またある別の日、ユーノは多くの人に囲まれていた。楓によると、この人達は地球上で霊能力者や退魔師、超能力者、HGS患者と一体どこからかき集めてきたのか様々なバリエーションに富んでいる。基本的に彼らは魔法というものが公になるまで日の当たる場所にいなかったのだが、魔法が発表されて以来魔法という概念を遡って研究していたら様々な特殊能力者にぶち当たったらしい。結果彼らはある程度表舞台に姿を表わすことになり、現在は各々が使う能力や術といったものと魔法の関連性の調査に従事しているそうだ。

 

 というか、どうもこの海鳴という土地は奇人変人が集まりやすく能力者たちの坩堝みたいな状態になっていてあっという間に集まったとか。案外海鳴に研究拠点を置いたのは正解、というより運命的な物を楓は感じていた。

 

「しかし、彼らは地球の分類で言えばオカルト系なのでしょう?科学と真っ向から対立している気がするのですが」

 

 情報論理に従う魔法と違って、地球に元からあった能力や術は割と理屈が通用しないものが多い。しかしそういった分野でしかユーノの魔法を解読できないと、何故か楓は確信していた。

 

「それこそ心配ないわ。むしろだからこそ、あなたの魔法の解読不可能部分に理解を示せるのは彼らこそが適任なの」

 

 現実を舞台に演算し特定の現象を発生させる魔法。それは名前の通り、機械的でありながらやっていることはオカルトそのものだ。だが、翻訳出来る部分が理屈的な科学寄りになってしまったのだとすれば、翻訳できない部分はまさにオカルトのままととることが出来る部分、つまりは専門家の領分になる。

 

「まさか私も技術革新を起こした魔法を、このような手法で解決しようとは思っていなかったわ」

 

 それはオカルトとひっつけて魔法を解釈したとある論文があったせいだ。完全に科学に浸ってしまった管理世界より、まだ足を突っ込んだだけの地球にはそれを関連付けられるだけの余地があったらしい。だからそんな与太話にもならないような論文が出てきたのだろう。あるいは、その論文を提示した人間は何かを知っていたのかもしれない。もしかしたら、原初の魔法がそのオカルト部分にあったのではないかと。

 

「とにかく、時間もないので始めましょうか。ではユーノ君、衆人環視の中ですみませんが魔法を何度か使ってみてください。それから同時にいくつまで魔法が並行して発動できるか、あとは脳波もとりましょう。それから……」

「なんだか嫌な予感しかしない……」

 

…………

 

……

 

 

 

「……え~、では私としても非常に驚きですが、結論をまとめたいと思います」

 

 パチパチパチパチと拍手がかかる。動作と対照的に楓や集団の表情は疲れから来ているのか、非常に渋い。

 

「結論、ユーノ君はもはや人の領域から半歩はみ出しています」

「最初からからひどい言い様ですね」

「すいません、とはいえ他にどう形容していいものかわからなかったもので」

 

 あれこれと計測され、レポートにはユーノの魔法使用における詳細が細かく書き込まれている。楓も同様の検査を出来る範囲で行なって比べてみたが、魔力値以外では比べようがないほどユーノのスペックが高いことが判明してしまった。

 

「まず、ユーノ君は魔法使用の際に脳をほとんど使っていません。魔法使用における脳波がまるで検出されず、これはフェレット形態でも同様でした。フェレットの状態でも思考能力、魔力量、生成量、使用量は共に変化なし。現代医学でも匙を投げるレベルでしょうね……。また変身時において、ユーノ君とフェレットの同一性、つまり霊視による魂等の差異を計りましたが、これは全く同じでフェレットだろうと人間だろうと魂の総量は変わってないとのことです」

 

 ユーノの変身魔法は実は存在置換で、厳密には変身ではなく変更なのだと推測された。ユーノをユーノたらしめているのはその見かけの存在ではなく、魂そのものが本体だと解釈できる。つまり、ユーノにとって肉体というのはただの外装に過ぎないという結果なのだ。果たしてこの魔法は一体どういう原理からなっているのか。多世界解釈でフェレットとしてのユーノと人間としてのユーノを取り替えているのか、それともユーノの肉体を情報体として見立てて分解再構築しているのか。恐らくソレはデバイスが解読できない術式に記されているのだろう。

 

「これによりユーノ君の本体は魂に依存している可能性があることがわかりました。これは肉体に依存しきっている通常の人間よりも進化した存在だと捉えることができるかもしれません。非実体であるリンカーコアに魔法が記録されることと共通して考えると、魂とリンカーコアは同種、もしくは内包しているのかもしれませんね。だからこそリンカーコアに障害が出てしまった場合、それとリンクした肉体に障害が出てもおかしくないということでしょうか……。ということは、カートリッジの負担などは肉体よりもむしろ魂にかかっていると……」

 

 あれこれ推論を述べながらしかし、楓はまだある、とばかりにセリフを繋ぐ。

 

「失礼。あとは同時に使用出来る魔法の数は下手をすれば最大5つを超えるのではないか、という予測が立てられました。出力量的に難しい部分はあるようですが……。正直なところ、魂そのものを利用したマルチタスクですとそのタスク数もスペックも完全に見当がつきません。通常脳で会得したマルチタスクで比較するとタスク数は10を超えている可能性があります。確かにこれではデバイスがいらないというのも納得です」

「そ、そうなんですか?あまり自分でそういうことは意識したことがなかったんですけど」

「おそらくは、さほど負荷がかかるほどの処理を行ったことがなかったからでは?限界まで魔法行使をしたことあります?」

「そういえばないですね……」

 

 秘められた自分の底力にユーノ自身が驚いているのだからわからないものだ。ただ、前史においてはアースラの転移ポートを開けるためにアースラそのものにハッキングして使用者権限をもぎ取っている。あまりに自然にやっていたが、デバイスも無しに生身でやってのけるのは普通は不可能。秘めている力量は恐ろしいものに違いない。魔力に依存しない部分で、ユーノは間違いなく魔導師として天才なのだろう。

 

「とりあえず、データはとれたのでよしとします。デバイスは倉庫にするなり、攻撃魔法を入れておくなりお好きに使ってください。おそらくこの研究は、10年がかりでも足りないかもしれません」

 

 結局わかったのは、ユーノはなんだかよくわからないが超人的な能力を持っている。という事実だけだった。

 

「ああでも、そのマルチタスク。ちょっとおもしろいことに使えるかもしれませんよ?」

「え?」

 

 

 

 

「えぇぇ~!?なんでなんで、どうして当たらないのユーノ君!」

 

 後日、高町家道場にて。

 鍛錬にて対面するなのはの驚きは天を貫きそうな具合に動転している。自身が振るった全ての斬撃を、ユーノがわずかな動作のみで避けきってしまったからだ。揮い、払い、逆袈裟、突き、何をしてもそのどれをも太刀筋スレスレで読みきった。今までは木刀が、言っては悪いがボカボカ当たっていたユーノとは別人のようだ。

 

「あ、あはは。なんとかなった」

「へぇ、驚いたな。これは後の先を覚えるのを優先した方がいいかもしれない」

「後の先?」

 

 なのはの疑問に答えるように士郎はうなずいた。

 

「なのはも知ってるだろう?相手の剣の動きを見てから、一瞬先に相手に打撃を与えることさ。ユーノ君にはどうしてか、完全になのはの太刀筋が見えるようになっているようだね。どうやったんだい?」

「ええと、上手くは説明しづらいんですが、自分の持ってるマルチタスクを出来る限り使ってなのはのモーションパターンを計算していたんです」

「なるほど、つまり動体視力が上がったわけじゃないんだね。分割された思考が、それぞれになのはの次の行動を予測していたというわけか。加えてそれだけ分割しているのだから思考速度も早くて当然。なるほど、ユーノらしいな」

 

 子供の成長を見て納得したのか、士郎はひどくごきげんだ。彼の将来の見立てではユーノはカウンター型の剣士になるであろう像が浮かび上がりつつある。そして興が乗ったのか、子供二人に爆弾を投げることにした。

 

「つまり、それだけなのはのことをよく見ていたというわけだな!」

「うぇ!?そそそ、そんなことは!」

「そ、そうだよお父さん!恥ずかしいこと言わないで!」

「ハッハッハ!照れるな照れるな!いやー、将来が楽しみだ本当に!」

 

 なのはにぽかぽか叩かれながら追われる父親。それを黙って見ていたユーノはそういうわけじゃないのに、と思いつつ顔が真っ赤になったまま動けなかった。

 

「あの、恭也さん」

「……なんだ、フェイト」

「二人が何かおかしいけど、どういうこと?」

「…………うん、君にはまだ早いのかもな」

「??」

 

 よくわからないと首をひねるフェイト。彼女がこの感情を理解するのはしばらく先のことなのかもしれない。

 




――振り下ろし90%
――切り払いで連撃87%
――左へ回避推奨
――なのはかわいい

――4番カット

どう見てもエルトナム。

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